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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十五話

 シャーリーが見た光景とは何だったのか? 

 それを語るには魚人島から1万m上空のマリージョアで現在行われている世界会議(レヴェリー)の様子を見る必要がある。

 パンゲア城内における円卓の間において、巨大な円卓に世界政府加盟国の王と王妃がズラリと勢揃いして様々な議題について話し合っていた。

 今、議題の一つについての話し合いが終わった直後にこの場に集う王族の中で唯一の魚人族であるリュウグウ王国のネプチューン王がこう切り出す。


「魚人族が地上の“太陽の下”で住むことを認めて欲しいんじゃもん!?」


 一瞬の静寂の後、円卓の間は笑いに包まれた。


「「「っ……!?わっはっはっは!!」」」

「笑い話ではなく、わしは本気でリュウグウ王国の地上移設を……」


 叫ぶように訴えるネプチューン王に対し、各国の王達は冷ややかな目を向ける。

 ネプチューン王が今日この議題を提出することは各国の王達は事前に知っていたので、前もってこうなる様に仕込んでいた。

 魚人族が人間を恐れるように人間も魚人族を恐れており、各国の王達にとって人間と魚人が互いに手を取り合う等馬鹿げているのだ。


「それは魚人島の総意ではなかろう?」

「未だに魚人島の総意を示す署名の提出すら出されていない内は論議する価値すらない。」

「いくら世界貴族ドンキホーテ・ミョズガルド聖の同意書があろうが、まずは署名を集めてからにせよ。」

「未だに署名が集まらないところ見ると、やはり魚人島の総意ではないのだろう? 王の戯言に振り回される民達の気持ちをよく考えたらどうだ?」

「それに“魚”は本来海で住むのがあるべき姿ではあるまいか?」
 
 
 ネプチューン王は亡きオトヒ王妃の尽力でこの場での発言力を高める為に世界貴族ドンキホーテ・ミョズガルド聖の同意書という切り札持っている。

 ドンキホーテ・ミョズガルド聖はかつて船が難破したおり、魚人島でオトヒメに保護され、彼女との対話を通して『世界貴族の世界観ではない、市井の人々の世界観』を知った影響で、現在は非常に思慮深く常識的な思考を持った真人間となっており、他の世界貴族からは“奇人”と呼ばれていた。

 しかし、いくら“奇人”と呼ばれようとも彼の世界貴族としての地位は確かなモノであるため、その同意書は無視出来ないので生まれながらに人間の数十倍の身体能力を持つ魚人への強い恐怖心を抱く人間の王族達はあの手この手を使って魚人の地上進出を妨害しようとしているのだ。


 ───オトヒメ…もう少し…もう少しの辛抱じゃもん…。四年後の世界会議(レヴェリー)こそは.......。
 

 今日ここでネプチューン王が発言したのはまだリュウグウ王国の意志を示す為であり、本格的な地上進出は過半数以上の署名が集まるであろう4年後の世界会議(レヴェリー)決めているので、可決されないことは想定済みである。

 ネプチューン王はリュウグウ王国の国王であると同時に最強の戦士でもあり、持病のぎっくり腰さえ再発しなければその実力は王下七武海“海侠”のジンベエと比べても遜色なく、この場で最強の力を持つ自負もあるが、言うまでもなく世界会議(レヴェリー)は話し合いの場である。

 この場で彼が力任せに暴れてしまっては、リュウグウ王国は世界加盟国から外されるだけでなく、魚人族はやはり話し合いの出来ない野蛮な種族と見なされてドンキホーテ・ミョズガルド聖の同意書も白紙に戻るだろう。


「野生の本能のままに暴れてみますか?ネプチューン王?」
 
「「くくっ.......」」


 人間の王族達の狙いはまさにそれである。同意書を白紙に戻す為にネプチューン王が暴れるように煽っているのだ。この会場はサイファーポールの護衛下にあるので、ネプチューン王が暴れようと被害が出る前に取り押さえられるに違いない。


