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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第九十三話

 ゴジは冷静に巨大化したモリアの出方を伺いながら見聞色の覇気と観察眼を併用して強さを測る。


「“神眼”……なるほど、本当に見掛け倒しじゃなく取り込んだ影の戦闘力全てを自分のものとしているのか。」

「そ……うだ。この俺……うっ!?意識が……くそ!!負けてたまるか……」


 ゴジはパワーアップしたモリアの力に冷や汗を流したのもつかの間、苦しそうな声を上げて頭を左右に振るモリアをさらに“神眼”で分析する。


「影はもう一人の自分だからそれぞれに意識がある。モリアは今800人の影達と意識の奪い合いをしているのか?」

「くそぉおおお!潰れろぉぉおおお!!」


 モリアは頭を左で押さえながらも右手を振り上げてゴジ達目掛けて振り下ろした。


「モリアの意識が持つ間に力比べといこうか?“生命帰還・ウインチグリーン”!!」


 ウインチグリーンの力を手に入れて緑色の髪となったゴジは迫り来るモリアの強大な拳を見据えながら深く腰を落とし、アラバスタ王国でのクロコダイルとの戦いを思い返していた。


「あの時は砂だったから拳が効かなかったが、お前は別だろう?」


 ゴジの持つ能力の中で身に付けた格闘術、六式、魚人空手等と相性の良いのはやはり筋力を極限まで強化出来るウインチグリーンの力である。

 振り下ろされるモリアの巨大な拳は大の字になったゴジよりも一回り大きな巨大なモノであるが、ゴジは怯むことなくどっしりと腰を落としたまま体中に力を漲らせて右拳を繰り出す。


「魚人空手・十万枚瓦正拳!!」


 筋力を強化して拳を放つ。

 その単純ともいえるゴジの拳は当代最強ともいえる“壱万枚瓦正拳”を軽く超えていく。


影の終焉(ブラック・デスティネーション)!!」


 しかし、モリアは800人分の力を拳に乗せて放っている。

 互いの拳がぶつかり合った衝撃でゴジの踏ん張っている地面がひび割れ、その衝撃波で城の壁がボロボロと崩れていく。


「なっ…!?」

「わっはっはっは!!いい拳だな?モリア!!」


 衝撃が収まるとゴジとモリアは拳の合わせたままで固まり、受け止められた事に驚愕するモリアと打って変わってゴジは心底楽しそうに笑っていた。

 ゴジは純粋に昂揚してた。

 天性の運動神経に加えて幼い頃より鍛え上げ続けた肉体により歴代最高の六式使いとなったゴジは純粋な力比べでは負けることはほぼなくなっていた。しかし、800体の影を取り込んだモリアはそのゴジが怪力の能力を全力まで出し切って高めた拳を相殺したのだから昂揚しても無理はない。


「化け物……か……!!」


 スリラーバークにいる全ての影である800体の影を取り込むこの技はモリアにとって意識を奪い合う諸刃の剣であるが、ゴジはその800人分の力をたった一人で真っ向から受け止めたのだから、モリアにとったら恐怖でしかない。


「わっはっはっは!化け物って……お前がそれを言うのか!!わっはっはっは!!」


 ゴジは元々人間離れした容姿に影を取り込んだことで50mを超える体躯に膨れ上がったモリアが自分を化け物と呼んだことに笑いを堪えきれなかった。


「笑うなぁぁ!!“影地獄(ブラックミズガルズ)!!」


 ゴジの足元にモリアの影が集まると影から無数の蝙蝠や棘が生まれて全てがゴジに向かっていく。


「違うだろうモリア?“鉄塊・仁王立ち”!」


 しかし、外骨格、武装色の覇気に加えて全身の筋肉をガチガチ固めたゴジの体には傷一つ付けられない。


「本当に……化け……ものじみて……るな?」

「これじゃない。もっと全力をぶつけて来いよ。」


 不敵に笑うゴジの武装色の覇気、覇王色の覇気が高まっていくのを感じたモリアの意識が保っていた意思が限界を迎える。


 ──ダメだ。あの時と同じだ。


 モリアが死なない兵士に固執するようになった人生最大の屈辱を与えた“新世界”での海賊団全滅という悲劇を思い出したとき、張り詰めていた彼の意識がプツンと切れた。


「キシ……シシ……キョエエエエエエエ!?俺のいじ……ギェエエエ!!グギャギャ……この体は……ウビョオオオオ!!」


 モリアはゴジに勝つという強い想いから800人分の意識と戦ってきたが、800人分の力を上乗せしてもゴジには勝てないという現実を突き付けられてとうとう心が折れ、800人に及ぶ影達に意識を乗っ取られて地面を殴り、大木を引き抜いたりして一人で暴れ始めた。


