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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第九十話

 一方その頃、スリラーバークに停留する海軍船。


「皆、周囲の警戒を怠らないようにね。」

「「「はっ!」」」


 船を任されたアインは部下を指揮しながら、油断なく見聞色の覇気を張り巡らせていた。

 というのもこの島に着いてしばらくしてから誰にじっと見られている気がするのだ。


「ガルル……ようやく男がいなくなった。」


 獣の唸り声のような男の声が海軍船に響き渡った。


「誰っ!?」

「敵影見えません!?」


 第一部隊は見えない敵襲に慌てているが、船を任されているアインには見えていた。


「全員伏せて、“嵐脚”!!」


 アインは突如、誰もいない船の船首に目掛けて嵐脚を放つ。


「ぐっ……!?」


 嵐脚による鎌風が何もないはず船首の上を通過しようという時、同所から男性の焦る声とガキンッという金属声が響き渡り嵐脚が掻き消えた。

 姿は見えないが、アインの見聞色の覇気がそこに敵がいると訴えていたのだ。


「そこの貴方、姿を現しなさい!」


 嵐脚を放ったアインは船首に立ち、その下にある何も無い地面に向けて指を差した。


「何故……おいらがここにいると分かったんだ?」


 アインが指差した何も無い場所に突如、金髪の長い髪を持った身長2メートルを超える大男が姿を現す。


「私には姿が見えてなくても分かるのよ。貴方は……ミンク族のゾンビかしら?」


 その男の姿を見たアインは全身が純毛に覆われ、動物に模した顔と体つきが特徴の半獣人族であるミンク族を彷彿とさせる見た目であるが、あちこちにツギハギの跡があるのでゾンビだと判断した。


「違う。おいらはミンク族でもゾンビでもない普通の人間だ。スリラーバーク四怪人が一人、世界中の“墓場の王”アブサロムだ。俺が見えたのはそうか愛の力だな!!」


 アブサロムは整形手術の末、ライオンと人を掛け合わせたような顔をしているのでアインがミンク族と勘違いするのも仕方がない。

 スリラーバーク四怪人とはスリラーバークにいる生者四人を差す呼び名であり、ゲッコー・モリア、ペローナ、ドクトル・ホグバックそしてこのアブサロムの四人でおる。


「えっ……その姿で人間なの?それに愛とかキモいから止めてくれるかしら?まぁ……いいわ。もしかしてモリアが寄越した迎えの部下かしら?悪いわね。ゴジ君とギオンさんならもう城に向かったわ。」


 アインはアブサロムの発言に引きながらもギオンを迎えに来た使者と判断したスリラーバーク海賊団のアブサロムに事情を説明するが、彼は首を横に振る。


「違う。ご主人様は関係ねぇ。おいらはここにジェガートの美女たちがここへ来ると聞いて嫁を探しにきたんだ。愛の力で超人(パラミシア)系悪魔の実、スケスケの実の能力で姿を隠していたおいらを見つけたそこのお前こそ俺の花嫁に相応しい。」


