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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十三話

 ゴジは『秋水』を差した漆黒のマントを翻し、金色のレイドスーツに身を包みジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールドとなってシャボンを突き抜けて暗闇の支配する深海を真っ直ぐに突き進んでいく。


「呼吸良好、視界良好、流石は俺の作ったレイドスーツだな。」


 ゴジの鼻から口元を覆う布は海中の酸素を人間が取り込める酸素に変換出来る酸素ボンベの役割を果たしており、水中でも呼吸が出来る。

 さらに金色のサングラスは暗視、熱源探知、望遠の3つの機能を有しており、深海の暗闇でも昼間と変わらない視界を有し、足に設置された加速装置で深海を超高速で突き進みながら目的の船を探している。


「硬殻塔に突き刺さった武器達は方向や角度が同じものは一つとしてなかった。それはマトマトの実の能力が“的”を目指して最短距離を真っ直ぐに飛ぶことに他ならない。シャボンへの入射角度からこの方向から飛んできたのは間違いないはず……」


 ゴジは硬殻塔の状況からバンダー・デッケンは見つからないように暗闇の支配する深海を魚人島を周回するように移動しながら武器や手紙を送っているのだと推察した。

 しばらくしてゴジは魚人島から数十キロ離れた深海の暗闇の中でボロボロの船を引いている海坊主のような巨大な魚人をハッキリと視界に入れてほくそ笑む。


「ビンゴだ。見つけた。」


 ゴジは見聞色の覇気でしらほしを狙って放たれた斧がシャボンを突き抜ける場所とその入射角度を見極めて、障害物のない深海から放たれた斧は一直線に的に向けて進むと睨んだゴジの読みどおりだった。


「何ら、キサマァ!?」


 ゴジに気づいた船を引く魚人は20メートル超える身長を持つ巨人族よりもさらに大きく身長は100メートル近い巨体を持っていたが、頭が大きく三等身で何処憎めない顔をしていた。

 彼はオオトラフグの魚人なのだが、ゴジが用があるのはこの魚人が引っ張っているまさに幽霊船という言葉が相応しいほどにボロボロになったガレオン船。何よりもボロボロに破けた帆にフライングダッチマンと書いてあった。


「お前がバンダー・デッケンか?」

「違うら。おれはワらツミ!!金ぴか、キサマの名前はなんら!?」


 ゴジのサングラスによる熱源探知により、シャボンを覆う船内にもう1人の魚人の姿を捉えていた。


「ってことは、船の中にいる4本足の魚人がバンダー・デッケンだな?俺は……」


 ワダツミはダ行が言えずにラ行になり、自分はおろかデッケンの名前すら言えない。


「そう。れっケン船長は船ら!!」


 ゴジが名前を名乗ろうとするとシャボンで覆われたフライングダッチマンの甲板に黄色いコートと帽子を被り、右手に赤い手袋を嵌めた猫背で足が4本あるネコザメの魚人が姿を表す。


「なんだお前は?先程、俺はついさっきしらほしへ向けて薔薇のマークが刻まれた愛の斧を送ったたころだ……はっ!?ということはお前はしらほしから俺のプロポーズを受けると言う返事をもらってきたんだな……そのハズだ!!」


 バンダー・デッケンは思い込みが激しく、しらほし姫が自分のプロポーズに対して恥ずかしがっているだけだと本気で思っている。

 だから、魚人島の方向から来たゴジをしらほしからの使者だと決めつけていた。


「俺は海ぐn.......いや、違うな……」


 ゴジは海兵と名乗ろうとして自分の身なりに気付いて名乗りを変える。


「俺はジェルマ66(ダブルシックス)のパーフェクトゴールド。荒れるぜ止めてみな!」

「パーフェクトゴールド.......なんだそりゃ?まさか愛のキューピットの名か......そうだそのはずだ!?」

「おれも知らないのに流石れっケン船長ら!!」


 深海にある魚人島にも“第四勢力”ジェルマ王国の活躍により『海の戦士ソラ』は浸透しているが、奇しくもバンダー・デッケンがしらほし姫をつけ狙い追われる身となった時期はジェルマ王国が活躍し始めた時期より数年前となり、彼らはこの物語を知らなかった。


「なんだ知らないのか?まぁいいや。一つだけ確認するぞバンダー・デッケン!!お前はマトマトの実の能力者だな?そして、その赤い手袋で保護している右手で過去にしらほし姫に触れたことがある。違うか?」


 ゴジはデッケンが自分のことやしらほしの事を勘違いしている事にはすぐに気づいたが、しらほしを助ける為の情報を引き出す為にあえて指摘しなかった。


「そう!俺はマトマトの実の能力者だバホホホ!!オトヒメが死んだあの日、この右手でしらほしに触れたことで俺達は愛で結ばれたんだ。さぁ愛のキューピット、パーフェクトゴールドよ。しらほしの返事を聞かせてくれ!!もちろんYESだろう!!?」


