星河の覇皇
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第七十九部第三章 不測の事態その二
「それでだが」
「これからですね」
「全艦隊を出港させ」
「そして進軍中に集結し」
「国境で戦闘に入りますね」
「集結も急ぐ」
進軍中、その時にというのだ。オムダーマン軍もティムール軍も軍の集結はそれぞれの港ではなく時間短縮のために進軍中に行っているのだ。
「いいな」
「はい、それでは」
「まずは全艦艇出港しましょう」
何十万隻もの艦艇達をそうさせるというのだ。
「将兵も全て配置に着いていますし」
「それでは」
「すぐに出港ですね」
「そうする、当然このアリーもだ」
アッディーンが今現在乗艦しているこの艦もというのだ。
「出るぞ」
「そしてですね」
「あの艦艇も出港させますね」
「そして時が来れば」
「その時は」
「使う」
戦場でというのだ。
「いいな」
「わかっています」
「では使えるなら」
「あの艦艇を使い」
「そうして勝ちましょう」
「シャイターン主席に気付かれては駄目だが」
敵将である彼にはというのだ。
「しかしだ」
「それでも今回もですね」
「連れて行き」
「そうしてですね」
「いざという時にですね」
「使いいましょう」
「そうする」
こう言ってだ、アッディーンも戦場に向かった。オムダーマン軍とティムール軍は三度目の会戦に入ろうとしていた。
その頃ティムールの首都星系サマルカンドにおいて危うい事態が起こっていた。サマルカンド星系の中でとりわけ栄え首都機能が集中している第一惑星に隕石が近付いていた、しかもその隕石の動きが。
天文観測員達はその隕石の動きを見て言った。
「おかしいな」
「ああ、逸れる筈だがな」
「急にこっちに向かっているぞ」
「それも信じられない速さで」
「これは危険だ」
彼等は即座に判断を下した、それでだ。
首都を防衛する部隊だけでなく首都星系の知事にも連絡を入れた、すると知事であるマサルーム=ワムトはすぐに言った。
「軍に隕石への攻撃命令を」
「出しますか」
「今すぐに」
「出すわ」
中年の女の声だ、実際にワムトは中年の女だ。黒髪を長く伸ばし黒い切れ長の目は彫があり鼻も高い。
「私の責任で、そうしてね」
「はい、隕石をですね」
「破壊して」
「そうして首都の難を避ける」
「そうされますね」
「そうするわ、あと市民達は」
第一惑星の彼等はというと。
「すぐにね」
「危急に備えてですね」
「シェルターに入る」
「そうしてもらいますね」
「破壊するけれど」
それでもというのだ。
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