「ぐぐぐ…。」


 人間達から向けられる反応はネプチューン王の想像以上に酷いものであった。人間の王族達から投げ掛けられる嘲笑を受ける度に愛するオトヒメが冒涜されるような気持ちになるが、肩を震わせて俯きながらじっと堪えていた。


 ───オトヒメ……やはり魚人と人間は共存出来んかもしれんのじゃもん。


 ネプチューン王の心が折れかけたその時───。

 一人の国王がこの茶番に終止符を打つべく机を叩きながら立ち上がって声を張り上げる。
 

「止めんか!一国の王を目の敵にして笑い者にするなど恥をしれぇぇ!!」


 アラバスタ王国国王ネフェルタリ・コブラの一喝に反応して各国の王達がネプチューンからコブラに視線を移す。


「コブラ王、この場には天竜人も居ることをお忘れですか?」

「あまりバカな事を言えば国の為にはなりませんよ?」


 ドンキホーテ・ミョズガルド聖を除く世界貴族は魚類とみなす魚人族の国であるリュウグウ王国の地上移設には反対であり、各国の王達は世界貴族の反感を買わぬようにコブラに警告し、諌めようとする。


「だからなんだというのだ!世界貴族の顔色を伺ってばかりではこの会議に意味などない!!私はネプチューン王の考えに同意する!!」

「ふん!吐いた言葉は飲み込めませんよ?」

「貴方は良くても貴方の国の民は人間に反感を持つ魚人族を受け入れられるのか?」

「なんだとっ!?貴様の尺度で我が国の民を測るな!!人間と魚人も同じ人同士、時間はかかるであろうが、私は必ず分かりあえると信じている。」


 ネプチューン王から一転し、今度はコブラ王が避難の的になるが、彼は一切怯むことなく、堂々と言い返した事でさらに円卓の間は一色触発の喧騒に包まれる。


「コブラ王!?」

「詭弁だ!」

「魚人と人間が共存出来るはずなどない!!」

「「「そうだ!そうだ!!」」」


 戦争にすら発展しかねないこの喧騒の中、満を持して一人の王妃が立ち上がる。


「私もコブラ王の意見を支持します。」
 

 その王妃が凛とした声で発言すると、各国の王や王妃達は口を開けて固まり、円卓の間の時が止まる。

 民衆の騒ぎを一声で鎮めてしまうゴジの凛とした声はやはり彼女から受け継いだものなのだろうと断言出来るほどに喧騒で沸く円卓の間にもよく届いた。


「「「なっ.......!?」」」


 世界会議(レヴェリー)が円卓で行われる理由は全ての国は平等である事を意味するが、実際は各国のパワーバランスは当然存在し、それは国力に準じてこの場における発言力は高くなる。

 今年の世界会議(レヴェリー)では4年前に比べて飛躍的に国力を伸ばして世界最大の大国となった一つの国が存在するのだ。


「ヴィンスモーク・ソラ王妃.......今、なんと仰ったので?」

「聞こえませんでしたか?魚人族も人間も分かり合えると訴えるコブラ王の意見に賛同すると言ったのです。」

「「「なっ.......!?」」」


 各国の王達はソラの発言が聞き間違えではなかったと知ってまた固まってしまう。

 この場にいる国の中で最も発言力の低いのは言うまでもなく、世界貴族に人間以下と見なされている魚人族を統べるリュウグウ王国であり、今回の世界会議(レヴェリー)において最も発言力が高いのは“第四勢力”の一角、圧倒的な武力と科学力を有して実質的に偉大なる航路(グランドライン)を除く四海を支配する世界最大の領土を治めるジェルマ王国である。


「そうだな。ネプチューン王、うちには手付かずの領土はいくつかある。いきなり魚人と人間が共に暮らすのは抵抗もあろう。まずは地上で暮らしたいと願う魚人達をそこで生活させてみるといい。慣れない地上での衣食住の世話くらいはジェルマが協力しよう。誰か意見のある者は?」
 

