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DOREAM BASEBALL ~夢見る乙女の物語~ 

作者:山神
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組み立て

 
前書き
最近どんどん冬に近付いてきて朝起きるのが辛いです|ョω・`)ソレハイツモダロ 

 
莉愛side

「よろしくね、莉愛」
「うん!!よろしく!!」

打席に入った紗枝が笑顔を見せるので私もそれに笑顔を答える。すると、後ろから咳払いが聞こえ、慌てて試合に頭を戻す。

(紗枝ってどんなバッティングするのかな?すごく気になる……)

練習で彼女のバッティングは見ているけど、試合は別物だって莉子さんも言っていた。経験者なだけあって綺麗に打ち分けている印象があったけど……

(無難に行くしかないかな?)

莉子さんはきっと私が初心者だから難しいことはしないと考えていると思って、初球に攻めてみたけど紗枝はどうなのかわからない。そうなると一番打ちにくいとされている外角低めが入りとしては無難。

(外れてもいいので外にお願いします)
(了解)

ただ、この入り方は紗枝もわかっているだろうから厳しくコースを突く。外れてもまだ初球……問題ないはず。

「「あ」」

そう思っていたのに、栞里さんの投げたボールは真ん中付近に入ってしまい、紗枝はそれを逆らわずに右へと流す。

ライト前へのヒット……だと思ったんだけど……

「はいはい!!オッケー!!」

セカンドを守っていた優愛ちゃん先輩がヘッドスライディングでこの打球を止め一塁へ送球。ギリギリのタイミングだったけど、無事にアウトにすることができた。

「サンキュー!!優愛!!」
「いいよぉ!!どんどん打たせて!!」

先輩に対してもいつもと変わらない優愛ちゃん先輩に私は苦笑いしてしまう。栞里さんたちは気にしていないけど、あんな風には絶対できないな。

「莉愛、バックアップ忘れるなよ」
「あ!!すみません……」

打席に入った陽香さんからの言葉で大事なことに気が付いた。ライト前ヒットだと思い、一塁のバックアップを忘れてた。地味なことだけど、大事なことだから次からはしっかりやらないと……

(とか思ってると今度は別のこと忘れそう……)

初めて見た時にカッコいいと思ったあの人。その姿を追いかけたいと思っていたけど、ここまで大変なポジションだとはその時は想像できなかった。

(それで一番バッターだったんだもんね。やっぱりすごい人なんだ)

甲子園で優勝するチームでキャッチャーを務め、打順は一番。しかもキャプテンまで担っているとなるとどれだけ大変か予想すらできない。

(あの人に近づくためには、やれることをまずやっていかないとね)

打者の陽香さんは長打を打つというよりも野手の間を抜いていくような印象がある。となると最初は……

(……インコースのストレートでいいかな?)

何かキャッチャーらしい配球を考えようかと思ったけど、そんなことを思い付くわけもなかったので莉子さんと同じ入り方で様子を見ることにしてみた。栞里さんにそのサインを送ると、彼女もうなずき投球モーションに入った。
















陽香side

サインを受けてすぐに投球に入った栞里。その右手から放たれたボールは身体に近いところに来る。

「ボール」

まずは内角へのストレート。際どいコースではあったが、外れていたらしくボールの判定。

(莉子の時と同じ入りできたか)

高校野球では外角を中心に攻める傾向が強い。理由は身体から遠いところはバッターが打ちづらいから。ただ、それは当然どこの高校も対策をして来るため、上に行けば行くほど内角をうまく使いながら戦っていくことが要求される。

(ただ、内角を二球も続けることはできないだろ?)

内角のボールは甘く入れば長打になりやすい。だからこそ技術が未熟な高校野球では外角中心がセオリーなのだ。

その予想通り次の投球は外角へのストレート。しかし、遠いと感じた私はそれを見送る。

「ストライク!!」
(入ってたか)

初球が身体に近かったからか今のボールが遠くに感じてしまった。これで1ボール1ストライク。

(二球続けてストレートが来たから、次は変化球だろうな)

栞里の球種はストレート・スライダー・フォークの三種類。普通なら次はカウントの取れるスライダーだが……

(たぶんフォークだな)

それも低めに外れるボール球。最初の莉子への攻めを見る限り、莉愛は参考にしている配球がある。

(いかに打者を手玉に取るかを考えていたあの人に寄せた配球。ただ、その意図がわかっていないのだろう)

予想通り三球目はワンバウンドするフォーク。何も考えていなければ間違いなく空振りしているくらいいいところから落ちてきた。

(ボール先行になった。となるとストレートでカウントを整えに来るだろ?)

私が見送ったことが予想外だったからか、さっきまで早いテンポで行われていたサイン交換に間が生まれる。わずかな間の後に送られたサインに栞里がうなずき、投球に入る。
彼女の手から放たれたボールはハーフスピードで真ん中へと入ってきた。

(甘い!!)

失投と思われる投球を見てスイングに入る。しかし、振り出してから気が付いた。栞里の投じたこのボールが落ちていることに。

ガキッ

見送ればボールだったであろう投球にバットを止めることができずショートに弱々しい打球が転がる。伊織がそれを難なく捌き一塁へ転送。スリーアウト目を取られてしまった。

「ナイスピッチです!!栞里さん!!」
「ありがと、莉愛」

一塁付近でバッティング手袋を外しながらグローブを持ってきてくれるのを待っている間、相手チームのバッテリーがグローブでハイタッチしながらベンチに戻る姿が目に入る。

(意外と考えて組み立ててるみたいだな)

キャッチングもスローイングも決して悪くない。それに配球も経験値不足なところもあるが、考えて組み立てているようで感心してしまう。
監督が唯一の未経験者ながらスタメンとして起用してみたくなる気持ちもわかるな。

「陽香さん!!グローブです!!」
「あぁ、ありがとう」

グローブと帽子を受け取り、ヘルメットとバッティング手袋を渡してマウンドへと向かう。プレートに置いてあるボールを拾い上げ、防具を着けて待っていた莉子の方へと視線を向ける。

(初回はやられたが、次はないからな)

いいようにやられてしまったが今度は必ず打ってみせる。そのためにもまずはこの回を抑えようと投球練習に入った。



 
 

 
後書き
いかがだったでしょうか?
最初から出来すぎかもしれませんがこういうことも意外とあるものなのでご了承ください。 
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