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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第八十七話

 ここは偉大なる航路(グランドライン)前半の海にある“魔の三角地帯(フロリアントライアングル)

 常に深い霧に覆われて光が指すことがない海域であり、その深い霧の中ではずっと昔から毎年100隻を超える船が消息を絶っているという。

 この海域に一隻の海賊船が侵入してしばらく経ったある日のこと───


「くそ!なんだここ?周りは船残骸だらけ……まるで船の墓場だ。」

「気味の悪い場所だな……今が昼か夜かも分かりゃしねぇ。」

「お化けでも出そうな雰囲気だな……」

「けっ……そんなの怖がってのかよ。お化けなんていたら剣のサビに……うわあああぁぁ!?」


 彼らはルーキーながらここまで順調に航海を続けてきた海賊団であった。そんな彼らにこの日悲劇が訪れる。

 甲板のヘリに腰掛けていたクルーの一人が悲鳴を残して暗い海へ引きづりこまれたのだ。


「なんだ!!どうした!?うぎあああぁぁぁー!!」

「助けてくれぇ!!」
 

 それを合図に暗闇の支配する船に悲鳴が響くが、暗闇の支配するこの海域において仲間の位置を察知するのも困難を極め、船で何が起きているのかも分からない。


「ホロホロホロホロ……!」


 そんな中で、若い女性の笑い声が響き渡る。


「だ……誰だぁ?」

「ひぃ……せ……船長、あ……あれ……」


 海賊団の一人が空に浮かぶ淡く輝く若い少女を見つける。


「「「ホロホロ……」」」


 彼女はピンク色の長い髪をツインテールに結い、俗に言うゴスロリ衣装を纏った十代半ばの少女であったが、空に浮いているのはその少女だけでなく、その少女の周りを漂う半透明な白い体に一反木綿のようなヒラヒラとした体を淡く発光させる持つ誰がどう見ても幽霊と称する物体がいた。


「誰だ……お前は……まさか亡霊!?」

「ひぃぃいいい!?ゾンビだぁぁぁ!」

「船長!大量のゾンビが乗り込んできた!?」


 海から船に大量のゾンビが乗り込んできたのだ。


「残念だったな。この海域はモリア様のナワバリだマヌケ共!!お前達をモリア様の所に連れていく。いけぇゾンビ共!海賊共を全員捕らえろ!」

「「「おぉぉぉ!!!」」」


 王下七武海ゲッコー・モリア率いるスリラーバーク海賊団はモリアを除いて生者は片手で数える程しかおらず、ネガティヴホロウと呼ばれる幽霊を従えるこの幽霊のような少女、超人(パラミシア)系悪魔の実、ホロホロの実の能力者“ゴーストプリンセス”ペローナは生きた人間である。


「ソンビに亡霊だと……俺の船で何が起きて、だが、指揮官を討てば勝ちだ!あれは俺がやる!お前達はゾンビ共を迎え撃て!」


 戦いが始まってすぐに海賊の一人が先頭のゾンビの首を斬り飛ばした。


「よし!俺に続……ぐああぁぁぁー!!」

「ひぃぃ……なんで首を斬られたのに動けるんだよ……」


 海賊達は信じられないモノを目撃する。首を斬り飛ばされたゾンビが海賊を鈍器で殴り飛ばしたのだ。それを見た海賊達は戦意を喪失し、絶望的な顔を浮かべるのでペローナは腹を抱えて笑いとばす。


「ホロホロホロホロ……無駄だ。ゾンビ共は痛みを感じねぇよ。」


 海賊団の船長は腰に帯びた銃を抜き放つと空を漂うペローナ目掛けて発砲した。


「くそ!ならお前から殺してやる!」

「ん?幽霊のあたしに銃なんて効かねぇぞ“ネガティブホロウ”!」

 
 その銃弾はペローナの頭を撃ち抜いたが、ホロホロの実の能力で幽体となったペローナに攻撃は一切効かない。


「なっ!?銃が効かねぇ……来るな!この化け物がぁ」


 船長は銃を投げ捨てると自慢のサーベルで自分に迫ってくるネガティブホロウを叩き切ると、そのサーベルはネガティブホロウの体を素通りする。


「くそぉ……生まれてきて申し訳ありませ……ぶべしっ!!」


 剣で斬られることのないそのままネガティブホロウは船長の体を素通りすると、船長は両手と両膝をついてネガティブな言動を放ちながら謝りはじめるとその頭を目掛けてゾンビが無慈悲に棍棒を振り下ろした。


