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MOONDREAMER:第二章~

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第五章 ローズ味
  第16話 楓と幻想郷式『水のともだち』:後編

 楓とにとりの弾幕ごっこは程よく興が乗っているものとなっていたのだ。
 こうして、にとりの方も決して心が折れてなどはいない状態という事である。何せたった一度目の攻撃を防がれただけなのだ。一度目が駄目だったなら、二度目にぶつければいいだけという事なのである。
 そう、二度目の出番である。にとりは懐から二枚目のスペルカードを取り出すと、それの宣言を行ったのである。
「二枚目行くよ。【水符「河童のポロロッカ」】!」
 そのスペル発動により、にとりの周囲には彼女の妖力が籠もった水がほとばしったのである。そして、にとりの第二のスペル発動になるのだ。
「来るわね!」
 楓の方もそのスペルの発動に対して身構えて臨戦体勢となる。これでどこから来ても……。
 そう楓が頭の中で構想している中で、遂ににとりの第二のスペルの効果が現れる事となった。
『どこから来ても』。そう思いながら構えていた楓であったが、今回は些か彼女の読みは浅かったようであった。
 確かに彼女はどこからでも、そう思ったのだが、今回のは彼女の構想の範疇を越えていたのだ。
 それが意味する所は……。
「両側から……っ?」
 この楓の言葉が今の現状を物語っていたのである。そう、にとりが仕掛けた攻撃は楓の両端から繰り出されてきていたのである。
 それだけなら先程の『ウーズフラッディング』の二番煎じであろう。だが、今回のはそれとは徹底的に違うものがあるのだった。
「しかも、今度は波状の水が……」
「その通りだよ楓」
 驚きの態度を見せる楓に対して、にとりは得意気に言ってのけたのであった。
 そう、ここはにとりの言う通りであろう。同じ挟み撃ちの形であっても、前回のは水の弾であるが今回は波というしっかりした形状の産物なのである。
 それが楓を両脇から押し潰さんばかりに迫って来ているのだ。それはまさに別々の川の流れがぶつかり合う現象──ポロロッカそのものであった。
(さて、どうしたものかな……?)
 だが、ここに来て楓は落ち着いていたのである。アイデアを絞ればどうにかなるという思いが彼女にはあったのだ。
 それは、楓の性質の現れかも知れないのだ。工夫をすれば道が切り開けるという発想の下である。
 奇しくも彼女の姉である勇美も幻想郷にて依姫の下で自らの工夫により成果を出していったのだ。その辺りも血は争えないという事であろう。
 さておき、どうやら楓はこの今の状況を打破する手立てを思い付いたようであった。それを実行すべく彼女は自身の霊力をその両手へと籠めたのである。
「さて、後はこれがうまくいくかどうかね」
 そう言いながら楓は迫り来る波へと視線を向けたのだ。
「何をする気かは知らないけど、これを喰らったらタダじゃ済まないよ♪」
「お構い無く。ここはにとりさんのしてくれたスプレーで防水加工はバッチリなんですから♪」
「……それは何か論点が違うって……」
 そんな話に発展してにとりは首を横に振った。確かに自分の防水スプレーの利き目は確かなものの、この攻撃をどうこう出来るようなものではないのだ。
「第一、私の能力は水だよ。それが防がれるならスプレーなんかしないって」
「ですよね~」
 もっともなにとりのツッコミに対して、楓はペロリと舌を出して茶目っ気を出して見せたのである。
 だが、その強がりもここまでだろうとにとりは踏むのであった。いくら相手が強がろうとも、この文字通りの波状攻撃を攻略出来るとは思っていなかったからだ。
 そうにとりが踏む中で、遂に楓が二つの波に飲まれてしまったのだった。
 そして、激しく巻き起こる波の奔流。
「今度こそやったよね?」
