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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百十話

 ジンベエはタイヨウの海賊団達と再会を喜び合うコアラの姿を見送った後、正面にいるゴジとそのすぐ後ろに控える一人の女海兵を見る。


「待たせて申し訳ないのぉ。」

「いや、コアラとは久しぶりの再会と聞いている。魚人島にしばらく滞在する予定だから積もる話もあるだろう。それよりも“海侠”のジンベエ、俺とイスカさんに話があるんだろう?」

「そうじゃった。そちらの赤髪のお嬢さんが“釘打ち”のイスカ少佐じゃな?」


 ジンベエはゴジの後ろでサーベルをいつでも抜きはなてるように油断なく構える燃えるような赤髪と覇気を持つ女海兵を見て“釘打ち”のイスカに違いないと確信する。

 イスカは火拳のエースを追いながら数多くの海賊を拿捕したので、その功績により海軍本部に戻ると少尉から少佐に昇進した。

 覇気使いとそうでない者とでは戦いの次元が違う。海軍本部もアーロンとの激闘を経て覇気使いとして覚醒したイスカはこれからますます活躍していくに違いないという期待している表れである。


「はい。私がイスカです。この手でアーロン一味を捕らえました。」


 イスカは殺気を隠すこともなく、ジンベエの前へ進み出ようとするが、ゴジは右手をあげてそれを制する。


「アーロンのことならば俺を通してからにしてもらおう。イスカさんに“ノコギリ”のアーロンの拿捕を命じたのは俺だ。おまえが王下七武海入りの条件として海底大監獄(インペルダウン)に投獄中のアーロンを野に放ったことも知った上で俺は奴の拿捕を命じた。」

「ゴジ君?」


 ゴジは直接イスカにアーロンの討伐を命じたわけではない。

 しかし、東の海(イーストブルー)出身のたしぎからアーロンの噂を聞いて姉レイジュに討伐を頼んだことをきっかけとしてイスカがアーロンを拿捕したので、ゴジは手っ取り早く自分が拿捕を命じたとジンベエに伝えた。


「やはりそうじゃったか。“黒麒麟”はクロコダイル討伐の為にアラバスタ王国にいたからジェガートの部下であるイスカ少佐にアーロンの捕縛を命じたんじゃな?」


 ジンベエはゴジがアラバスタ王国でクロコダイルを捕らえた時期とイスカがアーロンを捕らえた時期が一致するので、自分の予想通りであったと納得する。
 

「あぁ。俺はワニ野郎(クロコダイル)のせいで手が離せなかったからな。雑魚(アーロン)には構ってられなかった。それにこの間まで事後処理でアラバスタにずっと居たから、中々面会に応じられなくて悪かったな。さぁ、文句があるなら俺が聞こう。」


 ゴジはイスカの盾になるように立ちながらアーロンを雑魚と呼ぶことでジンベエのヘイトを自分に向けさせて、自分よりも頭二つ大きな身長を持つジンベエを見上げて睨みつける。


「ゴジ君!それにジンベエの親分!二人とも戦う気なの!?」


 魚人は海中では無類の強さを誇るが、周囲一帯の『水』の把握を極意とする魚人空手、魚人柔術を覚えたゴジならば海中でもジンベエに後れを取ることはない。

 ゴジとジンベエ互いの覇気が高まっていくことを感じて戦闘の予感を感じ取ったコアラが悲鳴に近い声をあげて二人の名前を叫んだ。


「では…“黒麒麟”ゴジ中将、“釘打ち”イスカ少佐!!」


 ゴジはジンベエの膨れ上がった覇気を目の当たりにして“神眼”を発動したまま、彼の不意の攻撃にも対応出来るように体の力を抜いてダラリと様子を窺う。

 イスカも左手の親指でサーベルの鯉口を抜き、右手をサーベルの柄に添えていつでも剣が抜けるように構える。
 

「なっ…!?」


 そんな中、ゴジはジンベエの行動を“未来視”して目を見開いた。

 ジンベエはゴジの視た未来通りにその場で胡座をかいて座ると両拳を地面に着けてゴジとイスカに対して深々と地面に額が着く程に深く頭を下げる。


「アーロンの暴走を止めてくれたこと…この通り感謝致す。」
 

 土下座と言えば正座をして行うモノとされているがそもそも正座とは、読んで字のごとく「正」式な「座」り方を表す。武人であるジンベエにとっての正式な座り方が「正座(胡座)」であり、その状態で頭を下げるのは彼にとっては土下座と同じ意味である。

 戦国時代は機動性を重視して片膝付きや胡座が正座とされ、戦国武将達は胡座をかいた姿で描かれているのは戦国時代における正しい座り方正座が胡座だった証拠である。

 現在の膝を折る座り方が正座とされ始めたのは江戸時代に入ってからであり、元々は屈膝座法(くっしつざほう)と呼ばれていた。

 屈膝座法(くっしつざほう)は最も立ち上がり難い座り方である為、攻撃の意思が無いことを相手に示すモノとされ、天下泰平の世となった江戸時代には、将軍に拝謁する際、屈膝座法(くっしつざほう)が正式な座り方と採用されて今日まで正座として広まっているのだ。


「てっきり文句のひとつでも言われるもんだと思ってたんだが、これは全くの予想外だったな。」

「はい。頭を下げてお礼を言われるなんて思ってませんでした。」
 

 ジンベエの行動にゴジ達は完全に予想外で面食らった。

 アーロンを拿捕した事でジンベエと戦うことになる覚悟で魚人島に来たのに歓迎された挙句、その男に突然頭を下げられたのだから当然の反応だろう。

 ゴジはコアラとの再会を見た瞬間に“この男は大丈夫”ではないかと思い、自分達にアーロンを捕らえたことを感謝して頭を下げるジンベエを認めつつあるからこそ彼女をジンベエに会わせようと決める。


