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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十五話

 ここはドレスローザ王国。

 この国を訪れた者はいくつかの事に心奪われるという。1つは芳しい花々と、この国自慢の料理の香り。もう1つは女たちの情熱的な踊り、そして、もう1つは、人々とごく自然に共存する命をもったオモチャたちの姿。ここは愛と情熱とオモチャの国。

 この国にオモチャや人の姿は一切ない。なぜなら6年前に王座に付いたドフラミンゴが定めた2つの法があった。


「この国の夜は本当に静かになったわね。“千里眼”!」


 1つは午前0時過ぎの外出禁止、もう1つはオモチャと人間はそれぞれの家に入ってはならないというもので、これに違反すれば即時逮捕、投獄されてしまう。

 夜は敵船が乗り込んで来るには絶好の機会である。

 “千里眼”と呼ばれる八方4000kmに視界を飛ばす能力により、広範囲の視覚情報を取り入れることができる超人(パラミシア)系悪魔の実、ギロギロの実の能力者である長い黒髪に分厚い唇を持つ色黒のスタイル抜群のシックなドレスを着こなす美女はある船の接近に気付き、目を丸くして驚いていた。


「とうとう“黒麒麟”がこの国に来た!?しかも商船に偽装してるって事はこの国の闇を探りにきたに違いないけど、今、彼は間違いなく私が見てる事に気づいていた。ここから船まで2000kmは離れてるはずよ。なんで私が見てる事に気づいたの?」


 彼女はこの国に向かって一般の船に偽装した軍艦を進めているその船に乗るゴジの姿を王宮にいながら発見してみせたが、ゴジと目が合ったことに驚いていた。

 ゴジと目が合った直後にジェガートの将校達が警戒体制をとったことから彼がヴァイオレットの視線に気付いた事は間違いない。


「やっぱり“黒麒麟”による王下七武海狩りのターゲットがドフィってわけね。」


 ドフィとはドンキホーテファミリーと呼ばれるドンキホーテ海賊団の幹部にのみ呼ぶことを許されたドンキホーテ・ドフラミンゴの愛称である。


「“歓楽街の女王”ステューシー少将、“黒檻”ヒナ少将、“豪運”バカラ大佐。それに最近売り出し中の“悪魔の子”ニコ・ロビン中尉、“大食らい”ジュエリー・ボニー大尉、“船殺し”ミキータ大尉、“刀狩り”たしぎ少尉までいたわ!?精強と名高いジェガートでも指折りの実力を持つ海兵達。“黒麒麟”は本気でドフィを捕らえるつもりね!?」


 既に将校として長年活躍しているステューシー、ヒナ、バカラは言うまでもなく、昨年ゴジとの司法取引により懸賞金を抹消されて海兵見習いとなったが、かつて7900万ベリーの賞金首であったハナハナの実の能力者“悪魔の子”ニコ・ロビン。

 王下七武海“暴君”バーソロミュー・くまを父に持ち、父譲りの高い身体能力と強力なトシトシの実の能力者“大食らい”ジュエリー・ボニー。

 キロキロの実の能力と六式による体術で船の竜骨をも砕き、開戦とともに多くの海賊船を沈めてきた“船殺し”ミキータ。

 悪の手に渡った名だたる名刀を回収する事を目標とする“桃ウサギ”ギオンも認める若き天才剣士“刀狩り”たしぎ。

 彼女達4人は海兵となって1年から2年と日が浅いが、既にこの海では知らぬ者のない実力を身に付け、数々の実績を重ねてきた。


「でも、この暗闇と私のギロギロの実の力なら誰にも気付かれずに“黒麒麟”を待ち伏せできるわ!」


 ヴァイオレットはドンキホーテファミリーの暗殺者としての役割のあるヴァイオレットの仕事の一つがギロギロの実の能力を使ったドレスローザ王国への侵入者の監視であり、これまでもドフラミンゴの背後関係を探ろうとするサイファーポールや海軍等を入国前に発見し、秘密裏に暗殺してきた。

