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こんな大記録は嫌だ

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第一章

                こんな大記録は嫌だ
 根室寿はこの時得意の絶頂にあった、それで学校でクラスメイト達に極楽浄土でいる顔で話していた。
「阪神に救世主が舞い降りたよ」
「ああ、佐藤選手な」
「確かによく打つね」
「長打力凄いよ」
「バット思いきり振って打つから」
「本当に凄いよ」
「阪神は打線がネックだから」
 寿はこのことを冷静に話した。
「その弱点が補強されたからね」
「まさに佐藤選手は救世主か」
「阪神にとって」
「打線を強化したから」
「それでか」
「そう、特に長打力が問題だったから」
 このことがというのだ。
「それを解決してくれる最高の救世主だよ」
「昨日も打ったしな」
「それもホームランを」
「だから根室も嬉しいんだな」
「佐藤選手が入って」
「ルーキーでいきなりあれだよ、救世主と言わずして」
 寿は熱い声で語った。
「何と言うか、お陰で阪神独走だし」
「それじゃあな」
「今年こそ優勝か」
「十六年振りに」
「この十六年色々あったよ」
 寿は阪神のそれまでの出来事を走馬灯の様に思い出しつつ語った。
「あの三十三対四からね」
「ロッテとのあれか」
「シリーズでロッテにボロ負けして」
「巨人に逆転優勝されたりもしたな」
「シリーズで守備妨害で負けたり」
「カープにボロ負け続きだったり」
「色々あったけれど」
 それでもというのだ。
「今年は違うよ」
「佐藤選手がホームラン打ってか」
「阪神が勝つ」
「そしてか」
「優勝か」
「今年こそ出来るよ」
 寿はこの時確信していた、阪神のそれを。
 前半確かに阪神は圧倒的だった、独走状態であった。だがペナントが進むにつれて徐々にであった。
 巨人が追撃してきた、しかも。
「打たないなあ」
「もう何十打席目?」
 寿はこの時家にいたがリビングのテーブルに座って愚痴る彼に妹の千佳が応えた。 
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