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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十二話

 ジンベエは思案に耽るゴジに向けて笑いかける。

 
「そうじゃ…“黒麒麟”達はこれからどうするんじゃ?」


 ゴジはジンベエ達の人となりを知って、ボニーの父である“暴君”くまと並んで王下七武海として信用出来ると判断し、ナミとイスカもアーロンの事を聞けたので魚人島での用務が僅か一時間足らずで終わってしまった。

 しかし、未だに久しぶりの再会を喜び合うコアラとタイヨウの海賊団の様子を見てすぐに帰るには忍びない。


「リュウグウ王国国王ネプチューン王は世界会議(レヴェリー)だったな。この国に誰か王族が残ってるなら、挨拶くらいしといたほうがいいか?」


 ゴジは秘密裏とはいえ、公務として魚人島を訪れた以上はリュウグウ王国を治める王族への面会は必要かとジンベエに尋ねた。

 
「この国の3人の王子の内、長兄フカボシ王子はネプチューン王に同行しとるが、マンボシ王子とリュウボシ王子が残っとる。あとで面会の許可を申請しておこう。」


 ジンベエはもう一人の王族しらほし姫は理由あってどうあっても面会は適わぬとその存在を伝えなかった。


「そうか。なら頼んだぜ。」


 ネプチューン王とは魚人島を治めるリュウグウ王国の国王であり、先に述べたオトヒメ王妃の夫である。

 ジンベエは“女好き”とされるゴジならば絶対に会いたいであろう“人魚姫”しらほし姫の存在を隠した事に申し訳なさでいっぱいだった。


 ───すまん。しらほし姫をあの部屋から出す訳にはいかんのじゃ。


 巨人族の人魚かという程の子供ながら数メートル級のな身長を持つしらほし姫がいるのだが、ある理由から鋼鉄の扉や壁で覆われた“硬殻塔”と呼ばれる部屋から出る事が出来ないのだ。

 鉄製の部屋から出る事を許されない不自由な生活を送っている彼女に王族としての公務を強いるのは忍びないと、ジンベエは泣く泣くゴジに彼女の存在を伏せる事にした。

 世界会議(レヴェリー)は様々な議題を時間を掛けて話し合うため、7日間に渡って行われる。ゴジ達は世界会議(レヴェリー)の当日にマリンフォードを発ち、シャボンディ諸島で時間を食ったので、今日は3日目に突入している。


「さて、世界会議(レヴェリー)は3日目。まだ余裕あるから俺たちは魚人島の名所を回ってみるか♪コアラは積もる話もあるだろうからタイヨウの海賊団と話しているといい。」

