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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十二話

 
前書き
さて、魚人島編のエピローグです。

会話の途中に出てくる━━にはどんな言葉が入るでしょう?

いつもご愛読の皆様にはすぐに分かると思いますが、正解は最後に出てきます。 

 
 ゴジは全身を波打たせながら、背中から力なく倒れ伏すホーディを見ながら告げる。


「そうやってすぐに仲間に手を上げるクズだから誰も従わないんだよ。」

「新魚人海賊団の幹部達が……ホーディ船ちょ……いや、ホーディ・ジョーンズが人間に負けたぁぁぁ!!?」

「「「なっ…!?」」」


 ホーディが倒れ伏すのを目の当たりした一人の魚人がホーディをいつものように船長と呼び掛けて、自分が新魚人海賊団とは無関係であるというアピールのために言い直しながら魚人街中に聞こえるように叫んだ。

 状況が理解出来ずにその場に立ち尽くしていた新魚人海賊団達に向けて、ゴジが声高々に問い掛ける。


「俺と戦いたくない奴は今すぐ武器を捨てて降伏しろ。今なら罪に問わない。」

「「「っ……!?」」」


 この場には約5万人の武器を扱える魚人族がいるも、圧倒的な実力差を見せ付けたゴジに対し、全員が戦意を喪失してカランカランと音と立てながら武器を捨てて両手を高くあげた。

 ゴジは誰一人として自分に挑もうとする者はいないことに満足そうに周りを見渡した後、さらに声を張り上げる。


「魚人街の魚人族に聞く。君達の中にはいないのか?幼い頃、陽の当たる地上への憧れを抱いた者は?子供達に明るい“太陽の下”で生活させてやりたい者は?リュウグウ王国の地上移設は既に世界会議(レヴェリー)に決定した。君達は地上で生活出来るのに何故こんな事をしている?暖かな太陽の下での暮らしに興味はないのか?」


 ゴジの問いに両脇に避けた魚人族がぽつぽつと声を絞り出す。


「憧れないわけがないだろう…。でも、俺達はどうしようもなく人間が怖いんだ。」

「地上移設は俺達を一網打尽にする罠かもしれない。」

「ならここで静かに暮らした方がいいんだ。」


 魚人街の人達は俯いて肩を震わせている。

 植え付けられた人間への恐怖心はそう簡単に拭えるものではなく、彼らの不安は地上移設に喜ぶ魚人族全てが心の奥底に押し殺した悩みであり、ギョルコルド広場でモニターを見ている魚人島の人々も同様に下を向いていた。


「そうか…怖いのか?でも、怖がる必要はない。」

「なんで…人間であるあんたには俺達の想いは…人間への恐怖は理解出来ない!?」

「あんたは海中でも魚人族を圧倒出来る強さがあるからそんな事が言えるんだ!?」


 魚人街の人々は何も知らないのに無責任に怖がる必要はないと言うゴジを野次って喧騒が広がるが、ゴジはそれを見渡して薄く笑う。


「そう…俺は強いんだ。海中で化け物になったホーディ達を倒せるほど強い俺は地上ではまさに敵無しだ。全ての海賊から恐れられている。気づいてないか?俺がこの島に来てから人間の海賊は一人もここに来ていない。」


