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MOONDREAMER:第二章~

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第五章 ローズ味
  第5話 これからどうするか

 こうして華扇の話により、ここが十年後の未来の幻想郷だという事が判明したのだった。
 勿論、その話を聞いて大人しくしている楓ではなかった。
「すみません華扇さん。私、元の時代に帰らなくてはいけません」
 華扇はその言葉を聞いて、この場は当然そう来るだろうという予想がついていたのだった。
 当然だろう。自分の姉を探しに来た所、そこは未来の世界だったと知れば、すぐにでも戻って再散策に出るべきだろう。
 その楓の気持ちは当然現れるような衝動である事を考慮しても、華扇はこの場は楓に落ち着いてもらいたい所なのであった。
 なので、華扇はこう話を切り出す事にした。
「楓、一先ず落ち着いて欲しいわ」
「でも、早く元の時代に戻ってお姉ちゃんを探さないと!」
「そう、そのお姉さんがどうなったか、もう一度思い出してくれる?」
「えっ?」
 そんな話に持っていかれて、暫し楓は何故そのような事を華扇は言うのだろうと思う所であったが、すぐに合点がいったのである。
「あっ! 確かにそうですよね?」
「分かってくれたようで良かったわ」
 こうして二人の意思は見事に以心伝心したのであった。そして、その答えはこうである。
 華扇が勇美達がこの時代では大成功を収めている事を話したのである。つまり、それは勇美が無事でなければ成り立たない内容なのである。
 もし勇美が不幸な目に会っていたら、当然成功した未来など存在してはいないのだから。これは話の一貫性というものを考慮すれば自ずと導き出される結論なのであった。
 なので、漸くその事を把握した楓はその場で胸を撫で降ろしたのだ。
 ちなみに、その仕草により彼女のたわわに実った肉の果実が強調される事となった。そう、楓は14歳にして豊満な巨乳の持ち主であったのである。
「……失礼な事を言うかも知れないけど、その歳で相当な代物よね、楓。私も小さくはないけど、そのボリュームには負けるわ」
 華扇のその指摘内容と彼女の指摘から、楓は何の事を言われているのかすぐに察知するのであった。
「う~ん、華扇さんもそういう見方しますか? お姉ちゃんも私とは仲がいいですけど、その話題の時はまるでカタキを見るようなオーラを出しますよね……」
「それは無理もないわ。どうして双子の姉妹なのにこうも差がついてしまったものなのかしら?」
 そう言いながら華扇は頭を手に当てて悩む所なのであった。全くを以て勇美が不憫でならないというものであろう。
「私としてはこんなの脂肪の塊に過ぎないから余りありがたくはない所なんですけどね……」
「あなた、それは世の女性の多くを敵に回すような発言よ!」
 特に、幻想郷では有力者は女性が多いから特にそのような発言は慎むようにと華扇は念を押した。
「あ……ごめんなさい。何か踏み入ってはならない事を言ってしまったようで」
「分かればよろしい」
 素直な物言いをする楓に対して、華扇は物分かりが良い子で良かったと安堵するのであった。
 とまあ、このように多くの女性にとっての死活問題が話題に割り込んでしまって話がうやむやになりかけたが、ここで楓はその軌道修正を行う事にするのだった。
「華扇さん、それはそうと話を元に戻しましょう」
「ええ、それがいいわね」
 その提案に対して、華扇は全くを以て否定する意味合いを感じてはいなかったのである。早い所今の現状に対して結論を出さなければいけないという考えは華扇とて同じなのだから。
 だから、華扇は楓に話の続きを促したのである。そして、楓はその計らいに乗る形で話を続けていった。
「華扇さんが勇美お姉ちゃんが無事だって事を言いたいのは分かりました。でも、それでも私は帰らないといけないんです」
「……」
 その楓の主張を華扇は無言で聞いていた。そして、それはもっともな考えである事は華扇にも分かる所であるのだった。
 誰だって、自分の大切な人が話で無事だと聞くだけで安心出来るようなものではないだろう。自分自身がその目で無事を確認して初めて安堵するのが人情というものなのだから。
 ましてや、楓は勇美を追って来たにも関わらず、見当違いの未来の世界なる所へ迷い込んでしまったのだから。故に彼女の気持ちがはやるのも当然というものだろう。
 その気持ちは分かる所ではある。だが、華扇はここは敢えて言っておかなければならないだろうと腹を括って打ち明ける事にしたのだった。
「楓さん、ここは落ち着いて聞いて欲しい所よ」
「と、言いますと?」
 改まった態度でそう言い始めた華扇に、一抹の不安を抱きながら楓は返した。
 ──そして、その不安は現実のものとなるのだった。
「楓さん、恐らくあなたはすぐには元の時代には戻れないと思うわ……」
「……」
 そう現実を突き付ける華扇に対して、楓は無言となるのだった。そして、予想通りだとも感じる所であるのだった。
 そして、その事実を知った楓は、自分でも驚く程意外な位に落ち着いているのを感じていた。
「……やっぱりそうだったんですね」
「あら? 妙に落ち着いているようだけど?」
 その事に疑問を持った華扇はそのように楓に聞くのであった。それに対して、彼女はこう答えたのである。
「はい、何となくなんですけど、そんな気がしていたんです」
「何となく……ね」
 その言葉を華扇は反芻するかのように呟いたのである。何やら、この子の感性は何かと優れていると思い知らされる所なのであった。
 だが、それでもまだ諦めてはいけないだろうと思い、華扇はこう楓に促すのであった。
「でも、望みは最後まで捨ててはいけないと私は思うわ。だから──もう一度あなたが現れた場所へ行ってみましょう」
「はい、そうですね♪」
 その華扇の計らいには、楓も嬉しく思う所なのであった。この先の事うんぬんよりも、華扇がそうして気を利かせてくれる事に意味合いを感じるのだ。
 こうして話が決まった二人は、再び庵の外へとその身を赴いて行ったのである。
 そして、目指すは楓が初めてこの『十年後の幻想郷』へと現れた場所である。そこへ彼女達は歩を進めたのであった。──そこに一抹の希望を携えながら。
 だが、現実は非情であった。そこには楓が入り込んで来た際に開いていた境界が、初めからそのような物は存在していないと言わんばかりにものの見事に雲散していたのであった。
「……やっぱりないですね」
「そのようね……」
 そう呟く楓に、華扇は自分には全く非がないにも関わらず、どこか申し訳なく感じてしまうのであった。そこに彼女の真面目で律儀な性格が出ているというものである。
「華扇さんは何も悪くありませんよ」
 そう言ってにこりと笑みを浮かべて華扇を気遣ってくれる楓。その何気ない仕草に華扇は思わず嬉しくなる。
「ありがとう、楓さん。それじゃあ、今後の事を決める意味でも、一旦私の庵に帰りましょう」
「では、お言葉に甘えさせていただきますね♪」
 華扇の計らいに感謝しながら、楓はうきうきとした様子で彼女の連れられて庵へと踵を返していくのであった。

