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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第七十七話

 まもなくコノミ諸島の上空に到着したかーくんの背に乗るソラとイスカ、そして空を駆けるレイジュは目標を探している。


「えっ〜と…アーロンパーク……アーロンパ……あったわ!」


 ソラは海に面して建つ、白塗りの外壁に覆われた中心にそびえ立つ五重塔に“アーロンパーク”と刻まれているのを発見した。


「ソラさん見つけたんですね?早速乗り込みますか?」 

「イスカちゃん…ちょっと待ってね……えっ〜と……今、熱げん何とかをするから…」

「お母さん、それ熱源探知って言いたのよね?」


 熱源探知とはいわゆるサーモグラフィーのことで、物体から放射される赤外線を分析し、熱分布を図として表した画像を表示する装置のことである。

 
「ん?何ですかそれ?」

「このゴーグルは建物の外から内部にいる人の体温を感知して、中に人がいるかどうか確認出来るのよ!凄いでしょ?」
 
「まさか…それもゴジ君が作ったの?」

「えぇ。ちなみに私のサングラスも同じ機能があるわよ。」


 もちろん、レイジュ達のレイドスーツのサングラスにも色々な潜入捜査などで役立てるようにソラが掛けるゴーグルと同様の機能を有している。


「そうよ〜♪」

「はぁ……。」


 イスカは世界有数の科学力を有する海軍本部でも聞いた事もないような性能を持つゴーグルに驚きを通り越して呆れていた。

 ちなみにこのゴーグルの性能はゴジの発案で平和主義者(パシフィスタ)にも応用されている。
 

「あれ?塔の頂上に物凄く暖かい人がいるわ!」


 ソラとレイジュには頂上の部屋に一際体温の高い人影が一人とその階下や広場に体温の低い人影が多数確認出来た。


「逆よ他が低すぎるのよ。ってことはあの部屋にいるのはたぶん人間、それに体型から判断して女の子ね!!」

「なるほど……魚は体温が海と同じで人間よりはるかに低いから、魚の特性を持つ魚人も人間よりも体温が低いんですね。」


 ソラ達は体温の違いにより、塔の最上階で椅子に座っている人間の女の子と判断する。
 

「その子、悪い人達に捕まってるのかしら?」

「レイジュさん、ソラさんすぐに助けに行きます!私が壁に穴を開けて突入して救助するので、塔に近づいて下さい。」


 それを聞いたイスカはコックピットの安全ベルトを外しながらサーベルを掴んで戦闘の準備をする。


「イスカ少尉、その女の子の周りには誰もいないから任せたわ。」

「はい。お任せください。」


 魚人海賊団が支配するアーロンパークにおいて、地上数十mの高さのある逃げ場のない塔の最上階に一人でいる人間の少女。そのあまりにもベタな状況はもう確実に囚われているに違いないのだと全員が瞬時に理解した。


「なら、私はイスカ少尉達が救助しやすいように広場で魚人共を引き付けておくわね!」

「かーくん、私達も頑張るわよ!」

「アア”ァァァァ〜!!」

「皆、よろしくお願いします。」


 こうしてコノミ諸島上空で三人と一匹で話し合って作戦が固まり、レイジュが陸から、ソラとかーくんが空から敵を引き付けてその間にイスカが塔に囚われている女性を救出することなった。
 
 レイジュは加速装置を最大限に作動させてかーくんを追い抜いて、アーロンパーク内のアーロンタワーの下に広がる壁で覆われた入江に面した広場に降り立った。
 

 ◇
 

 ソラは上空からレイジュの登場で魚人海賊団がアーロンタワーや海から上がって広場に出て来てレイジュの周囲を取り囲んでいるのを確認する。


「かーくん上へ。レイジュさんが魚人を引き付けてくれてる間に太陽を背にして塔へ突撃しましょう。」

「ア”ァァァー!!!」


 かーくんはイスカの指示通り魚人達に見つからないように太陽に向かって急上昇していた。

 そして、急旋回して太陽を背にして真っ直ぐにアーロンパークの最上階へ突っ込んでいく。


「かーくん、少し失礼するわよ。」

 
 イスカはコックピットから出て、かーくんに断りを入れてから首筋に立つとそのまま腰に差したサーベルを抜き、正面から近付いてくるアーロンパークのタワー白壁を見据えながら八相に構える。

