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おっちょこちょいのかよちゃん

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167 カトリック界の皇后

 
前書き
《前回》
 異世界での二日目の朝を迎えたかよ子は杉山の行方がふと気になる。一方、杉山を追い続けるりえ達は12人の男達と遭遇する。友達のみゆきや鈴音、ありと悠一との共闘で撃破するが、真の敵が現れる!!

 今回登場する阿弖流為と母禮についてですが、阿弖流為の資料は多少ありますが、「母禮」については漢字の読みすらも不明で資料もあまりないので、ここでは「もれい」と読んでください。旧版の集英社の「日本の歴史」では片仮名で「モレ」という表記も見受けられましたが。 

 
 りえ達は一人の女性と相対していた。
「エンプレス・マチルダ?」
「そうよ。私はカトリックの世界でも偉大なる皇后なのよ」
「かとりっく・・・?」
「キリスト教の宗派の一つだよ」
 悠一が説明した。
(キリスト教・・・!!)
 りえは夏休みに静岡県に住む祖母の家にいた時を思い出す。あの時は教会のシスターに頼んでピアノを借りて「亜麻色の髪の乙女」の練習をしていた。杖の所有者やあの杉山を始めとする現地の子と友達になったのもその時だ。
「お前のそれは、杯ね?」
「だったら、何?」
「貰うわよ」
 エンプレス・マチルダはまた使徒の召喚術を使用する。
「させないよ!」
 みゆきがブーメランを投げた。しかし、容易く弾かれた。
「まて、どうやらあの機械の能力(ちから)だろう」
 悠一のテクンカネが発動する。その時、シャクシャインと別に男が二人、現れた。
「お主らか!助太刀に参るぞ!」
「シャクシャイン、その男は?」
「この二人は阿弖流為(あてるい)母禮(もれい)。蝦夷の族長として活躍した者共だ」
「我々も共闘しよう」
「ありがとう」
「そこの女、それは神を呼ぶ道具だな?」
 阿弖流為はありのタマサイに目を付けた。
「ええ、そうよ」
「私達の力を重ねれば倒せるはずだ。母禮、行くぞ!」
「おう!」
 だが、エンプレス・マチルダは怯まない。
「そちらの数が増えたって、この主の12人の使徒は無敵なのだ!意味はない」
 エンプレス・マチルダは再び12人の使徒を召喚させた。
「また手強いのが現れたわねっ!鈴音ちゃん、もう一回、氷を出してっ!」
「う、うん・・・」
 りえに言われて鈴音は錫杖から氷を放出した。りえは杯に氷を吸収させ、氷の精を出した。氷の精霊は青い髪に白い肌、そして白いワンピースを着る女性だった。
「氷の精霊、倒してっ!」
「いいわ!」
 氷の精霊は氷の壁を作り出す。
「そんなんで防御したって無駄よ!」
「煮雪あり、阿弖流為に母禮と共に瞬間移動させる!攻撃はその時だ!」
「うん!」
 シャクシャインは杖を出し、ありと阿弖流為、母禮を瞬間移動させた。
「主、イエスの12人の使徒よ、主に反する者の裁きを!」
 12人の使徒は雷撃を放つ。そして、先程のように飛ばしてきた。

 かよ子達は先を進む。荒野が続いていた。そこには草木が少しあるだけだった。
(こっちの方向に藤木君がいる・・・)
 かよ子達はそう確信して先を急ぐのだった。
「それにしても寂しいとこだなブー」
「うん、でも、いつ現れるか分からないし、私もおっちょこちょいしないようにしないと・・・」
 かよ子達は「神」を操る強者と交戦したり、睡眠中に襲撃されたりと余裕がなかった。そしてかよ子は「あの夢」を思い出す。
(杉山君・・・、今、どこにいるの・・・?)
 かよ子は好きな男子が頭から離れなかった。そしてかよ子が見た「謎の夢」も気になり続けていた。