 ゴジは声高々に自分の強さをアピールすると、魚人街の人々は更にゴジに恐怖するが、同時にゴジの言葉が事実だとも認めてしまう。


「なっ…!?そうかよ…でも、俺達はあんたとは違うんだぁ!?」

「俺達は…弱いんだ…ゔゔぅぅ…」


 自信に満ち溢れたゴジを前にして魚人街の魚人族は何も言い返せずに惨めになり、落ち込むにしたがって先程の喧騒も静まっていく。

 ゴジの力は今、目前で見せつけられたからこそ、ゴジの自信が実力に裏付けされて事実であると分かるのだ。


「だからさ、もし地上で住む君達に脅威が訪れた時は俺達を呼ぶといい。必ず助けに来るよ。」

「「「えっ…!?」」」


 魚人街にいる者だけでなく、ギョルコルド広場でモニターを見ている人々にもゴジの優しい声はよく届いて一斉に頭をあげてゴジを見る。


「海底にあるこの国の脅威は今まで分からなかったけど、地上ならば俺は…俺達海軍は君達を助けられる。海の平和は必ず俺達が守る!絶対的正義の名のもとに!!」


 顔をあげた魚人族が一斉に顔をあげた時、彼等の目に飛び込んできたのは優しい笑顔で手を差し伸べるゴジの姿であった。


「だからさ。怖がらないで大丈夫。地上においでよ!」


 魚人島は大海賊時代の始まりに海賊たちに蹂躙された過去がある。

 リュウグウ王国は海底にあるから世界政府加盟国であるにも関わらず海軍による守護を受けられなかったが、地上であれば必ず海軍がリュウグウ王国を守るとゴジは断言する。


「「「(うお)おおおぉぉぉぉ!!」」」


 魚人族は未だに人間は信じられないが、ここ魚人島でしらほし、ケイミーという二人の人魚を救い出したゴジの言葉だけは信じられる。

 魚人街、魚人島共に大歓声に包まれ、この戦いに本当の終止符がうたれた。


 ◇


 ゼオの手から離れてもゴジの姿を追い続けて撮影と配信を続けていた映像電伝虫の映像を見ていたたギョンコルド広場は歓声に包まれていた。


「すげぇぇぇ!?“黒麒麟”、化け物になったホーディ達を本当に指一本で倒した!!」

「それに聞いたか?地上に行ったら“黒麒麟”みたいな強い海兵達がいる海軍が俺達を守ってくれるってよ!!」

「「「(うお)おおおおぉぉぉぉ!!」」」

「「「黒麒麟!!黒麒麟!!黒麒麟!!」」」


 ナミは魚人族の大歓声を聞きながら、初めて見るゴジの戦いに呆然として顔を赤らめながら、ただモニターに映る彼の姿を見つめていた。


「ゴジ君、カッコいい…」


 ナミは己の夢である世界地図を書く上で豊富な財力を持つ“第四勢力”ジェルマ王国の王子かつ世界の何処でも自由に航海可能な海軍本部の実働部隊最高位である中将というゴジを惚れさせて手玉に取るつもりでいた。

 しかし、彼女はボロボロになりながらアーロンに勝利したイスカを知っているからこそ、余計にホーディ達に有利な海中で強化された彼等に何もさせずにゴジの圧倒的な強さと、地上での暮らしに不安を募らせる魚人族に手を差し伸べる優しさに魅せられていた。


「けっ…もぐもぐ…相変わらずゴジは魅せつけてくれるよな…もぐもぐ…それにあんなキザったらしいセリフをよく言えるもんだ。」

「またゴジ君のファンが増えて困るわね?ボニー?」


 ボニーは両手に持ったピザを食べながら、モニターに映るゴジを不機嫌そうに見ていると、イスカはボニーの不機嫌な理由に気付いてからかっている。

 イスカの言葉を裏付けるようにギョンコルド広場にいる若い魚人族の女性達はナミのように顔を赤らめてうっとりとした顔でモニターを見つめていた。


「ぶぶぅぅぅ!?あたしは別にそんなんじゃねぇよ!!」

「魅せる?」


 ボニーは顔を真っ赤にして食べていたピザを吐き出す程に慌てているが、ナミはボニーの言った言葉に引っ掛かっているとイスカがナミにも分かりやすく説明していく。


「ナミちゃん。私たち正義を掲げる海兵が悪に屈することは許されないのは知ってるでしょ?ゴジ君はただ勝つだけではなく“魅せる”のよ。ゴジ君に魅せられた敵は戦いを放棄し、共に戦う仲間には勇気を与え、守るべき人々には絶対の安心と希望を与えるの。これが我が海軍本部が誇る不動のエース“黒麒麟”ゴジが掲げる“体現する正義”よ!!」


