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姉妹の再会

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第一章

                姉妹の再会 
 百田家から弁護士である兄と共に二人の幼子を助け出して二人の良心を警察に突き出した国崎文太はすぐに家に連絡した、そうしてだった。
 家に二人を連れて帰った、そして妻の由里子に言った。
「とりあえず今はな」
「二人共うちで預かるのね」
「もう養子の話も整っているんだ」
 夫は妻に話した。
「兄貴はそこまでしてくれている」
「だからよね」
「親戚の家で子供がいない家がある」
 妻に強い声で話した。
「そこに二人共養子に入る、いい人達だからな」
「大丈夫ね」
「二人共娘として育ててくれる」
「だから大丈夫ね」
「ああ、しかしな」
「しかし?」
「上の娘、祈里ちゃんはほったらかしだったからな」
 育児放棄をされていたからだというのだ。
「汚れてるし痩せてもいてな」
「危ないの?」
「そこまではいかないけれどな」
「大切にしないといけないのね」
「まだ赤子だしな」
「その赤子をほったらかしにするなんて」
 由里子は顔を顰めさせて言った。
「本当にあの人達は」
「最低だな」
「そうよね」
「下の娘が産まれたらな」
「二人共その娘ばかり見て」
「夢中になってだ」
「上の娘はどうでもよくなったのね」
 顔を顰めさせたまま言った。
「そういうことね」
「ふわりの時と全く同じだ」
「それまで可愛がっていたのに」
「新しいおもちゃが手に入るとな」
「もうどうでもよくなって」
「ほったらかしだ」
「挙句は捨てるのね、命をそして自分達の子供を何と思っていたのかしら」
 由里子の言葉はもう過去形になっていた。
「一体」
「だからおもちゃだ」
 夫は妻に忌々し気に答えた。
「そう思っていた」
「そういうことね」
「だからふわりも捨ててな」
「祈里ちゃんもほったらかしね」
「そうなると思っていた、しかしな」
「これでよね」
「ああ、連中は警察に突き出したからな」 
 そうしたからというのだ。
「もうな」
「終わりね」
「完全にな、もう禁治産者になってだ」
「親権も放棄させられるし」
「終わりだ、後はだ」
「二人のことね」
「暫くうちで預かるぞ」
「わかったわ」
 妻は夫の言葉に頷いた、そうしてだった。
 子供達、まだ赤子である二人をリビングに入れた、そのうえで父はまた言った。
「さて、おむつとかミルクはあいつ等の家から持って来た」
「それでいいわね」
「おむつを替えてな」
「ミルクもあげないとね」
「今からな」
「洋介が赤ちゃんの時みたいに」
「そうしていくぞ」
 こう妻に言ってだった、二人でおむつを替えてミルクを飲ませようとした時に。
 それまでケージにいたふたりがそこから出てだった。
「ワンワン!」
「ふわり?」
 由里子が彼女に気付いた時にはもうだった。 
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