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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百九話

 偉大なる航路(グランドライン)前半の海(楽園)から赤い土の大陸(レッドライン)を超えて後半の海(新世界)へ向かう為には二つのルートしかない。

 一つはマリンフォードにある赤い港(レッドポート)からボンドラに乗ってマリージョアを経由して海軍本部G-1支部のある新世界側の赤い港(レッドポート)に降り立つ方法であるが、船を乗り換えなくてはならない点と政府関係者しか通る事の出来ないという問題がある。

 では、海賊達はどのように新世界に渡るのか?

 それはもう一つのルートを通るのだ。

 そのルートとはマリージョアのある赤い土の大陸(レッドライン)の地下、海底一万メートルにある大穴を通過する裏ルートである。


「ゴジ君、間もなく魚人島に着くわよ。」


 “航海士”を務めるナミが魚人島が近付いている事を嬉しそうに報告する。


「ナミちゃん、海中航海は初めてなのにもう海流を読んでるなんて凄いわ。」

「いえ、コアラさんの操舵術が凄すぎるの。それに海王類はゴジ君を恐れて逃げていくもの……。」


 ナミの海流の流れをも読む航海術と魚人空手師範代として水を制圧する術を持つコアラが揃った船は海流に乗ってぐんぐんと海底に向けて進んでいく。

 たまに船に近づいてくる海王類がいるが、覇王色の覇気を有するゴジがひと睨みすると逃げていくので、魚人島に辿り着く前に7割の船が沈没すると言われているが、全く障害もなく目の前に赤い土の大陸(レッドライン)の大穴の中心にある目的地の魚人島がある明るい光に照らされた二つのシャボンに覆われた島が見えていた。


「いや、二人のおかげさ。ナミちゃん、コアラありがとう。おかげで快適な航海だったよ。」


 ところで何故船が海底に潜れるのかというとシャボンディ諸島にあるヤルキマン・マングローブの樹液は空気を含むと膨らむ性質があり、多少の衝撃では割れない風船になる。

 この樹液を活用したコーティングと呼ばれる作業により船全部を覆う膜を張ることが出来き、この膜は色々な圧力を軽減する力を持っているので海底一万メートルの水圧にも耐えられて船は海中に潜る事が出来るのだ。


「魚人島もシャボンで覆われてるんだな。でも、ここだけは海底なのに明るいんだ?」


 リュウグウ王国は赤い土の大陸(レッドライン)の地下にある大穴に巨大なシャボンで覆われた魚人島本島とその上にある宮殿「竜宮城」の存在する浮島による二つの島で構成され、海底の楽園と言われる偉大なる航路(グランドライン)の名所でもある。

 ここまでは漆黒の闇が届かない暗闇の深海を航海してきたので、ボニーは海底一万メートルにも関わらず、魚人島を覆うシャボンの周辺だけは太陽の光が差し込む幻想的な光景に首を捻るとコアラがその疑問に答える。


「よく見て。魚人島を覆うシャボンが流されないように木の根に固定されているでしょ。あの木の根は陽樹イブ。その幹や葉は聖地マリージョアに聳え立ち、その葉で受けた太陽光をそのまま魚人島まで送り届けるのよ。」


 陽樹イブにより地上の日光が届き、光合成を行う植物やサンゴにより空気が供給されるため人間も活動することが出来るのだ。


「ということは地上が昼ならここも昼で、夜なら夜になるの?」

「イスカさんの言う通りよ。話には聞いてたけど、ほんと綺麗なところね。やっと魚人島に来ることが出来たわ♪」


 コアラはタイヨウの海賊団達から魚人島の話を何度も聞いていたから詳しいのだが、当然ながらここへ来るのは初めてで目を輝かせて興奮している。


「楽しみだな。魅惑の人魚達がもてなしてくれるマーメイドカフェ。」
 
「「「違うだろ!」」」
 
「いでぇぇぇぇ!!?」


 ゴジは美人な若い人魚で構成されるマーメイドカフェダンサーズ達がもてなしてくれるという魚人島の名所の一つマーメイドカフェに思いを馳せていると全員からツッコミを受ける。


