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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第九十八話

 今、マリンフォードの港に面したオリス広場には街中の人が所狭しと集まっていた。


『“影の支配者”ゲッコー・モリアが世界各国における墓荒らしの罪で“黒麒麟”ゴジ中将に拿捕された!!ゲッコー・モリアの王下七武海としての称号は剥奪。』

『“黒麒麟”ゴジ中将、王下七武海“鷹の目”のミホークとの世界最強を賭けた戦いに勝利し、世界最強の剣士となる!!』


 この二つのニュースは世界中に号外がばら撒かれ、世界が驚愕した。そして、ゴジの帰還に合わせてマリンフォード中の人がオリス広場に集まっていた。

 ゴジは第一部隊と海底大監獄(インペルダウン)にモリア及び海賊300人を収容して、今日ここに戻ってくる事になっている。

 さらに半年前にクロコダイルを討ち、アラバスタ王国を救って黒麒麟の二つ名を与えられて中将に昇進したというニュースを知らない者はいない上、モリアを拿捕し、ミホークを破り世界最強の剣士となり、マリンフォードに帰還するゴジを一目見る為に人集りとなっているのだ。


「軍艦が見えたぞ!!」

「“黒麒麟”が帰って来たぞおおおお!」

「「「おおおおぉぉぉぉ…っ!」」」


 ゴジの乗る軍艦が見えただけで、マリンフォードは熱狂の海に包まれる。


 ◇


 マリンフォードへの着港が間近に迫った船に海兵達の悲鳴が轟く。


「「「大変だああああぁぁぁ!!」」」

「ゴジちゃん、あんたいつものスーツはどうしたんだい?」

「モリアとの戦いでビリビリに破けちゃったんだ。」


 たしぎを助けてモリアの“影の箱”に閉じ込められて箱ごと串刺しにされた時である。


「靴は?」

「ミホークとの戦いで酷使しすぎたみたいで底がめくれちゃってね。」


 剣士のすり足と呼ばれる地面を擦るように歩く独特な足さばきに支給品の革靴が耐えきれなかったのだ。

 その為、支給品のスーツと靴を失ったゴジは私物である黒色のトレーニングシャツ、青いハーフパンツ姿にサンダルを履き、海軍コートを羽織った姿でマリンフォード中の人が待つ港に船から降りようとしていたのだ。