 バンダー・デッケンは未だにゴジがプロポーズ合意の返事を預かっていると信じて、恍惚の表情を浮かべながら膝まづいて左手を胸に当てながら右手をゴジに向けて伸ばして返事を待っている。


「そうか。よく分かった。これが答えだ!受け取りな.......“嵐脚・黄龍”!!」


 ゴジはデッケンの能力が自分の読み通りである事を知って鷹揚に頷いた後、幽霊船フライングダッチマンに向けて思いっきり右足を蹴り上げて嵐脚を放つと、それはフライングダッチマンを食らうほどに巨大な黄金の龍を生み出す。


「「えええぇぇぇぇっ!?龍ぅぅぅぅううう!!?。」」

「マジか?船に風穴を空けてやろうと思っただけなんだが、船を飲み込む程に巨大とは……おい!!バンダー・デッケン、死にたくなけりゃさっさと逃げろぉぉぉ!!」


 レイドスーツにより、強化された身体能力と怪力の能力を使って生み出された巨大な龍は技を放ったゴジですら予想以上の威力で唖然としながら、焦ったようにフライングダッチマンの甲板にいるデッケンに声をかけて避難を促す。

 黄金の巨龍はそのまま幽霊船フライングダッチマンを飲み込みながら突き抜けると船は木っ端微塵となった。


「れッケン船長ぉぉぉぉ!?」

「くそ!化け物か!?ご先祖さまの船が.......海の中じゃ指一本身体が動かねぇ。なんなんだアイツは!?愛のキューピットじゃねぇのか!?」

「ほっ.......。」


 船が木っ端微塵となり、間一髪海へ逃げ出されたデッケンをワダツミが両手で掴む。バンダー・デッケンは能力者である為、海では体の自由が奪われるが、魚人として特性はそのままであるためエラ呼吸は出来るので、ワダツミの手の中で生きていた。

 ゴジはデッケンを八つ裂きにしかねない“嵐脚”から、デッケンが逃げられた事にホッとしていた。


「許さないのらぁー!!」

「いけぇー!ワダツミぃー!!」


 ワダツミは右掌で目の前で隙だらけで佇むゴジを薙ぎ払うべく大きく振りかぶって横薙ぎに放たれた。

 彼の巨体から放たれるそれは海流を生むほどの威力があるが、ゴジはその薙ぎ払う右手を一瞥もすることなく何やから考え事をしながら左手で軽々と受け止めた。


「えっ……!?」

「はっ……!?」


 ワダツミ、バンダー・デッケン共に目が点になる。

 数十メートルを誇る巨体による薙ぎ払いを水中で微動だにせずに軽々と受け止めたのだから、二人の反応は当然であろう。


「ちょうどいいからこいつで力加減を試すか.......これくらいかな?“六・六式(ダブルロクシキ)・手加減”!!」


 ゴジは少し力を押さえながら、巨人を優に超える巨体をほこるワダツミの頭目掛けて右拳を振り落とした。


「ぐべぇぇぇぇぇぇ!!?」

「何いい!?ぶべぇぇ!!?」


 ゴジの拳は海を震わす程の衝撃を生み出しながら、ワダツミはバンダー・デッケンの悲鳴とともに海底に頭をめり込ませて意識を失った。

 ワダツミは地面に頭をめり込また形でうつ伏せに倒れた時、バンダー・デッケンを掴んでいる左手で受身を取ろうと地面に手をついたため、デッケンを押し潰していた。

 気を失ったワダツミは頭を地面にめり込ませたまま身体は浮力により浮き上がるとワダツミの左手に潰されて気を失ったデッケンもぷかぷかと浮き上がる。


「バンダー・デッケン、確保っと♪」


 ゴジはそのデッケンの襟首をガシッと掴んだ。


「死んでないからとりあえずは良しとするか。でも暫くレイドスーツは使えないな。」


 普段、人は己の力の数割程度しか使っておらず、火事場の馬鹿力のように生命の危機に際して力を最大限まで引き出せるものであるが、レイドスーツは着用者の持つ力を常に体に負担を掛けることなく火事場の馬鹿力を出し続ける性能と同時にゴジ持つの能力をも最大限まで引き出せる性能を併せ持つ。

 ゴジは通常でも王下七武海と渡り合える強さを持つが、レイドスーツを着たゴジは、何の制限もなく常に火事場の馬鹿力とヨンジの持つ怪力の力を100パーセント併用している状態である。


