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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十四話

 厳重な硬殻塔は外の喧騒さえも一切に中に通さない堅牢な部屋である。

 硬殻塔の扉が開け放たれた時、ギョンコルド広場のリュウグウ王国国民が久しぶりに見たしらほし姫の姿は……


「どうれすか……メガロ?わらひの勝ちれしょう……えへへっ♪」

「シャシャシャ……シャ?」


 自分の愛くるしい顔を両手の指で必死で引っ張って伸ばして変な顔を作りながら、その顔を見て爆笑する彼女の愛鮫メガロと楽しそうに、にらめっこをしている姿だった。

 メガロとは体長10メートルを超える巨体を持つメガマウスと呼ばれる鮫で、かつてはリュウグウ王国軍のペットだったが、しらほしと意気投合して彼女専属の護衛兼ペットとなった。


「しらほし姫様、お元気そうで良かった。」

「相変わらずメガロとは大の仲良しのようね。」

「これからはお外で遊べる機会も増えるだろう。この目で会える日が楽しみだ。」


 しらほしは12歳にしてすでに7メートルを超える身長があるも、歳相応の少女らしい愛くるしさにモニター越しにしらほしを見るリュウグウ王国の国民は癒された。
 

「「しらほしぃぃ!!」」

「えっ!?リュウボシお兄さま、マンボシお兄さま?それに皆様もどうしたのですか?わたくし、とても恥ずかしい所を見られてしまいました。それよりも大変です。扉が開いておられます!!」


 しらほしが変顔を見られたと顔を赤らめた直後に扉の開放に気づいて顔を青ざめ、自分の体をキツく抱き締めて怯え始めると、リュウボシとマンボシは泣きながら、最愛の妹であるしらほしの元へ飛んでいく。


「しらほし、大丈夫だ!あれを見ろ!!」

「あの方は人間様ですか?そのお手に持っていらっしゃるのは……まさかバンダー・デッケン様!?」


 しらほしはリュウホシ王子の指差す先にいたのは気を失っているバンダー・デッケンの襟首を掴んだまま自分に笑顔で手を振るゴジを見て目を丸くする。


「アッカマンボ〜アカマンボ〜フ〜リフリ♪あの人は海軍本部の“黒麒麟”と呼ばれるゴジ中将。あの人はおまえの話を聞いてすぐにバンダー・デッケンを捕まえてくれたんだ〜よ♪」

「黒麒麟殿のおかげで、もう安心ソファミレド♪」

「お初にお目にかかります、しらほし姫、海兵のゴジです。バンダー・デッケンはこの通り拿捕し、貴女の危機は去りました。ご安心ください。」


 ゴジは柔和な笑みでしらほしに笑いかけながら、気を失っているバンダー・デッケンをリュウグウ王国の兵士達に引き渡した。

 バンダー・デッケンはリュウグウ王国が指名手配している犯罪者であり、海底一万メートルの出来事は地上には伝わらない。

 そのため世界政府はこの男の存在すら知らないので、その処遇はリュウグウ王国に委ねられるのだ。


「まぁ……ゴジ様ありがとうございます。デッケン様をお捕まえになるなんて、とてもお強いのですね。」


 6歳から硬殻塔での生活を余儀なくされていたしらほしはまさに箱入り娘、ゴジの勇名も聞いたことがない。


「えぇ。俺はこの海に住む全ての人を守る海兵ですから当然のことをしたまでです。」


 僅か17歳で海軍本部中将となったゴジは強いという、この海で住む者なら誰もが知る当たり前の事実すら知らないしらほしはデッケンを捕らえたゴジに心から感謝して頭を下げていると、兵士達により拘束されたバンダー・デッケンが目を覚ました。


「はっ!?俺は気を失っていたのか?おぉ……お前は愛しのしらほし!そうかあのキューピットが離れ離れに暮らす俺達を引き合わせてくれたのか……そのはずだ!!さぁ俺と結婚しろ!!」


 バンダー・デッケンは船とワダツミを一撃で倒したパーフェクトゴールドを探して周りを見渡すが、すぐに目の前にいるしらほしに気付き、キューピットと信じるゴジが自分達を引き合わせてくれたのだと決め付けて、しらほしにプロポーズをする。

