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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第百三話

 翌日、ゴジは部下も連れずにたった一人でマリンフォード沖に停泊する一隻の船に招かれた。

 名目上は護衛として呼ばれているので、ゴジは“黒麒麟”としての制服と採用された着崩した着流し姿に海軍コートを羽織り、『秋水』を背負って“月歩”で目的の船に乗り込んだ。

 彼を甲板で出迎えたのは金色の長い髪を靡かせた大柄な男性と小柄な女性。そしてゴジと全く同じ顔を持ち、長い赤髪を逆立せた青年である。


「やぁ、父さん、母さん、イチジ兄さん久しぶりだね。」

「「「ゴジ!!」」」


 ゴジがいる船の名は科学大国ジェルマ王国の技術の全てを詰め込み、世界最強の戦艦と呼ばれる第四勢力の一角をなすジェルマ王国の母艦“トール”。

 ゴジは明日開かれる世界会議(レヴェリー)出席を前に前乗りした家族と会いに来たのだが、ニジ、ヨンジ、レイジュはそれぞれが守護する南、西、東の海にいるので、今日来れたのは三人でだけであったが、10歳で別れて以来の久々の再会に互いに笑顔が溢れる。


「お前の活躍は聞いているぞ。なるほど.......ゼファーにお前を任せたのは正解だったようだ。」

「全く.......自信なくすぜ。」


 覇気使いとして実力もあるジャッジとイチジは、レイドスーツなしに空を駆け、黒く雄々しい覇気を纏うゴジの姿を見て再会を喜ぶと同時に驚愕する。


「もうあれから7年だけど、父さんも母さんは変わらないな。イチジ兄さんは凄く強くなってる。流石“爆炎の貴公子”だね。」


 “爆炎の貴公子”とはジェルマ王国の次期国王たる王太子であるイチジに付けられた二つ名である。


「お前ほどじゃないさ。俺も子供の頃と違って強くなった。ゴジにも遅れは取らんと思っていたが、自惚れだったな......海軍のエース“黒麒麟”には逆立ちしても勝てる気がしねぇよ。」


 イチジは苦笑しながらゴジの突き出した拳に自分の拳を突き合わせた。


「ゴジ!あなた身長も伸びて筋肉も付いて凄いカッコ良くなったわ!流石私の息子ね♪」


 母ソラはただ純粋にゴジの成長と再会を喜び抱き着くと、ゴジも久しぶりに感じる母の温もりも確かめるように優しく抱き締め返す。


「母さん、少し太t.......いてっ!?」


 ただゴジと別れた時は長年の入院生活で痩せすぎていただけでゴジの知る母と比べて健康的に肉付き良くなったが、ソラは別に太っているわけではない。

 しかし、女性に対してあまりにデリカシーのない言葉にソラはキレて、ゴジを抱きながら彼の尻をギュッと摘んだ。


「ゴジ!貴方にはデリカシーって言葉を教えてあげるわ。そこに座りなさい。」

「そこって.......ここ床だけど.......ひぃぃ!?父さん、兄さん助けて.......」

「「すまんっ.......。」」

「父さんと兄さんの薄情者!!」


 ゴジは能面のような顔を浮かべる母を見て、父と兄に助けを求めるも、無情にも彼らはゴジから目を逸らしたのを見て、天を仰いでゴジは叫んだ。


「ゴジ!!」

「はい!」

「いい?ゴジ、女の子は何歳になっても.......」


 ゴジは母に名前を呼ばれるとその場に正座して母の小言を聞くこととなった。


「.......いい?女の子に太ったなんて言ったら絶対ダメなのよ!!分かった!?」

「うんうん。よく分かったよ!!今度から気をつけるからさ。」


 ゴジは時折相槌を打ちながら母の話しを聞いていくとようやく満足したのか長いお説教が終わり、ソラはゴジに会った時に聞かねばならないと思っていた事を尋ねる。


「それはそうと.......どうなのよ?アラバスタ王国のビビ王女とお付き合いしてるの?」


 人気者にはスキャンダルが付きものであり、この世界も例外ではなく、アラバスタ王国で仲の良く二人で写るゴジとビビの写真が出回るとアラバスタ王国を救ったゴジとアラバスタ王国の姫ビビ王女は付き合ってるのではないかという噂が広がり、しかも噂を知ったコブラ王はビビの気持ちを思って明確に否定しなかったことが信憑性を増した。