「あ〜ボニー大丈夫か?」


 無謀にもツッコミに際してゴジの頭にカカト落としを放ったはずのボニーは足を押さえて涙目になっている。
 

「なんて石頭だよ!てめぇ、あたしの足折る気か!?」

「いや、ボニーはちゃんと武装色の覇気を纏ってたから避けなくても大丈夫だと思ったんだ。ごめんな。」


 ゴジは風呂場でのナミのツッコミとは違いボニーが足に武装色の覇気をまとっているのが見えたので、怪我をする事はないとあえてツッコミを受けた。

 しかし、成長したゴジは無意識的に外骨格に加えて常に一定量の武装色の覇気を纏っているので、ボニーの覇気は相殺されてかかと落としはゴジの外骨格に阻まれた。


「なんでただのツッコミに覇気がいるだよ!」


 ちなみにこの常に武装色の覇気を纏う技を使える化け物がゴジの他に少なくとも世界に四人はいる。彼らは“四皇”と呼ばれている。
 

「とりあえずゴジ君とイスカさんはまず王下七武海“海侠”のジンベエと視察任務よね。あたしもクリミナルブランドの服を見たいから終わったらゴジ君とショッピングに行かなくちゃ♪」


 世界で大人気のブランドであるクリミナルブランドのオーナーは魚人島に住むパッパグというヒトデ魚人であり、ナミはショッピングを楽しみにしていた。
 
 ナミの中ではちゃっかりとショッピングにはゴジと行くことになっている。


「そうだな。視察は俺、イスカさん、コアラで行く。俺がいいと言うまでナミちゃんは船室で待機してくれ。ボニーは護衛を頼んだぞ!」

「「「「はっ!」」」」


 ゴジの指示を全員が了承する。

 コアラから聞く魚人の話とナミから聞く魚人の話はまさに正反対であり、ゴジは未だに“海侠”のジンベエという男が悪人なのかそうでは無いのか測りかねているので、友達と豪語するコアラとタイヨウの海賊団との再会の様子を見てナミを合わせるか決めようと判断した。
 

「ナミちゃん、私浮かれちゃってごめんなさい。」


 コアラはゴジが魚人に酷い目に合わされたナミの心情を察して船室待機を命じた事に気づき、今まで浮かれていた自分を恥じてナミに頭を下げた。


「えっ!?コアラ大佐。いいのよ。友達に会いたいって思うのは当然の事だもの。」


 ゴジは反省するコアラに対して満面の笑みで応えるナミを見て、自分の負の感情よりもコアラが友達と会える事を心から喜んでいる姿に関心する。


「ナミちゃんはいい女になるな♪」

「でしょ?ナミちゃんはいい子だから、ゴジ君泣かしたら許さないわよ!」

「も……もちろんだよ。」


 イスカの殺気の篭った本気の視線にゴジは笑顔で即答する。

 イスカにとってゴジは手のかかる弟であると同時に尊敬出来る上官としか思っていないので、ナミの気持ちにしっかりと応えてあげて欲しいと思っている。


「はぁ.......ナミちゃんの気持ちが届くのはまだまだ先になりそうね。」


 余裕そうなゴジの笑顔を見てイスカが肩を落としている内にまもなく魚人島に到着する。


「ゴジ、そろそろ魚人島のあるシャボンに入るぜ!」

「イスカさん、ボニー。入島早々にタイヨウの海賊団との衝突する可能性もある。俺達は特に気を引き締めていこう。」

「えぇ。分かってるわ!」

「おうよ!」


 戦闘力が皆無で魚人に苦手意識を持つナミは言わずもがな。コアラはワクワクしながらタイヨウの海賊団と友達なので戦闘になっても戦力として不安がある。


「さて、どうなることやら…。」


 ゴジはジンベエ達との再会を楽しみにするコアラと、覚悟を決めた顔するナミを横目で見ながら、不安を胸に魚人島に到着した。
 

 ◇


 上陸したゴジ達を出迎えたのは、予想通り魚人島の港を囲むように待つ“海侠”のジンベエ率いるタイヨウの海賊団であり、ゴジはいつでも戦えるように体の力を抜きながら、先陣を切ってゆっくりと船に掛けられたハシゴを降りる。

 タイヨウの海賊団の先頭に立つのは甚平と呼ばれる紺色の着流しを来た青色の鱗で覆われた皮膚に巨大な牙を持つジンベエザメの魚人である。

 彼は魚人島に降りてきたゴジを見据えながら、ゴジの前まで歩いて目の前にくると突然右掌を開き下方に出して中腰になる。


「お控えなすって!手前生国と発しますは海底の国リュウグウ王国“魚人街”!!ならず者の街にてならず者として生き長えておりやしたが、兄弟達の助けにより王下七武海の末席に名を連ねさせております!!人呼んで“海峡”のジンベエ!以後面体お見知りおきの上、よろしくお頼み申します!」