「馬鹿が……意識を乗っ取られやがって、能力を制御しきれていない能力者ほど見にくいもんはないな。」

「う”う”……ウガアアアア!!」


 正気を失ったモリアは突如城へ向かって走り出す。モリアの巨体が城にぶつかれば倒壊は免れないだろう。

 城にはポルチェ、たしぎがいるのだから壊される訳にはいかない。


「そっちはダメだ。止まれ“嵐脚”!!」


 ゴジの放った嵐脚はモリアの軸足となる右足をスパンッと切断し、軸足を失ったモリアは後ろに倒れ込む。


「うがあぁぁ!!おで……俺の……足があああああ!!」

「見てられんな。」


 ゴジは”月歩”で高く飛び上がると上空で体をくるりと回転して頭を地面、足を空に向ける天地逆転の体制になる。


「おで.......俺は.......海賊…王に.......あひゃひゃ.......なる。」


 モリアは痛みで一時的に意識を取り戻すも、また乗っ取ろられそうになっているのをゴジが見兼ねる。


「モリア、無理やり取り込んだ影を吐かせて楽にしてやるよ。」


 そして怪力の能力を最大まで解放してゴジの両腿がスボンが張り裂けそうなほど膨れ上がり、空を起き上がろうもがいているモリア目掛けて”月歩”で空を蹴ると急速落下していく。

 ゴジはさらに縦にぐるぐると回転して落下の勢いを加速させながら、渾身の右足によるかかと落としをモリアの腹に叩き込んだ。


「少し痛むが、我慢しろよ!!“緑の型 奥義 落下星(らっかせい)”!!」


 ただのかかと落としと侮ることなかれ、重力加速度を最大まで高める為に天地逆さまに空を蹴った上、身体能力を極限まで高めることの出来るウインチグリーンの力を手にしたゴジのただの渾身のかかと落としの威力は計り知れない。


「うぎゃぁぁぁぁあああああ!!!」


 それは正しく流れ星が直接落ちてきたような計り知れない威力であり、直撃を受けたモリアの体を起点としてスリラーバークの地面が放射線状にひび割れ、島が割れた。

 彼の口から悲鳴と共に取り込んだ800に及ぶ影が一斉に抜け出して持ち主に返っていく。


「あれ?ヤバい。島がもたなかった!ポルチェ達は大丈夫かな?」


 ゴジは島の崩壊と共に崩れゆく城にいるポルチェを心配する。


「「すごぉーい!!」」


 ポルチェとたしぎはゴジの指示通りにペローナを抱えて城から出たのは丁度、巨大化して仰向けに倒れるモリアにカカト落としを放つ瞬間で、島を砕く一撃を放ったゴジに感動して歓声をあげていた。


「どうやら二人とも大丈夫なようだな。生命帰還解除!」


 ゴジは城門前にいるホグバックを引きづりながら城から出てきたポルチェとペローナを抱きかかえているたしぎの姿を見て、ホッとして仰向けに倒れたまま取り込んだ800もの影が全て抜けて徐々に体が縮んで元の大きさに戻っていくモリアを見ながら生命帰還を解除した。


「がふっ……はぁ……はぁ……」


 さらにモリアは時折苦しそうに息を吐きながら、ぴくぴくと痙攣して白目をむいて既に意識はない状態である。

 ポルチェとたしぎ生でゴジの本気の戦いを見るのは始めてあり、感動していた。


「これが話に聞くゴジ中将の生まれながらに持つジェルマ66(ダブルシックス)の特殊能力のうち1つを最大出力で使うことの出来る“生命帰還”!」

「そしてさっきの緑の髪色は西の海(ウエストブルー)の守護者“小さな巨人”ウインチグリーンの怪力の力よねん!いやん、凄すぎるわ!」

「二人とも、何か来るぞ!!」


 ゴジは目をキラキラとさせている二人に向けて城から飛び出してきた少女に気付いて注意を促すと、そこにはゴシックドレスに身を包み、桃色の髪をツインテールにした10代半ばの少女が宙に浮いていたが、驚くべきはそこではなかった。