 彼女はゴジ達が入国してくるであろう場所で彼を待ち受けるべく、王宮を出て静寂と暗闇の支配する街をひた走った。


 ◇


 ゴジは人選について若干見誤ったことに気付いたが、実力的には問題はないので切り替えて全員に周囲の警戒を命じていた。


「ゴジ君、敵に見られたって“ハヤブサ”のペル殿のような空を飛ぶ悪魔の実の能力者かしら?」

「あたしが見張りをしてたけど、空にも周囲にも誰もいなかったわよ。ゴジ君は誰に見られたの?」


 ステューシーのセリフに対して、見張り台から降りてきたミキータが不満を露わにする。

 見張りは1番新人のボニーの役目だが、すぐにサボるからという理由でミキータが率先してやっていたので見落としはないと自負していた。


「俺はミキータの見張りを疑ってるわけじゃないんだ。俺が視線を感じたのはドレスローザ王国がある方角で姿すら見えない。恐らく遠く離れた場所を見る物見が得意な悪魔の実の能力だろうね。」

「普通は見られたことにすら気づかないはずよ。相変わらず規格外の見聞色の覇気ね。ヒナ驚愕!」


 見聞色の覇気とは感じる力であり、それは五感を研ぎ澄ませることに他ならず、ゴジは間違いなく視線を感じたのだから監視されていると断言した。


「まぁ、元よりゴジの判断を疑う子なんていなんていないわね。私もミキータと見張りをするわ!」


 ロビンはハナハナの能力でマストの一番高い所に目を咲かせてマストの上で見張りを続けるミキータを手助け?目助けする。

 ドフラミンゴ海賊団の監視の目が強いと分かったので、戦闘準備を整えた仲間の為に気合いを入れて見張りを続けるミキータと共にマスト上の見張り台に登った。


「一応相手を睨み返し、見てるのには気付いていると警告したからすぐには襲ってこないだろうが、全員警戒は怠らないように頼むよ!!バレてるなら実力で殲滅するだけだ。予定通りに宵闇に紛れて上陸する。」

「「「はっ!!」」」


 ゴジ達はそのまま宵闇に紛れて船をドレスローザ王国から離れた岩壁に停泊させて島に上陸を果たした。

 ゴジの予想通りに海上戦は起こらなかったが、待ち伏せの可能性はある。


「ゴジ君、崖の上に待ち伏せている敵はいるの?」

「崖の上にいるにはいるが、妙なことにたった一人だけだ。」


 停泊した岩壁から上の陸地までは10m近い高さがあるが、“月歩”を使える者や細身ながら鍛え抜かれた体躯を持つ彼女達にとっては障害にならない。


「ミキータとステューシーは付いて来い!残りは船上待機だ。」

「「「はっ!!」」」


 ゴジは“月歩”が得意な2人を引き連れて10メートル近い高さを持つ崖の上に駆け上がると、月明かりで照らされたそこには一面のひまわりの草原が広がっていた。


「ドレスローザ王国に訪れた人は花の香りに酔いしれると聞くが、なるほど…これは見事だな。」

「綺麗…」

「えぇ。凄いわね。」


 そのひまわりの草原の間から頭からローブを被った美女が現れた。


「お褒めに預かり光栄です。皆さまのご来訪お待ちしていました。」


 突然現れた美女にミキータ、ステューシーがゴジの合図ひとつで動けるように油断なく構えをとる。


「ステューシー、ミキータ。待機だ。」

「「えぇ。」」


 ゴジは二人に待機を命じて美女の前に降り立って声掛けながら頭を下げる。


「はじめまして。知っていると思うが、俺は海軍本部中将ゴジ。俺達をずっと見ていたのは君で間違いないか?」

「えぇ。もちろん存じておりますわ。私の食べたギロギロの実の視線に気付いた人は“黒麒麟”ゴジ中将が初めてです。不躾な視線失礼致しました。申し遅れましたが私はドンキホーテファミリー、トレーボル軍幹部ヴァイオレットと申します。」


 ヴァイオレットは頭に被ったローブを脱ぎながら、ゴジに深々と頭を下げた。


「「ドンキホーテファミリー!!」」


 ヴァイオレットの名乗りを聞いて、ステューシー、ミキータが目を見開いて、ヴァイオレットを取り囲んで臨戦態勢をとる。

 ゴジ達はドンキホーテファミリーと呼ばれるドンキホーテ海賊団の幹部の名前と名前は覚えており、彼女はヴァイオレット本人である事は疑いようもない。


「二人とも大丈夫だ。俺が最初に言った通り周辺には彼女一人しかいない。それに…彼女をよく見てみろ。」

「たった一人でゴジ君を迎え撃つってこと?ちょっと待って……その子……!?」


 ゴジに言われてステューシーとミキータは今な肩を震わせながら下を向いたままのヴァイオレットの姿に驚いて目を見開いていた。


「一体どういうことなのよ…この子泣いてるわ…」


 正確にはヴァイオレットの足下に滴り落ちる大粒の涙に気付いて驚いていたのだが、ゴジは見聞色の覇気で彼女の心にある深い悲しみと歓喜の入り交じった感情に気づいていた。


「ヴァイオレット、俺は王下七武海“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴの悪事の尻尾を掴み、捕らえる為に来たんだ。」


