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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百二十話

 ホーディは人質を取り、海の中という絶対的優位な状況でペラペラと話していたが、ゴジの質問に興味が出たようで口を閉じてゴジを睨みつけて続きを促す。


「あ”…?何が言いたい?」

「俺はジンベエからオトヒメ王妃の死を聞いてすぐに疑問に思った。」

「疑問だと?」

「人間の海賊にとってここはあくまで新世界へ行く通過点。リュウグウ王国の王族を殺すメリットはなく、不自然この上ない。気になった俺はリュウボシ王子とマンボシ王子からオトヒメ王妃が残した最期の言葉を聞いたんだ。」


 ゴジはデッケンを捕らえるためにリュウボシ王子達にしらほしが生活している硬殻塔の案内を頼み、その道中に二人からオトヒメ最期の言葉を聞いていた。


「ほぉ…それは興味深いあの女は死ぬ間際になんて言ってた?」

「彼女は愛する我が子にこう言い残した。『犯人がどこの誰であれ、私のために怒らないでください。私の為に怒りや憎しみに取り込まれないで。』とな。王子達は母の遺言を一字一句覚えていたよ。」

「甘い女だ。自分を殺した人間を怒るななんてな。ジャハハハハ!!」


 ホーディは高笑いするが、ゴジはオトヒメの最期の願いを聞き届けられない事を申し訳なく思う。


「この言葉を聞いて俺の疑問は確信に変わったよ。分からないか?もしオトヒメ王妃が人間に殺されたなら、彼女は『人間を恨まないでください。』と言い残すのが正しい。」

「考えすぎだ。オトヒメ王妃は不意打ち狙撃されて殺されたから、犯人なんて見えなかったんだろう。」

「それはない。お前は知らないだろうが、オトヒメ王妃には攻撃を察知する力がある。そんな彼女が署名箱の火災に動転して警戒を怠ったため、狙撃されたとしても凶弾がその身を貫く刹那、自分を狙撃した相手を見ていないとおかしい。」


 見聞色の覇気の達人であるゴジだからこそ、恐らく自分以上の見聞色の覇気の達人であったはずのオトヒメが自分を狙撃した相手を見ていないはずはないと断言出来る。


「何が言いたい?」

「では、オトヒメ王妃は何故回りくどい言い方をしたのか?それは彼女は自分を殺した犯人を探すことを望まなかったからだ。そう…彼女を暗殺したのが彼女が愛してやまないリュウグウ王国の国民だったからだよ。」


 ゴジはジンベエから話を聞いた時にリュウグウ王国の地上移設に関する署名活動が過半数目前となったまさにその時、オトヒメを暗殺したのは人間の海賊ではなく、リュウグウ王国の地上移設に反対する魚人族による反抗である可能性が高いという推理に辿り着いていた。


「ほぉ…。」


 ホーディは薄ら笑いながら、続くゴジの言葉を待っている。


「ではここで矛盾が生じる。国民に暗殺されたはずのオトヒメ王妃が崩御した直後、人間がオトヒメ王妃を殺したと叫んだ兵士がいたようだ。そんな事をするのは罪を人間に擦り付けようとする真犯人しかいない。なぁ…元リュウグウ王国軍兵士ホーディ・ジョーンズ。お前こそがオトヒメ王妃を殺した真犯人だ。」


 ゴジは地上移設が決まった直後にその立役者とされる自分を呼び出すホーディからの手紙を読み、ここへ来る直前にジンベエにオトヒメ王妃を殺した人間を見つけた兵士の名をホーディだと言い当てたのだ。

 ゴジは名探偵よろしくホーディに人差し指を突き付けると、ホーディは高笑いする。


「ジャハハハハ!なるほど…頭がお花畑のこの国の連中にはバレなかったのに流石は優秀な海兵様だ。そうだ。リュウグウ王国の王妃、オトヒメを殺したのはこの俺だよ!!」

「動機はリュウグウ王国の誰もが愛してやまないオトヒメ王妃を人間が殺したことにすることで、魚人族の心の奥に押し殺した人間への復讐心を呼び起こしてリュウグウ王国の地上移設を白紙に戻す為だな?」

「ジャハハハハハ!!正解だ!!邪魔だったんだよ。あの女が…人間への復讐を悪とし、人間と仲良くしようと島中に触れ回り、それを実現しかけたあの女が目障りで殺しても飽きたりねぇ存在だった。今頃魚人島は慌てているだろう?本当はもう少し準備整えてから魚人島を制圧してネプチューン達を公開処刑するまさにその瞬間に真実を話すつもりだったんだがな。お前のせいで計画の前倒しを余儀なくされた。」

「俺は当初この事実は亡きオトヒメ王妃の意を汲んで俺の胸に留めておくつもりだったが、オトヒメ王妃の死を乗り越えて前に進もうとするリュウグウ王国を妨害しようとするなら今を生きるこの国の人達の為にお前達を止めなければならない。他ならぬオトヒメ王妃のために!!」


