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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第八十八話

 ホグバックは大急ぎでモリアにシンドリーから聞いた事情を説明した。


「クロコダイルの野郎を捕まえた“黒麒麟”がこの俺の視察に来るのか?」

「あぁ。シンドリーちゃんによればもうこの海域に到着してるって話だぜ。」

「なら勝手に島に入って来るだろう?この海域で迷子になってんならそれはそれでそういう運命だったってことだ。出迎えに行く義理もねぇ。ホグバックそれよりも早く死体をだせ。」


 モリアはホクバックの話に驚きはしたが、めんどうさがりな彼の性格上向こうが勝手に会いに来るなら会うスタンスである。

 そして実力と勢いのある若手海兵が来たからといって慌てふためくような臆病な性格ではなく自然体であった。


「あぁ。それならちゃんと持ってきたけど、“黒麒麟”が島に辿り着かなきゃ問題にならないか?」


 ホグバックの後を応用に台車に載せられたいくつかの死体がゾンビ達によって運ばれてきた。

 ホクバックの疑問は最もである。

 元々西の海(ウエストブルー)にある島であるスリラーバークはログを持たないので、記録指針(ログポース)でも示すとこないこの島に狙って辿り着ける方法等あるはずない。


「キシシシ!そんなもん今、気にしてもしかたねぇ。それよりも今は新たなゾンビ兵士たちの誕生を見届けるぞ!」

「フォスフォスフォス。それもそうだ。ゾンビといえば人は恐怖するが、船長の能力は言うなれば“死者の蘇生”!!全世界の人々の夢だ!」


 天才外科医と呼ばれたドクトル・ホグバックでも死者を蘇られる事など出来ないが、天才的な外科医の手術の力による死体修復術とカゲカゲの実の能力が合わされば“死者の蘇生”が為される。


「仲間なんて生きてるから失うんだ。全員が初めから死んでるソンビ兵ならば何も失うもんはねぇ!行けェ影共、これが新しいお前達の体だ!!」


 モリアの傍に控えていた無数の影が彼の指示にしたがって並べられた死体に一体ずつ入っていくと影の入った死体が一斉に起き上がる。


「フォスフォスフォス!この死者蘇生の瞬間はいつ見てもたまらん。」


 ホグバックは自らが作りあげた体に命が宿るのを興奮して見ており、モリアも新たな戦力の誕生に興奮していた。


「それがお前達の新しい肉体だ。元の脆弱な肉体より遥かに強いし、何よりも死ぬ事もない。お前達、早く俺を海賊王にならせろ!」


 モリアはかつては自力の過信と野心に満ちており、見た目も今とは違って筋肉質で最前線に立って戦いに赴き、四皇“百獣”のカイドウを相手取れるほどの海賊であったが、新世界で仲間すべてを失う「本物の悪夢」に見舞われて以来、死なない兵士であるゾンビに執着し、さらに部下の重要性に着眼して他力本願なスタイルへと移行していた。


「「「うおおおおぉぉぉ!!」」」


 絶対服従のゾンビ達は雄叫びをあげてモリアの期待に応えた。


 ◇


 ゴジ達はバカラの示した指針に従ってしばらく船を進めると中心に大きな城のそびえ立つ島にしか見えない船が見えてきた。

 この島こそ目的地であるスリラーバークである。


「迎えはなし?アイン姉ちゃん、しっかり連絡したよね?」


 港らしき場所に軍艦を停泊させるも、閑散とした島の様子にゴジを見たアインに確認を取る。


「えぇ。アラバスタ王国を経つ際と、先程この海域に入った直後の二度。どちらも同じ女性が応答したわよ。なんか皿がどうこうって言ってたけどね。」

「なら、勝手に入ってこいってことかしら?」

「ゴジ君、ギオン中将!少し待ってください。武装した数十人の海賊とおぼしき一団が我々に気づき、こちらに向かってきています。」

「アインちゃんの見聞色は流石だねぇ。全軍戦闘態勢!」


 スリラーバークの全体様子を見聞色の覇気で探っていたアインが報告すると、即座にギオンは部隊に指示を出した。

 元々見聞色の覇気に才能のあるアインは、見聞色の覇気だけならゴジ以上の実力を持ち、海軍本部内でもつるに次ぐ実力者である。


「あぁ。俺が感知するより全然速い。」

「「「はっ!」」」


 戦闘態勢を取った彼女達の前に現れた海賊達は武器を捨てて両手を上に挙げる。


「待ってくれ!!あんたら海軍だろう?俺達は降伏する!」

「俺達は影をモリアに取られてこの島から出れないんだ。」

「こんな所でゾンビに怯えて暮らすくらいなら海底大監獄(インペルダウン)の方がいいんだ!」


 口々に降伏を訴える海賊達に対してギオンは無情にも振り上げていた腕を下ろす。


「威嚇射撃。撃ち方始め!!」


 ギオンの指示により、銃を構えた海兵達がバンッバンッと海賊達の足元に向けて発砲する。


「「「ぎゃあああ!?」」」

「なんでっ!?」

「俺達は武器を捨てて降伏を訴えてんだぞ?なんで撃つんだ。」


 海賊達は降伏を訴えたにも関わらず発砲する海軍に非難の声をあげるが、ギオンは凛とした声で海賊達に告げる。


「王下七武海“影の支配者”ゲッコー・モリアとの協定に従い、この海域にいる海賊達の身柄はモリアの所有となっているわ。これ以上近づけは私達は防衛の為にあんたらを殺さなきゃならない。死にたくなければここから去りなさい。」