「ジンベエ、頭を上げろ!お前に頭を下げる気があるなら相手が違う!!」

「ぐっ…これは覇王色か!?ど……どういう事じゃ?」
 

 ゴジは覇王色の覇気を放ち、ジンベエの頭を強制的に上げさせると、顔を上げたジンベエを先程よりも険しく睨み付ける。

 ジンベエを認めたからこそ、ゴジはアーロンを解放したジンベエが許せないのだ。


「ボニー、ナミちゃんを連れて来てくれ!」


 ゴジが軍艦に待機させていた二人を大声で呼ぶ。

 ボニーがナミを伴って船から降りてゴジの横に連れてくると、ジンベエはナミを見て目を丸くして困惑の表情を浮かべた。

 ゴジはタイヨウの海賊団と戦闘になった時の事を考えてボニーにナミの護衛を任せつつ船室に留めていたが、ジンベエは船番としてボニーの姿は確認していたが、明らかに自分達に会わさぬように隠れていたナミを見て訝しむ。
 

「“黒麒麟”、その娘は?」

「彼女の名前はナミ。東の海(イーストブルー)でアーロンの支配していたココヤシ村の出身で、アーロンに母親を目の前で殺された挙句、製図の技術を見込まれてココヤシ村自体を人質されて10年間アーロン一味の奴隷として海図を描き続けさせられていた娘だ。」


 ゴジがジンベエにナミを紹介するとジンベエは驚愕の表情を浮かべる。


「なっ……なんじゃと……」
 
「っ……!?」


 ナミは涙こそ流さないが、魚人であるジンベエを前にして恐怖で肩を震わせている。

 その魚人に怯えるナミの姿を見たジンベエはその双眸に涙を溢れさせて先程よりも深く地面に頭を付けて頭を下げた。


「本当にすまんかった!!」


 ナミはそんなジンベエを見ながら意を決して話し掛けた。


「聞かせて欲しいの。なんでアーロンは東の海(イーストブルー)に来たの?私、コアラさんと貴方が確かな絆で結ばれてるって分かったし、その涙に嘘がないってのも分かるわ。アーロンと貴方達の何が違うの?」


 ナミは船室の窓から再会を喜び抱き合う二人を見ていた。

 アーロンとジンベエが根本的に違うことは見れば分かるので、素直に疑問をぶつけた。


「それを語るにはちと長話になるが全て話そう。話は200年前まで遡る。魚人族、つまり魚人と人魚はかつて“人間”ではないく、”魚類”に分類されておったんじゃ。」

「「「えっ.......!?」」」


 涙を拭って淡々と語るジンベエの話に唖然とするナミ、イスカ、ボニーとは対照的に幼い頃に元帥センゴクから歴史の教養を受けていた博識のゴジは知っているので表情を曇らせた。


「“黒麒麟”は知っとるようじゃの?」


 そんなゴジの様子に気付いたジンベエが話し掛けると、ジンベエの言葉をナミ達にもわかりやすいように噛み砕いて補足していく。


「あぁ。200年前に魚人族が晴れて“人間”と認められて魚人島を治めるリュウグウ王国は世界政府の加盟国となって王は│世界会議《レヴェリー》への参加も許されたが、俺たち人間は見た目の違いや肌の色、エラ呼吸可能な特性等から魚人族を嫌い続けた挙句、世界貴族のクソどもは200年経った今でも未だに彼等を“人間”ではなく“魚類”と呼んでいる。」

「「「なっ.......!?」」」


 イスカ達はゴジの言葉に見た目が人間に近い人魚族とは違って、見た目が違う魚人族には若干の抵抗を抱いていた自分達の心情を見透かされたようでドキリとして、ジンベエを初めとするタイヨウの海賊団は世界貴族を“クソども”と呼んだゴジに驚愕する。


「世界貴族だけじゃねぇ!!俺達人間は人とは違う事を恐れる種族だ。同じ人間同士でも肌の色が違う、思想が違う、普通の人とは違うという理由だけで差別し、時には殺し合ってきた生き物だ。そんな人間があっさりと魚人族を受け入れたと思うか?」

「ゴジ君.......!?」

「黒麒麟.......お主!?」


 魚人族を最も忌み嫌うはずの中枢の最高権力を代表するゴジの怒りの慟哭に対してイスカ達だけでなく、コアラやタイヨウの海賊団を目を見開いて驚いていた。

 誰もが安心して暮らせる世界を守ろうとしているゴジは種族が違うというだけで差別される事が許せない。


「すまない、ジンベエ。話の腰を折っちまった。」

「構わん。ワシらの為に怒ってくれる“黒麒麟”.......いやゴジの想いに心打たれた。」


 ジンベエはゴジの怒りが魚人族の差別そのものを憎むものであることが伝わったから、彼を二つ名ではなく、名前で呼ぶことで彼の想いに応えようとした。


「ジンベエ、俺も政府の人間として全てを知らなければならない。話の続きを頼むよ。」

「あぁ。ゴジの言う通りじゃ、200年経った今でもワシらは差別され続けておる。未だにこの深海一万メートルの海底での暮らしを余儀なくされとるのがその証拠じゃ。しかし、そんな世界で細々と生き長らえる事を選んだ魚人族の中で、魚人島の未来を変えようと立ちが上がった二人の人物がいたんじゃ。語ろう。二人の偉人の心の叫びを.......。」


 ジンベエはゴジ達の真剣な眼差しを受けて魚人島の未来を変えようとした二人の英雄達の物語をゆっくりと話し始めた。 
 

 
後書き
次回更新は25日12時です。

 
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