 そう言ってにとりは自分の優位を確信する。確かに今しがた楓を両側から押さえつけたのである。故に、ここから抜け出すのは容易ではないだろう。
 にとりはそう思った瞬間であった。突如として楓を包んでいた奔流に無数の閃光が走ったのである。
 そして、それはものの一瞬だった。何と、確かに楓を捉えていた筈の波が一気に、まるでキャベツのように千切りにされて呆気なく弾け飛んでしまったのであった。
「いいっ!?」
 これにはにとりは声がひっくり返るようになるしかなかったのであるのは無理もないだろう。そして、後に現れたのは五体満足の楓であった。その両手には包丁を持っている。
「楓……一体何を……?」
 その問いに対する答えを、楓は口にする。
「【剣符「千切り・明王の捌き」】です! つまり、今のにとりさんの波を私の包丁で千切りにさせて頂いたという事ですよ♪」
「そんな事って……?」
 にわかには信じられない芸当であった。だが、ここは幻想郷なのだ。信じられないからといって認めないというのは命取りなのである。
 だから、ここはにとりもその事を踏まえてどしりと腰を据える意気込みに入っていく。
「ふふふ……あはは……♪」
 ここで、突如としてにとりは笑い声を上げたのだった。当然それを見た楓は吃驚してしまう。
「どうしたの、にとりさん? もしかして、アナル○ァックのしすぎでおかしくなってしまったんですか?」
「いや、もう少し上品な考察をしようよ。そして、いい加減アナルの話題から離れようって」
 折角興に乗って来た所なのに、楓のその下品な発想に冷めさせられそうになる。しかし、彼女は気を取り直して続ける。
「大丈夫、別に気が違っちゃったなんて事はないからね」
「良かった……」
 にとりにそう言われて、楓はほっと胸を撫で下ろすのであった。対して、にとりは今の自分の心境を明かしていく。
「私は弾幕ごっこって、こんなに奥が深かったんだなって、改めて再確認出来て良かったって思ったんだよ。ありがとうね、楓」
「そんな、お礼だなんて……」
 そう楓は謙遜ではなく本心から思うのであった。自分はただがむしゃらに弾幕ごっこに打ち込んでいただけの事である。だから、別段感謝されるような事はないと彼女は思う所なのであった。
 だが、悪い気はしなかった。こうして相手が弾幕ごっこを楽しんでくれているようだし、何より自分自身が楽しいと感じられているからである。
 その事さえ分かれば、楓は後は流れの乗るだけであったのである。
「にとりさん、どこからでもかかって来て下さい♪」
「その言葉、後悔する事になるよ♪」
 そう言い合い、興に乗った二人は向かい合いながら互いに微笑みあったのだ。そして互いに適度な距離を取り合い再び臨戦態勢へと入る。
 その後、両者は暫しの間視線を交わし合っていたのであった。それは、二人ともいつ出るかを伺い合っての事である。
 この時間も、やがて終わりを迎える事となる。そして、先陣を切ったのはにとりの方であった。
「楓が弾幕ごっこ歴が浅いってのに、ここまでやるなんてね。だから私もとっておきの物を見せる事にしたよ」
「!」
 にとりがそう言い切ると、彼女が纏う雰囲気にも変化が見られたのだ。それをいち早く楓は察知して身構える。
 ──ここでにとりの強力なスペルが来る。そう見切りをつけながら楓は油断なく相手を見据えていたのだ。
 そして、にとりの纏う妖力がより強力となった所で、彼女は口を開いた。
「これは対魔理沙用に使いたかったんだけどね。それを楓が初めて見る事になるんだから光栄に思っていいよ♪」
 そう言い切って妖力を盛大に解放しながらにとりはスペル宣言をする。
「これが私のとっておきだよ。【水操「トドメキメガウォーターサイト」】っ!」
「来るっ……」
 その宣言により放たれるオーラのようなものだけで、このにとりのとっておきの恐ろしさというものが肌で感じられるかのようであった。
 そう楓が感じ取っている間に、にとりの周りに変化が見られてくる。
 彼女の背負うリュックサックの中から、何やら球状の機械が複数出現したのである。