 イスカの説明を聞いて、モニター越しのゴジを見てナミはしみじみと誰もが子供の頃に一度は憧れた存在の名前を思い出す。


「そういうのってなんて言うんだったかしら…そう…まるで物語に出てくる━━━みたいね。」


 ◇


 モニターで観戦している人々の中には無事に“送り波”で魚人島付近に流れてきたケイミーを保護したジンベエ率いるタイヨウの海賊団も含まれていた。


「こりゃ驚いた。ケイミーが“魚人柔術 送り波”で船まで流れてきた時にもしやと思ったが、ゴジがここまでの魚人空手の使い手じゃったとは……それに何よりも最小限の戦いだけで魚人街を完全に制圧し、魚人族の抱く不安をも消し飛ばしてしまいおった。なんという男じゃ…!?」


 ジンベエを含むタイヨウの海賊団も、ギョンコルドの広場のモニター越しに海中での戦いにおいて薬で強化されたホーディ達を圧倒し、5万人の魚人街の魚人族の戦意をへし折ってリュウグウ王国を湧かせたゴジを見つめていた。


「親分、私の言ったとおりだったでしょ?ゴジ君に任せておけば大丈夫なの。」


 タイヨウの海賊団がケイミーを保護した直後に部下にケイミーを任せて、ゴジの援軍に行こうとしたジンベエを止めたのはコアラだったのだ。


「ゴジは地上移設に喜ぶワシらの奥底にある人間への恐怖に気付いておったんじゃな。海軍な強さをアピールして不安を払拭させる為に、圧倒的な勝利を納めた。」

「うん。ゴジ君は魚人島の過去を知って何も出来なかった自分を責めるくらいにとっても優しいの。過去に何も出来なかったから未来へ進む魚人島の為に何かしてあげたかったのよ。」

「強さと優しさを併せ持つゴジこそ、まさにこの海の━━━じゃな!!」


 ◇


 ホーディのことを知って“海の森”での墓参りを切り上げ、慌てて海の森からしらほしを連れて竜宮城に戻っていたリュウボシ、マンボシも竜宮城に設置されたモニター越しにゴジの戦いと見て、魚人街での話を聞いていた。
 

「まさか…ホーディが母上を殺したなんて…信じラレファソ…」

「それに母上様の最期の言葉にそんな意図があったなんておいら、全然気付かなかった。」


 リュウボシとマンボシは目を見開いて母の死の真相を受け止めているとしらほしはゴジを見つめてから兄達に頭を下げた。


「リュウボシお兄様、マンボシお兄様…実はわたくし、ホーディ様がお母様を殺したこと知ってました。話せば誰かがホーディ様をお恨みになると思い、話せませんでした。…ゔゔぅぅぅ…今まで黙っていてすみませんでした。」

「「なっ…!?」」


 しらほしはメガロを抱き締めながら、何故知っていたのか泣きながら話した。


「メガロは元々リュウグウ王国軍のペット。あの日の全てを見ていて数年前にこっそり教えてくれたのです。」

「シャシャ…シャー!」


 母の最期の言葉をひたむきに守り続けてホーディを恨むまいと真実を心の奥底に封印したしらほしだが、あえて真実を伝えた上で魚人島を“太陽の下”に導こうとするゴジの姿を見て自分が間違っていたのではないかという自責の念に囚われていたのだ。


「しらほしは間違ってない!おいら達も今まで気付いてあげられなくてごめんなぁ!」

「間違っていたのは俺達だ。俺達は上ばかり見て内側に目を向けなかった。母上は内側に本当の敵がいることを伝えたかったんラレミファソ!!」


 リュウボシ、マンボシは母の死の真相を一人知って苦しんでいたしらほしを抱き締めながら、彼女の苦悩とオトヒメの言葉の真意に気づけなかった事を恥じていた。


「ゴジ様はすごいです。デッケン様を捕らえてわたくしを救ってくれたその日に、お母様の真意を汲み取ってホーディ様を止めて下さり、わたくし達の暮らすリュウグウ王国そのものを照らす太陽になってしまわれました。」