「ビビちゃんは大切な友達だよ。」


 ゴジが笑顔で答えると、ソラは次にジェガートの誰かと付き合ってのではないかという噂を確かめる。


「あら?ならジェガートの娘達はどうなの?」


 この噂はジェガートにたった一人の男性がいれば当然立つ噂であり、ゴジが入隊当時の“麒麟児”と呼ばれ始めてから11歳からその時々によって相手が違うが、常に流れている噂である。


「彼女達は俺の大切な仲間だよ。」


 ソラは自分の質問に間髪入れず答えるゴジの反応に嘘が無いことくらい母親だからすぐに分かる。


「貴方、いつも沢山の女の子といるのに彼女の一人もいないの?やっぱりデリカシーがないから実は嫌われてるのかしら?」


 そしてゴジに限らずジャッジ、息子達全員が無類の女好きである事も知っている。

 だから普通に考えてモテモテであるはずのゴジが彼女の一人もいないのは理解出来ないが、ゴジはキョトンとしながらも淡々と答える。


「嫌われてはないと思うんだけどね。俺はこの海賊時代を終わらせるって決めてるんだ。それに大将になるって約束もしてる。だから大将になって平和な世界が作るまでは恋愛にはかまけてられないさ。」


 見聞色の覇気に秀で、人の機微や関節や筋肉の動き等を一目見て模倣することすら可能なゴジは自分に向けられる好意にはしっかりと気付いている。

 気付いた上で気付かないフリをしつつ、任務に支障が出ないように特定の仲間とそういった雰囲気にならないように時には道化を演じている。


「大海賊時代を終焉か.......。そこまで考えているとはな。流石私の息子だ。」

「ゴジ、俺達の力がいる時は遠慮するな。俺達は空を駆けていつでも助けに来る。」

「父さん、イチジ兄さんありがとう!」


 ジャッジは子供の頃と変わらない優しさと強さを併せ持つゴジを応援し、熱血漢な性格のイチジはゴジの壮大な夢に協力する事を誓う。

 まぁ、イチジは元々ゴジが助けてくれと言えば理由も聞かずに元々地球の裏側からで駆けつけるつもりだった。


「はぁ.......お母さん的にはつまらないわ。」


 ゴジが可愛い奥さんを連れて来る事や恋愛の話が聞けると期待していたソラは唇をとんがらせて不満を顕にしていた。


「ところで、母さん俺も聞きたい事があったんだ。かーくんに乗ってアーロン達と戦ったそうだね?」

「ゴ.......ゴジ!誰から聞いたの!?」


 ソラはレイジュには口止めしていたのに何故バレたのかと慌てる。


「見習いとして海軍に入ったナミちゃんから聞いたんだ。」

「あっ.......ナミちゃん!?ちゃんと海兵になれたのね。イスカちゃんも帰ってるの?」


 ソラはコノミ諸島で会ったナミとイスカを思い出して笑顔を浮かべるが、ゴジは先程のソラと同じ笑顔を浮かべながら怒っている。


「母さん、そこに座ってくれるかな?」

「そこってここ床よ.......」

「座ってくれるかな?」

「えっ.......あっはい.......。」


 ソラはゴジの指差した床を見て助けを求めようとするが、笑顔のまま怒っているゴジの顔を見て諦めてその場に座ると、今度はゴジの説教が始まった。


「いい?かーくんは母さんの護衛として贈ったもので出来れば戦いなんて俺はして欲しくないんだ。だから.......」

「うぅぅ.......。」


 半泣きでゴジの説教受けるソラの姿を見たイチジとジャッジは顔を見合わせて、ゴジはやはりソラ似だなと再認識してゴジとソラだけは怒らせないようにしようと決意した。


 ◇


 マリージョアとは世界貴族の住まう赤い土の大陸(レッドライン)にある聖地のことで雲の上にあるこの地は世界貴族を除けば、世界政府関係者しか立ち入ることは出来ない神聖な地であると同時に天然の要塞である。

 かつて赤い土の大陸(レッドライン)を素手でよじ登って侵入を果した魚人フィッシャー・タイガーによる襲撃を受けたので、現在は暗視ゴーグル機能と熱源探知機能の両方を備えた複数体の人型機動兵器平和主義者(パシフィスタ)により24時間警備され、空や崖からの侵入者に備えている。 

