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美人の過去

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第二章

 恵美に言われてだ、自分の席からこう言い返した。
「何もね」
「あたしのパンツ見ただろ」
「見てないよ」
「じゃあ色何だよ」
「色?」
「あたしのパンツのよ」
「どうせ黒とかだよね」
 江藤は恵美のファッションから答えた。
「それもティーバックの」
「やっぱり見てねえな」 
 恵美は江藤の返事を受けて笑って頷いた。
「疑って悪かったな」
「いいよ、けれど黒じゃないんだ」
「そんなの穿くかよ、ましてティーバックなんてな」
 このデザインの下着はというのだ。
「穿かねえよ」
「そうなんだね」
「ああ、見えそうでも見せるかよ」 
 その短いスカートを自分で見て話した。
「そうそうな」
「けれど見たとか言うんだ」
「だから悪いって言ってるだろ」
 自分の席に机に座って同じ様なファッションのクラスメイト達と話しているのを中断して江藤に言っていた。足を組んでいてそのせいで確かに見えそうだ。
「あたしも」
「見たら怒るから見ないよ」
「そうかよ」
「うん、赤城さんのパンツなんてね」
「そう言って見てえだろ」
「見たくないよ」
 こうしたやり取りを思い出した、兎角恵美は高校時代は如何にもな外見で口調もそうしたものだった。だが。
「ファッションと言葉遣いだけで」
「悪いことはしなかったですね」
「ええ、特に」
 恵美の夫に現在に考えを戻して答えた。
「本当に」
「そうだったんですね」
「万引きとかカツアゲとかいじめとかサボリとかは」
「先の三つ全部犯罪でしょ」 
 恵美は眉を顰めさせて言った。
「そんなことしないわよ、私も」
「こうした風で」
「人として道は踏み外してなかったですね」
「暴力はなかったですね、爪も伸ばしてマニキュア塗ってでしたけれど」
 見れば今の恵美の手の爪は短い、マニキュアも塗っていない。
「それはなかったですね」
「だから犯罪だし人を傷付ける趣味ないから」
 また恵美は断った。
「私も」
「そうだったね」
「妻とは大学で知り合ったんですが」
 江藤は加藤に笑顔で話した。
「その時にはもう普通でした」
「ヤンキーじゃなかったんですね」
「そうでした」
「そうでしたか」
「高校を卒業して止めたの」
 ヤンキーはというのだ。
「そうしたの」
「そっちも卒業したんだ」
「そう、だからね」
「今はだね」
「このお店の店長よ」
「僕と一緒にです」
 また夫が言ってきた。 
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