 ゴジは頭を下げたまま震えているヴァイオレットに近づいて、彼女の頭を優しく撫でる。

 宵闇に紛れてなお、頭を下げたままのヴァイオレットの足元には彼女の目から溢れる大粒の涙が止めどなく流れ出ていた。


「ゴジ中将……どうか…この国……を……ぐず……助げで……ぐだざい!!」


 涙を流しながら頭を下げ続けていたヴァイオレットは頭を上げた瞬間、優しく抱き締められた。


「すまない……。どうやらここへ来るのは遅すぎたようだ。でも、もう大丈夫。俺が来た。必ずこの国を救ってみせる。」


 ゴジはヴァイオレットを抱き締めながら、力強く宣言すると彼女がこれまで我慢していた涙がさらに溢れ、宵闇を裂く程の泣き声をあげてゴジを離さまいと強く抱き返した。


「うわああああああん!!」


 そう…ヴァイオレットは船長である王下七武海“天夜叉”ドンキホーテ・ドフラミンゴを打ち倒す“黒麒麟”ゴジがこの島に来る日を誰よりもよりも心待ちにしていた。


 ◇


 しばらくゴジの胸で泣いたヴァイオレットは泣き腫らした顔を上げてもう一度頭を下げた。


「すみません。お見苦しい所をお見せしました。」

「いや……ヴァイオレットちゃん、船に戻ってこの国に何があったのか聞かせてくれるかい?」


 ゴジがヴァイオレットに優しく声を掛けると彼女は首を縦に振るので、ゴジはヴァイオレットの背中と足の裏に両手を回してお姫様抱っこの要領で抱き上げる。


「あっ…/////」

「二人とも船に戻るよ!」


 ゴジは宵闇のせいで突然お姫様抱っこをされたヴァイオレットの顔が赤らんでいる事に気づいていないが、ステューシーとミキータは見えなくとも予想が付いてため息を漏らす。


「はぁ…。平然と会ったばかりの女の子を抱き締めて、お姫様抱っこしちゃうのがゴジ君よね……」

「キャハハハ!ゴジ君はセクハラって言葉には一番縁遠いわよね…」


 ステューシーとミキータは一足先にヴァイオレットを抱えて船に戻ったゴジを追い掛けて甲板に降り立った。


「━━という訳で、皆で話しを聞く為にヴァイオレットちゃんを船に連れてきたんだ。」


 彼女達が船に戻った時には、ゴジが既に船にいる仲間達に状況を説明した後だった。


「皆様、改めて名乗らせてください。私の名前はドンキホーテファミリー、トレーボル軍幹部ヴァイオレット。しかし、これは仮の名前。ドンキホーテファミリーは船長のドフラミンゴ以外、互いをコードネームで呼び合うので、本当の名前を知りません。私の本当の名前はヴィオラ。先代国王リク・ドルド三世の次女です。」


 ドレスの両端を両手で持って優雅に挨拶する亡国の王女の姿にゴジを含めた全員が目を見開く。


「「「なっ…!?」」」


 ヴァイオレット…いやヴィオラは自分の持つギロギロの実の能力に心酔するドフラミンゴに忠誠を誓いながら、いずれ来る今日の日の為に情報を集め続けてきた。

 並の海兵やサイファーポール、役人如きでは王下七武海ドンキホーテ・ドフラミンゴには勝てないことは彼女が誰よりも身に染みして分かっているから、忠誠を示す為にもこれまでは従順にドンキホーテファミリーの暗殺者としての役割を果たしてきた。

 彼女はドレスローザの王宮からここまで、“千里眼”を要するギロギロの実の力でファミリーの誰にも見つかることなくここまで来ることが出来たのだ。


「そうだわ。ゴジ中将、ドフラミンゴは海軍にいる内通者を通じて貴方の動きを探っていました。貴方の動きを封じる為に、貴方の大切な人をファミリーの幹部に襲わせる気なのよ!?」

「「「なんだってぇぇぇ!?」」」


 ヴィオラはゴジに会えた感動のあまり伝え忘れた大事な事を告げると、ゴジ達はさらに驚いて目を見開いた。 
 

 
後書き
次の更新は23日です。

ヴィオラの言うゴジの大切な人とは?

 
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