 アブサロムは片膝を付いて左手を胸に当て、右手を船首に立つアインに向けてプロポーズを始める。

 結婚願望の強いアブサロムにとってスリラーバーク唯一の生者の女性であるペローナは幼すぎるので、ジェガートの美女達がここへ来る事を知ったアブサロムは飛んで来たのだ。


「はっ?」

「「「きゃあああ!!」」」


 それに対してアインは心底嫌そうに顔を歪めるが、何故か他の海兵達はそれを見て歓声をあげて盛りあがっている。

 女性という生き物はどのような場面であっても他人の色恋沙汰に興味津々な生き物である。


「長く美しい青い髪も、ぱっちりした目も細っそりした腕や足も、その慎ましいむn……くべぇぇぇぇ!?」


 アブサロムはプロポーズに際してアインの惚れた部分を言い連ねていたが、『慎ましい胸』と言い終わる前にアインに蹴り飛ばされた。


「あ”?あんた殺すわよ!!バカラ、船を任せたわよ」


 アインは般若のような顔でアブサロムを睨みつけている。


「はっ……はい!あのライオン男(アブサロム)終わったわね。」


 バカラはアインのあまりの剣幕によどみながら返事を返して、殺気を漲せて戦いに赴いたアインを肩を落として見守る。


「えぇ……もう絶望的ですね。」

「「「うんうん……」」」


 せっかく面白くなってきたのに肝心のアブサロムはジェガートのタブーに触れてしまった。

 タブーとはアインの胸の話題をしないことである。スタイルの良い女海兵達の中にいて何故かアインの胸だけは極端に小さくコンプレックスを抱えているのだ。


 《Side アブサロム》


 未来の嫁の愛の蹴りを受けたおいらは地面を転がされたが、大したダメージもなくすぐに起き上がる。


「ふぅ……すぅ……………すぃ……ひゅぅ………すぅ……!!」

 ──いい蹴りだが、この体はこのライオンの顎にゾウの皮膚、クマ・ゴリラの凝縮された300kgの筋力!!Dr.ホグバックの手によって移植に移植を重ね手に入れた野生の最高傑作を誇るこの肉体にはそんな蹴りは効かない!!“スケスケの実” の能力など!!おいらにとって強さの次の備品にすぎない。そんなおいらの嫁になれるんだ。幸せだろう。ガルルルル…!!


 おいらはそう言うと服を脱いで、嫁となる女に自慢上半身を見せびらかす。

 これでこの女はおいらにメロメロになるはずだと思って女の顔を見ると予想していた表情ではなく、化け物でも見たような顔をしていた。


「そう……ところで口がなくなった貴方が何を言ってるのか分からないけど元よりも酷い顔よ?それにいきなり服を脱いでその貧相な体を見せびらかしてどうしたの?」

「すぅ…?」


 おいらは自分の声に違和感を感じて自分の顎を触ると先程まであった百獣の王の上顎と下顎の骨や皮膚なくなり口が開いたまま舌だけ残り、ヨダレがとめどなく垂れ流されてる本当のゾンビよりも酷い顔である。

 更に体を見下ろすとそこにあるのは筋肉の失った骨と分厚いゾウの皮だけになった貧相な体だった。

 なんで!?自慢の顎や筋肉は何処にいった!!

 ぐうぅぅぅ身体が重いぃぃぃい…。

 突如として全身の筋力を失ったおいらは両腕に巻かれた数十キロはある大砲を持ちきれずに重くなり、透明化を解除して力なく腕を下ろして膝をついた。


「どんな能力かは分からないけど、突然現れたその腕に巻かれた大砲のような物を見る限り、触れた物や自分自身を透明に出来る能力かしら?先程私の嵐脚を防いだのもその大砲だったのね。」

「……!?」


 ライオンの顎を失ったので、まともに発音すら出来ない。

 さらにおいらは身体に移植したはずの筋肉の全てがない腕に巻かれた大砲の重さで腕の上がらなくなった跪いてしまう。

 この女は一体おいらになにをしたんだ?


「ふふっ。体の異常が多すぎて若返った事に気付いてないのね?貴方は見たところ元の年齢は28歳前後今は16歳くらいになっているわよ。でも整形手術で失った骨や筋肉までは戻らないから気を付けてね。」


 やはり悪魔の実か!?

 でも、おいらのライオンの顎やくまやゴリラの筋肉がなくなった理由は分からない。

 全身が重い。はぁ……はぁ……もうダメ。

 おいらは体の皮膚を覆うゾウの分厚い皮膚の重さにも耐えられなくなってその場に寝転がって原因となった女を睨んだ。


「教えてあげるわ。私の食べた悪魔の実の名前は超人(パラミシア)系悪魔の実、モドモドの実。触れた物の年齢を強制的に12年分若返らせる能力。そして、触れた物が12歳未満だった場合はこの世から消滅するの。貴方に移植された動物達の年齢は皮膚以外は12歳未満だったのね。」


 悪魔の実の能力を聞いておいらは衝撃を受けた。

 存在を消すだと……この女の能力は数ある悪魔の実の中でも本当に悪魔のような能力じゃないか?