「あぁ。改めて礼を伝えなければならない!マンボシ、しらほし。“黒麒麟”を迎える宴の準備を急げ!!」


 リュウボシは国をあげて残りの滞在期間をもてなそうと準備に走っていくのをしらほしとマンボシが元気よく返事をして後を追う。


「はい!!」

「おいら達の━━をもてなすんだよ〜フーリフリ♪」


 ◇


 魚人島に住むゴジのことを知らない幼い魚人族の子供達はゴジの姿を見て、背中に書かれた文字の読み方を親に尋ねる。


「ねぇ。父ちゃん、あの兄ちゃんの背中にはなんて書いてあるの?それに海軍って何?」

「あれはね。『せいぎ』って書いてあるんだ。あのお兄ちゃんがいる海軍は悪い奴らから私達を守ってくれるすごい人達なんだよ。」


 父の説明を聞いた子供達はモニター越しのゴジを見て目を煌めかせる。


「じゃあ、あの兄ちゃん達は━━━だね!!」


 ◇


 魚人島のあまりの騒ぎにケイミーが目を覚ました。


「ん……んんー。あれ?ここはギャルコルド広場?」

「ケイミー!よかった。目を覚ましたのかい?」


 タイヨウの海賊団によって魚人島まで運ばれたケイミーはずっとシャーリーの膝の上で横になって眠っていたが、ようやく目を覚ました。


「マダム?そういえば……私…突然意識を失って……」


 ケイミーを拿捕したゼオは魚人街の貴族を自称する男である。

 女性であり子供でもある人魚、ケイミーに怪我等させぬように姿を隠して近づき、睡眠薬を嗅がせてそのまま拉致したので、彼女は自分が捕まっていた事すら知らないのだ。


「ふふっ……働きすぎかもしれないね。今日はゆっくりとおやすみよ。」


 シャーリーもその事に気づいて、改めて怖い思いをさせぬように攫われていた事実を伏せて彼女の頭を優しく撫でていた。


「「「黒麒麟!!黒麒麟!!」」」

「でも、凄い騒ぎね……皆楽しそうにゴジちんの名前を呼んでるわ。なんかお祭りみたい。」


 ケイミーはまだ睡眠薬が抜けきっていないのかダルそうにシャーリーに体を預けるが、老若男女問わずゴジの名を叫んで浮かれる島の人達を見て笑顔になる。


「あぁ……実はね。さっきフカボシ王子から連絡があって私の占い通りに世界会議(レヴェリー)で地上移設が決定したから、見てのとおりのお祭り騒ぎだよ!!」

「マダム、ゴジちんは凄い人だったでしょ♪」


 ケイミーはゴジが魚人島に来る前から彼のファンの一人でよくゴジの話をシャーリーにもしていた。


「ケイミーの言う通りだったよ。いやそれ以上だった。麒麟のボーヤは魚人族の抱く人間への恐怖という闇を、瞬く間に希望という名の太陽で明るく照らしてしまった。」


 シャーリーは地上での暮らしに向けて希望で胸を膨らませる魚人島に住む人々の顔を見て笑顔になると、ケイミーはそんなシャーリーの顔を見ながら笑顔を浮かべる。


「当然だよ。ゴジちんは━━━だもん!」


 シャーリーはケイミーが目覚めた事に安堵して改めて正面を向き、モニターに映るゴジの姿を見た瞬間、その双眸から涙が溢れ出した。

 ケイミーの介抱をしていてその耳でゴジの声は届いていたが、モニターはしっかりと見ていなかったのだ。


「あぁ…そうだよ。あたしが視たのは.......これだよ!」


 シャーリーはモニターから目を離すことが出来ずに信じられないモノを見るような顔でモニターを見つめながら、両手で自分の口を覆うが、未だにその双眸からは未だにとめどなく涙が溢れていた。


「マダム?」


 シャーリーは自分の占いが世界会議(レヴェリー)による地上移設を間接的に後押しした事を差しているのでは無いことにハッキリと気付いた。

 何故ならモニターに映るゴジの姿こそ、シャーリーがゴジを占って水晶で見た光景そのものだった。


「私の占いは世界会議(レヴェリー)の結果じゃない。この光景を映していたんだ…私たちの心を“太陽の下”へ導く━━(正義のヒーロー)の姿を…」


 この日、リュウグウ王国に住む全ての人の心に希望を灯した“正義のヒーロー”の姿が刻まれ、魚人族は“太陽の下”での暮らしに胸を膨らませていた。 
 

 
後書き
次回更新は17日。

次で魚人島編はラストです。あの二人が戦うことになります。 
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