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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十六話

 別室に移動したジャッジは嬉しそうにコブラ、ビビとネプチューン、フカボシと楽しそうに話す妻の顔を見ながら嘆息する。

 既にこの場は世界会議(レヴェリー)の場ではないので、イチジ、ビビ、フカボシといったそれぞれの王子、王女たちも同席している。


「他国の王の圧力に怯まず立ち上がったコブラ王。くだらん茶番を静観した甲斐はあった。さすがにゴジが認めるだけはあるな。」

「何よりも母上のおかげでジェルマの最優先事項であるリュウグウ王国との同盟が無事に締結出来そうでよかったですね。」


 イチジが耳元で嬉しそうに話すのを聞いて、ジャッジは嬉しそうに頷いた。

 各国がジェルマ王国と国交を結ぼうと狙っていたように、ジャッジは今回の世界会議(レヴェリー)においてリュウグウ王国との同盟を狙っており、元々あの場でネプチューン王を助けるつもりだったが、同時にあの場面でネプチューン王を擁護する者が現れることも期待して静観し、コブラは見事にジャッジの期待に応えた。


「まぁ、ソラが立ち上がった時は流石に驚いたがな。」


 イチジは感情を失っていた頃の事もよく覚えている。

 いじめを咎められて母に怒られるのは嫌だから、母に見られない場所で無抵抗なサンジを苛めていた。


「まぁ、母上なら放ってはおかないでしょう。それよりも父上、何故リュウグウ王国との同盟を最優先事項としたのですか?」


 イチジはいじめを良しとしないソラの性格ならば当然だろうと薄く笑った後、ジャッジにリュウグウ王国との同盟を最優先事項としていた理由を尋ねた。

 ジャッジはリュウグウ王国の為に領土まで用意し、衣食住の面倒を見ると言ったが、数百万人の魚人族の支援にどれ程の金が必要になるか分かったものではない。

 そして感情的なソラと違って、王の条理を掲げて民の暮らしを重んじるジャッジが魚人族が可哀想という感情で動いたとは考えられないのだ。


「イチジ、この海の8割は海だ。交易、航海、漁業何をするにも海は不可欠。その海を真に制するのは誰だ?」

「海を知り、海と共に生きる魚人族。確かに彼らの力は我が国の更なる発展に欠かせないものになる。流石は父上!?」


 イチジはようやく魚人族と手を取り合う事の有効性を認識し、ジャッジは興奮するイチジを横目に昔話を思い出す。


「まぁ……それだけでは無いがな…。」


 ジャッジは今回の世界会議(レヴェリー)に参加するにあたり、当時5歳のゴジとの交わした何気ない日常の会話内容を思い出していた。


『父さん、なんで鉱山は陸地しかないの?』

『ゴジ、鉱山なのだから山にあるのが当たり前だろう?』

『ん〜でもね。この世界の8割は海だよ。きっと海にはもっと沢山あると思うんだ。』

『なるほど……一理ある。これまで考えた事もなかったが、海中での作業が可能な装置の開発を急ぐか。』

『あぁ〜あ。人魚達と友達になれたら簡単なのになぁ〜』

『魚人族か……』


 ジャッジはこの時、誰も考えつかない事を考えつくゴジならば劇薬の副作用で苦しむソラを助けられるかもしれないと考えてたった5歳のゴジに血統因子の全てを教え、莫大な資金を使って研究所まで作り、研究を全面的に支援した結果、ゴジは見事に期待に応えてソラを完治させてみせた。

 そんなことをジャッジが思い返している時、ソラがコブラに軽く頭を下げていた。


「コブラ王、会議では私がでしゃばっちゃってごめんなさい。」

「いや、私ではあのバカ騒ぎは止められないだけでなく更に騒ぎを大きくしてしまった。しかし、ソラ王妃はたった一声であの騒ぎを沈めてしまった。まるでアラバスタ王国の民衆を一声で鎮めたゴジ君のようだった。」


