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商業科に入ると

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第一章

                商業科に入ると
 八条学園中等部の三年生である遠藤千早は一七六位の背で黒髪はぼさぼさで痩せたひょろりとした身体でいつも地味な雰囲気である。
 それでクラスの女子からもあまり意識されていないが。
「えっ、お前商業科か」
「商業科行くのか」
「うん、そうするよ」
 千早はクラスの男子達にこう答えた。
「考えたけれど」
「お前の成績なら大丈夫だけれどな」
「そっちにやりたいことあるか」
「だからか」
「うん、商業科の方が就職した時に役に立つこと勉強出来るし」
 千早は彼等にさらに話した。
「行きたい大学の学部も考えたら」
「商業科か」
「商業科の方がいいんだな」
「大学に入らずに就職でも有利だしね」
 それでというのだ。
「そっちに進むよ」
「そうか、じゃあな」
「そっちで頑張れよ」
 クラスの男子達はそれならと応えた、そうしてだった。
 千早は商業科に進学した、八条学園は高等部にも大学にもほぼエスカレーター式に進学出来るので彼は無事にそれが出来た。だが。
 卒業して家に帰ると妹の岬同じ中学の一年の彼女に言われた。
「お兄ちゃん卒業したのよね」
「そうだけれど」
 千早はまだあどけない外見の彼女に応えた。
「それが何か?」
「ええ、それでお兄ちゃんね」
 妹はこう彼に言った。
「ちょっと髪の毛切ったら?」
「髪の毛?」
「ぼさぼさで前髪まで隠れてるからね」
 それでというのだ。
「ちょっと短くしたら?前髪位でもね」
「そうしたらいいんだ」
「それだと見るにも邪魔だし」
 妹はさらに言った。
「もうちょっとはいけてる感じになるかもね」
「それでなんだ」
「だから切ったら?」
「じゃあそうするね」
「というかそんなのだと彼女なんて出来ないわよ」 
「僕そういうのは」
「何言ってるの、商業科って女の子多いのよ」
 妹はこのことから言った。
「だったらちょっとしたらね」
「彼女出来るんだ」
「そうしたら?お兄ちゃんだって彼女欲しいでしょ」
「それはね」
 千早も普通の少年だ、それならだ。
「僕も」
「だったらよ」
「前髪位なんだ」
「切ったらいいわよ」
「それじゃあ」 
 兄は妹の言葉に頷いた、そしてだった。
 入学直前に散髪屋に行った、そうしてから入学式を迎えたが。
「えっ、あれ遠藤!?」
「遠藤なの!?」
「中学の時と別人じゃない」
「全然違うわ」
 中学の時は彼に何も関心を向けなかったかつての同級生達がだ。
 今の彼、前髪を短くして髪の毛全体に櫛を入れると大きな女の子も驚く位きらきらとした黒い奇麗な目にだった。
 細面で穏やかに整った感じの白い顔、奇麗な黒髪ですらりとした彼を見て驚きの声をあげた。そうしたった。
 入学式が終わってクラス編成を見てだった。
 千早のいるクラスにだ、こぞって来て彼に声をかけた。
「ちょっとお話しない?」
「今日時間ある?」
「ねえ、部活何処に入るの?」
「好きな食べもの何?」 
 千早にこぞって声をかけてきた、そして。 
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