 そして、それらは宙を交いながらにとりの周りを護るように展開されていったのだった。
 その光景を見ながら、思わず楓が呟いた。
「何だかそれ、目玉みたいですね」
「楓もそう思う? だから私はこのスペルに『百々目鬼』の名前を取って付けたんだよ」
 そして、にとりはその妖怪について説明する。曰く、その妖怪はスリ──即ち盗みを働いた者に取り憑く存在であると。
「だからね、これは盗みや不法侵入ばっかり働いている魔理沙へのお仕置きを望んで名付けたのもあるんだよね♪」
「何か……やっぱり魔理沙さんってすごい人ですね。色々な意味で会ってみたくなりました」
 そう切実な願いを楓は漏らしてしまう。その願いがそう遠くない内に叶う事になるのはまた別の話である。
 そんな想いを楓が馳せている間にも、にとりのスペル発動の効果は刻一刻と発現されていったのだった。
 にとりの周りに送り出された『目』。それらは勿論これだけでは終わる事なく、次の行動段階へと移っていった。
「それじゃあ、次行くよ♪」
 にとりがそう言うと、彼女は今度は妖力を足下の水辺へと向けて放ったのである。
 すると、そこからポコポコと水が沸き上がり宙へと向かっていった。それは、最初のスペルと同じような感じの第一印象に見受けられた。
 だが、ここからが違ったのだった。宙を舞った水達は、次々に『目』へと向かって行き、そしてそこに纏わり付く形となったのである。
「?」
「うん、これで準備は完了だね」
 訝りながらその光景を見ていた楓に対して、にとりは得意気にそうのたまってみせた。その後、彼女は新たにリュックサックからある物を取り出したのである。
 それは、サングラスを片側だけにして、そこに何やら機械を取り付けたような代物であった。片眼鏡と称するには些か無骨なアイテムである。
「にとりさん、何でスカ○ターなんて出しているんですか? 私、人間だから余り戦闘力ありませんよ」
「……そういう別次元の話は止めようね」
 楓のその見も蓋もなく、色々とマズい話に頭を抱えるにとり。だが、彼女は気を取り直してこう言う。
「これはね、アナライザーの役割をする道具だよ。私のこの『トドメキ・メガウォーターサイト』を使う際には欠かせないんだ」
「アナライザー……アナラ……アナ……」
「はいそこまで。『アナライザー』はそれとは関係ないから。英和辞書で調べてね」
「良かったぁ……」
「露骨に安心しないでって。私が河童だからっていい加減その話題から離れてくれないと怒るよ」
「ごめんなさい」
 にとりが六割位本気で怒気を込めて言ったら、漸く楓は自重してくれる姿勢を見せてくれたのであった。
 それを見て安心したにとりは、ここで勝負を再開する。
「それじゃあ、迎撃開始と行きますか♪」
 そうにとりの言葉を皮切りに、とうとう敵の攻撃は稼働したのだった。そして、彼女の周りの目達はまるで統率の取れた空軍の如く一糸乱れぬ動きで周囲に展開していった。
「くっ、でも何の!」
 多少数が多かれど、一度に向かってこれる数は限られるだろう。故に、ここは落ち着いて一体一体入念に相手をしていけば何とかなるだろうと踏んで楓は迎え打つ。
 そして、目の一つが楓の前に繰り出されたのである。
「はっ!」
 その掛け声と共に楓は迫って来た目の一体を包丁で一刀両断したのである。それにより目は綺麗な切れ目によって真っ二つになり寸断され、その後両方とも爆散した。
「やるね」
 その様子を見ながら、にとりは素直に楓の奮闘を称賛する。だが、あくまで彼女は余裕の態度だ。
「でも、全く堪えているようには見えませんけど」
「分かる? これはまだ序の口だからね」
 そう言うとにとりは新たな指令を次の目へと送り込む。今度は二個の目が楓を包囲するように動きを見せたのであった。
「……」
 その動きに対して、楓は実に落ち着き払って両手に持った包丁をそれぞれ片方ずつその目に合わせて振りかざし、これらも各々一閃の下に沈めたのである。
「へええ……」
 そう感心の余り呆けた声を出すにとりであったが、その態度には余裕が見て取れる程現れていた。
