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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード ~歌と魔法が起こす奇跡~

作者:黒井福
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G編
  第102話:憂さ晴らし

 
前書き
どうも、黒井です。

今回、ちょっとふざけました。 

 
 颯人は奏を取り戻し、透とクリスはファントムと化したメデューサとの戦いに臨む。

 そして些細なすれ違いから争っていた切歌と調も、戦いの末に和解をしていた頃――――――




 メデューサによりソロモンの杖を奪われたウェル博士が制御室に向っていた頃、ただ1人その場に残されたマリアは悲しみに暮れていた。

『マリア……もう一度、月遺跡の再起動を――』
「無理よ! 私の歌で世界を救うなんてッ!?」

 ナスターシャ教授の言葉を、マリアは泣きながら遮って拒否した。

 歌で月遺跡を再起動出来なかっただけではない。最愛の妹であったセレナと、気付く事なく傍で見守ってくれていたガルドを一度に失ってしまった。しかもセレナと違い、自分は言われるまで彼がソーサラーだと言う事に気付く事が出来ず時に辛く当たってしまっていた。

 その事に対する自己嫌悪と歌で世界を救えなかった事による挫折で、マリアの心は完全に折れてしまっていたのだ。

 それでもナスターシャ教授は諦めず、マリアに最後の希望を託そうとした。

『マリア! 月の落下を食い止める、最後のチャンスなのですよ!』

 マリアを奮い立たせようと必死に声を掛けるナスターシャ教授だが、そこにウェル博士が昇降盤でやってきた。彼が来た事に気付き、マリアが胡乱な目を向けながら立ち上がった。

 やってきたウェル博士は、先程のナスターシャ教授の言葉とマリアの様子を見て全てを察した。何だかんだで流石の頭の回転の速さである。
 ウェル博士はネフィリムの左腕でマリアの頬を殴り付けた。心が折れたマリアはこれを防ぐ事も避ける事もせず、殴られてその場に倒れる。

「バカチンがッ!」
「あぁ――!?」
「月が落ちなきゃ、好き勝手出来ないだろうがッ!」
『マリア!』

 殴り倒されたマリアにナスターシャ教授が声を掛ける。その声にウェル博士は小さく舌打ちをすると、コンソールへと向かった。

「あ? やっぱりオバハンか」

 コンソールに触れると、何かのコマンドを入力し起動する。
 ネフィリムの腕によりフロンティアの全ての権限はウェル博士の物。つまり、切り離そうと思えばどんな部位も切り離せるのだ。

 ウェル博士は現状自分の計画を妨げる邪魔者のナスターシャ教授を真っ先に始末する為、彼女が居る場所をその区画ごと排除しようとしたのである。

『お聞きなさい、ドクター・ウェル! フロンティアの機能を使って収束したフォニックゲインを月へと照射し、バラルの呪詛を司る遺跡を再起動出来れば……月を元の軌道に戻せるのです!』
「そんなに遺跡を動かしたいのなら、アンタが月に行ってくればいいだろ!」

 そう言い終わると共に、ウェル博士はコマンドの入力を終えた。そして最後にコンソールを、これまでの苛立ちをぶつけるように叩いた。

 その直後、轟音と共にエネルギー制御室が切り離され、天高くへ打ち出されていく。

 フロンティアは一見巨大な島の様に見えるが、その正体は複合構造船体の星間航行船……つまりは宇宙船である。特徴の一つとして各部が独立機能したブロック構造に分けられており、それらが複合的に組み合わさる事で一つの巨大な構造体として成立しているのである。

 なので必要があれば新たな機能を作り出し接続する事も出来るし、逆に何か問題が起こったブロックを緊急措置で切り離し被害の拡大を防ぐ事が出来た。

 フロンティアへのアクセス権を得たウェル博士はこれを利用し、自身にとって不要な存在であるナスターシャ教授をブロックごと大気圏外へと追放したのだ。

 フロンティアの一部が轟音を上げて宇宙へと昇っていく。それにナスターシャ教授が居る事に気付いたマリアが思わず声を上げた。

「マムッ!?」
「有史以来、あまたの英雄が人類支配を成し得なかったのは、人の数がその手に余るからだ! だったら……支配可能なまでに減らせばいいッ! 僕だからこそ気付いた必勝法ッ! 英雄に憧れる僕が英雄を超えて見せる――!! ふへははは、うわはははははははぁッ!!」