 コブラ王はソラをアラバスタ王国来訪の折、一声で興奮する民衆を鎮めたゴジに喩えると、ソラは一段と嬉しそうにする。


「まぁ♪コブラ王、それは何よりも嬉しい喩えです。」


 ソラは自分がゴジに似ていると言われて両手を合わせて満面の笑顔を浮かべる。


「コブラ王、会議では皆に笑い者にされていた父上を助けて頂き、ありがとうございます。」

「わしからも改めて礼を言うんじゃもん。ありがとう。」


 フカボシとネプチューン王は改めてコブラに頭を下げるとコブラがタジタジになる。


「ネプチューン王、フカボシ王子も頭を上げてほしい。私は同じ人同士当然のことをしたまでだ。」

「同じ人同士…その言葉が我々には何よりも嬉しいのです。」


 4年前まではタイヨウの海賊団が活躍していたので、ネプチューン王は世界会議(レヴェリー)への参加を認められなかった。

 ネプチューン王やフカボシ王子は今回の世界会議(レヴェリー)で人間の魚人族に対する差別意識を改めて痛感したが、そんな中でコブラが魚人も人と呼んでくれた事にフカボシは感極まって涙する。

 何よりもオトヒメの言葉通り、ソラやコブラのような優しい人間も確かにいると分かって嬉しかった。


「そういえばコブラ王の話していたゴジとは海軍本部中将の“黒麒麟”のことならば、王下七武海のジンベエと話があると言って今魚人島に来てるはずじゃもん。」

「ゴジ君がお仕事って言ってたのは魚人島に行くことだったのね!?魚人島って海の楽園って呼ばれるくらい綺麗な所なのよね?いいなぉ♪」


 ビビは任務のために帰りの船には同行出来ないと言っていたゴジを思い出して不満を漏らすとソラもそれに賛同する。


「ビビちゃん、もっと言ってやってよ!!ゴジばっかりいつも色んな所に行ってずるいわ!私だって一度行ってみたいのに♪」

「ん?ソラ王妃もゴジ君を知ってるのかね?」


 コブラはソラがゴジを呼び捨てにしながら、まるで家族のように親しげに話す事が気になって尋ねるとソラはより嬉しそうにしながら誇らしげに胸を張る。


「もちろんよ。なんたってゴジは私の自慢の息子なんですから!!」

「「「へっ…?」」」

「母上!?」

「おい!ソラ!?」


 ソラが自信満々に子供自慢をしていると、失言に気づいて慌てて顎が外れるほどに口を開けて驚いている皆の顔を見ながら可愛らしく舌をチロりと出して謝る。


「あっ.......これ秘密だったわ.......ごめんなさい......てへっ♪」


 イチジとジャッジは可愛らしく謝るソラを見ながら、ココヤシ村での経験がまるで生かされないソラの親バカっぷりに自身の頭を押さえた。


「母上.......。ゴジにまた怒られてもしりませんからね。」

「はぁ〜…。全くソラには敵わん。」

「ひぃぃ.......もう正座は嫌よぉぉぉぉ!!」


 ソラは先日、アーロン一味と戦ったことでゴジから冷たい甲板の上に正座させられて受けた説教を思い出して涙する。


「はぁ.......言ってしまったものは仕方ない。ゴジは私の息子の中では一番末の子に当たるが、長男イチジとは五つ子の兄弟なので歳は変わらん。ゴジは海兵に憧れて王族の地位を捨てたのだ。海兵として頑張っているあの子に迷惑が掛からぬように、今の話聞いた話はこの場にいる者だけに留めておいてほしい。」

「「う.......うむ(は.......はい)。」」


 ジャッジは未だに驚きを隠せないが、首を縦に振る王達を見ながら、今後ゴジに迷惑が掛からぬようにこの場にいる者へ口止めをしつつ、交渉に臨ばねばならぬと知り、深い溜め息を吐いた。


「そうだ。父上、私は世界会議(レヴェリー)の結果を早速リュウボシに伝えてきてもよろしいですか?」

「うむ。早く魚人島の民達に知らせてやるんじゃもん。」

「では、皆様しばし失礼します。」


 慌てるフカボシは全員に一礼してから魚人島の祈願が叶った事を報告する為に、部屋から出てから電伝虫を取り出した。


『プルルル…ガチャ!こちらフカボシだ。リュウボシか?』

『フカボシ兄様、会議はどうでしたか?』

『聞いて驚け!実は━━━━』


 フカボシはリュウボシに世界会議(レヴェリー)の内容を報告すると、受話器越しにリュウボシの明るい声が聞こえる。


『本当に地上移設が認められたんラシド!?』

『あぁ。母上との約束を果たせるのだ。』


 フカボシ達は“魚人島の英雄”フィッシャータイガー、“愛の人”オトヒメの死を乗り越えて、母の願いを受け継いで“太陽の下”へ行く為に日夜演説や署名活動に励んできたのだ。