 ジンベエはゴジの警戒を察してか、敵意が無いことを示す為に彼の出来る最上級の挨拶をするとゴジも毒気を抜かれる。


「“海侠”のジンベエ、丁寧な挨拶痛み入る。俺が中将のゴジだ。長い間、面会に応じられなくて済まないな。」


 ゴジも敵意が無いことを示すために笑顔でジンベエの突き出した手を取って握手する。


「「「おぉ…。」」」

「なんだ?」


 ゴジとジンベエが握手した瞬間にタイヨウの海賊団から驚嘆の声が漏れ、張り詰めていた空気が霧散した。


「ワッハッハッハ!なんと気持ちの良い風を持つ御仁じゃ。なるほど、これが“黒麒麟”か。」
 

 ジンベエはなんの躊躇いも一切の負の感情も抱くことなく魚人である自分との握手に応じたゴジに対する感嘆の声を漏らした。

 魚人は人間から差別を受け続けてきたので、自分達に向けられる負の感情には聡いが、それを一切感じさせないゴジのこの握手だけでタイヨウの海賊団に認められたと言っても過言ではなかった。

 しかし、これから彼等はさらに驚愕することになる。


「おぉーーい!皆ああぁぁぁぁー久しぶりぃ!!!」


 船から海軍コートを羽織ったコアラが顔を出したと思うと、満面の笑みで両手を頭の上で大きく振りながら一目散に船に掛けられたハシゴを駆け降りて来た。


「なんと…まさか……コアラか!?」

「「「えぇーーっ!?コアラ!?」」」


 ジンベエ達タイヨウの海賊団は笑顔で手を振るコアラの姿を一目見て、昔の面影の残る彼女にすぐに気付き、大きく目を見開いている。


「ジンベエの親分〜!!」


 コアラは成長した自分を認識してくれた嬉しくて、そのままの勢いでジンベエの胸に飛び込むと、ジンベエも満面の笑みを浮かべているコアラをしっかりと受け止めて抱き締めた。


「おぉ!!大きくなったのぉ!!?」

 
 ジンベエの知るコアラは世界貴族に笑うことを禁じられて、笑うことの出来ない子供で自分達と過ごした半年間で、子供としての笑顔を取り戻した子供だった。

 別れて8年になろうというのに未だに自分達魚人を友達と見てくれていることにタイのアニキ(フィッシャー・タイガー)の想いが届いていることを感じて嬉しかった。

 コアラの生来持つ人懐っこいその性格は、かつてジンベエを筆頭にタイヨウの海賊団の魚人達が持っていた人間に対する恐怖感を徐々に解かしていった。

 彼女がいなければ、リュウグウ王国の人間と共存する地上進出の理想の架け橋になればという思いから“海侠”のジンベエが王下七武海となる事はなかっただろう。


「ワシらはコアラという名前の海兵が活躍していると聞いて気になっておったが、まさか本人とは驚いたわい!?」


 ジンベエ達タイヨウの海賊団が“アニキ”と慕う初代タイヨウの海賊団船長フィッシャー・タイガーはコアラを故郷に送ったせいで海軍に待ち伏せされて殺された。
 
 ジンベエはコアラと再会し、自分に向けて船から駆け降りてくる彼女を見ながら自分の心の内に湧き上がる殺意をちゃんと抑えられるだろうかと一瞬頭をよぎったが、自分の腕の中に飛び込んできた幼い頃のまま自分達を慕ってくれるコアラを抱き留めた時…心の底から溢れる感情は殺意とは全く正反対の情愛。久しぶりに会えた事の歓喜と立派に成長した事に対する安堵だった。


 ───本当によかった……。


 コアラと別れた時は11歳だったので19歳の大人の女性に成長した彼女を見て、タイガーの事を思い出しても、タイガーの死の原因ともいえるコアラ(友達)に対して殺意など微塵も湧かなかったことが嬉しくて目に涙が溢れた。


「えへへっ!皆久しぶりぃ!!」


 ダイガーの想いを受け継いで、人間との共存を望むジンベエを始めとするタイヨウの海賊団は改めてコアラの笑顔を見て嬉しくなる。
 

 ───タイのアニキの想いは“次の世代”に確かに伝わっとるぞ! 


 ジンベエとタイヨウの海賊団は自分達を軽蔑することなく握手に応じたゴジ、何よりも成長してなお未だに友として接してくれるコアラを見ながら時代の変化を確かに感じていたのだ。


「コアラ、皆お前と話したくてうずうずしとる。近くで顔を見せてやってくれ。」

「うん♪」


 ジンベエは抱えていたコアラを優しく下ろして、自分の後ろにいるアラディン達の元へ行くように背中を軽く押すと、コアラは嬉しそうにタイヨウの海賊団の元へ駆けて行った。 
 

 
後書き
次の更新は23日の12時です。

次話はジンベエとナミとの邂逅です。 
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