 ブロック切除は緊急手段であろう。本来は機能回復も絶望的でそこから被害が広がらないようにする為の機能。なので切り離したブロックやその内部の安全は度外視されている筈。切り離された時点で、そのブロックはフロンティアにとって無いものとされてしまったのだ。

 その中に取り残されたナスターシャ教授の生存は絶望的だ。ブロックの耐久力もそうだが、そもそも教授は老体な上に病に侵されて体が弱い。そんな人物が、大気圏脱出の加速に耐えられるとはとても思えない。

「よくもマムをッ!?」

 先程まで悲しみに暮れていたマリアは、怒りに心を奮い立たせ立ち上がりアームドギアを構えた。

「手にかけるのか? この僕を殺す事は、全人類を殺す事だぞッ!」

 そんな状況でもウェル博士は余裕を崩さない。自分は殺されないと思っているのだろう。
 先程、透に何だかんだで助けられた事で変な自信がついてしまったのだ。

 だがその事を思い出すと、同時にクリスの言葉も思い出してしまった。

『お前みたいに誰かの後ろでコソコソしてるような奴が、英雄なんて器なもんかよ!』
『透みたいに、誰かの為に見返りを求めず戦えるような奴が英雄の器だ! 最初から英雄になろうとする奴が、そんな打算的な奴が英雄になんてなれるもんか!!』

「ッ!? えぇい、うるさいうるさい!? 英雄に……僕は英雄にッ!?」

 脳内に浮かんだクリスの言葉を振り払うように頭を振るウェル博士。
 一瞬訝しんだマリアだが、しかしナスターシャ教授の仇と思えばそんな事どうでもよく。気を取り直すとアームドギアの切っ先をウェル博士に向けた。

「殺すッ!」
「ひゃぁぁぁぁぁぁっ!?」

 流石にこれが本気だと分かり、ウェル博士は情けない悲鳴を上げて腰を抜かした。

 もうマリアを止める者は誰もいない。このままマリアの槍がウェル博士を貫き、その手を地に染めると思われた。

 その時、響がマリアとウェル博士の間に割って入った。

「ダメッ!」
「そこを退け、融合症例第一号ッ!」
「違う! わたしは立花 響、16歳! 融合症例なんかじゃない! ただの立花 響が、マリアさんとお話ししたくてここに来てるッ!!」
「お前と話す必要はない! マムがこの男に殺されたのだ! ならば私もこいつを殺すッ! 世界を守れないのなら……私も生きる意味はないッ!」

 心の支えであったセレナも、陰から支えてくれていたガルドももう居ない。居ないと思ってしまったマリアにとって、踏み止まる理由は最早無かった。歯止めが利かなくなった彼女は、既に自分の命も他人の命も諦めるところまで追い詰められていた。

 そんな彼女の槍の穂先を、響が素手で掴んだ。

「ッ!? お前ッ!?」
「意味なんて後から探せばいいじゃないですか」

 穂先を掴んだ掌が裂け、流れた血がアームドギアを伝っていく。だというのに、響の顔に浮かんでいるのは笑みであった。

 生来の優しさから、響はマリアが自分の命を投げ出していることに気付いた。

 そんな彼女に、響はとある魔法使いから始まり伝えられてきたあの言葉を送った。

 絶望に沈みそうになった心に希望を灯す、魔法の言葉……それは――――

「だから……生きるのを諦めないでッ! Balwisyall nescell gungnir……trooooooooon!!」
「聖詠!? 何のつもりで!?」

 突然聖詠を口にした響に、マリアは困惑した。最早海上での戦いの顛末はマリアも見ていた。神獣鏡により、響がシンフォギアを失った事も知っている。そんな彼女が、今更聖詠を口にして何になるのかと。