「でもにとりさん、まだまだ問題ないって顔していますね」
「そういう事だね。じゃあ、次はこんなのどう?」
 にとりが言うと、次には三つの目が楓を取り囲むように配備され、彼女の行動を制限した。
「三つ……ね」
 先程までは手に持った包丁の数だけで丁度目を撃退するのには事足りていたのである。だが、今度出現したのは三体なのだ。これが無理な計算なのは誰でも分かるというものだろう。
 攻撃の手が足りなくなった楓の様子を見計らい、にとりは三つの目に指令を送っていく。
 すると、目の一つからまるでレーザー光線のように細く鋭い水の放出が行われたのである。そう、先程までは満足に行う事が出来なかった『迎撃』というものだ。
 だが、楓は至って慌てる事はなかった。相手が攻撃してきてこその弾幕ごっこなのだ。その至極当然の事態には、まるで驚く意味などないのである。
 楓はその水のレーザーに包丁の刃を合わせる形で振り抜く。すると、レーザーはそこから真っ二つに寸断され、その先は事切れたかのように水滴が飛び散るだけに終わってしまったのであった。
「!」
 今度はこの事態を目の当たりにして、初めてにとりは驚きの表情を浮かべた。敵に囲まれていながらも、平然と攻撃を捌いて見せたその楓の芸当にさすがの彼女も舌を巻くしかなかったのだ。
 だが、これでこのウォーターサイトは完全に攻略された訳ではないのだ。故ににとりは更に指令を送っていく。
「一回攻撃を捌いたからって、いい気にはならない事だよ♪」
 にとりがそう言うのに合わせるかのように、楓を囲う目達はその動きに機敏さを増していったのだ。
 そして、目達は先程とは違って、一発二発と次々に水のレーザーの放出をしていったのである。
 それを楓は両手の包丁でいなし続けるも、明らかに徐々に押されていくのが自身にも分かるのだった。
「これは、結構きつい……ですねっ!」
 そう言って楓は背後から発射されたレーザーを振り向きざまに一刀両断してのけるが、自分でも余裕が無くなってくるのが肌で感じられる。
 その様子を見ながらにとりはこう言うのだった。
「押されているみたいだね。楓はよくやったよ。だからここで降参しても別に恥ずかしい事じゃないんだよ」
 その言葉は本心と挑発の感情が入り交じったものであった。楓はそれを聞いて複雑な気持ちとなる。
 これだけの攻撃を仕掛けてきているのだ。それを今まで対処してきた楓は自身を誇っていい所だろう。そこを相手は褒めてくれたのだ。
 それに、弾幕ごっこは案外危険な決闘方法なのだ。稀にではあるが、人間であるなら死者が出る危険性すら孕んでいるの位なのだから。
 そこで楓は自身の今後の事を考える意味でも、相手の言葉通りここで降参しておくのも悪くはないかと考えるのであった。
 彼女が今し方考えている事が、きっと顔に出ていたのだろう。今までその様子を見ていた華扇がここで彼女に呼び掛けてきたのであった。
「楓さん!」
 そう割り方結構大きな声で呼び掛けられた楓は意識がハッとなって今彼女を呼んだ華扇の方に向き直る。
「華扇さん、一体何ですか?」
 その尤もな疑問に対して、華扇はこう言及する。
「楓さん、確かにあなたは頑張りました。ここで降参するのも一つの手かも知れません」
「……」
 そう図星を突かれて、楓は驚きにより無言となってしまう。何せ華扇が今言う事は楓が考えていた事を見透かすかのような物言いだったからである。
 そんな最中華扇は続ける。
「でも、それであなたは心残りは生まれないかしら? それだけは言っておくわ」
「それは……」
 確かにそうであろう。折角ここまでにとりと肉薄する戦いを繰り広げてきたのである。勝てる可能性のある戦いなのに途中で投げ出したりしたら、そこに心にしこりのようなものが出来て後々彼女の足を引っ張る事になるのかも知れない。
「……」
 そこで楓は暫し考え込む。このまま降参しても恥じる事はないし、嘲笑うものはいないだろう。だが、楓自身はどうなるのだろうか?