 体にきつく巻かれたロープが気にならない程、目の前にいるしらほしに夢中であった。


「おのれ!!バンダー・デッケン、貴様何を言っている!?」

「貴様は既に捕らえられている。大人しくしろ!」

「ぐべっ……!?」


 デッケンは兵士達に押さえ付けられてとうとう自分の置かれた状況を悟るが、しらほしさえ妻になればこの状況を打倒できると信じてしらほしに訴える。

 しらほしは生まれながらに世界中にいる全ての海王類を統べる王である古代兵器“ポセイドン”としての宿命を背負う人魚であり、デッケンがしらほしにご執心な理由は初代バンダー・デッケンはこの力を探し求めて魚人島に来たからである。


「しらほしぃぃ!あの力を使え!!俺とおまえの愛を邪魔するすべての者達を殺し、俺たちでこの世界を統べるのだ!バホホホホ!!」

「ごめんなさい。わたくしはデッケン様とは行けません。」


 デッケンはしらほしに“ポセイドン”の力を解放して海王類を呼んで国を滅ぼせと命じるが、しらほしはデッケンを見ながらハッキリと断りを入れた。


「何故だ!?」

「タイプじゃないんです!!」

「「「えぇぇ!?そういう問題!!?」」」


 食い下がるデッケンに対して何処かズレたしらほしの返事にリュウグウ王国中が、目が飛び出るほど驚く中で、しらほしの女の子らしい解答にゴジは笑いが堪えきれない。


「わっはっはっは!!タイプじゃねぇんなら仕方ねぇよな!!おい、おっさん諦めろ!!」

「俺を選ばねぇなら仕方ねぇ!」

「バンダー・デッケン、俺はお前が何をするか分かってるが、それは止めといた方がいいぞ?」


 ゴジは見聞色の覇気による未来視でデッケンがこれから何をしようとしているのか視えているので、彼に警告する。


「今更遅い。死ね!しらほしぃぃ!!」


 デッケンは後ろ手で縛られたまま兵士の隙を見て、彼の腰に帯びた剣に触れると、その剣はひとりでに空中に浮く。

 マトマトの実の能力の真骨頂は一度“的”と定めた者に攻撃するには投げる必要はなく、このように触れるだけでも“的”に命中するまで飛んでいくのだ。


「しらほしはおいら達が守る!!」

「俺達は何があってもしらほしを守り抜くと、母上様と約束したんだ!!」


 宙に浮く剣を見てリュウボシとマンボシが武器を構えてしらほしを守る為に彼女の前に立ち塞がる。

 彼らはフカボシ王子と合わせてリュウグウ王国軍の三強と呼ばれる精鋭であり、亡き母オトヒメとしらほしを守り抜くと約束したのだが、その決意は徒労に終わることとなる。


「「えっ!?」」


 この場にいるただ一人を除いて予想外の出来事が起こった。

 宙に浮いた剣はしらほしに向かうと思っていたのにその剣は真っ直ぐにデッケンの左手と右手を同時に刺し貫いて、デッケンが悲鳴をあげてのたうち回っている。


「ぐぎゃああああ!!なっ.....なんで俺の手に突き刺さるんだぁぁ!!」

「ほら、言わんこっちゃない。だから俺は止めとけって忠告したんだ。」


 ゴジは先程バンダー・デッケンの右手の標的を気絶している間にバンダー・デッケンの左手に上書きしていたので、剣は的である彼自身の左手を貫いたのだが、デッケンは後ろ手に縛られており、左手と重なってる右手も刺し貫かれてしまったのだ


「そうか!ゴジが気絶したデッケンの右手の手袋を外して左手を握らせておったのはこの為じゃったのか!?」


 ジンベエは不敵に笑うゴジを見ながら、この男と敵対しなくて心底良かったと胸を撫で下ろす。

 ジンベエの言葉に全員がデッケンからゴジに注目すると、ゴジは皆を安心させるように、にこやかに笑いかけた。


「しらほし姫、言ったでしょう?貴女の危機は去りましたとね♪」

「うふふっ…ゴジ様は頭も凄く良いのですね♪」


 言うまでもなく硬殻塔での出来事の全てはギョンコルド広場で生中継されている。


「「「(うお)おおぉぉぉぉぉ!!!」」」


 そのゴジと笑い合うしらほしの笑顔を見たリュウグウ王国の国民達は姫を狙う闇が全て晴れた事を知ったリュウグウ王国は大歓声に包まれた。


 ◇


 役目を終えたゴジはイスカ達の待つマーメイドカフェに戻っていた。


「話は聞いたわ。たった30分でここに戻ってきた事に驚いたけど、もう噂のバンダー・デッケンを捕まえたと国営放送で聞いた時はもっと驚いたわ。ゴジ君はほんとに凄いわね!」