 言うまでもなく、この会話も映像電伝虫でギョンコルド広場に放映されている。

 ゴジは真犯人探しはオトヒメの遺言から望まないことと分かっていたから一度は口を噤んだが、今、リュウグウ王国の敵となったホーディを前にして、ゴジはオトヒメの願いを無視して彼女を殺した真犯人を白日の元に晒す事にした。

 二人の会話をギョンコルド広場で見聞きしていた魚人島の人々は膝を付いて泣き崩れた。


「「「ゔゔぅぅぅぅ…。」」」

「なんじゃと…」

「そんな…じゃぁ。あの時の人間は…」

「ホーディ・ジョーンズがオトヒメ王妃を…ゔゔぅぅぅぅ」


 ホーディは話を聞いただけで違和感に気づいて、真実を見抜いたゴジの頭の回転の速さを素直に認め、ホーディの悲願である人間全てを屈服させて海の支配者となる上で一番の障害となりうるゴジの死刑執行の指示を出す。


「“黒麒麟”ゴジ。分不相応にも神獣の名を冠する下等種族の英雄にしてこの島の太陽。俺の計画の障害となるてめぇだけはやはり生かしておけねぇ!お前達殺れぇぇ!この人間を殺せぇぇぇぇ!!」


 死刑執行の合図と共に頭を上げた魚人島の人々が見た光景はホーディの指示を受けてE.S(エネルギー・ステロイド)により強化された新魚人海賊団の幹部達が各々武器を構えて一斉にゴジに迫っていく姿と、ケイミーを人質に取られて無抵抗に立ち尽くすゴジの姿である。


「「「「「死ねぇぇぇぇ!!」」」」」


 船長ホーディの号令を受けて、この場を集ったE.S(エネルギー・ステロイド)により強化された新魚人海賊団の幹部達による必殺の一撃が繰り出された!!


「キャッキャッ!!腸ぶちまけろぉぉぉ“ダルマカッター”!!」


 ダルマが高速で真っ直ぐ突進して岩をも噛み砕く自慢の顎でゴジの右脇腹に噛み付いた。


「潰れろズガァァァン!!“Tショット”!!!」


 ドスンの地面を砕く鋼鉄のハンマーがゴジの頭に振り下ろされた。


「ウィー…なんでもいいから斬らせろぉぉぉぉ“千鳥足ハッシュ”!!」


 魚人島一の剣士と呼ばれるヒョウゾウの神速の剣がゴジの首に振るわれた。


「スルメになれぇぇぇ“スルメイカの槍”!!」


 イカロス・ムッヒは手に持ったスルメイカの槍をゴジの腹に突き刺す。


「ジャハハハハハ!!見たか!?これが現実だ。“黒麒麟”なんて大層な二つ名を持ってようが、人間ってのは地上じゃでけぇツラしていても海の中じゃ、魚人族のガキの相手にもなりゃしねぇのさ。」