 
「女の子は窓際にいるわ。イスカちゃんよろしく!!」


 ソラはゴーグルで最上階を見据えて、女の子がいる位置をイスカに知らせる。


「はい!!」


 かーくんが壁にぶつかる直前に急ブレーキを掛けたのを合図にイスカは彼の背を蹴って、サーベルを突き出しながら白壁に向けて飛ぶ。


自在錐(じざいぎり)!!」


 イスカはナミがいる位置を避けるように人一人が通れる位の円を描くように高速で無数の突きを繰り出すと、辺りに掘削機で壁に穴を開けるような音が何度も響き渡る。


「かーくん、下にいる敵を撃って!!」


 ソラはイスカが壁を突き壊す音を聞いてマズいと思い、掘削する音をかき消すべくかーくんに攻撃を命じた


「ア”ァァッ!」


 かーくんは嘶きと共に口から機関銃の砲身を出し、イスカの自在錐(じざいぎり)による音をかき消すように直下にいる魚人達目掛けて銃弾の雨を降らせた。


 ◇


 彼女のサーベルが止まった時には白壁に円形を描くように穴が空き、イスカがその円の中心を蹴ると壁が円形にくり抜かれて部屋の中に倒れて、イスカは無事に捕らわれの女性がいる室内に侵入を果たした。

 レイジュ、ソラ、かーくんの陽動は成功して、予定通りイスカの侵入は誰にもバレていない。


「きゃあああああ!だ…誰よ!!」


 アーロンタワーの最上階測量室に監禁中の少女は突然壁を破って入ってきた人影に怯えながらも、太ももに隠してある組み立て式の鉄棒を取り出して、瞬時に組み立てて鉄棒を構える。


「っ……!?海軍!?」


 砂埃が晴れると現れた白い海軍コートの背に書かれた“正義”の二文字を目にして驚愕する。


「私は“海軍本部”第07部隊ジェガート第一部隊所属イスカです。もう大丈夫。貴女とこの島を魚人海賊団の支配から助けに来たわ!!」


 イスカは周囲に敵が居ないことを確認すると壁を突き破ったサーベルを鞘に納めて、オレンジ色のショートヘアの15歳位の少女に向けて手を差し伸べた。
 

「っ…!?イスカ…“釘打ち”のイスカ!?本当に…海軍本部の……海兵。」


 彼女は魚人達が侵入者が来たと叫んではいたが、魚人海賊団を討ち取ろうとして返り討ちに合ってきた賞金稼ぎや海軍は山のように見て来たので、期待も興味もなくノルマの海図を書き続けていた。

 魚人海賊団を倒せる海軍はこの海にはおらず、偉大なる航路(グランドライン)にいる本部の海兵だけだと分かっていたが、その海軍本部の海兵の中でも二つ名を持つ有名な海兵が目の前にいる。


「ええ。その通りよ。貴女は?」

「私はナミ…あっ!?こ…これは……その……」


 ナミは名乗った直後に左肩を慌てて右手で隠したが、イスカはナミの左肩に彫られた魚人海賊団のタトゥーを見て、一瞬魚人海賊団の一味かと警戒するも部屋の様子と彼女の掌を見てその認識を改めた。


「貴女……もしかしてここで海図を書かされていたの?」

 
 ナミが座っていた机に置かれた書きかけの海図と、手に持つ血が滲んだインクペン、新たな肉刺が潰れて赤く滲んだその掌を見て、魚人海賊団に無理やりに海図を書かされていたのだろうことは想像出来た。


「っ…!?う”ん……。」


 ナミは自分の状況を正確に察してくれたイスカを前に力なく両手を降ろし、双眸から涙を溢れさせながら首を縦に振った。

 イスカは僅か15歳の少女が海図を書かされていた事を知って呆然とする。しかもこの部屋にある海図の量は異常だった。部屋を埋め尽くす程にうず高く積まれた海図は天井に届くほどの量があり、何年ここで海図を書かされていたのだろうと想像すればする程に魚人海賊団に対する怒りが湧いてくる。