「麒麟のボーヤ、さぁ沢山飲んどくれ♪」

「わっはっはっは!美女にお酌されて、ひと仕事終えてからの一杯は格別だな!料理も美味い。もぐもぐ……」


 ゴジは普段のクールな彼女には珍しく満面の笑みを浮かべるシャーリーにお酌されながら料理に舌鼓を打っていた。


「もぐもぐ.......でっぎりゴジは.......ごくん。今頃、人魚姫に鼻伸ばしてる.......ガツガツ.......ごろがど.......ごくん。思ったぜ。」

「こら!ピンクガール!食べながら話すんじゃないよ!!あんたは食べ方も汚いし、全く品のない子だね。麒麟のボーヤの部下じゃ無ければ叩き出してるところだよ!!シャアアア!!」

「おっ.......またワカメピザが来たぞ!!もぐもぐ.......」


 シャーリーは両手で料理を鷲掴みにして次々に口に放り込みながら、ゴジに話し掛けているボニーを強く叱責するが、まるで効果なく料理に夢中であった。

 ボニーはゴジが素直に王国の兵士に案内されて戻ってきた事に不信感を抱く。


「ボニーは相変わらずだな。しらほし姫なら、王子達と海の森に行くって言ってたぜ!ジンベエも護衛で姫様について行くってよ。」

「あ〜そうか。しらほし姫様ってそういえばまだ12歳なのよね?」

「もぐもぐ……そういやこのアホは……もぐもぐ、ごくん。ガキには欲情しねぇんだったな。」


 ボニーはアラバスタ王国でいつもビビに懐かれながらも、兄妹のように接していたゴジを思い出して納得する。


「子供は次代を担う宝だぞ。俺はシャーリーちゃんみたいな美女が大好きなんだ!」

「あらあら、嬉しいこと言ってくれるね♪さぁ麒麟ボーヤ、もっと飲みなよ。」


 スタイルの良い大人の女性がゴジのタイプであり、ゴジの中では“人魚姫”といえばシャーリーだったりするので、デッケンを捕らえて“楽園”マーメイドカフェに戻ってきたのだ。


「シャーリーさん、海の森って何?」

「オレンジガール、海の森ってのは色とりどりの珊瑚が生えた珊瑚の森でね。しらほし姫様の母君オトヒメ王妃が眠る墓があるのさ。しらほし姫様はオトヒメ王妃の葬儀にも出られなかったから会いに行ってるんだろうね。」


 シャーリーはナミの疑問について答えると、ゴジが肯定する。


「あぁ。母との久々の再会を邪魔する気にはならないから戻ってきたんだよ。」

「強いだけじゃなく、気の利く麒麟のボーヤは男前だねぇ。」

「ゴジ様、この海ぶどう美味しいのよ。食べて♪はいあーん♪」


 マーメイドカフェはカフェというよりはキャバクラに近い接客システムであり、ゴジは右にシャーリーを侍らせ、左には魚人島のトップアイドルグループと呼ばれるマーメイドカフェダンサーズの一人黒髪を二つ結びにしたイシダイの人魚、イシリーを侍らせて座っており、シャーリーからお酌されながらイシリーから海ぶどうを食べさせてもらっている状態である。


「バンダー・デッケンを捕らえた時のゴジ様は凄くカッコ良いわ♪」

「おとぎ話に出てくるナイト様のようだったわ♪」

「颯爽と現れてお姫様を救うナイト様♪」

「私もゴジ様の横に座りたいの!イシリー、早く場所変わりなさいよ!!」


 上から順番に水色の長い髪にハイビスカスのような髪留めを付けたキスの人魚メロ。金色の長いウェーブの髪に横長の顔が特徴のカレイの人魚カイレン。ピンクの長い髪をツインテールにしているヒラメの人魚ヒラメラ。茶色の長い髪をポニーテールにして頭に付けた白いヘッドホンが特徴のキンチャクダイの人魚セイラがゴジを取り囲んで褒め讃える。

