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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第七十八話

 イスカはサーベルを鞘に納めると同時にナミの背中と足裏に手を回してお姫様抱っこの要領で持ち上げる。


「ええ。ナミちゃんちょっと失礼。ソラさ〜ん、かーく〜ん!!」

「えっ?え"え"ぇぇぇーーっ!!」
 

 イスカは自分が開けた穴から飛び降りるとナミの叫び声が響き渡り、イスカに名前を呼ばれたかーくんが彼女の落下地点に入り、イスカはナミを抱いたまま無事に彼の背に着地する。


「ソラさん、ナミちゃんをお願いします。私も少し暴れて来ます。」


 イスカはナミを自分が乗っていたコックピットに押し込んだ。


「ふふっ♪あらあら…イスカちゃん気を付けてね。ナミちゃん、振り落とされないように肩口にある紐に付いた金具を引っ張って腰の所にある金具に差し込んでね。」


 ソラはやる気に満ち溢れたイスカを見てエールを送りながら、自分の後ろに乗ったナミに縦横無尽に飛び回るかーくんの背から落ちないようにシートベルトの装着を促した。

 
「は…はい!?この機械の鳥は……本当に海の戦士ソラの合体ロボ───それよりも海の戦士ソラって女性だったの……!?」


 ナミは『海の戦士ソラ』の物語からかーくんの正体を推察するが、残念ながら彼に合体機能はなく、さらに海の戦士ソラの正体が女性であるという事実に驚きながらも素直に指示に従ってシートベルトを装着した。

 かつて北の海(ノースブルー)のみで連載していた『海の戦士ソラ』だったが、レイジュ達ジェルマ66(ダブルシックス)が世界的に活躍していることで世界中で連載されるようになり、ナミも知っていた。
 

「ナミちゃん、見ててね」

「うん!!イスカ少尉頑張ってね!」


 イスカはナミの笑顔と応援を背にサーベルを抜き放って、アーロンタワーに向けて飛び降り、アーロンタワーの外壁を足場にして駆け下りて行った。


 第一部隊とて負けしらずの精鋭部隊であり、ゴジがいないと知って落ち込んだ人々をこれまで一人残らず笑顔にして来た。

 彼女達は希望(ゴジ)がなく打ちひしがれる人が目の前にいるなら自分達が希望になればいいと信じ、剣を振るい自分達の背中で示し続けてきたのだ。

 
 ◇

 
 かーくんによる銃弾の雨とアーロンパークに降り立つと同時に放たれたレイジュによる毒の矢の波状攻撃が収まるとこのアーロンパークに立つ魚人はたった3人しかいなかった。


「ぬおおおおぉぉぉぉ!!同胞たちよおおぉぉぉぉ!!!」


 1人目は身体中が穴だらけにされて倒れ伏す魚人達の体を起こして仲間を心配する身長2メートルを超える魚人達の中でも一際ガタイのいいノコギリの刃のようにギザギザの鼻を持つ魚人である。

