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MOONDREAMER:第二章~

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第五章 ローズ味
  第17話 人里まるごと大栽培

 楓とにとりの、盟友としての絆を深める意味合いとなった弾幕ごっこからしばらくしての事。
 彼女らと華扇は今日は人里の人が余り通らない広場へと赴いていたのだった。
 ちなみに、そこで何をするのかを華扇は聞かされていない。なので、業を煮やして彼女は二人に聞くのだった。
「……そろそろいいかしらね? あなた達が一体何をしようとしているのかを教えて貰っても?」
 そう華扇に言われると、二人は申し合わせたように笑みを返し合って、そして見事な調和でこうのたまった。
「「それは秘密です♪」」
「くっ……」
 その人を小馬鹿にするかのような二人の態度に、華扇は何とかこめかみをピクピクとさせるだけで堪え切る事に成功していた。
 そんな華扇に対して楓は更に悪ノリをしてこう言う。
「まあそうあせらないで下さい、隻腕の仙人さん」
「ぐぬぬ……」
 何だかよく分からないが、取り敢えず物凄くおちょくられたような響きがその台詞には備わっていたのであった。
 だが、それも華扇は堪える。何故なら彼女は二人と違って『大人』なのだから。
 そんな華扇に対して、そろそろからかいが過ぎるなと思い、楓はにとりに切り出すように仕向ける。
「それでは話を進めましょうか。にとりさん、例の物は持って来てくれましたか?」
「うん、バッチリだよ」
 楓に言われてにとりが懐から取り出したのは、何かの種であった。それは黒くて光沢のある……。
「この前楓に言われた通り、スイカを食べた後に種を取っておいたよ♪」
「よくやってくれましたよ、にとりさん♪」
 そう言いながら楓はにとりを労うのであった。
 そして、彼女はおもむろに今いる広場の地面に穴を開けると、そこに今しがたにとりから譲り受けた種を埋め込んでいったのだった。
「しっかり根付けよ♪」
「何でタメ口? でも、それよりも……」
 華扇は楓の口調よりも話題にすべき事がそこにあると思い、口にする。
「まさか、スイカを種から育てるって魂胆かしら? それなら、こんな広場で即席で出来る事ではないわ」
 そして、華扇は自分の庵の側にある畑で本格的に育てるのがいいと楓に薦めるのであったが、楓はここで首を横に振るのであった。
「華扇さん、ちょっとこれは普通の栽培とは違うんですよねぇ~レロレロレロ……」
「くっ……」
 何か今回の楓はいちいち勘に障るような言い回しをしてくるなと思いつつも、華扇はある事に気付くのだった。
「あら……どうも辺りが騒がしくなってきましたね?」
「あ、漸く来てくれましたか?」
 そう言葉を返す楓の言う通り、この広場に何やらぞろぞろと里の子供達が徐々に集まって来るのだった。
 そして、集まって来た子供の内の数人がこう言った。
「楓お姉ちゃん、今回は一体どんな面白い事を見せてくれるだい?」
「前のチルノとの弾幕ごっこも良かったけど、今回のも楽しみにしているよ♪」
 それに対して、楓はどこか気取ったような様子でこう言い放つ。
「皆さん、お待たせしました。これから、面白スイカショーをお見せしますよ♪」
 そう大げさに集まって来た子供達に言いながらも、彼女はにとりに呼び掛ける。
「それではにとりさん、子供達のためにも張り切って行きましょう」
「うん、盟友のためだもんね。ここは頑張らないと」
 気付けばにとりも張り切った様子を見せていたのだった。ちなみに、ここににとりの元来の人見知りの様子は見られなかった。恐らく、これも十年の間に克服したのだろう。
「「それじゃあ、皆さん注目して下さい♪」」
 そう言うと二人は同時にスペルカードを放つ。
「【育符「グングンバイオエナジー」】」
「【洪水「ウーズフラッディング」】」
 同時に放たれた二人のスペル。一つは水、そしてもう一つは育成エネルギーを多分に含んだ霊気であった。
 そして、それらが向かうのは勿論、先程楓がスイカを植え込んだ地面であった。
 二つのスペルがそこに当たると、面白いようにみるみる内に地面へと吸い込まれていったのである。
 それだけでも目を見張る光景だろう。だが、ここからが真骨頂なのであった。
 何と、それらのスペルの当たる地面から芽が次々に出てきたのである。いくらなんでも早すぎであろう。植物の種が地面に植えられてから発芽するまでには時間が掛かるのだから。
