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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ 完結

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11-⑶

 連休も終わって、最初のお店が休みの日。蒼がお父さんに挨拶をしたいと言うので、私達のアパートに来ることになっていた。お昼ごはんも一緒に食べると言っていたので、私は、朝からハムカツと玉子サンドとグラタンの準備に追われていた。多分、ふたりして飲むことになるから、そんなものが良いかなって思ったのだ。あとは、塩辛にとびっこを和えた。

 迎えに行くと言ったんだけど、直接来ると言って居た。だけど、スーツじゃあ無い方がいいよねと言ったから、トレーナー姿で来てくれた。お父さんも朝から落ち着かなくて、散歩に出かけて、帰りに焼きとりを買って帰ってきていた。

「いらっしゃい 今日 休み取ってくれてありがとうね」

「良いんだよ 有給たまっているからね 美鈴こそ、ゆっくり寝ていたいんだろうに、すまない」

「どうしてー 私 いつも 5時に起きているよ お父さんなんか4時よ」

「蒼君 まぁ あがってくれよ 狭い所で悪いがな」と、お父さんが声を掛けてた。

 部屋は、1DKの間取りで、確かに狭かった。部屋に入ると、直ぐにキッチンダイニングでその隣に6帖の和室があるだけだった。美鈴とお父さんとは、いまだに一緒の部屋で寝ているみたいなのだ。そのことは、以前にも、聞いたことがあったが、贅沢出来ないと言っていたのを思い出した。ふたりっきりになってからは、ずーとそうだと言っていたのを聞いたことがあったのだ。

 そのダイニングに案内されたのだか、テーブルの上には、サンドイッチとサラダが並んでいた。

「中道さん 僕は 今日 美鈴と結婚したいので そのお許しをもらいにきました」と、直ぐに切り出した。

「そうか わかっている 美鈴から聞いた 小さい頃から、美鈴から君のことは聞いていたし、この子は 蒼君のお嫁さんになるって言っていたこともあった 良かったよ」

「お父さん 私 そんなこと言ったことないよー」と、美鈴は・・

「この子は、親の私から言うのもなんだが、とっても気持ちの優しい子だ そんな子が好きになった人だから間違いないと思う 親にとっても、こんなにうれしいことは無い 私は親らしいこと何にもしてやれていないんだ どうか 娘をよろしく頼む 君が幸せにしてやってくれ」と、お父さんは、頭を下げてきた。

「お父さん そんなー 私 今でも、幸せだから・・」と、美鈴はもう涙を拭いている様子だった。

「しっかり受け止めて 美鈴さんを幸せにしますから」と、僕も返した。

「頼むぞー 飲めるんだろう? 今日は、祝杯だなぁー」と、もう、お父さんは、グラスを差し出してきていた。

「美鈴 さっきの焼きとり、少しあぶって出してくれ さっき買ってきたところなんだよ うまいんだよー ところで、式はいつするんだ?」と、聞いてきたので

「はぁ 今、建てている 新居 出来るのが 夏頃になるので、その後にと思っています」

「お父さん あんまり、飲みすぎたら嫌よー 蒼も・・」と、美鈴は焼きとりをあぶりながら言っていた。

「ばかやろう 美鈴を守ってくれる人が出来たんだ こんなめでたい事があるかー ワシはもう、いつ、くたばっても良いんだ」

「お父さん もう 酔っているのー まだ、元気でやることあるんだからね」

「そうだね 昔みたいに ナカミチを地域の一番店にしなきゃぁな そーいえば、蒼君の家族も揃って、よく食べに来てくれていたよなー」

「お父さん なんかー 何か、思い出したのー」と、美鈴が料理箸を持ったまま、レンヂの前から寄ってきた。

「うーん 前も、ナカミチがみんなから慕われていたんだよ 今、みたいにな でも、もっと客席は多かったような気がする なんだろうな 妄想なんだろうか」

「ちがう! 妄想なんかじゃぁ無いわ 現実よ お父さんは、私が小さい頃から、お店で頑張っていてくれていたわ 思いだして」と、美鈴はお父さんに抱き着きながら言っていた。

「そうなんか やっぱりか 時々 ふっーと 別の調理場の光景が出て来るんだ」

「そうよ 松永さんなんかも居たでしょ」

「そーいえば 松永さんか うん 居た どうしてだ?」

「だって お父さんと働いていたのよ あそこのお店じゃぁ無くて 昔のナカミチで」

「そうなんか 確かに松永が居たなぁー」

「うん ゆっくり思いだして 蒼 ごめんね ほったらかしにして」

「いいとも 回復にむかってきて良かったじゃぁ無いか」

「うん 蒼が来てくれたお陰かも」と、美鈴と話していたら、お父さんは隣の部屋に移って、真ん中に置いてある小さな座敷机に移って

「蒼君 こっちで飲まないか どうも、そっちは落ち着かなくてな ワシはあぐらの方が性に合っているんだ」と、自分のコップを持っていった。

「そうですか じゃぁ 僕も」と、移った。部屋の隅の棚には、切れたミサンガと貝殻がおいてあった。貝殻は以前に行った砂浜で美鈴が拾っていたものだろう。そういうことを大切にしている美鈴に僕は、魅かれたんだ。そうしたら、お父さんは

「海岸でな 小さい女の子と遊んでいる光景も、時々、浮かぶんだ だけど、どうも美鈴では無い気がするんだよ 美鈴の時は、側にもう一人女の子がいて、芝生に座って何かで遊んでいるんだ 一人は、美鈴なんだけど、もう一人は解らないんだよ でも、仲良く遊んでいた 誰なんだろう」と、しみじみしゃべり出したのだ。

 美鈴はその時、僕の顔を見つめてきた。どうしょうかと言って居るようだったので、僕は・・うなずいて返事をしたつもりだった。

「お父さん あのね 聞いてよ 前も話したけど その子 私の妹なの 清音よ 実は、今は、最近になってなんだけど、近くに住んでいるわ」

「そうか 元気なのか」

「元気に働いているって聞いたわ」

「会ったのか?」

「ううん 事情があってね」

「そうか き・よ・ね なぁー」

 






 
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