 “影の支配者”ゲッコー・モリアが王下七武海となるに当たり、世界政府に提示した条件は魔の三角地帯(フロリアントライアングル)の支配権とこの海域に侵入してきた海賊達の所有権である。

 世界政府はモリアの目的が海賊から影を奪ってこの海域に閉じ込めることだと分かっていた上で魔の三角地帯(フロリアントライアングル)を海賊達の天然の牢獄と為す事を了承したのだ。


「くそっ!?」

「に……逃げろおぉぉ!」


 海賊達はその場から逃げて走ってきた森に逃げて行った。

「今はまだモリアに所有権があるから仕方ない。そう……“今”はまだな……。」


 ゴジは逃げていく海賊達を見ながら独り言を呟いた。


「全くそれにしても、モリアはホントに迎えに来ない気かね?仕方ない。たしぎちゃんとポルチェちゃんの二人は私とゴジちゃんに付いてきてくれるかい?アインちゃんとバカラちゃんは船とみんなを頼んだよ。」

「「「はっ!」」」


 ギオンは手早く指示を出して、モリアとの面会に連れていく二人と先程同様の海賊の襲来に備えて自分に次ぐ実力者である副隊長のアインとバカラを筆頭として他の海兵を護衛として残した。


「見聞色の覇気に長けた副隊長であるアイン姉ちゃんと、運気が残ってる限り無敵なバカラを残すか……流石はギオンさん率いる第一部隊、粒揃い……あれ?ギオンさん!」


 ゴジはふと第一部隊の面々を見て、一人足りないことに気付いてギオンを呼んだ。


「ん?なんだい?」

「イスカさんの姿がないけどどこ行ったんだ?」

「あ〜イスカちゃんなら今は“火拳”のエースって海賊にお熱でね。一時部隊を離れて途中で拾った見習いの女の子と2人で追いかけ回しているところさ。」

「へぇ〜!最近噂のルーキーか?なるほど、妬いちゃうね。」


 ゴジはまもなくシャボンディ諸島に到着すると言われている一億万ベリーの超大型ルーキーである“火拳”のエースを思い出して苦笑しながら、イスカの活躍と無事を祈りながら下船の準備を始めた。


 ◇


 ゴジ、ギオン、ポルチェ、たじきの四人が下船して城に続くであろう道を歩いていく。


「周りでこちらを見ている変な気配が沢山ある。気を付けて行こう。それに凄く臭いな。」


 ゴジは腐った死体であるゾンビの放つ強烈な匂いの充満したこの島を覆う匂いに耐えきれず、鼻をつまみながら木々の影からこちらを伺う視線に気付き、全員に声を掛ける。


「腐乱臭というやつですよね……。」


 たしぎは油断なく左手で刀の鞘を持ちながら左右を伺っているが、臭いには耐えれない様子で顔を歪めている。


「あぁ。モリアのゾンビ兵だね。元が死体だから、気配もなくて見聞色の覇気でも引っかかないから厄介なのよ。」

「なるほど……確かに厄介だな?」

「いやん。ソンビって私超苦手なんだけどぉ。襲ってこないわよね。」


 逆にポルチェは自分の体を両手で抱き締めながら、周りをキョロキョロするのを見て、ギオンはそれを笑い飛ばす。


「ウサフフフ。安心してたしぎちゃんにポルチェちゃん。」

「「えっ?」」


 ◇


 木々の隙間からゴジ達の様子を見ているゾンビ達が互いに声を掛け合う。


「おい!お前いけよ!」

「いや、お前が行けよ。」

「あれって……“麒麟児”に“桃ウサギ”だぞ?俺達には絶対無理だ!!将軍(ジェネラル)ゾンビを呼んでこい!」


 ゾンビ兵達は海賊だった頃の記憶を有しているので、海軍でも名の知れた2人を前にビビりまくっていた。

 ゾンビ兵は器となる死体の強さに応じており、絵画や剥製を流用したびっくりゾンビ、動物の死体を流用した動物(ワイルド)ゾンビ、人の遺体を流用した兵士(ソルジャー)ゾンビ、人の遺体と動物の死体を混合したり著名な戦士の遺体を流用したりして作った将軍(ジェネラル)ゾンビに分けられており、彼らは兵士(ソルジャー)ソンビ達である。

 そして、彼らの影を奪われたのがかなり前だったのだろう……ゾンビ達はゴジの二つ名が“黒麒麟”となったことは知らないようだった。


 ◇


 ギオンは周りのゾンビ達の会話こそ聞こえないが、状況から正確に察知して部下達の不安を解消する。


「ゾンビの中にいるのはモリアか奪った海賊の影だからね。基本的に海兵である私らにビビって動けないのさ。」

「なるほど……海軍本部中将二人に喧嘩を売ろうなんて輩はいないわねぃ。」


 しかし、兵士(ソルジャー)ゾンビの救援依頼を受けた一体の侍ゾンビがゆっくりとゴジ達に近付いていた。


「ヨホホホホホ……海軍本部最強の女剣士“桃ウサギ”ですか、これは腕が鳴りそうです。」 
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