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人工授精ということは

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第一章

                人工授精ということは
 子供が出来ない、それでだった。
 伊東直次と雪代の夫婦は相談して決めた。
「人工授精でな」
「ええ、それでね」
「妊活は散々したし」
「私達の身体にも問題はなくてね」
「それでも出来ないなら」
「仕方ないわね」
「もうだ」
 夫は難しい顔で言った、黒髪に白いものが混ざってきていて四角い顔にも皺がある。一七一程のがっしりとした身体に肉が付いてきている。
「二人共四十代だしな」
「それだったらね」 
 妻も頷いた、後ろで束ねた黒髪にはツヤがなく肌も衰えが目立っている。それで細い眉と目で小さな唇の顔も老けて見える。一六二程の背だが背中が曲がってきている。
「もうね」
「早いうちに決めないとな」
「どうするか」
「子供欲しいな」
「ええ」 
 妻の返事は明快なものだった。
「絶対に」
「俺もだ」
 夫も同じ意見だった。
「やっぱりな」
「子供がね」
「欲しい、二十年そう思ってな」
「色々やってきたけれど」
「どうしても出来ないんだ」
「それならね」
「最後の手段でな」
 それでというのだ。
「人工授精だ」
「それでね」
「俺の精子をな」 
 夫はその話をした。
「お前の卵子にだ」
「人工的によね」
「授精させてな」
 そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「私が妊娠して」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「子供を作ろう」
「そうするのね」
「幸い俺には精子があってな」
「私もまだ卵子があるし」
「それだったらな」
「今のうちにね」
「決めよう」 
 自分達の子供をどうしてもうけるかということをというのだ。
「そうしよう」
「そうね、今のうちにね」
「やっぱりこうしたことは歳だ」 
 夫は深刻な顔で語った。
「歳がな」
「大事よね」
「若いうちにが一番いいがな」
「私達みたいに若い時にできないで」
「そして今もだとな」
 それならというのだ。
「もうな」
「それならね」
「どうしても欲しいなら普通のやり方にこだわらないでな」
「人工授精でもね」
「やらないといけない、じゃあな」
「お医者さんともお話しましょう」
 夫婦でこう話してだ。
 そのうえで医師と相談してそのうえでだった。
 人工授精で子供をもうけることにした、実際に二人はそうして子供をもうけた。その子は男の子で誠と名付けた。
 だが夫婦は子供をもうけた時に二人だけで話した。 
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