 
「あ”あ”ぁぁぁー!?」

 ───ひぃぃぃいい!来るなぁぁあああー!?


 悪魔が笑顔でこちらに歩いて来る。

 しかし、おいらにできるのは叫びながら、体が重く動く事も出来ないので必死で地面を這うように距離を取る。


「大丈夫よ。もう一度触れても貴方は消滅しないから安心なさい。移植したゾウの皮膚の大きさと重さに4歳になる貴方が耐えられればだけどね!」

「あ”あ”ぁぁぁー!?」

 ──嫌だぁぁぁ!この化け物、来るなぁぁぁ!


 筋肉のなくなったおいらが必死にもがいて逃げるよりも悪魔の一歩の方が断然速い……

 おいらの頭に悪魔の手が伸びてきた……

 もうダメだ。消される!!


「モドモドピンショット!!」

「あ”っ…!!?」


 あぁ……おいらの人生が終わった。最後に綺麗な花嫁と結婚したかったな……。


 《Side アブサロムend》


 一目惚れした女が自分を殺す死神にしか見えなくなって恐怖に顔を歪めて涙を流すアブサロムの目の前に移動してきたアインは彼の額にデコピンを放つ。


「モドモドピンショット!!」


 ただのデコピンと侮ることなかれ、アインはモドモドの実を食べる前から若くしてジェガート第一部隊の副隊長を任されていた俊英である。


「あ”っ…!!?」


 デコピンの直撃を受けたアブサロムは5メートル近く吹き飛ばされて地面に仰向けに転がった後、泡を吹いて気絶した。


「なんて、嘘よ。ただのデコピンよ!そんな状態でもう一度モドモドの実の能力を受けて身体だけが小さくなると移植した皮膚の大きさに耐えられなくて皮膚が全て引きちぎれるわよ。」


 ライオンの寿命は10年前後であり、くまは20年、ゴリラは30年前後と言われているが、くまやゴリラ、ライオンの全盛期の筋肉をアブサロムに移植したので、3種ともに10歳には満たない若い雄のモノであった。

 だからアインの能力1回で存在が消えてしまったが、ゾウの寿命は60年を超えるため、ゾウの皮膚だけは残ったのだ。


「……!?」


 アブサロムはデコピンによるダメージよりもアインの能力で存在を消されて死んでしまう未来を想像して白目を剥いて気絶してしまった。


「ちなみにプレイボーイ気取りのあんたに言っとくと、あんたと同じ状況に陥っても、ゴジ君なら女の子を化け物を見るような目では絶対見ないわよ。私達に声を掛けるならゴジ君より強くなって出直しなさい。まぁ……その顎じゃ一生女の子なんて口説けないでしょうけどね。」


 アインは身近にいる弟のように世話を焼かされるゴジを思い浮かべて苦笑するとゴジを知るジェガートの面々は頷いている。


「流石“白猫”と呼ばれる私の師匠ね。」


 バカラは師事するアインの全く無駄のない戦い方に見惚れて惜しみない拍手を送る。バカラの能力とて相手に触れて運気さえ吸い取れればそれで勝ちが決まるため、見聞色の覇気で先読みしつつ敵に触れるというアインの戦い方こそ自分の目標とすべきモノなのだ。

 これが海軍本部に実力を認められて、若くして将来の大将候補の一人に数えれる色と動物を合わせた二つ名を与えられたジェガート第一部隊副隊長“白猫”アインの実力である。 
 

 
後書き
アブサロム……(-∧-)合掌・・・ 
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