 りえが杯で出した氷の精霊は氷の壁を作り出した。その氷の壁はとても強固で12人の使徒の攻撃をすべて防いでいた。
「流石、『こちらの世』で最大級の能力(ちから)を持つ道具ね。でも、神の使徒達の攻撃にいつまで耐えられるかしらね!」
 エンプレス・マチルダは使徒達に攻撃を命令する。
「まずいぞ、このままでは氷の壁を保てるのも時間の問題だ!」
「みゆきちゃん、地面を掘れるっ?」
「え、うん、やったことないけど、やってみるよ!」
 みゆきはブーメランを地面に投げつけた。地面が爆破して、穴が開いた。
「これで穴を掘れば何とかなるわっ!」
「なるほど、そういう事だね!」
 みゆきのブーメランで地の爆破を繰り返す。
「我も手伝うぞ!」
 シャクシャインも掘削を手伝った。地面は少しずつ爆破されていく。
「よし、私もっ!」
 りえは杯に掘り出された土の塊を杯に入れた。大地の精霊・ノームが現れる。
「ノーム。地面から攻撃できる?」
「任せとれ」

 一方、シャクシャインによって瞬間移動したありと阿弖流為、母禮はエンプレス・マチルダの後方に回っていた。
(聖書に出てくる人間だの神だのを操るなんてどこまで身の程知らずなのかしら?私も人の事言えないかもしれないけど・・・)
 ありはクリスマス・イブの日に妹のさりが襲撃された現場である名古屋にて赤軍の岡本公三が聖母マリアを召喚した事を覚えている。「神」を操る事はかなり強力な力となる分、敵に回すと対処しきれない。その時、自身がアイヌのカムイを召喚する事でしか対処法がなかった。
(阿弖流為と母禮の能力(ちから)で強化できるのかしら?)
 ありは兎に角、阿弖流為と母禮を信用するしかなかった。

 エンプレス・マチルダによって召喚された12人の使徒は氷の壁を容赦なく砕こうとする。
「いつまでもそこで隠れていられると思ったら無駄よ!」
 そして氷の壁は粉砕される。
「ははは・・・」
 しかし、破壊した氷の壁の先には杯の所有者もその連れもいなかった。
「い、いない!どこに行った!?」
 エンプレス・マチルダは赤軍から支給された機械を確かめる。機械は壊れていなかった。そこから出す見聞の能力(ちから)では皆氷の壁の向こうにいるはずだった。
「こんな事って・・・」
 その時、彼女の立つ地が揺れ、地面が砕かれた。エンプレス・マチルダは弾き飛ばされる。
「あああ!!な、何だ!?」
 エンプレス・マチルダは弾き飛ばされながら確認する。そこには杯の所有者、そしてその連れ、更には見知らぬ老人の小人がいた。
「この地の精霊を出して地面を進んでいたのよっ」
「な・・・、使徒達、攻撃よ!」
 12人の使徒はりえ達を襲撃する。
「エク・カムイ!」
 また別の女性が叫んだ。12人の使徒が地砕きに巻き込まれる。そして土の槍が発され、消滅された。
「な・・・!?」
 背後にありがいた。
「その機械、不具合を起こしたみたいね」
 その時、何者かが接近してきた。阿弖流為と母禮が地面から飛び出してエンプレス・マチルダを挟み撃ちにしたのだった。エンプレス・マチルダの機械が壊された。
「よ、よくも!!」
「杯の所有者達よ!使徒を召喚される前に纏めてかかるのだ!」
「ええっ!」
 りえはノームに攻撃を、鈴音は錫杖の炎を噴射し、みゆきはブーメランを投げて光線をまき散らして爆破させた。
「お、おおお!!」
 エンプレス・マチルダは火傷と共に爆撃をまともに喰らい、ノームの大岩を体に打ち付けられ、気を失った。 
 

 
後書き
次回は・・・
「先に進むのみ」
 長山は神通力の眼鏡ね杉山の行方を探るがとんでもない事実が発覚し、りえ達に報告する。それを聞いていたさりも本部に連絡を行う。そして一部の領土攻撃班が杉山の奪還に参加する事を決め、同じくそれを聞いたすみ子達組織「義元」は・・・。 
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