 ジェルマ王国ヴィンスモーク・ソラ王妃の一言で時が止まり、その夫ヴィンスモーク・ジャッジ国王の一言で再び時が動き出した。
 

「ジャッジ王、是非アラバスタも協力させてもらいたい。」

「コブラ王、この場の空気を変え、ソラと私を動かした胆力は流石麒麟の認めし善王。よろしく頼む。」


 ジャッジは立ち上がるとコブラの元まで歩きながら、アラバスタ王国を救ったゴジの二つ名を善王の元に姿を現す神獣になぞらえながら手を差し出すと、コブラはその手を固く握る。

 それを見ていた一人の王が恐る恐る声をあげる。


「そ…その……魚人は生来人の十倍の力を有していると言われておりますが…。」

「ジェルマが魚人に劣ると…?」


 ジェルマに数千人いるクローン兵士の元となった人物はかつてジェルマ王国が北の海(ノースブルー)を支配していた頃に立役者となった戦士長であり、クローン兵士一人で数人の魚人を楽々と相手に出来る実力がある
 

「い…いえ失言でした。」
 

 ジャッジがひと睨みするだけでその王は自分の発言を取り下げた。元々世界政府加盟国であるリュウグウ王国の地上進出を妨害する事など出来るはずもなく、魚人族の力と報復を恐れていただけである。

 僅か4年で“海軍本部”、“王下七武海”、“四皇”と並び称されるジェルマ王国の圧倒的な武力を疑う者等、誰もいるはずもない。

 さらにその他、現実的な課題としては数百万人の魚人族が暮らすリュウグウ王国移設に関する広大な領土の問題が一番の課題であったが、ジャッジは議論になる前にあっさりと解決してみせた。


「他に意見のある者はあるか?」

「「「っ…。」」」


 もはや議論する余地を無くしたジャッジの圧力に各国の王達は誰も口を開く事が出来ない。


「無いようならリュウグウ王国の地上移設はジェルマとアラバスタ両国で支援するということで決定した。俺達はこれからこの件について別室で話し合うため、残る議題は勝手に進めてくれ。」

「「「えっ!?」」」

「ジャッジ王、退出されるのですか!?」

「しばらく茶番を静観していたが、このくだらない茶番に対して声をあげた者がコブラ王とソラだけとは全くくだらん会議だった。貴様らとは話し合う気が失せた。」


 ジャッジが周りを見渡しながら吐き捨てるように静かに告げると、ネプチューン王を除く全ての王達は下を向いて黙るしかない。

 これが今の世界情勢。

 この世界においてジェルマ王国に逆らえる国など存在しないため、ジャッジは今日までの世界会議(レヴェリー)は無言を貫いていた。


「アラバスタにジェルマ、なんでじゃもん…?なんで魚人族を助けてくれるんじゃもん?」
 

 ネプチューン王はオトヒメ王妃の悲願であった魚人の地上進出が僅か数十秒の間にあっさりと決定してしまった事に驚きを隠せない。

 リュウグウ王国とアラバスタ王国、ジェルマ王国に交流は一切なく.......というかリュウグウ王国と交流のある国は存在しないので、ネプチューン王の疑問はここいる王族達全員が抱いた疑問であった。

 そんな中でソラはネプチューン王の疑問に答える為に各国の王族達を見渡して優雅に頭を下げる。

 
「皆様、ご挨拶が遅れました。私はジェルマ王国王妃ヴィンスモーク・ソラです。何分、長年病床生活を送っておりましたので、この場に来るのは今日が初めてとなります。皆様お見知り置きを…」


