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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第八十三話

 レイジュは重症のイスカを抱えてコノミ諸島沿岸に停泊中の戦艦“女神(ヴィーナス)”に帰ってきた。


「「「レイジュ様おかえりなさいませ!!」」」
 

 ジェルマ兵士たちがレイジュの帰還を出迎えると、一人の兵士が進みでる。


「レイジュ様、治療ポッドの準備は出来ております。」

「直ぐにイスカ少尉の治療を始めるわ!」


 レイジュは船内にある治療ポッドと呼ばれる緑の液体が並々と注がれた棺桶のような入れ物にイスカをゆっくりと寝かせる。


「これは……?」


 イスカは自分の入れられた治療ポッドについてレイジュに尋ねた。


「この液は細胞の自己治癒能力を促進する効果があるのよ。この治療液に浸っているだけで後遺症もほとんどなく怪我を短期間で治す事が出来るわ。」


 ジェルマ王国のクローン兵は僅か5年で赤ちゃんから青年まで成長させる事の出来る培養液の中で育つ。この培養液の中には細胞分裂を促進させる効果があり、20年を5年に短縮しており、この技術を応用したのがこの治療ポッドである。


「流石は化学大国ですね。助かります……なんだか、眠く……すぅ……すぅ……」


 治療ポッドに入ったイスカはレイジュに礼を言いながら眠気に抗えずにそのまま寝入ってしまう。

 
「ゆっくり休むといいわ。」


 レイジュはイスカに黙っていたが、この治療ポッドに入ると余計な体力の消費を抑えるために強制的に眠くなる。イスカが次に目覚めるのは怪我が完治してからになる。


「イスカさん!!」


 レイジュに遅れてソラと共に戦艦“女神(ヴィーナス)”に来たナミは意識のないイスカの姿を見て取り乱すが、そんな彼女を落ち着かせる為にレイジュが優しく声をかける。


「安心なさい。イスカ少尉は治療の為に眠ってるだけよ。一週間もすれば元気になるわ!」

「そうなの……よかった。」

「ふふっ。よっぽどイスカちゃんが心配だったのね。」
 

 安堵したナミの頭をソラが優しく撫でた。


 ◇

 
 数日後、ナミとノジコはソラを伴って義母(ベルメール)の墓を訪れていた。

 その場所はコノミ諸島の海が一望出来る眺めのよい崖の上であるも、彼女達の義母(ベルメール)の墓は墓と呼ぶには質素な物で細い丸太を十字にロープで組んだ物であった。

 アーロンの支配下ではまともな墓は作れなかったのだろうが、それでもココヤシ村の人達が精一杯作った想いの篭った墓である。
 

「ベルメールさん、全部終わったよ。」

「アーロンはベルメールさんと同じ海兵が倒してくれたよ。」


 ナミとノジコが墓前で跪いて手を合わせて報告すると、ソラも2人の横に跪いて、墓前に手を合わせる。

 イスカは未だに治療ポッドで眠ったまま治療中であった。
 

「ナミちゃん達のお母様、はじめましてヴィンスモーク・ソラと申します。お母様が命を懸けて守ったナミちゃん達を助けることが出来て本当に良かった。」


 ソラは高価なドレスが汚れるのも厭わずにナミとノジコを助けてアーロンに殺されたベルメールの為に膝を付いて手を合わせながら、大粒の涙を流している。
 

「本当に…ほんどうに…よがっだぁ……。」


 自分の子供を命懸けで助けようとした者同士かつての自分とベルメールを重ねて彼女に心からの敬意を込めて、彼女が守った娘達を救えた事、それと同時にベルメールを救えなかった悔しさに涙していた。

