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イベリス

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第二十五話 アルバイトもしてその九

「言われてみれば」
「そうですよね」
「そのミステリアスさがいいわね」
「好きになる人も多いでしょうね」
「小山さんまさか」
「あっ、それは」 
 言われて咄嗟にだ、咲は否定した。
「ないです」
「あれっ、そうなの」
「はい、素敵な人だとは思いますけれど」
 それでもというのだ。
「ですが」
「そうなのね、まあ私は彼氏いるから」
「店長さんにはですか」
「素敵な人と思うけれどね」
「相手の人がおられて」
「そしてね」
 そのうえでというのだ。
「その彼氏が私の一番のタイプだから」
「だからですか」
「いいの」
 そうだというのだ。
「店長さんについては見ているだけよ」
「素敵な人ということで」
「それだけよ」
「そうですか」
「ええ、じゃあ交代ね」
「後はお願いします」
 申し継ぎもしてそうしてだった。
 咲は店を後にした、そして渋谷から自宅に帰ったが。
 家に帰ると母にこう言われた。
「どうだったの?アルバイト」
「特に何もなかったわよ」
 おかしなことはとだ、咲は答えた。
「別に」
「そうなのね」
「ええ、店長さんとお話していつも通りお仕事をしてね」
 そしてというのだ。
「別にね」
「何もなかったのね」
「そうよ」
「ならいいわ、頑張って働きなさい」
「働くこと自体がいいことだから」
「そうよ、お金を稼げて」
 そしてというのだ。
「色々な経験も積めるからね」
「いいのね」
「勤労は美徳っていうし」
 母はこうも言った。
「学校でもあるのよ」
「学校でもあるの」
「そうよ」 
 こうも言うのだった。
「社会のことを色々と学べるね」
「そうしたところでもあるのね」
「だからね」 
 それでというのだ。
「アルバイトはどんどんしてね、ただお金はね」
「無駄遣いはしないことね」
「お買いものに凝ってもだしギャンブルなんかしたら」
「すぐによね」
「そう、なくなるから」
 金はというのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「ギャンブルはしなくて」
「それでよね」
「そう、無駄遣いはね」
「したら駄目ね」
「そこは気をつけてね」
こう娘に話した。
「いいわね」
「お金はなくなるものなの」
「簡単にね」
「そうなのね」
「無駄遣いしたら」 
 それでというのだ。 
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