「ほいっと……そっちにも“ネガティブホロウ”!」

「あ”ぁ……生まれ変わるならミミズになりたい……ぶべしっ!」


 ペローナはスリラーバーク海賊団におけるゾンビの指揮官であり、ゾンビ達では苦戦しそうな相手の体にネガティブホロウを通して膝を着いた海賊をゾンビが無慈悲に気絶するまで殴り倒してこの海賊団は瞬く間にゾンビ達に制圧された。


 ◇


 数年前よりここ魔の三角地帯(フロリアントライアングル)をナワバリとして数多の海賊を闇討ちしてきた男がいる。

 その男こそ王下七武海ゲッコー・モリアであり、モリアのいるスリラーバークという船は正確には島を改造しているので、土や森もそのまま残った状態で、巨大船と言うよりはひょうたん島のように巨大な浮き島と呼ぶ方がしっくりくる。

 スリラーバークは元々西の海(ウエストブルー)の島なので記録指針(ログポース)が反応しない"ゴースト(アイランド)"と呼ばれる。


「ぎゃああああ!俺の影がぁぁぁ!!」

「止めてくれぇ」


 7メートル近い身長にラッキョウのようなずんぐりむっくりとした体と悪魔のような青白い顔をした大きなハサミを持った男がペローナ率いるゾンビ達が捕縛し、スリラーバーク城の玉座の間に連れてこられた海賊団の一人一人の影をその巨大なハサミで切り取っていた。

 海賊達は自分の影を切り盗られる恐怖で悲鳴をあげているが、その男は恐怖に染まる海賊達の顔を見ながら嬉々として影を切り取り続けている。


「キシシシシシ!これでまた大量の影が手に入った。これでまた海賊王に近づいたぜ。」


 超人系(パラミシア)悪魔の実、カゲカゲの実の能力者にして王下七武海の一人ゲッコー・モリアの所有する西の海(ウエストブルー)にあった小島を改良した世界最大の海賊船スリラーバークはこの海域を縄張りとしている。


「俺たちの影をどうするつもりだ!?」

「影を失った俺たちはどうなるんだ…?こ……殺すのか?」


 王下七武海に入る条件としてこの海域の支配とこの海域に訪れる海賊の生殺与奪の一切の権利を得ており、今のこの海域に足を踏み入れた海賊団の1つが彼の手に落ちた。


「殺しゃしねぇよ。おめぇたちの影は俺がいただいた。影がねぇまま陽の光の元に行くとおっちんじまうから気ぃつけろよ。」

「「「ええぇぇぇぇ!!」」」


 カゲカゲの実はこれを食した者は自分や他人の影を操ることができるが、この能力の真骨頂はそこではない。

 モリアに切り取られた影達はモリアの足元に跪いている。影は人間が産まれた時から一生付き従う「もう一つの魂」であり、モリアは他人の影を切り取ると、その瞬間からその影はモリアに絶対服従するのだ。


「「「俺たちの影を返せぇ!!」」」

「ネガティブホロウ!」

「「「もう生きてはいけない。今すぐ死んでしまいたい。」」」


 騒ぎ立てる海賊達の体をネガティブホロウが通過すると、絶望の表情を浮かべて両手と両膝を地につけてネガティヴな一斉に言動を発する。


「ホロホロ!まったくうっせなぁ〜あたしのネガティヴホロウの力で少し大人しくしてな。幸いこの海域にいる限りは陽の光は差さねぇから死にはしねぇよ。ゾンビ共!いつものようにコイツらを適当に捨ててこい!」

「「「はっ!」」」


 ペローナはゾンビ共に指示を飛ばしていくと、玉座の間で待機していたゾンビ共が未だネガティブホロウの影響が残っているのか、この状況に絶望しているのかは不明だが、力なく肩を落とす海賊達を全て抱えて全員部屋から出ていった。


「俺は船長失格だ……」

「海なんて出るんじゃなかった……」


 影は元の持ち主の強さと人格を反映し、人体に入れれば入れられた人間に影の持ち主の特性が加わる。

 遺体や物に入れられた場合、その入れ物には人格が無いので、性格は元の影の持ち主の性格がそのまま反映されるほか、入れ物の死体や物が強靱である場合は元の影の持ち主が圧倒される程の強力な戦力となるが、当然元の持ち主が死んでしまうと影も消えるので海賊団達には生きてもらわねばならない。