 そう、問題は誰かがどうこう言うからではなく、自分自身がどう思うかなのである。
 そこまで思った楓は、ここで決心というものがついたのであった。もう、迷う必要はないだろう。
「それで、どうするのさ楓?」
「生憎だけど、降参だけは勘弁かなって今思った所かな?」
「へえ、それはいい心構えだね♪」
 楓のその弁を聞いて、にとりは本心からそう言葉を返したのであった。
 そう、にとりとてこのまま楓が降参した上で自分が勝利するという展開には正直味気なさというものを感じていたのだ。それが、相手が戦い続ける意思表示をしてくれた事で興が乗ってきたのであった。
「それでこそ、私の盟友だよ♪」
「お褒めにあずかり、光栄です♪」
 両者の戦う意思はここに最高潮になったのだ。後は互いに悔いのないように戦うだけである。
「それじゃあ、ウォーターサイト、総動員で行くからね」
 そう言うとにとりの周りに、これまでない数の目が出現したのであった。その数、十は下らないだろうか。
(にとりさんも、勝負に出てきましたね……)
 敵は持てる力の限り向かってきた、そう楓は思うのだった。ならば、こちらも勝負に出るしかないだろう。楓にはある秘策があったのだ。
 これで勝てるかは保証はないのであるが、仮に読み違いであっても、やらないで負ける訳にはいかなくなったのだ。だから、楓は挑戦あるのみであった。
 そう楓が思っている間にも、敵が放った無数の機体が彼女目掛けて迫ってきた。そして、それらの砲門全てを楓に向けて一斉射撃に出ようとしていたのだった。
「さらば盟友よ、覚悟しちゃってね♪」
 そう言って得意気になり、僅かの隙を見せたにとり。「今しかない」ここで楓は思い勝負に出る事にしたのだ。
 楓は無数の目に迫られながらも落ち着いて今の状況へと意識を向けた。
(よし、相手は高を括っていて、気付いていない)
 そうある判断をした楓は、相手に気付かれないように片方の手に持った包丁に自らの霊気を集中し始めたのであった。
 その事ににとりは気付く様子を見せずに、勝負に出て来たようである。
「いざ、百々目鬼達よ。楓を撃ち抜け!」
 そう言ってにとりは目の機体達全てに指令を出し、その指を楓に向けよう……そうした時であった。
「【昼食「サトルさんのメガネが……」】」
 そのスペル宣言があったかと思うと、にとりの顔をスレスレで何かが高速で飛んでいったかと思うと、徐々ににとりは今しがた自分に起こった異変に気付いたのであった。
「あ、アナライザーが……」
 そう、にとりが片目に嵌めた装置が機能していない事に気付いたのだ。そして、その装置はレンズと機材の部分が見事に真っ二つになって彼女の目から外れたのである。
 その瞬間、にとりは今までの自分の行動のおおまかな実情というものが読まれていた事を悟るのだった。
「楓……いつから分かって……」
 その問いに、楓ははにかみながらこう答えた。
「やっぱりね、あれだけの数を同時に操るとなれば、その司令塔が必要でしょう。それならにとりさんが最初に出したそれしかないって思った訳です」
「まあ、そう言っちゃえばそうだよね」
 言ってにとりはふうと一息つくと、こう締めくくったのだった。
「あれは、私の切り札だったからね。おめでとう、この勝負、楓の勝ちだよ♪」
 この瞬間に楓の勝利が決まったのだった。嬉しい気持ちが沸き上がりながら、楓はにとりにこう返す。
「こちらこそ、いい勝負をありがとうございました、にとりさん」
「うん、どういたしまして」
 そう二人は言い合った後、固い握手を結んだのだった。それは人間と河童という種族を越えた盟友同士の絆であった。
 そして、後楓はこの事を言っておかなければならなかった。それを彼女は言葉に出す。
「華扇さん、ありがとうございました。おかげで大切な事に気付けましたよ」
「私は何もしていないわ。楓自身がその気持ちを大切に出来たって事だけよ」
 そう言って華扇は楓に微笑みかけながら想うのだった。
(自分自身はどうなのか……ね)
 その事は正に今の華扇にも深い関わりがある内容なのであり、後々それが彼女にとって重要な役回りとなっていくのである。
 
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