「制御出来ない力ほど怖いものはない。」


 いくら強くても制御出来ない力など使えるはずもなく、新たな悩みを抱えたゴジはそのままバンダー・デッケンを抱えて魚人島に向けて戻った。


 ◇


 ゴジは竜宮城のシャボンを突き抜けると同時にレイドスーツを解除して缶をポケットに仕舞い、ジンベエ達の待つ硬殻塔に降り立った。


「皆、ただいま。」

「「「えぇぇぇ!!?本当にバンダー・デッケンを捕まえてきたあぁぁぁぁ!!」」」


 帰還したゴジの手にあるびしょ濡れの黄色い帽子と黄色いマントを着たネコザメ魚人を見たジンベエと二人の王子は目が飛び出るほどに驚いていた。


「それにゴジ、なんで濡れておらんのじゃ?」

「不思議ソファミラ!?」


 ゴジは全く濡れていないわけでなく、レイドスーツを着ても剥き出しの顔や髪だけは濡れているが、服は濡れていないのでジンベエ達が不思議がる。

 ゴジは水中での呼吸、視界を得るためにレイドスーツを着たが、デッケン達がパーフェクトゴールドを知らなかったのは幸いだった。

 祖国に迷惑を掛けない為にパーフェクトゴールドを知っているであろうジンベエ達にはなるべく正体を明かしたくはないので、この話題を苦笑いで流すことにした。


「そんなことよりも、やはりバンダー・デッケンはマトマトの実の能力者だったよ。この能力は素手で対象が更新されるから的にしたくない相手を触れる場合は手袋で覆う必要がある。この男はこの赤い手袋をしている右手でオトヒメ王妃の銃撃事件の混乱に乗じてしらほし姫に触れた事があると話していた。」


 ゴジは気を失っているデッケンの右手の手袋を外して、その右手をある物に触れされてからもう一度手袋を嵌める。


「だから……これでしらほし姫は大丈夫。早くこの大層な門を開けてやれよ。」

「“黒麒麟”殿、本当に感謝しかないドシラソファ!!」

「兵士達、このニュースをリュウグウ王国の民に知らせるんだよ〜!!そして.......」

「「硬殻塔を開門せよ!!」」

「「「はっ!!」」」


 二人の王子達による歓喜の号令に兵士達も歓喜の叫びを持って応えて、この出来事は直ちにリュウグウ王国全土へ拡声器より伝えられた。


「竜宮城からリュウグウ王国全国民にお知らせします。たった今、海軍本部“黒麒麟”ゴジ中将によりしらほし姫様を付け狙っていたバンダー・デッケンが拿捕されましたぁぁぁ!!」


 この拡声器による全国放送と同時にゴジに襟首を掴まれてぐったりとしたバンダー・デッケンの映像がリュウグウ王国のメイン広場であるギョンコルド広場のモニターに放映されると、リュウグウ王国全土から歓喜の声があがる。


「「「(うお)おおぉぉぉぉぉ!!」」」

「すげぇぇ!?俺、さっき親分さんと一緒にいる“黒麒麟”を見たぜ!!」

「私も見たわ♪あぁ……話しかけたら良かったわ♪」

「人間の海兵がしらほし姫様を救ってくれたぁぁ!!」


 リュウグウ王国においてもゴジの名を知らぬ者はいないが、やはり人間を恐れるほとんどの者は魚人族を忌み嫌う中枢の代表たるゴジを恐れてジンベエと共に歩いている姿を遠巻きに見ていた。

 しかし、リュウグウ王国一のお尋ね者を人間であるゴジが拿捕した事で彼、人間を認める声が増えていく。


「中枢の人間にも、優しい人間がいるんだ。」

「“黒麒麟”が島に来る海賊みたいに野蛮な人だったら嫌だなぁ.......。」

「でも、私、“黒麒麟”さんが楽しそうにジンベエの親分と肩組んで歩いていた姿を見たわよ。」

「それに海兵は野蛮な海賊達を取り締まるんだぞ!」


 ゴジの存在は魚人島全土にすむ魚人族達の胸にオトヒメの言葉に現実味を思い起こさせるには充分だった。


『私達が見る人間は海賊という種類の人間、人間の中には優しい人間はたくさんいるのです。』


 そして、ギョンコルド広場の映像が硬殻塔の堅牢な扉に映像が切り替わり、リュウグウ王国の誰もが待ち望んだ瞬間がやってきた。


「硬殻塔、開門!!!」


 ギィィィという音を立てながら長らく閉ざされていた扉が開き始める。

 リュウグウ王国全国民が見守る中、わずか6歳でバンダー・デッケンにその命を狙われ、母親の葬儀にも出られずに身の安全の為に硬殻塔から一歩も出ることの叶わなかったしらほし姫を縛る鎖が解放されていった。 
 

 
後書き
次回更新は30日です。
 
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