 ソラはジャッジと結婚してすぐにレイジュを出産して体調が安定してすぐにゴジ達五つ子を妊娠出産し、その後は知っての通り入院生活であった。

 彼女の体調は4年前には既に回復していたが、大事をとって前回の世界会議(レヴェリー)は欠席したので、各国の王族達と顔を合わせるのは今日が初めてであるが、当然ながらこの場にいる王族達はヴィンスモーク・ソラの名前と姿を“第四勢力”ジェルマ王国の王妃として事前にしっかりと頭に叩き込んでいた。

 “第四勢力”であるジェルマ王国に無礼を働く事は国の存亡にすら関わる事だと分かっているだけでなく、圧倒的な科学力と武力を併せ持つジェルマ王国と交流を持ちその庇護下に入りたいとも願っていた。


「長年、病床に伏せっていた私を救ったのは最愛の息子でした。ベッドから起き上がり、息子に手を引かれながら数年ぶりに“太陽の下”を歩いたあの日の感動は目に焼き付いて離れません。だから、“太陽の下”で生活したいという貴方達の想いはこの場に居る誰よりもよく分かっているつもりです。」


 ソラはネプチューン王を見据えてハッキリと想いを吐露する。彼女はゴジが居なければ二度と“太陽の下”を歩くことも出来ずにそのまま死んでいたはずである。


「だから今度は私が魚人族の手を引いて“太陽の下”に連れて行ってあげたいのです。」

「妻のわがままを叶えるのが、夫の務めだろう?ネプチューン王。」


 ソラはネプチューン王の“太陽の下”で暮らしたいという強い想いに病床に伏していた過去の自分と重ねて心打たれ、ジャッジはただソラの願いを叶える為に動いただけである。


「ソラ王妃、ジャッジ王……ありがとうじゃもん。」


 ネプチューンはソラの慈愛に満ちた想いに心打たれ、さらにジャッジの言う通り、ネプチューン自身も妻の願いを叶える為にこの場にいるので、二人に対して深く頭を下げた後、もう一人の恩人であるコブラを見つめると。


「我が国は雨を求めて長年に渡って内乱が起きていた。我々が普段当たり前のように矜持しているモノも手に入らなければ奪い合って争いが起きると痛感させられた。魚人族は強大な力を持つにも関わらず、武力による争いではなく、この世界会議(レヴェリー)という話し合いの場で“太陽”を勝ち取ろうとしていた。武力で奪うのは簡単であろう。しかし、国とは人なのだ。民に無闇な争いをさせぬように言葉で戦うその姿こそ我々が見習うべき王の姿である!」


 コブラは武力に頼らずに話し合いで“太陽の下”での暮らしを勝ち取ろうとするネプチューン王を見て心が打ち震えた。


「そして、何より我が国に雨を取り戻してくれたあの神獣の名を持つ彼のように気高くありたかったのだ。」


 コブラは見返りを求めずにアラバスタ王国の民を想ってクロコダイルの魔の手から国を救ってくれたゴジのように“太陽の下”での生活を望むリュウグウ王国を救う手助けが出来ればという想いから声を上げたのだ。


「コブラ王ありがとう…本当にありがとうじゃもん。」


 ネプチューンは武力ではなく、政治的なやり方で“太陽の下”での生活を勝ち取ろうとした妻の想いが確かにコブラに届いた事を知り、涙を流しながらコブラに深く頭を下げると、ソラを連れたジャッジが二人に声掛ける。


「さてネプチューン王、コブラ王ここにもう用はないだろう?さっさと別室にいくぞ。」

「「うむ。」」


 ネプチューンは涙を拭いながら、立ち上がると笑顔で円卓の間から立ち去るジャッジ、コブラ、ソラの後を追った。


「「「あっ.......!?」」」


 立ち去っていく4人の姿を見送りながら、残された各国の王達は肩を落とす。

 リュウグウ王国とアラバスタ王国はこの世界会議(レヴェリー)における最大戦果といえるジェルマ王国との繋がりを手に入れた事を悟り、今回の世界会議(レヴェリー)における勝者と敗者が浮き彫りとなったのだった。 
 

 
後書き
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