「ほぉ……」
 この異常事態には、さすがの華扇も舌を巻くのであった。幻想郷でもこのような展開はそこまでないだろう。
 そして、芽は蔓の状態にまで成長し、やがてそこかしこに花が咲く状態にまで発展し、ここからがお待ちかねの、しましま模様のスイカの実が成る所までまるでビデオの早回しの如く展開されていったのであった。
「これは見事な……」
 気付けば華扇はその光景に、思わず素直な称賛を向ける程であったのだった。それだけこの演出は目を見張るものがあるのだ。
 だが、これでは成長が早いだけのスイカの育成に過ぎないであろう。
「にとりさん、本番行きますよ♪」
「うん、任せておいて♪」
 そう言って二人は頷き合うと、互いに送り込んでいるスペルの出力を最大限にしたのだった。
 それにより、この流れに更なる展開が築き上げられていったのである。
 何と、既にバスケットボール大にまで十分成長したスイカの実が、更に成長をしていったのだった。当然これには誰しもが驚く。
「うわー、大きくなってる♪」
「にとりさんも楓さんもすごいです~♪」
 子供達から口々に称賛の声が二人には投げ掛けられていったのであった。
 その声援に応えるかのようにスイカの異常成長はグングン進み、気付けば彼等は運動会の大玉サイズにまで成長していたのである。
「……もういいかな?」
「うん、これ以上はやりすぎだと思うからね」
 そう頃合を見計らって、二人はスペルの発動をそこで取り止めたのだった。
 そして、後に残ったのは、たわわというレベルではないまでに特大に実ったスイカ達であったのである。
「……」
 それを見ながら華扇は暫し唖然としていたが、漸く頭の中に言葉を見付けてそれを口にする。
「……すごく大きいスイカですけど、一体こんなに成長させてどう処理するのですか?」
 そう言われる事も楓は想定内であったのだ。それを彼女は言葉に紡ぐ。
「チッチッチ、そこでこれを人里で作ったという訳ですよ。子供達にはショーを楽しんで貰って、皆にはスイカをご馳走する。この計画をにとりさんと私が考案したって事ですよ」
 相変わらず今回はどこか勘に障る言い方をする楓であったが、もう華扇はその事は気にならなくなっていたのだった。
 だが、気になる事は他にはあり、それを華扇は指摘する。
「でも、こんな大掛かりなイベントをして、『あの人』はどう思うのかしら?」
 その問いに答えたのは、楓ではなくて里の子供の一人であった。
「華扇さん、その事なら心配要りませんよ。今回の事は慧音先生の許可をちゃんとみんなで取っていますから♪」
「成る程、それなら問題ないわね……」
 里の守護者であり、生真面目な性格の上白沢慧音。そんな彼女の許可の下の演出であれば、今回の催し物には何ら問題はないだろう。
「さあ華扇さん、その事が分かったら、これから里のみんなで楽しいスイカパーティーをしましょう♪」
「そうね、それがいいわ」
 その意見には、華扇は否定する意味合いはなかったのだった。行う側も見せられる側も楽しく、皆が喜べるようなこのような催し物には何ら落ち度は存在しはしないのだから。
 こうして、里での一大スイカイベントは始まっていったのである。
 順調に楓達は里の者達に実ったスイカを提供して行き、このイベントは滞りなく遂行されていった。
 と、そんな最中で楓はある事に気付き、華扇に言うのだった。
「でも華扇さん。さっきの話だと、慧音さんは『自分が半人半獣』である事を里のみんなに明かして、しかもみんなからは拒絶されなかったって事ですよね。良かったあ」
 そういう話になるだろう。何せここは楓のいた世界の十年後なのだから。その世界で十年経った後でも歳を取っていない慧音が受け入れられている事を考えれば、自ずと答えは導き出されるというものであるのだ。
 その楓の指摘に対して、華扇は答える。
「ええ、リスクは当然かなりあったけど、彼女の人柄とそれまでの行い、そして正直に打ち明けた事が項を奏したという事よ」
「簡単に決めてはいけないかも知れませんけど、自分の気持ちに素直になるのは良いという事なんですよね」
 そう言って楓はしみじみとそう結論付ける中で華扇は思った。
『自分に正直に』か、と。やはりその事を良く考える必要があるのかと彼女は考える所なのであった。
 
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