『やっと母上様の願いが叶うなんて.......一度に二つ(・・)もいい事が重なるなんて、なんていい日ドシラソファ♪』

『二つだと、魚人島でもいい事があったのか?』


 リュウボシの弾んだ声にフカボシが尋ねると、電伝虫の声の主が変わる。


『フカボシお兄様、わたくしです。しらほしです。』

『しらほし!?リュウボシは硬殻塔にいるのか?』

『いえ、ここは海の森。お母様のお墓の前です。』

『なんだと!?しらほし、お前はバンダー・デッケンに狙われているんだぞ!!もしや…』


 フカボシはしらほしが硬殻塔を出て、魚人島の外にある海の森にいることに驚きながらもリュウボシの『二つもいい事が起きた♪』という言葉を思い出して目を見開く。


『実はこの国にいらっしゃっておりますゴジ様がバンダー・デッケン様を捕まえになったのです。』

『なんだと.......!?それは本当なのか?』

『はい。今はそれでリュウボシお兄様とマンボシお兄様、ジンベエの親分様の四人でお母様のお墓に来ております。』

『そうか“黒麒麟”がしらほしを救ってくれたのか…。彼には感謝しかない。決して礼を欠くことのないようにな。』

『はい。もちろんです!』


 こうして通話を終えたフカボシ王子は直ぐにネプチューンの待つ部屋に飛び込んだ。


「父上!魚人島を訪れていた“黒麒麟”がバンダー・デッケンを捕まえたとのことです!」

「なんと!?それは本当じゃもん?ならばしらほしは…」

「はい。今はリュウボシ、マンボシとともに海の森へ行ってるとの楽しそうに話していました。」

「オトヒメの元へ…そうか。よかったんじゃもん。」


 本当に嬉しそうに安堵したように話すフカボシとネプチューンの様子に気付いたコブラはいても立っても居られずに二人に声を掛けた。


「ネプチューン王、我がアラバスタ王国はゴジ君に救われて以来、彼のファンなのだ。良ければ聞かせて欲しいゴジ君の捕まえたバンダー・デッケンとは何者なのだ?」

「「私も知りたいわ!!」」

「うむ.......実は━━━━。」


 ネプチューン王はゴジの名前を聞いて興味津々な視線を向ける全員に長女しらほしを付け狙うバンダー・デッケンをリュウグウ王国は国をあげて探していたことついて説明した。


「悪質なストーカーに狙われるお姫様を助けちゃうなんて流石私の息子ね♪」

「ゴジは強くそれ以上に優しい子だ。しらほし姫の事を聞いて放っては置けなかったのだろう。」


 ジャッジとソラは、しらほしを助けた息子の優しさを誇りに思い、コブラとビビはクロコダイルとバロックワークスの魔の手からアラバスタ王国を救ってくれたゴジを思い出していた。


「ああ。我が国もそんな彼の優しさに救われたのだ。」

「ここにいる皆がゴジ君に恩を感じてるなんてなんか凄い偶然ね♪」


 イチジは先日久々に会ったゴジの姿を思い出しながら、笑みを浮かべる。


「ビビ王女、この世に偶然はありはしない。全ては必然。絶対的正義を背負い、それを体現し続けていたゴジの行いが私達を結びつけたのだ。アラバスタ王国を救ったことも、しらほし王女を救ったことも、それ以外のこともゴジにとっては誰が困っていたから助けたしか考えてないだろう。」

「イチジ王太子の言う通りだ。思えばゴジ君が我々を結びつけたのかもしれんな。」

「わしはまだ“黒麒麟”とは会ったことないから我が国の新たなる英雄の話を聞かせて欲しいんじゃもん。」

「ぜひ、私も妹の恩人となった男の話を聞かせてもらいたいです。」

「ふふふっ…ゴジの話なら私が一番詳しいに決まってるじゃない。いいわ。聞かせてあげるわ…あれはゴジが生まれたばかりの時.......。」


 こうして三国による会議はゴジの話題で持ち切りとなりながら、和やか話し合いは進み、三国にとって共通の英雄となったゴジのお陰で三国同盟はより強固なものとなっていくことになる。

 まるで“黒麒麟”の導かれたように“太陽の下”に集ったジェルマ王国、アラバスタ王国、リュウグウ王国の三国で締結された同盟はこう呼ばれる『陽麟同盟』と───。 
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