「分かった。ゴジ君ありがとう♪」


 ゴジがコアラ達に気を使うと、コアラの満面の笑みとタイヨウの海賊団達の歓声を受ける。


「“黒麒麟”の旦那は話が分かるぜ!」

「「(うお)おぉーい」」

「じゃ、あたし達はゴジ君と買い物に.......」


 ナミがゴジの手を取ってショッピングに繰り出そうとした時、ジンベエがゴジに声をかけた。


「ゴジ、お主が来ると聞いてマーメイドカフェを予約しとるんじゃがどうする?」

「っ…!? なんでそれを早く言わねぇんだ!ほら、ジンベエさっさと案内しろよ!皆も何をしているさっさと俺について来い!!」
 

 ジンベエの話を聞いてナミはマズいと思うが、目をハートマークに変えたゴジの顔を見て手遅れである事を悟る。


「ナミ、買い物は諦めろ。」

「あははっ.......どんまいナミちゃん。」


 ボニーはナミの肩を叩き首を横に振り、イスカはナミに向けて苦笑いを浮かべていた。


「ん?ナミちゃんも俺と同じでそんなにマーメイドカフェに行きたいのか♪楽しみだな!」


 ナミは肩を落としながらも、ゴジをショッピングに誘うつもりで握った手を固く握り返さながら、笑顔を浮かべるゴジに見惚れて首を縦に振る。


「えっ.......えぇ。そうね♪」


 女性の人魚は人間の男にとりわけ人気があるので、“女好き”と名高いゴジならマーメイドカフェに食いつくはずだと思ったが、想像以上でジンベエは高笑いをあげる。


「ガッハッハッハ!どうやら“女好き”という噂も間違いないようじゃな!!」


 興味がある事柄に向かう時によく“目の色を変える”という言い方をするが、ジンベエは目の色だけでなく目をピンク色のハートに変えて、ナミの手を引きながら自分と肩を組むゴジを見て“女好き”のゴジが喜ぶかと思って念の為にマーメイドカフェを事前に予約しておいた過去の自分を褒めた。


「ワシはゴジをマーメイドカフェへ案内する。お前達、コアラを任せたぞ!」

「「「了解!」」」
 

 ゴジ達はジンベエに案内されてマーメイドカフェの近くにある人魚の入江と呼ばれる場所に到着すると、目の前に広がる幻想的な光景にゴジだけでなく、ナミ達も目を奪われる。


「「「すっごーーいっ!?」」」

「うおおおおぉぉぉぉぉぉぉ!本物の人魚来たああああぁぁぁ!?」
 

 目をハートに変え、一際リアクションの大きいアホが誰であるか言うまでもないだろう。

 小さな入江には色とりどりのサンゴや人の大きさ程もある貝殻があるがそれは引き立て役に過ぎず、主役はその場所で魚達と寛いでいた数人の若くて美しい人魚達である。

 彼女らは人魚故に下半身はそれぞれの種族に応じた魚の下半身であり、上半身は貝殻を加工した髪飾りと下半身の鱗の柄に合わせたビキニブラを付けたスタイル抜群の美女揃いであった。


「ここはこの世の楽園だあああぁぁぁ!!」

「いつも女風呂を天国って呼んでるやつのセリフとは思えねぇな……」

「あたしなんて裸を至近距離でまじまじと見られたのよ……」

「あははっ……ゴジ君ごめんなさい、流石に擁護出来ないわ……」


 その扇情的な格好も相まってゴジは鼻息を荒くして見惚れていたが、その残念な姿にボニー達は冷ややかな視線を向けていた。


「ようやく来たわ!?マダム・シャーリーに連絡しないと!?」

「あれがゴジ様よ!!」

「「「きゃあああああああ!!」」」


 ゴジの名前と活躍はこの国でも轟いており、マーメイドカフェで働く人魚達の中にもファンが大勢いるようで姿を見た人魚達から黄色い歓声があがる。

 人間の海賊達を相手に自身の美貌を武器に商売している彼女達はリュウグウ王国の誰よりも人間に対して抵抗がない。


「見て…親分さんと肩組んで歩いてるわ!」

「海軍コートを着た可愛い女の子が沢山いるわ!あれが噂のジェガートの海兵達かしら?」


 美しいマーメイドカフェの人魚達はジンベエと肩を組んで歩くゴジとそれに続く女海兵達を見て口々に噂する。

 海賊が闊歩するこの島において、新聞でしか見ることの無い海兵は珍しいのだ。


「どこに行ってもゴジ君の人気は凄まじいわね。」

「魚人島に立ち寄る商船から、新聞や本等も定期的に入ってくるからの。“黒麒麟”ゴジの名を知らぬ者はおらんわい。それよりもカフェはこっちじゃついて来い!」
 

 ジンベエ達がマーメイドカフェの入口の前まで到着すると店の中から一際体格の大きい身長5mは超える黒髪ショートヘアで鮫のような切れ目をしたアオザメの若い女性人魚が現れる。


「おぉ…!?“人魚姫”が来たああああぁぁぁーっ!?」

「「「っ…!?」」」


 ゴジは入り江の人魚達と比べても一際大きくこれまで魚人島で見たどの人魚より一番の美女であるため興奮してそう呼んだが、目をハートマークに変えたゴジの雄叫びを聞いたジンベエと人魚達の面々は目を見開く。