 だが響の胸の歌が響き渡った時、まるでそれに反応したかのようにマリアと響が掴んでいた槍が輝き消え去った。

 いや、槍だけではない。消えたのはマリアが纏うギアもだった。

「きゃあッ!?」

 輝きを放ちギアが消える。全く訳が分からない事態に困惑し悲鳴を上げるマリアの前で、ギアは輝く粒子となってブリッジと中央遺跡全体を包み込んだ。




 その様子を、颯人と奏も遠くから見ていた。マシンウィンガーに乗り、中央遺跡に向かう2人にも中央遺跡から立ち上る光はよく見えていた。

「お~お~、ありゃもしかしなくても響ちゃんかな? 相変わらずやる事が派手だねぇ」
「何暢気なこと言ってやがる。派手な演出は颯人の専売特許だろうが。それより急げよ! このままだとメインステージに遅れちまうぞ」
「言われなくても分かってるよ。と、その前に……」
〈コネクト、プリーズ〉

 バイクを運転しながら颯人はコネクトの魔法で何かを引っ張り上げた。それは――――――




***




 響がマリアのガングニールを身に纏った。そもそも適合者ではない筈の彼女が、既にマリアが纏っていた筈のガングニールを纏ってしまった事にマリアの混乱は最高潮に達していた。

 この事態に、ウェル博士は身の危険を察し階段から転げ落ちながら逃げる。その際中央遺跡に到着した源十郎と慎二が彼を取り押さえようとしたが、寸でのところでウェル博士は制御室の床に穴を開けそこから逃げてしまう。

 そのままジェネレータールームに向かい、フロンティアを……そしてネフィリムを使って二課を始末しようとした。

 だが彼がジェネレータールームに到着した直後、その頭上に魔法陣が現れたかと思うとそこから颯人の手が伸びて彼の首を引っ張り上げた。

「のわぁっ!? な、何です!? 何がッ!?」
「よぉ、博士。元気してたかい?」

 混乱のあまり軽く発狂するウェル博士の視界に移るのは、楽しそうに笑みを浮かべる颯人の顔だった。

「何をするんですか!? いきなり人の頭を引っ張り上げてッ!」
「いい加減あんたともちゃんと話をするべきだと思ってね。とは言え俺は今ちょいと運転で忙しいから……奏、少し任せた」
「はいよっと」

 颯人は掴んだウェル博士の頭を奏に手渡す。奏は颯人の後ろに乗った状態でウェル博士の頭を掴むと、心底意地の悪い笑みを浮かべた。何しろ今の彼はまな板の上に乗せられた魚も同然。煮るのも焼くのも自由自在。
 その意地の悪い笑みは、ウェル博士に危機感を抱かせるには十分過ぎた。

「ちょ、ま、待ちなさい!? あなた何をするつもりですか!?」
「決まってんだろ~? 今まで散々好き勝手やってくれた事に対する礼だよ。響酷い目に遭わせたり、アタシを颯人と戦うよう仕向けたり……」
「いや後者は私じゃなくてあの魔法使い達が――」
「黙れ。どっちでもいいんだよそんな事。とにかく今までの鬱憤をお前で晴らす。どうせお前今回の騒動の諸悪の根源なんだろ。なら責任取らないとなぁ!」

 そう言って奏はウェル博士の頭に向けて手を伸ばした。頭だけ引っ張り上げられたウェル博士にこれを防ぐ術はない。

「待て、待って!? やめ、や、止めろぉぉぉっ!?」

 手の伸びる先で奏が何をするか察したウェル博士が悲鳴のような声を上げるが、奏はお構いなしに手を伸ばし――――

「うりゃぁ」
「だぁぁぁぁぁっ!? 止めて!? 眼鏡を素手で触らないで!? 指紋!? 指紋で見え辛くなるから!?」

 ウェル博士の眼鏡を素手でこれでもかと触りまくる。指先の皮脂が眼鏡に付着し、歪な模様を描きながらウェル博士の視界が歪む。

「くぁぁぁぁぁっ!? 眼鏡を拭きたいのに拭けないぃぃぃっ!?」
「はっはっはっ! 颯人、ポテチかなんかない? ちょっと小腹空いてきた」
「待って待って待って!? それは止めてお願いだから!?」

