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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第九十六話

 マリンフォードの海軍本部元帥室につるが急報を持って訪れた。


「センゴク、邪魔するよ。」

「おつるちゃん、モリアの視察に向かったゴジの件だな?」


 ゴジがギオン率いる第一部隊と共に魔の三角海域(フロリアントライアングル)に向かい、モリアの視察に向かうことは事前に知らされていたので、その報告に違いないとつるに話を促す。


「あぁ。その通りだよ。結論から言うとゴジはモリアを見限り王下七武海の地位を剥奪、これまで政府の揉み消していた墓荒らしの罪で拘束したよ。モリアの部下アブサロムも拘束、あとモリアの新たな部下に西の海(ウエストブルー)で指名手配を受けていたドクトル・ホグバックを発見しこれも拿捕。ゾンビ兵は全て影を抜き壊滅。モリアに影を奪われていた海賊達、総勢約300名の護送の手配を頼みたいそうだよ。」


 ゴジ達がスリラーバークいる海賊を全て拿捕した所その総数は300人だったのだ。

 モリアが影を奪ったのは800人だが、ゾンビの蔓延るスリラーバークを抜け出し、魔の三角海域(フロリアントライアングル)を彷徨う者や運良く海域から抜け出せて文字通りの日陰者としての生活を余儀なくされてる者などが数多くいた。


「それで負傷者は?」

「もちろんゼロだよ。」

「そうか。手際がいいのは相変わらずだな。すぐに手配しよう。レベル6確定のモリアを含む一度に300人とは、海底大監獄(インペルダウン)署長マゼランがまた苦言を呈すだろうな。」


 センゴクはこれ以上ない成果に笑顔でゴジ達の健闘を讃える。何よりも王下七武海と対決して負傷者がゼロというのは驚嘆に値する。


「だろうね。実はあともう一つ報告があるんだよ。」


 つるはそんな上機嫌なセンゴクに対して少し申し訳なさそうにもう一つの報告を始める。


「ふぅ〜……すぅ〜……よし。嫌な予感はするが、どうせ聞かねばならんのだろう。言ってくれ。」

「スリラーバークに“鷹の目”のミホークが来たようだよ。」

「なっ!?」


 王下七武海“鷹の目”のミホーク、世界一危険な偉大なる航路(グランドライン)を小舟一隻で航海する卓越した航海術、操舵技術を持ち、その実力は巨大なガレオン船すら一太刀で真っ二つにする言わずと知れた世界最強の剣士であり、センゴクは驚愕を隠せない。


「驚くのはこれからだよ。ゴジは視察の名目で“剣”による一対一の真剣勝負で見事“鷹の目”のミホークに勝利したそうだよ。」

「はははっ!おつるちゃん冗談がすぎるぞ。ゴジは拳士であって剣士じゃない。剣技であの男に勝てる者などいないから世界最強なのだぞ。普通に戦って勝ったんだろう?」


 センゴクはつるの報告を笑い飛ばすが、つるの心底疲れたような顔を見て、顔が引き攣っていく。


「あぁ…あたしもそう思って何度もギオンに確認したさね。決闘の見届け人であるギオンの答えは変わらなかった。数時間に及ぶ剣戟の末、ゴジの振るう刀が見事に“鷹の目”のミホークを斬り裂いたとね。」