 魚人島において“人魚姫”の名を持つ人魚は別にいるからである。


「あらあら、麒麟のボーヤ。私はここマーメイドカフェの店長のシャーリー。この島で“人魚姫”と呼ばれるのはしらほし姫のことだよ。」

「しらほし姫?」
 
「この国のお姫様さ。私なんかよりさらに美しく、体も大きなまさに“人魚姫”様よ。しらほし姫は竜宮城にいるはずだよ。」


 ジンベエは秘密にしていたしらほし姫の存在がバレてゴジに頭を下げる。


「すまん、ゴジ!?しらほし姫はバンダー・デッケンという海賊に狙われおって会う事は叶わんからお主には黙っておった。」

「ん?バンダー・デッケンといえば数百年前に実在したとされる海賊だろう?確か…ある嵐の夜に突如として錯乱し、船員を海に投げ込んだ挙げ句神にツバを吐くという冒涜を行った結果、暗い海底で生き続ける呪いを受けたと言われる幽霊船フライングダッチマンの幽霊船長。しかし、所詮は子供向けのおとぎ話なはずだが…?」


 ゴジは子供でも知っているバンダー・デッケンの幽霊船話からありえないと答えるが、ジンベエはゴジの疑問にさらりと答える。


「そのバンダー・デッケンは魚人島に落ち延びたんじゃ。しらほし姫に呪いをかけたバンダー・デッケンはその子孫。その名もバンダー・デッケン9世。国をあげて探し回っとるが、この暗い深海の海に身を隠して何処におるか分からんのじゃ.......」

「なるほど.......海に沈んだフライングダッチマンはコーティング船、そして船長のバンダー・デッケンは魚人島に落ち延びて子孫が乗るフライングダッチマンがたまに浮上して目撃されるから、各地で幽霊船伝説が残っていたのか。ところで姫様に掛けたその呪いってのは?」

「オトヒメ王妃の暗殺事件について話したじゃろう?その日を境に当時6歳だっしらほし姫の元へ恋文が届くようになった。しかも不思議なのはしらほし姫が何処にいても必ず彼女の元へ届くこと。不審に思った王はしらほし姫の外出を禁じた所、しらほし姫の元へ手紙だけでなく斧や刀剣等の武器まで送られるようになり、彼女の身を守る為に硬殻塔と呼ばれる鋼鉄で覆われた部屋での生活を6年間も余儀なくされておる。」


 ジンベエはバンダー・デッケンにより掛けられた呪いについて話すと、ゴジはその力がかつて本で学んだある悪魔の実の能力と酷似していると気付く。


「なるほど。それは恐らく呪いではなく超人(パラミシア)系悪魔の実、マトマトの実によって“的”にされているんだろうな。確かに国として会わせられない姫の存在を余所者である俺達に秘密にするのは間違ってないから責めたりしない。だが、知った以上は黙っていられない。ジンベエ、確かめたいことがある。今すぐに俺を姫様がいる硬殻塔に案内してくれ。」


 ゴジは何処にいてもしらほし姫という的を狙って手紙や攻撃を放つバンダー・デッケンの食べたと思われる悪魔の実を言い当てる。


「流石博識と言われるゴジ。話を聞いただけで誰も知らないバンダー・デッケンの能力を見抜いたのか!?しかし、能力がわかったところで、バンダー・デッケンはフライングダッチマンに乗り、暗闇の支配する深海に身を隠しておる。ワシらがこの7年捕まえれんかったのにどうするつもりじゃ?」


 ジンベエは先程まで目をハートマークにしてマーメイドカフェに行く事を楽しみにしていたゴジがバンダー・デッケンを捕らえるために真面目な顔で思案している姿に目を見開く。