 ただでさえ皮脂で曇った眼鏡に、ポテチなどのスナック菓子を食べた手が加わればもう眼鏡からの視界は絶望的だ。子供の悪戯レベルとは言え、やられる側は堪ったものではない。

「あ~悪い。流石にポテチはねえなぁ。でも代わりに……」

 流石に走行中にポテチなんて取り出せば、風圧で吹き飛ばされてしまうのは目に見えていた。だからポテチは出さないが、代わりに颯人は奏にある物を渡す。
 少し太めの黒いマジックペン。それを渡され、奏は目を輝かせた。

「おぉ! 颯人これって?」
「モチ、油性だ」
「最高。さて、へっへっへっ!」

 奏はキャップを口で咥えて外すと、ペン先をウェル博士の顔に近付けた。これから自分に待つ運命を前に、ウェル博士は恥も外聞も投げ捨てて叫んだ。

「わぁぁぁぁっ!? 待って待って待ってください!? それはいけませんって流石に!? これは人の道に外れすぎてます!? 考え直しましょう!?」
「お前が言うな」
「諦めろ」

 懇願されても奏に止める気はなく、また颯人にも止める気はない。

 そして遂に奏の持つマジックペンのペン先がウェル博士の顔に触れた。そこからは奏の独壇場だった。とにかく時間が許す限り、ウェル博士の顔をキャンバスにマジックペンを走らせる。

 額への肉の字は当然として、目の周りを黒く塗り頬には渦巻き模様。鼻の下にはドジョウ髭を書き、眉毛は繋げられた。

 因みにその頃、首から下はどうしているかと言うと――――――




「……どう思う、緒方?」
「十中八九……颯人君だと思います」

 追いついた弦十郎と慎二の前で、首から下だけになったウェル博士が無駄な抵抗と分かりつつ体を暴れさせていた。首無しの体が必死に暴れる様はとてもシュールで、アレを取り押さえようと言う気には流石になれなかった。




「ふぅ~、完成。どうだ、颯人?」

 思う存分ウェル博士の顔に悪戯書きをした奏は、やり切ったと言う顔で颯人に出来栄えを見せた。横から見せられた非常に愉快な顔になったウェル博士の頭に、颯人も堪らず噴き出した。

「ぶはっ! 最高傑作じゃん。このまま額に入れて飾りたい程だ」
「我ながらいい出来になったと思う」
「こ、こんな……こんな事して何が楽しいんですか」
「お前が言うな。今まで散々好き勝手してきたくせに」

 あまりの屈辱に半べそをかくウェル博士に奏がデコピンを喰らわせる。

 さて、いい加減そろそろお仕置きも十分だろう。ここからはお説教の時間だ。

「なぁウェル博士よぉ? あんたこんな事して本当に英雄になれると思ってんの?」

 唐突な颯人の言葉に、しかし英雄と言う言葉に火が付いたのか目に光が再び灯る。

「当然です! 今まで誰も為し得なかった事をやり遂げる! これを英雄と言わずして何としますか!」
「ま、確かに全部があんたの思い通りに行けば、取り合えずあんたは英雄言われるだろうよ。ただし、上っ面だけだがね」
「何ぃっ?」

 上っ面だけの英雄と言う言葉にプライドが刺激されたのか、ウェル博士が颯人を睨む。だが顔が愉快な事になっているので正直迫力は全くない。

「だってそうだろ? アルドから聞いたよ。アンタ、ただその場に居合わせただけの無関係な子供まで手に掛けようとしたそうじゃないか。そんな奴が天下取って、心から英雄って言われると思ってるの?」
「当然です! これから僕がやる事は曲がりなりにも人類の救済ですよ? 人類を救った僕を、英雄と認めずして何としますか!?」
「あぁ、確かに英雄とは呼ばれるだろうよ。ただし、心の中でどう思うかは分からんけどね」