 
「にゅ〜。アーロンさんは怪我はないか?」


 この男こそ言うまでもなく魚人海賊団船長“ノコギリ”のアーロンである。


「おうハチ、お前のおかげだ。ありがとよ。」

 
 2人目はハチと呼ばれた6本の腕全て刀を持つ蛸の魚人で彼はアーロンを守る為に傍でその6本の刀を頭上に掲げて扇風機のように高速回転して銃弾の雨を防いだのだ。


「残ったのは我々だけか?」

「クロオビ、お前は無事だったか?ところでアイツらは何者だ?」


 3人目はクロオビと呼ばれる三角形の盾のような突起の付いた腕を天に掲げて銃弾の雨を防いだエイ魚人である。

 クロオビは魚人海賊団の参謀であり、脳筋だらけの魚人海賊団における情報収集や作戦立案も任されている。


「あれは最近噂の“戦女神”ポイズンピンクで間違いないだろう。しかし、空にいるあの弾丸を吐く鳥は分からない。」

「ほぉ……”海賊狩り”で有名なジェルマか……。」


 クロオビがレイジュを睨んだ後にほとんどの同胞を手に掛けた弾丸を吐く鳥をキツく睨むと、海からその鳥に目掛けて水球が放たれた。

 かつて”戦争屋”と呼ばれてきたジェルマ王国は海賊を討ち、支配されてきた島々と交易を結び、庇護を望む島々を領土として繁栄し、現在は”海賊狩り”と呼ばれている。


「くらえ!あの鳥めチュッ!好き勝手やってくれたな!!」


 もう無事なのは三人だけしかいないと思っていたアーロンは海へ逃げた仲間の存在に気付き、喜色を浮かべてその名を叫ぶ。


「チュウ!お前も無事だったか?」


 銃弾の雨を掻い潜りながら、レイジュの毒矢を口から吐き出した水鉄砲で撃ち落としつつ海中へ逃げれたのはチュウと呼ばれたこの突出した口が特徴のキス魚人だけであった。

 他にも海へ逃げようとした魚人はいるが、全て海へ入る前にレイジュの毒の矢により倒されていたからである。


「アーロンさん、残念だが、海へ逃げれたのは俺だけだ。あの鳥、撃ち落としてやるチュッ!“水鉄砲”!」


 チュウは水を口に含んで口から放出することで、普通の銃弾程の威力のある水の弾丸を放出する事が出来るので、チュウは海面から顔だけ出して口に含んだ海水を銃弾のように、空を飛ぶかーくんの胴体目掛けて放出したのだ。

 奇しくもアーロンを除くこの3人こそ彼が絶対の信を置く魚人海賊団の幹部達であった。


「ア”ッ?」


 カン!という小気味よい音と共にかーくんの胴体に水の弾丸があたるもかーくんにはダメージはないようで『何か当たったか?』というリアクションをしている。


「ん?かーくん大丈夫?」


 当然、普通の鳥に当たっていれば弾丸は体を貫通していだろうが、鋼鉄の硬度を持つかーくんの体には効かなかったものの、銃弾が当たったような音と衝撃は背に乗るソラ達には伝わっていた。


「ア”ァーアッ!」

「今どう考えても砲撃されたわよね。それに何で機械の鳥が鳴くの??えっと……うん。さ…流石は海の戦士ソラのロボよね……はははっ…。」

 
 ナミは『大丈夫だ!』と言わんばりにソラの声に頷きながら翼で器用にサムズアップする自分が乗る鉄の鳥を見ながら、遠い目をして難しい事を考えるのを放棄した。


「チュッ!硬ぇ体だな。」


 チュウは普通の水弾ではかーくんに効果がないことが分かり、もっと威力のある水弾を放つ為に踏ん張りの効く陸地に上がる。


「これならどうだ………“水大砲”!」
 

 チュウは口いっぱいに海水を含んだ状態で海から飛び出して、中腰で大地に踏ん張ると空に向けて大きな海水の大砲を放つ。


「かーくん!!」

「ア”ァーーッ!!」


 かーくんはソラの声に反応して水の大砲を上空に急上昇することで躱す。


「チュッ!躱しやがったか…。」

 
 実際にこの水の大砲はかーくんに当たれば、撃ち落とす程の威力はあったかもしれないが、この陸に上がるという選択が彼の運命を決める。


「あんた、なにやってんのよぉぉぉ“釘打ち”!」


 イスカはサーベルを構えて、塔の最上階から白壁を使って走り降りて来る速度と威力を乗せたまま彼女の代名詞とも言える超高速の連続突きをかーくんを見上げて隙だらけのチュウの胴体目掛けて放つ。
 

「チュッ?……ギァアアアアッ!?」


 チュウはイスカの高速刺突技を受けて体に無数の穴が開き、血を噴き出して意識を失って仰向けに倒れた。

 かーくんにムキになっていたチュウはアーロンパークの壁を駆け下りながら、超高速で自分に迫ってくるイスカの存在に気づかなかった。


「かーくんにはナミちゃんも乗ってるのよ。彼女は傷付けさせないわ。」

「ぐ……が……がが……。」


 イスカは刀身に付いたチュウの血糊を振り払ってから、刀身を肩に乗せて、白目を向いて仰向けに倒れているチュウを見下ろしながら言い放った。

 さらに落下による重力加速度が上乗せされたイスカの一撃はチュウの体を覆う鱗をもたやすく貫通したのだ。


「チュウ!?くそ…モーーームゥゥ!!!」


 アーロンは目を見開いて、イスカに斬られた部下の名を呼んだ後、切り札となる援軍を呼ぶ為に大きく叫んだ!!。


「モオオオォォォ!!」


 アーロンの自分の名前を呼ぶ声を聞いて、海獣モームが海面から鳴き声を上げて顔を出した。

 海獣モームは体長36mの巨体を持ち、アーロンが偉大なる航路(グランドライン)の魚人島周辺の海域から連れてきた海獣であり、上半身と鳴き声は牛、下半身と腕、背びれは魚に似ている。緑色のホルスタイン柄があり、鼻には鼻輪が嵌っている。首から下は鱗で覆われ、胸鰭腕の先には出し入れ可能な爪が生えている。