 ゼオが撮影するギョンコルド広場には無惨にも幹部達による必殺の一撃を一身に受ける無抵抗のゴジの姿とホーディの狂声が映し出される。

 ゴジの首を覆うシャボンに壊れ、ゴジの立つ海底の足元は放射線上にびび割れており、技の衝撃を物語っている。


「そんな……麒麟のボーヤが……」

「“黒麒麟”が人魚を庇って殺されたぁぁぁ……!!」


 ギョルコルド広場に設置されたモニターから魚人島の人々はデッケンを捕らえてしらほしを救い、魚人族を地上へ導くはずの英雄の最期に魚人族は涙して肩を落とす。


「そんなイスカさん!?ゴジ君が殺され……へっ?」


 映像を見ていたナミが唖然となってイスカを見ると、ゴジをよく知るボニーとイスカは呆れた顔でモニターを見ていることに動揺する。


「はぁ……あんな武器や歯如きでゴジをどうにか出来ると思ってんのかね…。」

「もしゴジ君にかすり傷でも付けれる可能性があるなら、彼の背中にある『秋水』くらい使わないと意味ないわ。」

「えっ……!?」

「「「えええぇぇぇぇぇぇ!!?」」」


 モニターに映したされた光景を見たギョンコルド広場に集う人々は信じられない光景に騒然となる。

 ゴジに噛み付いたダルマの歯は粉々に砕けた。

 ゴジの頭に振り下ろされたドスンのハンマーはヘッド部分が凹み、持ち手が手元から折れた。

 ゴジの首に振るわれたヒョウゾウの刀は刃がボロボロになって根元から折れた。

 ゴジの腹に突きさるはずのイカロスのスルメイカの槍は穂先に付いたスルメイカが根元からグキャリと曲がっていた。


「「「「なんだってぇぇぇ!?」」」」


 ゴジはバブリーサンゴを握ると、ドスンの攻撃で割れてしまったシャボンの代わりに新たなシャボンを作り出して自分の首から上を覆う。


「ふぅ…息が出来ないから割れたシャボンくらいつけ直してもいいだろう?」


 呑気なゴジの声が響き渡る。

 いくらE.S(エネルギー・ステロイド)で強化しようとも常時外骨格と武装色の覇気で守られたゴジは全くの無傷で彼に振るわれた武器達の方が負けてしまった。


「こうなったら、このガキを殺……ぐぎゃああああ!!?」

「「「船長!?」」」


 ホーディはE.S(エネルギー・ステロイド)を使用した幹部たちによる必殺の攻撃に対して無傷なゴジに逆ギレして、ケイミーの首を握り潰そうとした瞬間、右腕に走る激痛に気付くと、ケイミーを掴んでいたはずの右腕の肩から先がなくなっていた。


「“黒刀・疾風(はやて)”!!ホーディ、言ったはずだ。ケイミーちゃんを傷つけるならその腕を斬り飛ばすとな。」


 見聞色の覇気でケイミーの首が握り潰される未来を視たゴジは刹那の瞬間、海底を蹴って“剃”で距離を詰めながら背中にある『秋水』を抜き放つと同時に振り下ろし、ケイミーの首を鷲掴みにするホーディの右腕を斬り飛ばしてケイミーを救出して走り抜けた。


「“黒麒麟”!?なんで…なんでお前がそんな所にいる!?何故人間が水中で俺達よりも速く動けるんだぁぁ!!?」


 右腕を失ったホーディは傷口を左手で押さえながら、慌てて後ろを振り返り、ケイミーを腕に抱いたゴジを睨み付ける。


「「「バカな…!?」」」


 ホーディはもちろん新魚人海賊団の幹部たちですら、ゴジを捉えられた者は誰もおらず、ただ驚きを持って答えたが、彼等はさらに驚く事になる。


「魚人柔術 水心……送り波!」


 ゴジは水心を掴むと、ホーディから開放されたケイミーの背中を押して、魚人島へ向けて伸びる優しい海流を作り出して魚人島に向けて送り出した。


「「「なっ…!?」」」

「何故…人間のお前が魚人柔術を使えるんだぁぁ!!?」


 未だに唖然とする新魚人海賊団の幹部たちに魚人空手、魚人島柔術を得意とするホーディの悲鳴のような叫び声が響き渡る。

 人間であるゴジが魚人しか扱えぬはずの魚人柔術を使ったことに新魚人海賊団はそのあまりの衝撃にただ目を見開いて魚人島へ向けて上昇するケイミーを見送るしか出来なかった。


「魚人柔術が魚人しか使えないと言ったんだ?そんな借り物の力で勝てるほど俺は甘くない。 」


 ゴジは刀を背中に背負った鞘に納めた後、右手の人差し指のみを伸ばしてホーディ達に見せる。


「なんの真似だ?」

「お前たち6人まとめてこれで充分。さらに俺はお前達の有利なここ(海中)で戦ってやるよ。さぁ、どうする?新魚人海賊団は俺の挑戦を受けるか?それとも海中での戦いに自信がないなら一か八かここから逃げ出してみるか?」


 ホーディのイラついた問いかけに対して、ゴジは嫌味な笑みを浮かべながら、右手の人差し指をクイクイっとホーディ達を挑発した。

 海中での生活を手に入れた人間の進化系を自称する彼等に取って海中での戦闘に逃げるという選択肢はなく、小馬鹿にした態度を取るゴジに対抗する手段としてホーディ達の取った手段はシンプルだった。


「「「舐めるなぁぁぁ!!?ガリガリ…」」」


 一粒食べれば力が二倍となる薬を食べれるだけ食べて、更なる力を手に入れればいい。

 ゴジの挑発に新魚人海賊団の幹部たちはブチ切れて手持ちのE.S(エネルギー・ステロイド)をまとめて口に放り込んでガリガリと食べ始めた。


「そう…それでいい。好きなだけ力を付けるといい。俺はそれを完膚なきまでに打ち砕いてお前達をこの国の未来への糧とする。」


 ゴジはホーディ達が食べるのをじっと待ちがながら、誰にも聞こえないように呟きほくそ笑む。ゴジは彼等に逃走という選択肢を取らせない為にハンデ(海中)戦にさらにハンデ(指一本)を背負って挑発したのだ。


 ───オトヒメ王妃。貴女の願いには反するだろうが、俺のやり方で貴女の想いは叶えるよ。



 オトヒメの願いには反してリュウグウ王国は彼女を殺したホーディを憎むだろうが、ゴジはそれでいいと思った。

 リュウグウ王国に巣食う悪であるホーディを人間(ゴジ)が打ち倒す事で、リュウグウ王国の持つ人間への恐怖を希望へ塗り替え、オトヒメが真に夢見た魚人族の明るい未来へ繋がると信じて己の覇気を高めていく。 
 

 
後書き
次回更新は13日です。

次回はゴジ君の舐めプ無双回です。 
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