 子は親に似るというが、ゴジの性格や泣き虫はどうやら母親譲りのようである。


「「ソラさん…。」」


 自分達の愛するベルメールの墓前で大粒の涙を流してくれるソラにどう声を掛けたらいいのかナミ達が思案していると大空から相棒が舞い降りる。


「ア”ア”ァァーア…。」


 かーくんはソラの髪を毛繕いするように優しく啄く。


「かーくん、慰めてくれるの?ありがとう。」

 
 その姿はまるで泣いているソラを慰めているようで、かーくんの想いが伝わったソラは彼の頭を優しく撫ででいる。


「ナミ、そういえば…あの鳥ってなんなの?」


 ノジコはかーくんの姿を見て目をずっと疑問だった鉄の鳥の正体について、ナミに聞く。

 アーロンパークで最初に見た時から疑問には思っていたが、あの時はアーロンが倒された喜びでかーくんどころではなかったのだ。


「ノジコ…あれはかーくんよ。でも、私もかーくんが機械なのか鳥なのか知らない。でも、海獣モームと幹部以外の魚人はほとんどあの子が倒してくれたのよ。」

 
 ナミはかーくんはかーくんだともう割り切っている。正体は未だに不明でも彼は自分達の恩人ならぬ恩鳥に相違ないのだ。


「凄いわね…」

 
 ノジコは機械の鳥がアーロンが従えていた偉大なる航路(グランドライン)の巨大な海獣と魚人達を倒したと聞いて驚きを隠せずに目を見開いていた。


「でしょ? “うちの”ゴジが作ってくれたかーくんは強いんだから♪」


 ソラはかーくんに慰められた甲斐あってか、かーくんが褒められる声を聞いて急に元気を取り出した。

 そして、嬉しそうにかーくんに抱き着くが、2人はソラが『うちのゴジ』と言ったことを聞き逃さなかった。


「「うちのゴジ?」」

「あっ!?」


 ソラは2人の言葉で自分の失言に気付いて、慌てて自分の口を押さえるが、後の祭りだった。


「ア〜ア…。」
 

 かーくんの呆れるような鳴き声…これは訳す必要なく、言葉の通りソラに呆れて彼女の頭を嘴で軽くつつく。
 

「かーくん、痛いわよぉ〜…や〜め〜て〜…。」


 かーくんの嘴が触れる程度のツッコミなのでソラは全く痛くはないが、しゃがみこんで頭を押さえながら痛がるフリをする。

 その後、彼女はそのまま目を閉じて顎に手を当てて小首を傾げて少しだけ考える素振りをしてから、目を開けながら立ち上がって笑顔で首を縦に振る。


「ナミちゃん、ノジコちゃん皆には内緒にしてね…。実はゴジは私の息子なのよぉ〜…えっへん!」

 
 ソラはナミ達に向き直ると、自分がゴジの母親である事をあっさりとバラしてドーンと胸を張った。

 ナミとノジコの2人ならちゃんと黙っていてくれるだろうという彼女の独断である。


「「えぇーっ!!?」」

 
 ナミとノジコは突然の告白に目が飛び出るくらい驚いているが、未だに半信半疑であるも、ソラが出した写真を見て信じざるを得ずにさらに驚愕する。


「ほらぁ〜これが子供の頃のゴジよ。」


 ソラは肌身離さず持ち歩いている6人の子供達写る写真を出して、2人に見せながらゴジを指差すと、そこには彼女達も新聞で見た事のある幼いゴジと彼と同じ顔をした兄弟達4人と幼いレイジュが写っていた。


「あぁ!?この黒髪の子がゴジ准将よね!」


 ナミは子供の頃から第一線で活躍しているゴジに一目で気づいた。


「これはもしかしてレイジュさん?」

「でも、よく見たら髪型や髪色が違うだけでレイジュさん以外同じ顔ね!!」


 ナミとノジコはソラに見せられた写真に写るレイジュと五つ子達に興奮している。
 

「ナミちゃん、ノジコちゃん正解よ!ゴジは五つ子の末っ子だから皆顔が似てるのよ!この赤い髪のイチジがスパーキングレッドで───。」


 その後ソラは写真に写る子供達の自慢話をナミとノジコに聞かせることになる。

 特にゴジと自分との関係は秘密だったので、母親としては息子の自慢話の1つや2つは誰かにずっと聞いて欲しかった。


「ゴジが3歳の時に自分の体くらい大きな難しい本を抱えて読んでいた時は驚いたわ……。」

「“麒麟児”って本当に子供の時から麒麟児だったのね……。」


 ナミとノジコはソラしか知らないゴジの過去を聞いている最中、コノミ諸島上空にニュース・クーが姿を現して号外を無造作に撒き散らしていく。


「「「え……ええぇぇぇ!?」」」


 ニュース・クーとは世界政府が広報のために新聞配達を行わせているカモメで水兵帽を被り、首から新聞の束を入れた赤いカバンをぶら下げている。

 この新聞は、反政府組織や海賊であっても、金さえ払えば購入することができるが、今回のような号外記事や、凶悪犯罪者の賞金ポスターなどは空から人の住む地域へと無償で無造作にばら撒いているのだ。


『号外:王下七武海サー・クロコダイルがアラバスタ王国の乗っ取りを企てていた事を見抜いたゴジ准将により王下七武海の地位を剥奪されて拿捕された。ゴジ准将はこの功績を持って“黒麒麟”の二つ名を与えられると共に中将に二階級特進が決定した!』


 この号外を見たナミ達は揃って目が飛び出でる程の衝撃を受ける。否、世界中が一斉に撒き散らされた号外を見て衝撃を受けた。


「なるほどね。ゴジがアラバスタ王国に行ってた理由はこれだったのね。あれ?ゴジって“麒麟児”って呼ばれてたはずだけど、どっちの名前で呼ばれるのかしら?」

「それは麒麟の子供が成長して”黒麒麟”になったんだから、”麒麟児”って二つ名はなくなるんじゃないかしら……ってソラさん、問題はそこじゃないわよ!?」

「准将の時点でありえないのに、私よりも年下なのに少将通り越して中将って……」


 相変わらず天真爛漫なソラに呆れるナミとノジコ。

 海軍本部中将といえば実働部隊の最高位、当然弱冠16歳での昇進は当然ながら快挙であり、世界に衝撃が走った。 
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