 つまるところウェル博士が作り出そうとしているのは自分を英雄と言う名の頂点に置いた独裁世界だ。だから仮に事を成し遂げた暁には、彼が人々に英雄と称えよと言えば人々はそれに従うだろう。
 従わなければ自分の命が危険に晒されるのだから。

「アンタそれで良いの? 心の中でビビられたり場合によっては陰口叩かれながら、ご機嫌取りに英雄扱いされるだけで満足なの?」
「ぬ、く……」
「まぁそれでも良いって言うんなら別に構わねえよ。俺らが全力で止めるだけだから。ただもう一つ言わせてもらうんなら、世の中で英雄って呼ばれる連中の中で、英雄になりたかった奴は1人も居ないんじゃないかな」

 本当は颯人の言葉にもっと反論したかったウェル博士だが、またしても先程のクリスの言葉と透の行動が脳裏を過り言葉を詰まらせた。

 あの時、透はウェル博士が感謝してくれるなんてこれっぽっちも思っていなかった筈だ。それどころか、恩を仇で返される覚悟すらしていただろう。
 しかし透は、そんな危険を冒してでもウェル博士を助けた。それは偏に、彼が助けたかったからだ。例え敵や悪人であろうとも、先ずは助ける。それが、北上 透と言う男だった。

 きっとクリスの言葉と透の行動が無ければ、颯人の言葉がここまで響く事も無かっただろう。また、颯人にここまで言われなければ、最終的に透の行動を鼻で笑っていたかもしれない。

 しかし今、認めざるを得ない程英雄的な行動をする透と、今まで誰も指摘してこなかった事実を目の前に突き付けられ、ウェル博士は反論すべき言葉が思い浮かんでこなかった。

 押し黙ったウェル博士を前に、これ以上は何も言う必要は無いと颯人は奏からウェル博士の頭を受け取り、押し込んで元に戻した。

 首を元通りにされ、その場にへたり込むウェル博士に弦十郎と慎二が近付いていく。
 尚その際、2人は愉快な事になっている彼の顔に一瞬噴き出すのを堪えなければならなかった。

「ウェル博士、年貢の納め時だ」
「大人しくしてください」

 いつの間にか傍に来ていた2人にウェル博士は一瞬目を見開くが、意外なほど大人しく捕縛された。頭の中では颯人の言葉に対する反論をどうするかで一杯で、逃げる事など考え付きもしなかったのだ。

「――――殺せ、僕を殺してくれ。英雄として僕を殺してくれぇ……」

 悩んだ末にウェル博士は死を望んだ。死んで後世に名を残せば、それで自分は英雄になれると言う半ば自暴自棄な逃げの結論であった。

「殺しはしない。お前は人として裁く!」

 しかしそれを許す弦十郎ではなかった。死んで逃げるなど許さないし、無為に命を奪うような事を彼は良しとしない。悪党であっても、失われていい命など存在しないのだから。

 最後の望みも絶たれ、抜け殻の様になりながらブツブツと呟き引き摺られるように連れ出されるウェル博士。

 だが――――――

「困るねぇ、彼に今退場されては。折角まだまだ面白くなると言うのに」
「ッ!? 貴様はッ!!」

 突然聞こえてきた声に弦十郎と慎二が振り向くと、そこには漆黒のローブを身に纏ったワイズマンが佇んでいた。 
 

 
後書き
という訳で第102話でした。

本作では、切調の戦いは完全カットしました。というのも、理由とかは違えど戦いの根っこにある部分が互いを好きだからという点で颯人と奏の戦いと被っちゃうんですよね。それに内容自体も特に変化も無いので、思い切ってばっさりカットする事にしました。居ないとは思いますが、この部分が気になる方はご自分でお確かめください。アマプラdアニに登録すればいつでも見れますよ。

そして今回、遂にウェル博士が颯人と奏の毒牙に掛かりました。ちょっとふざけ過ぎな気もしましたけども。

執筆の糧となりますので、感想その他よろしくお願いします!

次回の更新もお楽しみに!それでは。 
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