「ア”ア”ァァァーーッ!」


 そのモームの巨体を見て、かーくんがやる気満々の鳴き声を上げる。
 

「モオオオォォォ!!」


 かーくんの姿を見たモームも呼応して雄叫びを上げる。

 モームとかーくんは互いのペットとしてのプライドに火がついたようで、モームは口から水弾をかーくん目掛けて何度も発射する。

 一重に水弾と言っても一つ一つがチュウが、最後に放った水大砲の大きさがあるも、かーくんは超高速度で空を縦横無尽に飛び回りながら、無数の水弾を躱していく。
 

「かーくん負けないで……絶対勝つわよ!!」

「もおおお…いやあああああ…やべでえええええ!!!」


 かーくんに声援を送ってやる気満々なソラとは対照的にナミはかーくんの背中に乗った瞬間にちゃんとシートベルトを付けているので落ちることは無いが、少し考えて見てほしい──身体強化に加え、耐久性に優れるレイドスーツを身に纏うソラとは違って縦横無尽に空を飛び回るかーくんの背に生身で乗っているナミはコックピットのカバーがない状態でアクロバット飛行をする戦闘機に乗っているような状態である。

 彼女は空中で体を上下左右に激しく揺らされて既に失神寸前だったが、その事実に戦いに集中しているソラもかーくんも気付かなかった──。


「ア”ァッ!!」

 
 かーくんはモームの水弾の攻撃を掻い潜り、足の鉤爪でモームに蹴り掛かろうとすると、モームも腕から鋭い爪を出して攻撃に応じる。


「ブモォォォ!!」


 互いの爪がぶつかり合った瞬間、ガキィーンという島を揺るがす程の轟音が響いた後、モームの爪が砕けた。


「モオ”ッ?」

 
 モームは圧倒的な巨体を有する海獣でその爪は地面を抉り、硬い岩盤にも爪痕を残す程の威力はあるも、かーくんの身体はゴジとベガパンクという世界最高の頭脳によって作られており、その爪は鋼鉄以上の硬度を誇る故、かーくんに軍配があがった。
 

「ア”ア”ァァァ!!」

 
 勝利の嘶きを上げながらかーくんはアーロンパークの外周を囲む白壁の塀の上に降り立って両翼を大きく開くと同時に胸のカバーがウィンという機械音と共に開いて巨大な砲身が出現する。

 かーくんはトドメを差すべく恨めしそうに自分を睨んでいるモームに狙いを定める。


「ア”ーア”ーア”ア”ァァァーーッ!!」
 

 かーくんが一際大きく嘶いた後、胸の砲身が光輝くと同時にモームに向けてビームが放たれる。

 平和主義者(パシフィスタ)にも搭載されている海軍本部大将“黄猿”ボルサリーノのピカピカの実の能力を応用した物であり、かーくんは空を飛びながら太陽光を集めることでビーム発射の為の光エネルギーを充電可能できる。

 さらに風に乗り翼を広げて空を滑空することで光エネルギーを充電しつつ、ビームを連射するも可能であるが、モームに放ったものよりは威力が些か落ちる。


「モ”オ”オ”オ”ォォォーーッ!?」
 

 ビームの直撃を受けて光に包まれたモームの光が収まるとモームは黒焦げになっていた。


「凄いわ♪かーくん!!」

「もう…おろじで……。」

「ア”ア”ァァーアッ♪」


 かーくんの背に乗るソラはシートベルトを外してコックピットから飛び出してかーくんに抱き着いて手放しで褒める。

 同じく彼の背に乗るナミの可愛い顔は涙と鼻水で汚れて、もう嫁にいけないような無惨な顔をしていたが、勝利の余韻に浸るソラがナミの様子に気付くのはもう少し後のことである。 
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