 彼女達4人とイシリーを合わせた5人が魚人島のトップアイドル集団、マーメイドカフェダンサーズである。


「早い者勝ちよ!」

「こんな美女人魚達が俺を取り合うなんて…やっぱりここは俺の楽園だった♪」


 ゴジは魚人島一の美女達が自分を取り合う姿にうっとりして喜びを噛み締めている。


「「はぁ……。」」

「あははっ……」


 人魚達にチヤホヤされて嬉しそうなゴジを見て、肩を落とすナミとボニーを見て苦笑いを浮かべているイスカにシャーリーが話し掛けた。


「イスカ少佐、兄を止めてくれてありがとうね。オレンジガールにはすごく迷惑掛けたみたいで本当にごめんよ。許しておくれ。」

「兄っ?」

「アーロンは私の腹違いの兄なのさ。」

「「「えぇぇーーっ!?」」」


 シャーリーの話にアーロンを知らないボニー以外の全員が目が飛び出るほどに驚いている。

 アーロンは早々に親から捨てられており、“魚人街”と呼ばれるスラム街でジンベエらと暮らしていたのだが、ある日突然「アーロンの父」を名乗る魚人が連れてきたのが幼いアオザメの人魚であるシャーリーだった。シャーリーはアーロンと共に魚人街で育つのだが、兄であるアーロンと違い、人間には敵意を持っていない。

 それどころか美しい人魚に強い憧れを持つ人間の男をターゲットにしたマーメイドカフェを経営して成功を収めている強かな女性である。

 魚人や人魚は基本的に親の遺伝子をメンデルの法則通りに受け継ぐことはなく、先祖の遺伝子のうちどれか一つをランダムに表層に出して生まれてくる。そのため、イカの魚人からサメの人魚とヒラメの魚人の兄弟が生まれることも珍しくないので、魚人族は種族による見た目の違いをあまり気にすることは無く、見た目で差別する人間の思考が理解出来ない。


「シャーリーさん、ジンベエさんにしっかり謝ってもらったからもういいの。それにしてもお店の中は本当に綺麗に所ね♪」

「もぐもぐ.......肉がねぇのはガッカリだけど、ワカメピザは食い放題だから良しとするか.......もぐもぐ.......」


 マーメイドカフェの店内は一面の壁が人魚の入江と繋がる巨大な水槽となっており、店の中にオブジェのように海流が渦巻き、その中にも色とりどりの魚が泳ぎ回っている。

 人魚は肉を食べないので、マーメイドカフェはワカメや貝を使った料理しか出ないが、ボニーはワカメピザを気に入ったようで何度も注文して満足そうに食べまくっていた。
 

「デヘヘへ…シャーリーちゃんはやっぱりものすっごい美人だし、イシリーちゃん、カイレンちゃん、ヒラメラちゃん、セイラちゃん、メロちゃん達マーメイドカフェダンサーズの皆は本当に凄く可愛いなぁ♪」
 
「「「「「きゃああ♪♪」」」」」


 ゴジは満更でもない様子のシャーリーとマーメイドカフェダンサーズの五人に対して、ベタベタと抱き着いたりしている。


「ナミちゃん、ボニーとゴジ君にこの景色の感想を期待しても無駄よ。」

「えぇ……イスカさん、私何となく分かってたわ.......はぁ……」

 
 ナミは料理に夢中のボニーと人魚に夢中のゴジを見て深い溜息を吐き、イスカがナミを慰めていた。


「ねぇ?麒麟のボーヤ、最後に少し占ってみてもいいかい?」


 シャーリーが自分の膝に頭を乗せて寝転ぶゴジの顔の上に一つの水晶玉を掲げた。


「シャーリーちゃんは占いが出来るのか?もちろんいいよ。楽しみだな!」

「マダムの占いは的中率100パーセントなのよ。」

「ゴジ様、期待しててねぇ♪」


シャーリーの膝に寝転ぶゴジに抱き着いているマーメイドカフェダンサーズ達の後押しを受けてシャーリーが水晶玉を覗く。


「ふふっ.......じゃ、ちょっと待ってね。えっ!?まさか……そ…そんな事って……うぅぅぅ…。」

「シャーリーちゃん!?」


 シャーリーはゴジを占って水晶を覗いた直後、両手で顔を押さえて俯いて泣き出してしまった。


「「「「「マダム!?」」」」」

「マダムが取り乱すなんて…よほど酷い未来でも視えたのかしら…」


 ゴジだけでなく、マーメイドカフェの人魚達がいつも気丈な凛としたマダム・シャーリーが感情を顕にする姿に唖然となった。 
 

 
後書き
次回更新は2日です。

シャーリーの占いの真相とは? 
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