◇ ◇ ◇

 そして、二人は再び華扇の庵へと辿り着いたのであった。今二人は初めて来た時と同じように茶の間で寛いでいる所なのである。
 そこで話題に挙がっている話は、当然楓の今後についてである。
「まず、楓さんが今後どうするかを決めなくてはならないわね」
「はい、でも要は私はいずれは元の時代に帰れる事は保障されているのですよね」
「確かに……」
 その事実は華扇も認める所であった。思い出して欲しい。未来では楓は勇美と一緒に成功を収めている事が華扇の口から判明しているのである。そうなるには、楓がこの先無事に元の時代に帰還していなければ成り立たない展開なのだ。
 楓のその物分りの良さに、華扇は舌を巻くしかなかったのである。やはりこの子は何かと感性に優れていると思い知らされる所存というものだ。
「それなら、まずはその一安心って所ですよね♪」
 自分が何らかの手段で今後元の時代に帰れる事は決まっているのだ。だから、楓は大船に乗ったつもりでその身を成り行きに委ねる事にしたのだった。
「ええ、その点は安心してもらって構わないでしょう。……あなたは歳の割りにしっかりしているのですね」
「それはもう、お姉ちゃんの為ですからね♪」
 そう言って楓は自分の胸にトンと腕を当てるのであった。それによりまた彼女の豊満な膨らみが強調される事となるのだった。
「──そのあなたの器の大きさは、胸の大きさから来るのかしらね……?」
「いえ、こんなのただの飾りです」
「……それは暴言よ、楓さん?」
 女性の渇望の一つである産物を、モビルスーツの脚部と同等に言われて、華扇は頭がクラッとする心持ちとなるのだった。
 ──絶対にこの言葉は他所では言わせる訳にはいかない。そう華扇は心に誓ったのである。
 閑話休題。取り敢えず今話題にすべき事はそこではないのだ。他でもない、楓のこの先の事である。
「確かにあなたはこの先将来的に元の時代に戻れるでしょう。でも、それはいつになるかは詳しい事は分からないわ……」
「……そうですね」
 その事は楓は重々承知の所であったのだった。未来という『結果』はどうなるか知る事が出来ても、それまでの『過程』がどうなるのかが一番重要となってくるというものであろう。
「そこで楓さん。あなたは今後その時が来るまで幻想郷に住まなくてはならないでしょう」
「はい……」
 話の展開からそうなるとは楓も予想はしていた所である。こうしていよいよを以って異世界、それも未来の世界に住む事がここに決まったのだった。
 そうして、その話を楓に飲み込んでもらえた華扇は、そのまま続きを進めていく。
「まずは、あなたの住む場所ね」
「それが一番重要ですね」
 それが最重要項目というものだろう。この異世界でずっと野宿という訳になどいかないのだから。
 ましてや、楓は最初にこの世界の妖怪に襲われているのだ。その事から彼女はここでの野宿など自殺行為に等しいとすぐに理解する所であった。
 だが、その事は華扇の心配する所ではなかったのである。何故なら……。
「楓さん、これから暫くは私の庵に住むといいわ」
「えっ? いいんですか?」
 その思わぬ、渡りに舟な提案に楓は驚くのだった。
「ええ、構わないわ。元よりこの庵には私と使いの動物達しかいないのだから、人一人増えるなんて訳がないという事よ。──そういう訳で、これからよろしくね、黒銀楓さん?」
 その言葉に楓は暫し呆気に取られていたが、やがて思考が回って来てこう言うのだった。
「はい、ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いしますね、華扇さん♪」
 ここに、一番の問題は解消されたのだ。まだまだこれから課題というものは存在するだろうが、それも少しずつこなしていけるだろうと楓は心弾ませるのだった。 
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