 信じられない話だが、海軍最強の剣士とも言われる“桃ウサギ”ギオンが見届けたのなら、センゴクもつる同様に事実と認めざるを得ない。


「なっ……!?ギオンが言うなら事実なのだろうが、ゴジが剣士としても優れているとは知らなかった。それで“鷹の目”は死んだのか?」


 つるは驚きから喜びの表情に変わったセンゴクを見ながら、信じられる話ではないからゴジが刀を持ったのは今日が初めてである事はあえて伏せた。


「“鷹の目”は重傷を負い、軍艦に収容して治療中だそうだよ。」


 つるは驚きを隠せない様子のセンゴクに報告を受けたままを伝える。


「驚きこそすれ、よくよく考えれば悪いことではない。これでゴジは世界最強の剣士となった。まさに鬼に金棒だな。」


 徒手空拳でもクロコダイル、モリアを拿捕したゴジが世界最強の剣士となったのだから、戦力として頼もしいことこの上ない。


「ゴジに刀ってことかい?全く頼もしい限りさね。“鷹の目”の治療はゴジ自らが行ってるらしいから視察結果はまだ入ってないけど、まぁ予想は出来るね。」

「あぁ……あの男は良くも悪くもただの武人。悪人ではないからな。ゴジがその性格を気に入らんわけなかろう。」

「ふふっ。そうだね。」


 センゴクとつるがゴジからの報告を元にメディアに流す報道内容を詰めていく。


 ◇


 つるがセンゴクに報告しているその最中、ミホークが目を覚ましたのはスリラーバークに停泊する軍艦の中だった。


「俺は生きているのか?」


 ミホークは目が覚めるも身体は麻酔が効いてるのかピクリたともせず、体に丁寧に巻かれた包帯と薬品の香る整然と純白のベットが並べられた部屋の様子から状況を察する。

 最後に最高の弟子を得て己の磨き上げた技を継承し、最高の戦いが出来たのだからもはやミホークに生涯に一片の悔いはなかったが、どうやら命を繋ぎ止めたことは理解した。


「ここは船の医務室か?」

「よぉ……“鷹の目”、目覚めたか?傷口は全て縫合して今は麻酔が効いてるのから体は動けないはずだ。」

「“黒麒麟”、何故俺を助けた?」


 ミホークはゴジの顔を横目で見て、何故あのまま死なせてくれなかったのかと嘆息した。

 それに対してゴジは苦笑しながらベットの脇に置かれた丸椅子に座る。


「“鷹の目”、おまえなら気づいてるかもしれんが、近々王下七武海制度は廃止される。」


 王下七武海の廃止はゴジを除けば海軍本部三大将と元帥、“大参謀”と呼ばれるつるにのみ知らされている事実であるが、王下七武海を拿捕できる海兵が現れた意味を正確に理解出来る者たちには予想出来た事実だった。


「やはりな。海軍に“黒麒麟”がいる限り不確定要素しかない俺達(王下七武海)はもはや必要ないだろう。ならば尚更助ける必要はないだろう?」


 ミホークもそれを正確に予期してスリラーバークにゴジが来ると睨み、自分との戦いに応じさせたのだ。


「ああ。たがら俺は王下七武海を視察して回って世界に仇なす恐れのある海賊を拿捕し、世界に仇なす存在ではないと判断した奴らには恩赦を与えることが決定している。“鷹の目”、お前には恩赦を与える。」

「俺は今後も世界政府の肩を持つつもりはないぞ。」


 世界貴族や世界政府を敵視する者は多く、むしろ好いている者の方が少ないが、世界貴族には逆らわないというのは無法者である海賊であっても守っているこの世界の絶対ルールである。


「そんなもん。俺もないさ。俺の言う世界とはこの世界に住む人達だ。あんたから剣を学んだ俺にはよく分かる。剛柔併せ持つ“鷹の目”のミホークの振るう剣は何処までも強き者を求めて、己を高める孤高の剣であると同時に助けを求める弱き者を守る正義の剣でもある。好きに世界を回って鍛えるといい。いつでも相手になってやる。 」


 ゴジはあくまで守るべき人達の生活が世界政府の庇護の元に営まれているから海兵として従っているが、守るべき人達を下々民(しもじみん)と呼び奴隷としか見ていない世界貴族の為に力を奮うつもり等もない。


