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空き家にいた犬達

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第一章

                空き家にいた犬達
 リサ=ハートはこの時自分が所属しているニューヨーク州のあるボランティア団体の施設の中で今保護舌黒と茶色の毛で耳がやや曲がった中型の雄犬を見つつ同僚達に話した。
「クゥン」
「ハムっていうんですけれどね、この子」
「家に置いていかれたんだったね」
「その子は」
「前の飼い主が引っ越す時に」
「そうだったね」
「はい」
 同僚達に蹲って丸くなって悲しい顔でいて鳴いた彼を見つつ話した。見れば赤髪を肩のあたりまで伸ばし黒い目をした彫のある顔の長身ですらりとした若い女性だ。
「そうでした、前の飼い主の人は引っ越す前に私に新しい飼い主を探してくれと言っていて」
「それでだね」
「探している間に引っ越して」
「その子を置いていったんだね」
「はい、どうせなら預けていってからです」
 それからというのだ。
「行って欲しかったですが」
「そんなこともしないで」
「もう自分だけ引っ越して」
「その子は家に置いてけぼりだね」
「空き家に」
「そうでした、それで保護しました」
 そしてここに連れて来たというのだ。
「そうしました、では」
「これからはだね」
「ここで面倒を見て」
「そのうえで」
「新しい飼い主を探します」
 こう言ってだった。
 リサは必死に飼い主を探した、するとハムがいたその家の近所に住む弁護士の夫ニール=エイブラムズと獣医のエイミー=ロドリゲスの夫婦がハムを引き取りたいと申し出て来た、こうしてであった。
 ハムは二人の家に迎えられた、暫くしてからリサが様子を見に行くと。
 眼鏡をかけたくすんだ金髪と黒い目で理知的な顔をした男性と穏やかでふくよかな蜂蜜色の髪と水色の目の女性がだった。
 リサを迎えた、そして家の中に案内すると。
 四匹の犬に八匹の猫、豚に鶏、亀、兎、オウムそれに馬もいた。夫は彼等を紹介しつつリサに笑って話した。
「ドリトル先生みたいですね」
「そうですね、色々な生きものがいて」
 リサも笑顔で頷いた。
「こちらは」
「ハムはすぐに皆と打ち解けてくれました」
 こうリサに話した。
「うちの子供達とも」
「それは何よりです」
「ですが」 
 今度は妻が曇った顔で言ってきた、そして。
 家の中で窓を見ているハムを見つつこう言った。
「寝ていても三十分おきに」
「施設にいた時と同じですね」
 そう言われてリサも言った。
「それは」
「そうですか」
「起きて周りを見回していますね」
「そうしています」
「お家に置いておかれて一人ぼっちになったので」
 だからだというのだ。
「またそうなることを怖がっているんです」
「トラウマになっていますね」
「はい、ですから」
 それでというのだ。
「どうかこの子を癒してあげて下さい」
「わかりました」
「必ずそうします」
 夫婦も約束した、そしてだった。
 ハムを大事にして癒していった、そして彼が落ち着いた時に。
 妻は仕事でアリゾナ州に行くことがあった、そして仕事先で一時的に保護犬を預かる仕事をしているタラ=マローリン灰色の髪と目で穏やかな顔の小柄な彼女に白い雌のピットブルを紹介されて言われた。 
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