 モリアはこの能力でこの海域を訪れた海賊の影を切り取って、遺体に影を入れることでモリアに絶対服従の不死のゾンビ軍団を作っているのだ。


「ホグバック〜どこだぁ!新しい影が手に入った新しいゾンビを持ってこぉ〜い!」

 
 新しい影を大量に手に入れて上機嫌になっているモリアが城に戻るやいなや部下であるドクトル・ホグバックを呼ぶ。

 モリアに呼ばれてひょうたんのような体型から細い手足が生えているような人間離れした体型に紫色の網タイツを履いた一人の男が姿を現す。

 この男ドクトル・ホグバックはペローナと同じくこの海賊団には珍しい人間でスリラーバーク海賊団の船医を務める。


「フォスフォスフォス!船長ご機嫌だな。今冷凍庫で眠ってる戦士たちを起こしてくるさ。」


 彼は西の海(ウエストブルー )出身の外科医として天才的な手腕を持ち、数々の奇跡を起こした名医であり、医者として得られる地位と名声の全てを手に入れたが、数年前突然として姿を消して、ある事を条件にスリラーバーク海賊団への入団した。

 ホグバックはモリアにそう言った後で、自分の部屋に戻ると短い金髪の髪を持つスタイルの良い一人の女性ゾンビが部屋にある皿を一枚一枚割っていた。


「皿なんて無くなってしまえばいいのに。」

「シンドリーちゃん!部屋の皿を割るのは良してくれよ!!」


 彼女はかつて舞台女優としてその名を馳せたヴィクトリア・シンドリーであり、10年前に不慮の事故で亡くなってしまった。

 カゲカゲの実の能力を使って彼女をゾンビとして復活させるこそホグバックがスリラーバーク海賊団に入隊した理由である。

 基本的に入れ物であるゾンビは性格を持たないので、彼女の皿を憎む性格は影の持ち主の性格に起因するもので、生来の彼女の性格とは異なるが、生前のシンドリーに振られている彼にとっての彼女こそシンドリー本人なのだ。


「今日はどのソンビを蘇えらせてやろうかな?よし、取っておきのコイツらを使うか!」


 ホクバックは巨大冷凍庫に所狭しと並ぶ死体を選んでいた。

 スリラーバークに無数に存在するゾンビ達は、このホグバックの医療技術によって修復及び強化された死体にモリアが他者から切り取った影を入れる為にで作られたものである。

 ゾンビの力は入れ物となるゾンビの筋力に依存する為、ホグバックは普通の成人男性の遺体の筋肉をゴリラ等の動物のそれと入れ替えたりしているのだが、この中にもホグバックが全く手を加えないゾンビがいる。
 
 それらは生来その名を轟せた英雄や悪党の死体であり、これらに入れられる影もとっておきの一船の船長クラスの影が入れられることになる。


「そういえば、先程海軍からスリラーバークへ視察に来ると連絡があったわ。」

「へぇ〜ぶほぉぉぉ!?シンドリーちゃんなんでそんな大事なことを早く言わないの?」


 王下七武海としての働き振りを海軍将校が視察することは珍しいことではないが、この暗黒の支配する魔の三角地帯(フロリアントライアングル)”にあるゾンビの蔓延るスリラーバークに来る海兵は珍しい。


「皿が憎かった。」

「そっちのほうが大事なの!?まぁいいや。で、誰が来るって?」


 シンドリーは恨めしそうに床で粉々に割れた皿を睨んでいるとホグバックは一度目を見開いて驚いた後に話を促した。

 視察に来るとはモリアに会わせろということであり、ホグバックはモリアへ報告する為にシンドリーから詳細を聞く必要があるからである。


「ゴジ中将。」

「ぶほぉぉぉ!?超大物じゃねぇのさ。で、いつ来るって。」

「違うわ。来るって聞いたのは一昨日。さっきこの海域に着いたって連絡があった……。」


 表情を一切変えずに淡々と告げるシンドリーの言葉にホグバックは飛び上がるほど驚く。


「だからなんで先に言わねぇのよ!」

「皿が……」

「皿はもういいよぉぉぉ!船長ぉぉぉ大変だぞぉぉぉ!!」


 海軍が視察の為に既にこの国へ来ていると知り、ホグバックは慌ててモリアの元へとんぼ返りした。 
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