「政府の肩を持たぬ海兵。やはり面白い男だ。ならば俺がいずれその最強の座を取り戻すまでは貴様に預けておく。」


 二人は笑顔で再戦を誓い合うと、そんな二人に入口で聞き耳を立てながら入る機会を失っていたギオンが近寄っていく。


「入るタイミングを逃して何だか聞いちゃいけないことまで聞いた気がするね。ゴジちゃんは若いのに大変なこと任されてるだね。」

「ギオンさんにはいずれ話すつもりだったからいいんだ。それよりもこれを返すよ。」


 ゴジは背中に背負った『秋水』をギオンに返す為に差し出すが、ギオンは首を横に振る。


「ゴジちゃん、『秋水』はあんたを主人と認めている。“鷹の目”に勝ったのが何よりの証拠さ。良ければそのまま使っておくれ。」

「でも、これは大切なものじゃ……」


 ギオンはリューマの魂である『秋水』がゴジと共に在りたいと願っていると言うが、ゴジはこの刀を取り戻す為にワノ国を飛び出したギオンを想って渋る。


「大切な物だからこそ、『秋水』が新たな主人と認めたゴジちゃんに使って欲しいんだ。」


 そんな二人にミホークが話し掛ける。


「“黒麒麟”、お前は確か俺と戦う前と最後の技を放つ時、その刀から“声”を聞いたと言っていたな?」

「あぁ。幻聴かもしれないけどな。頭に直接響くような声だった。」

「“黒麒麟”、黒刀とはどうやって生まれるか知っているか?」

「いや、知らねぇな。」

「武装色の覇気を剣に込めると刀身は黒く硬化して一時的に黒刀となる。こうして武装色の覇気を使って剣を振っていくうち、その剣は覇気を力とする事を覚えて持ち主から勝手に武装色の覇気を吸い取る魔剣や妖刀と呼ばれるようになる。魔剣や妖刀の持ち主が早死する所以は力を吸い取られて衰弱死するからだ。しかし、持ち主がその妖刀に真に認められた時、妖刀は何があっても折れることのない黒刀と成るのだ。」


 ゴジはミホークの話を聞き、『秋水』を見てある事に気づく。


「ならばこの刀にはリューマの覇気が宿ってるってことか?」

「そうだ。そして“赤髪”からこんな話を聞いたことがある。“海賊王”ゴール・D・ロジャーは“万物の声”を聞くことが出来たという。」


 “赤髪”のシャンクスは昔、海賊王のクルーの一人であったことは海軍上層部なら知らぬ者はいない。


「“万物”……あれはリューマの声だったのか?」

「理由は分からんが、“黒麒麟”が“刀”の声を聞いたと知った時にリューマの覇気の宿りし『秋水』ならば有り得ると思っただけだ。」


 驚きを隠せないゴジにギオンが話し掛ける。


「ゴジちゃん、“鷹の目”の言うことは間違いじゃないと思うよ。“鷹の目”との戦いの最後に放った“獅子歌歌”はリューマが編み出し、生前の彼が最も得意とした技だよ。」

「あの時は正直、俺が俺ではなかったような不思議な感覚だった。刀に導かれるまま体を動かしたからな。でも妙に納得がいった。なるほど、剣豪リューマは400年の時を経て“キング”に勝ったんだな。」


 リューマはゴジの体を借りて“鷹の目(キング)”に勝負を挑み勝利したのだとゴジ達は悟り、400年の時を越えてなお、最強を求める兵の魂(つわもののこころ)を持つ男に感嘆した。

 その後しばらくして麻酔の切れたミホークは痛みを顔に出す事もなく愛刀『夜』を片手に軍艦を降りる。


「もう行くのか?おまえ重傷なんだぞ?」

「構わん。これくらいの傷なら問題ない。“黒麒麟”、世話になった。もし俺の力が必要な時は呼べ。」

「全く、鍛錬は傷が塞がるまで禁止だからな。」

「ぐっ……!?わ……わかっている。」


 ゴジとの再戦に向けて一刻も早く己を鍛えるつもりだったミホークは図星を付かれ、慌てて自分の小舟『棺桶』に乗ってスリラーバークを去っていった。 
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