 オシャレに興味がなく、休みの日もトレーニングに勤しむゴジの私服はトレーニングウェアしかなく、靴も支給品の靴とサンダルしか持っていない。


「なんで今まで黙ってたんだい!?」

「いつもならカリファが用意してくれたから気にしてなかった……あはははっ。」


 ゴジは入隊以来、必要な物は必要な時にカリファが用意してくれていたので、今日のように困った事はなかったのだ。


「ホロホロホロ!バカだ。ここにバカがいるぞ。ゴジ、そのまま行けよぉ!ホロホロホロ!」


 これから凱旋帰還をするゴジのあまりにもダサすぎる格好に女海兵達は悲鳴を上げていたのだが、一人ペローナだけは腹を抱えて笑い転げていた。


「おいペローナ、そんなに笑うなよ。あとスカートで笑い転げるのははしたないからやめなさい。」


 ペローナは慌ててスカートを押えながら女の子座りになってゴジを睨む。


「そんな格好で兄貴ぶっても締まらねぇぞ!アホゴジ!!」

「ペローナ、俺の事はお兄ちゃんって呼んでもいいんだぞ?」


 ペローナは顔を赤らめながら、ゴジを兄と呼ぼうとして正気に戻る。


「おにぃ.......って呼ぶか!!このアホゴジめ.......いけ“ネガティブホロウ”!!」


 実の家族に捨てられてモリアに拾われ、スリラーバーク海賊団に入隊した彼女だが、ゴジにモリア達が捕まり一人になった。

 そんな彼女に手を差し伸べたのも、モリアにペローナを泣かさないように約束したゴジだった。


『ペローナ、君が故郷に帰りたくないなら、俺の妹にならないかい?』


 ペローナはゴジが自分の家族なると言うゴジの笑顔を見た時、驚きよりも家族が出来たという喜びが勝った。


「「ホロホロ.......♪」」


 ペローナの放った二体のネガティブホロウはそれを体で表現するようにゴジを攻撃することなくゴジの周りを嬉しそうに飛び回っていた。


「おい!ネガティブホロウ共、なんでゴジに攻撃しねぇで懐いてんだよ!!」


 元々暗い性格ゆえに人付き合いの苦手で誰に対しても横柄な態度で接するペローナだが、非常に面倒見のよく優しい性格で家族や仲間と認めた人間はよく懐く。

 ネガティブホロウはペローナの霊体の分身であり、その性格や考え方はペローナの内面の素直な性格に依存するので、家族と認めているゴジには攻撃出来ない。


「これはカリファちゃんの苦労が思いやられるね。」


 ギオンはペローナとゴジとのやり取りを見て、頭を抱えながら首を横に振る。

 カリファはゴジが海軍に入隊した時から常に身の回りの世話を完璧にこなしてきたので、着る服に無頓着なゴジが大事な場面で着る服がないという事態に陥ることは無かったのだ。


「全く……ゴジちゃん少し待ってな。」

「「「あの……!」」」


 ギオンが何か思い出した様子で、部屋に戻ろうとした時、船室から我先にと飛び出して来たバカラ、ポルチェ、たしぎの三人が声を張り上げた。


「私、ゴジ君の昇進祝いに贈ろうと思っていた靴を持ってます。」

「あたしもゴジ君にあげようと思ってたズボンがあるわよん♪」

「私は服を……」


 彼女達はゴジの中将への昇進祝いの名目で各々プレゼントを用意しており、それぞれゴジの前に差し出した。


「おぉ!本当に貰っていいのかい?三人ともありがとう!さっそく着替えて来てもいいかな?」

「「「はいっ♪」」」


 ゴジは三人に笑顔でお礼を言ってプレゼントを受け取ると船室に入っていくのを嬉しそうに眺める三人を見た第一部隊の海兵達が肩を落としていた。


「「「やられた!!?」」」


 第一部隊にも当然ジェガートの掟が徹底されている為、バカラ達は昇進祝いならばいいのではないかと思って用意はしていたが、今日まで渡す機会がなかった。


「全く……この色男が……。あたしも取ってこようかね。」


 ギオンはそう言ってゴジを見送った後、自分も思い出した物を取りに部屋に戻って行った。

 一足先に船室から出てきたのはバカラ達に貰った漆黒の足首を覆う革ブーツに同色の革ズボンに黒を基調とした立襟付きの半袖シャツを着たゴジが船室から出てくると歓声が上がる。


「「「きゃあああああ!!」」」


 第一部隊の海兵達は元々トレーニングウェアと支給品のスーツ姿しか見た事のないゴジの姿に衣服を送った三人以外も目をハートに変えていた。


「サイズもピッタリだよ。バカラ、ポルチェ、たしぎ本当にありがとう。これにコートを羽織れば馬子にも衣装になるな。」


 この場にいる全員が馬子にも衣装どころか服もズボンもブーツもゴジの為に作られたもののように感じられる程にゴジに似合っていると思って声を上げようとした時、ゴジの肩に薄灰色の着流しと呼ばれる和服が掛けられた。


「ん?ギオンさん、これはたしかリューマの和服?」


 その着流しは足元と袖の裾に紫色のススキ柄があしらわれ両肩には龍の一文字があるものであった。


「うん。これはあたしの私物だけどゴジちゃんにあげるわ。なんかゴジちゃんに似合う気がしたけど、やっぱり良く似合うね。ちょっとじっとしてね。」


 ゴジの着付けをしていくギオンにとってゴジは手のかかる弟や子供のようなモノだったが、彼が成長するにつれてある事に気付いていた。

 ワノ国に伝わるリューマの姿絵とゴジがよく似ているのだ。

 刀神様と呼ばれるだけあってワノ国ではリューマの着流しは御守り代わりによく売られているのだが、恐れ多くて袖を通すものはまずいない。ギオンも御守りとして所持していたリューマの着流しをゴジに似合うと思って持ってきたのだ。


「っ……!?ゴジちゃん.......その.......右腕の袖だけ抜いてみようか?」


 ギオンはリューマの着流しに袖を通したゴジの腰に帯紐を回して着付けが終わってゴジの姿を見た瞬間に息を飲み、慌ててゴジに右腕を抜くように指示を出した。


「ん?なんで袖を通さないの?」

「ウ.......ウサフフフ!それは.......えっと、本当は両腕を通してきっちりと着るんだけど、たしぎちゃん達の贈り物も素敵だからね。あたしの“艶のある正義”にかけてこれくらい着崩した方が似合うと断言するわ!!」