 その為、マリージョアに入るには偉大なる航路(グランドライン)の“楽園”と呼ばれる前半の海にあるマリンフォードと“新世界”と呼ばれる後半の海にある海軍本部G-1支部に設置された赤い港(レッドポート)と呼ばれる港からしか入る事は出来ず、同港からボンドラと呼ばれるシャボンで出来たゴンドラに乗り込んでエレベーター式に昇降して赤い土の大陸(レッドライン)の上に存在するマリージョアに出入りすることが唯一の玄関口となる。

 ボンドラを登った先にはトラベレーターと呼ばれる巨大な動く歩道があり、このトラベレーターを抜けた先に
 4年に一度各国の王が集まって世界会議(レヴェリー)が開かれるパンゲア城と呼ばれる巨大な城がある。

 ゴジは家族と会ったの翌日、ビビとの約束通りマリージョアへの入口である赤い港(レッドポート)にあるボンドラの前までネフェルタリ家と護衛のペルを送り届けた。

 
「コブラ王、ビビ王女。俺の護衛はここまでです。」


 ゴジは形式に則って、コブラ達に敬礼して任務完了の報告をする。

 ここからは世界政府直属のCP-0(シーピーゼロ)世界会議(レヴェリー)参加者の護衛を行うので、海軍の護衛はここで終わりである。


「アラバスタ国王の護衛は“黒麒麟”か.......」

「なんと堂々とした風格。あれでまだ成人したての17歳とはな。」


 この場には他国の王族も大勢おり、ゴジの姿と存在感により注目の的となっているので、普段のような砕けた言葉遣いは慎んでいた。


「“黒麒麟”殿、貴方には本当に感謝してもしたりない。いつでも我が国に遊びに来てくれ!!」

「ゴジ、貴方の活躍を祈っています。」

「くずっ.......」


 ゴジと笑顔で手を握り合いながら、ゴジ同様に形式的な挨拶を交わすコブラとペルとは対照的にビビは泣き出しそうな顔で無言のまま、ボンドラに乗り込んだ。
 

「必ずまたアラバスタ王国に行かせていただきます。皆様もお元気で!」


 ゴジはこれからマリンフォードを発ち、魚人島に向かい“海侠”のジンベエの視察任務に向かうことになっているが、機密事項ゆえコブラ達にはこれから別の任務マリンフォードを離れる事を伝えているので、ネフェルタリ家とはここで最後の別れとなる。

 それをここに来る直前に聞かされたビビはショックを受けた様子でずっとこんな調子だったのだ。


「ビビちゃん、アラバスタまで送ってあげられなくてごめんね。」

「っ.......!?」


 ゴジは最後に俯いて黙ったままのビビの頭を一度撫でて彼女の耳元で一言謝るとビビはピクリと反応するが、ゴジがボンドラから離れるとそれを合図に起動してゴブラ、ビビ、ペルと護衛の道化のようなマスクを被ったCP-0(シーピーゼロ)を載せたゴンドラがゆっくり上がっていく。


「ゴジいぃぃぃ!お仕事頑張ってねえぇぇ!」


 下から見上げるゴジがコブラ達の顔が見えなくなったと思った瞬間、ビビがボンドラから身を乗り出して涙を流しながらも笑顔を浮かべて大きく手を振っていた。
 

「ビビ様!?危ないですよ!」


 ペルが上がり続けるボンドラから落ちないように慌てた様子でビビの服を掴んでいるのが見えてゴジも笑顔になる。

 ゴジはビビが空元気を振り絞って大声で応援してくれたのが嬉しくて、ゴジもビビに聞こえるように大きな声を掛けて笑顔で手を振り返す。


「わっはっはっは!!ビビちゃんも世界会議(レヴェリー)頑張ってなあああぁぁ!」
 

 諸外国の目もあり、形式的な挨拶で別れる予定が結局最後はいつも通りの仲良い兄妹のような二人に戻り、お互いが見えなくなるまで笑顔で大きく手を振りあっている年相応な二人の姿を諸外国の王達も微笑ましい顔で見守っていた。 
 

 
後書き
次回の更新は13日12時です。

次回は舞台をシャボンディ諸島に移り、街を散策するゴジ達と招かれざる来訪者のお話です。 
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