「いや、俺ならば飛んでくる獲物の方向さえ分かれば何とかなる。ジンベエ、俺を竜宮城に案内しろ。」

「しかし、マーメイドカフェはいいのか?」


 ここはゴジが楽しみにしていたマーメイドカフェの入口である。

 この扉をくぐるとゴジの夢見た本当の楽園が広がっている。


「俺は海兵だ。海賊に苦しめられているお姫様がいると聞いて酒なんか飲めると思うか?大人数で押し掛けるような場所でもないだろう。イスカさん達はここにいてくれ。すぐに戻る。」

「えぇ。分かったわ!」

「わかったわい!!こっちじゃ付いてこい!」


 ジンベエは自分をしっかりと見据えたゴジの目を見つめらながらその澄んだ瞳に吸い込まれそうになる。


「ふふっ.......。ジンベエ、どうやら麒麟のボーヤは噂以上の男前だね。」
 
「全くじゃ!」


 “黒麒麟”としての顔を見せるゴジの顔を見たシャーリーとジンベエは顔を見合わせ笑い合う。


 ◇


 ゴジ達は真ん丸な体型で陽気におどけるアカマンボウの人魚マンボシ王子とスラリとした体型でオペラ歌手のような声を持つリュウグウノツカイの人魚であるリュウボシ王子の案内でリュウグウ王国の王城である竜宮城の最上階ある硬殻塔に移動すると目の前に聳え立つのは50mはある巨大な分厚い鋼鉄のドアや外壁には無数の剣や斧といった鋭利な武器が突きさっていた。


「アッカマンボ〜♪アカマンボ〜♪ここがしらほしのいる硬殻塔だ〜よ〜♪」

「“黒麒麟”、しらほしを救う手立てがあると言っていたが、どうすんドミレド〜?」

「マンボシ王子、リュウボシ王子案内ありがとう。まずは武器が飛んでくる方向が分からないとな......噂をすれば来るぞ!」


 ゴジの見聞色の覇気による未来視通りに薔薇のマークの書かれた新たな斧が飛んできて扉に突きさった。


「なるほど。シャボンを突き抜けて斧が飛んできた。やはりマトマトの実の能力だな。じゃ、早速行ってくるよ!」

「はぁ?ゴジは何を言うとんじゃ?」


 この硬殻塔は外に面しているので、ゴジは斧が飛んできた方向をキツく睨むと、“剃”を使って真っ直ぐにその方向に飛び上がる。


「まさか......ゴジは斧が飛んできた方向に飛んでいく気なのか?無茶じゃ!ここは海の中じゃぞ!?」

「ちょ.......“黒麒麟”!ここは空はあるけど、この空の向こうは水深1万メートルの深海だソラシド!?」

「陽樹イブから離れると深海は真っ暗で何も見えないんだよ〜ん!それに人間は深海では呼吸も出来ないし、水圧で潰れちゃうよ〜ん!?」


 竜宮城から声を張り上げるジンベエや王子達の心配する声を背中で受け止めるゴジもそこは百の承知だった。

 しかし、ゴジにその全てをクリアする術を持っていた。

 “剃”と“月歩”を組み合わせた“剃刀”を使って超高速で魚人島の空を駆けるゴジがまもなく竜宮城を覆うシャボンに差し掛かろうした時、“5”と書かれた金色の缶を取り出して腰に当てる。


「これをまた使う日が来るとはな。」


 “牛鬼”エドワード・ウィーブルを捕縛した時以来しばらくぶりに使うレイドスーツが入ってる特殊な缶。

 竜宮城のある浮島を覆うヤルキマン・マングローブの樹液によるシャボンはその名の通りシャボン玉のようにふわふわ、ぷにぷにとした弾力を有しながらも深海一万メートルの水圧に耐える事が出来るが、強い衝撃により簡単に突き抜ける事が出来る上、空いた穴は瞬時に塞がる。


「「「眩しい!?」」」


 ゴジの呟きは竜宮城の硬殻塔から見上げるジンベエ達には届くことなく、ゴジは太陽と見間違わんばかりの眩い金色の閃光を残してシャボンを突き抜けた。 
 

 
後書き
明日の同じ時間に更新します。

次回は久々に黄金の戦士が活躍します!! 
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