 ギオンの言葉通り、着崩した姿も似合っているが、しっかり着流しを着こなしたゴジはリューマの姿絵そのものだったので、焦ったギオンは早口でまくしたててゴジに服を着崩させた。


「そんなもんか?」

「それに徒手空拳も使うゴジちゃんはぴっちり着るよりも動きやすいだろう?」

「あぁ、確かにそうだ。ファッションってそんな所にも気を使うんだな?ありがとうギオンさん。」


 そうこうしている内に軍艦は港に着港しつつあった。


「さぁ、あんた達、いつまでも見惚れてないで港に船を寄せな!!」

「「「えっ……は、はい!!」」」


 第一部隊の海兵達はギオンにより着付けされたゴジの姿に目を奪われて固まっていたので、ギオンに発破を掛けられて着港の準備を始めた。

 一人惚けたままのペローナにゴジが声を掛ける。


「どうだ?ペローナ、似合ってるか?」

「あ.......あぁ。似合ってる.......」

「素直なペローナも珍しいな!わっはっはっは!」


 ゴジはボーッとしたままのペローナを見て大笑いしていた。

 スリラーバークにいた男はモリア、ホグバック、アブサロムといった特徴的すぎる外見の持ち主ばかりで、思春期真っ只中のペローナはオシャレをしたゴジに目を奪われて未だに惚けたままだった。


 ◇


 軍艦が港に到着して船から港にハシゴが掛かる。


「「「ゴジ様ああああぁぁぁ!!」」」


 一番に船から降りてくるであろゴジを期待してマリンフォードの街を割らんばかりの歓声が轟く。


「ほんとに凄い人!?」

「うん。ここにいる皆がゴジ君を見に来てるのよね?」

「相変わらず凄い人気ね。」


 第一部隊を海兵達が船から港を見渡すと人の多さに圧倒される。


「ゴジ君はクロコダイルにモリアの悪事を暴いて拿捕して、鷹の目に勝っちゃって世界最強の剣士になっちゃったからね。仕方ないわよ。ゴジ君さっさと行きなさい。」

「ほら、ゴジちゃん、皆あんたを待ってるんだから早く姿を見せておやり!」

「ちょっと……押さないでって……おっと!」


 アインとギオンに背中を押させれるようにマリンフォードの市民が待ち望んだ海軍本部中将“黒麒麟”ゴジは港に詰めかける人集りの前に姿を現すと……マリンフォードの時が止まる──


「「「っ……!?」」」


 ゴジはいきなり二人に背中を押されて転けそうになったのを誤魔化すように笑顔を浮かべて待ちわびる人達に向けて軽く右手をあげる。


「あはははっ。皆、久しぶりだね?」


 色の二つ名を与えられた海兵は、宣伝を兼ねてその色を基調とした服を着るように海軍本部から指示されているので、ゴジはいつも支給品の黒いスーツの上に海軍コートを羽織っていたが、今日のゴジの姿は一言でいえば艶やかで見る者全ての視線を釘付けにした。

 ゴジはバカラ達から送られた黒い衣装の上にギオンが贈った薄灰色の生地に紫色のススキ柄が描かれた着流しを着ているのだが、その着流しは片腕しか通さなかったことでたしぎの贈った漆黒の立襟シャツが映え、さらに徒手空拳を使うゴジの動きに制限な出ないように緩やかに着崩しているのでポルチェとバカラの贈った黒い革ズボンやブーツも良く見える。

 そして、その上から羽織の様に改造された海軍コートを羽織って背中に黒刀『秋水』を背負っている姿である。


「あれ?やっぱり片腕だけ通してる着方が変なのかな……だからギオンさんに言ったのに……」


 ゴジは何の反応もなく、固まっているマリンフォードの市民達を前に首を捻って困った顔を浮かべると時を取り戻す。


「「「わあああああああああ!!!」」」

「「「「きゃああああああああ!!!」」」」

「おぉ…!?」


 一瞬の静寂の直後にマリンフォードが沸いたので、ゴジはビクッとした。

 マリンフォードの人達は第一部隊の海兵達と同様に異国の衣装に身を包む黒き神獣の威風堂々とした立ち姿に目を奪われて時が止まってしまったのだ。


「わっはっはっは!皆ただいま!!」

「「「おかえりなさーーい!!!」」」


 マリンフォードの街中の歓迎を一身に受けたゴジは長い航海を終えてマリンフォードに帰還を果たしたのだった。 
 

 
後書き
ゴジ君の服装イメージは銀魂の銀さんの着流しがリューマの着流しに変わった感じです。 
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