「ねぇ!!イスカさん……もしかしてここにはあの人(・・・)も来てるの!?」


 ナミは泣いていた顔を一変させてイスカに向けて期待に満ちた目を向ける。

 イスカもナミが誰の助けを期待しているのかすぐ分かった。

 間違いなく近い将来海軍本部を背負って立つであろうドスケベで小生意気な後輩。
 

「ごめんなさい。ここにゴジ君はいないの…。」


 ゴジが来る。

 たったそれだけで絶望に打ちしひしがれてきた女の子を笑顔にしてしまう後輩を羨ましく思う反面、彼が居ないと知った時のナミの顔を想像して申し訳なく思いながら事実を告げる。

 
「そう……。“麒麟児”は来てないのね……」

 
 イスカの想像通りにナミは一目で分かるくらい落胆した表情を浮かべる。


 ──あぁ…またこの顔……。


 これがジェガートの現実。光と影──そう呼ぶ人もいる。

 第一部隊はギオン中将を筆頭に第二部隊と負けず劣らずの実力者が揃うにも関わらず、ジェガート=ゴジという世間の認識により第一部隊は光の当たる第二部隊の影と呼ばれている。

 でも、イスカも他の第一部隊の海兵達もゴジの努力、実力、人柄を知っているからこそ誰も彼を妬む事はないが、やはり助けに来た人々に期待外れという顔をされれば精神的にくるものがある。

 
「でもね…あれを見て!」


 イスカはゴジがいないと知って落ち込むナミを勇気付けようと窓の外を指差す。


「あれは……まさか!?」


 イスカの空けた穴から外を覗いたナミが見たのは、絵物語の通りに巨大な鳥の鉄のロボットを自在に乗りこなして空から魚人海賊団を銃撃する海の戦士ソラ。


「かーくん、もっともっとやっちゃって!」

「ア”ァーーっ!」


 かーくんの開いた口から機関銃の砲身がガガガガ…と火を噴きながら回転する度に銃弾が発射されていた。


「鳥の口から銃だと!?ギャアアアア!」


 数多の銃弾の雨を浴びて逃げ惑う魚人達の姿。かーくんの機関銃の玉は通常のマスケット銃の弾よりも空気抵抗を少なくする為に先が尖り、火薬の量も多く銃弾自体も大きく重いためマスケット銃の10倍以上の威力がある。

 その為、一部の魚人達の体を覆う硬い鱗をも容易く貫く事が出来るのだ。


「「「助けてくれええええ!」」」


 しかし、陸では無数の桃色の矢を放ち、かーくんの攻撃から海へ逃げようとする魚人達を的確に狙って倒していくポイズンピンクの姿。


「海へは逃がさないわよ。”桃色毒矢(ピンクホーネット)”!」

「「「ギャアアアア!」」」

「“第四勢力”ジェルマ王国。その国が有する最強の戦士ジェルマ66(ダブルシックス)の一人“戦女神”ポイズンピンクと、そのジェルマ66(ダブルシックス)を何度も倒してきた海の戦士ソラ。ゴジ君はここに来れないけど、あの2人がいるから大丈夫。必ず貴女もこの島も助かるわ!!」


 上からは銃弾の雨、正面からは毒の矢という空と陸からの同時遠距離攻撃によって生まれながら人の数倍の力を持つとされる魚人海賊団を相手に明らかに優勢に立ち回る姿を見て、ナミは笑顔になりながら涙を流す。


「う”ん。」


 イスカはそんなナミの頭を撫でながら決意を告げる。


「ナミちゃん、泣くのはまだ早いわ。私は絶対的正義の名にかけてアーロンは必ず倒すからそれまで涙は取っておきなさい。」

「う”ん……ありがとう。イスカ……ざん……。」


 ナミは溢れ出る涙を腕で拭いながら笑顔で顔を上げた。 
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