「ぎゃあああ!!城が壊れてるぅ!あたしの体ぁぁぁ……」

「あれ?えっ……どういうこと?」


 その少女は崩壊した城を見て泣き叫んでいたが、その光景を見たたしぎ達は目を丸くする。

 たしぎが抱きかかえる少女と瓜二つだったからである。


「ん?あーそれ、あたしの体だ。助けてくれたのか?ありがとうぉぉぉぉ!!」


 その少女ペローナはたしぎの周りを飛び回りながら、お礼を言っている。

 彼女ホロホロの実の力で幽体離脱していたが、ゴジの覇王色の覇気に当てられてスリラーバーク海賊団の誰よりも先に気絶していたのだが、あまりの騒ぎで目が覚めたようだ。


「ぎゃああああ…モリア様ああああ!!おいお前、モリア様から離れろぉぉおおお!!“ネガティヴホロウ”!」


 ペローナは城の崩壊に目が飛び出るほど驚いた後、ゴジの足元で力なく横たわるモリアの姿を見た途端、モリアを助ける為に半透明の幽霊を放った。


「キューティーバトン“お花手裏剣”!」


 ポルチェはすぐに攻撃に反応して幽霊とペローナに向けて無数の花形の手裏剣を放つが、攻撃が素通りしてしまった。


「うそぉおおん!!」


 ポルチェは武装色の覇気を纏った花形手裏剣が能力者であるペローナとネガティブホロウにダメージを与えられなかったことに両手で自分の頬を押さえながら驚いていた。


「無駄だ!あたし達に攻撃は効かねぇよホロホロ……」

「止まれ!」

「「へっ(ホロ)!?」」


 ネガティヴホロウがポルチェに当たる直前、ゴジは覇王色の覇気で命令すると、ネガティヴホロウ、ペローナとも急停止して固まってしまう。


「問おう。君はモリアの仲間なのか?それとも囚われていただけかな?」


 ペローナはゴジから放たれるプレッシャーでガタガタと震えながらネガティブホロウ達と共にその場に正座する。

 ゴジはちなみに覇王色の覇気を限界まで弱くしているのだが、いくら覇気の効かない能力でも、内面も体力面も普通の少女と何も変わらないペローナには気絶寸前であった。


「あ……あたしはモリア様、いや……ゲッコー・モリアに捕まってだだけで……そのえっと……」


 ゴジは問いに上下左右に目を泳がせながらしどろもどろで答えるペローナを見て嘘をつくのが下手すぎると少しおかしくなる。


「なら、本人にも聞いてみるか。」


 そう言うとゴジはペローナに背を向けてモリアの手に手錠を嵌めてから、彼の頭に向けて指でデコピンを放つ。


「ぐっ!?痛ってぇ!!ごほっごほっ……腹が……痛すぎる!ん?これは海楼石の手錠?」

「よぉ……お目覚めだな。」

「てめぇは“黒麒麟”……そうか……ちっ!?」


 モリアはゴジの顔を見て全てを悟り、力が抜けてその場に横になった。

 海兵とのガチンコのぶつかり合いで負けて捕まったのだからぐぅのねも出ない。


「ここで負け惜しみ1つ言わないのは感心するよ。一つだけ聞くぞ。彼女はお前の仲間か?それとも攫ってきたのか?ちなみにドクトル・ホグバックはヴィクトリア・シンドリーの墓荒らしの容疑がかかっている。そして俺達はお前の部下はアブサロムしか把握していない。今のところあの少女にはなんの容疑も掛かっていないし、お前の仲間と証明できるものはない。」


 ゴジがわざわざ遠回しな言い方をしている意味と意図にモリアはすぐに気付いた。

 ホグバックは墓を荒らしてシンドリーの遺体を盗んだのを多くの人に目撃されており、当初より手配が回っている指名手配犯であり、アブサロムはかつて新世界で仲間を失った部下の唯一の生き残りであるので恩赦の対象となる海賊であった。


「ん?ペローナ……っ!?そうだとも、とある島を襲った時に金のねぇ村から攫ってきたんだよ!!あいつは俺の海賊団とは何の関係もねぇ」

「がーーん!!モリア様何でそんな事言うんだ!?あたしは……」


 モリアに仲間ではないと言われたペローナは大粒の涙を流して悲しむ。


「ペローナさん!何も喋っちゃダメよ。モリアはあなたの為に、あなたに容疑がかからないように言ってるの!!」


 ゴジやモリアの意図を幼いペローナには理解出来ないので、何が言いそうになるペローナに向けてたしぎが叫んだ。


「っ!?……う”え”ぇぇぇぇん!モリア様あああああ。」


 それを聞いたペローナはモリアの言葉の意図が分かり、その場に力なく尻もちを付いてさらに泣き出してしまった。

 モリアの性格であれば、この場面では仲間と思ってなければ逆に巻き添えにする事を選んだはず、ペローナを大切な仲間だと思っているからこそ突き放したのだ。


「おい“黒麒麟”、ペローナを泣かせたら殺すぞ。」


 ペローナの泣き声が木霊する中、モリアはそっぽを向いてペローナとゴジから不自然に視線を逸らしたままゴジに向けて言葉を放つ。


「これから今生の別れになるんだ。今日くらいは多目に見ろよ。モリア、今のお前はそんなに嫌いじゃないぜ。くくくっ……。」


 モリアは間違いなく海底大監獄(インペルダウン)のレベル6への投獄となり、死ぬまで、いや死んでからも外へ出る事はない。

 ゴジはモリアとの悲しみを惜しむ今のペローナの涙だけは止めるすべはないとモリアに匙を投げた。


「ちっ……言ってろ。キシシシシシ!!」

「わっはっはっは!!」


 ゴジとモリアは互いに目線を合わさずに笑い合いながら、スリラーバークでの戦いはこうして幕を閉じた。 
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