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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第七十六話

 ここはコノミ諸島を支配する“ノコギリ”のアーロン率いる魚人海賊団がアジトにしているアーロンパーク。

 アーロン達魚人海賊団の出身地である魚人島はシャボンディ諸島の海底に位置しており、海面に出ればシャボンディ諸島のシャボンディパークが見えたのだが、魚人は人間からすれば迫害の対象であり、陸に上がれば殺されるか奴隷にされるかのどちらかである為、太陽の元にあるその島に憧れを抱いていた。

 そのためアーロン“パーク”という名称は、幼少期の幹部魚人たちが憧れを抱いていた偉大なる航路(グランドライン)前半の最後の島であるシャボンディ諸島の遊園地シャボンディ“パーク”にちなんでおり、間取りや城の外見などはシャボンディパークを模している。
 

「アーロンさん、ナミが帰ってくるぜ。」


 こういった背景から魚人島はアーロン達のように人間を支配しようと考える者と魚人島を納めるリュウグウ王国が目指す人間との共存を望む者とで意見が真っ二つに分かれている。

 アーロンは生粋の前者で魚人を至高の種族、人間を下等生物と呼ぶ“種族主義者”であり、人間には一切容赦しないが魚人には一切手を出さない男として有名で魚人海賊団はそんなアーロンを慕う者が集まっていた。


「おぉ!野郎共ぉぉ、我らが優秀な測量士の帰還だ!出迎えてやれ!!」


 魚人海賊団の測量士帰還という報告を受けた魚人海賊団船長アーロンは仲間達に大声で知らせた。


「「「(うお)おおおぉぉぉ!!」」」
 

 入江は巨大な海獣も入れるように大きなプールに掘り固められ、もちろん海とも繋がっている為、人間の客や近海とも交流ができる。アーロンは人間を下等生物と呼んで毛嫌いしているが、自分にとって利のある人間とは交流を持っているのだ。

 中枢となる城はアーロンタワーと呼ばれて五重の塔になっており、最上階にはその数少ないアーロンの認めた人間の少女の為の測量室があり、今その人間の少女がアーロンパークの門をくぐって中に入って行く。


「「「ナミが帰ってきたぞおおぉぉぉ!!」」」


 魚人の支配するこの島において、そんなことをする人間がいればすぐに見せしめとして殺されるだろうが、このオレンジ色の髪を持つ少女だけは特別であり、魚人達は歓声を持って彼女の帰還を祝福した。


「いつもここは喧しい場所ね。」

「ナミ、どうだった?今回の収穫は?」


 アーロンパークの入江に面した広場に設置された椅子に腰掛けるアーロンは仲間(・・)の帰還を祝福する。
 

「ん〜…あんまりだったわねぇ〜……全く貧乏な海賊ばっかりで嫌になっちゃうわ!」

 
 魚人海賊団幹部 “測量士”ナミ。

 彼女はあっけらかんとした調子で航海の成果について船長(・・)アーロンに報告した。


「シャーハッハッハッハ!そりゃついてねぇーな!!」

「え……えぇ。少し休んだらまた航海に出るわ!」


 ナミはコノミ諸島にあるココヤシ村でみかん農家を営む義理の母ベルメールと姉ノジコと暮らすごく普通の女の子だったが、ある日、魚人海賊団の襲撃を受けて島を支配され、ベルメールは自分と姉を守る為に犠牲となってアーロンに見せしめとして殺された。

 アーロンを追ってきた海軍の軍艦は全て海に沈められた。それを見たナミ達は魚人海賊団という偉大なる航路(グランドライン)の本物の海賊を倒せるのは海軍本部の海兵だけだと確信するも、偉大なる航路(グランドライン)で手一杯の本部の海兵が東の海の辺境の島まで助けに来るとは思えずに自分達でどうにかしなければならないと気付かされて、ココヤシ村を含むコノミ諸島にある20の町や村は命を紡ぐためにアーロンの支配を受け入れた。

 ナミは測量士としての腕を買われてアーロンと魚人海賊団に入って海図を書く代わりに一億ベリーでココヤシ村を買うという契約を結んで、この魚人海賊団の測量士となっている。


「ゆっくり一億ベリーを集めりゃいいさ。ナミ、島を出る前に今回の俺達が航海した資料を部屋に置いてある。1週間で海図におこしといてくれ。」


 アーロンはコノミ諸島を支配しているが、いずれは東の海(イーストブルー)全てを支配する事を目標として、この海を回って潮の流れ等のデータを取ってはそれをこまめに記録している。

 ナミの測量士としての仕事はその記録を全て海図におこすことである。

 東の海(イーストブルー)全ての海図が完成した時、海を自在に泳ぐことの出来る魚人海賊団にとって、この海での敵はいなくなり、アーロンの夢である東の海(イーストブルー)の全てを支配してアーロン帝国を築くという夢に近付ける。
 

「ええ。分かったわ。」

 
 ナミはこのあとアーロンタワーの最上階にある測量室に地図を書き上げるまで監禁されることが分かった上で両手を固く握り締めながら笑顔で首を縦に振る。

 1週間で海図におこせというが、彼女が魚人海賊団に入って早5年。普通に書いていては1週間で出来る量では決してなく、徹夜で書き続けなくてはならない量があるのは想像に容易い。

 5年間、アーロンの為に海図を書き続けたことで、彼女の手は肉刺が潰れ続けて今や分厚い皮で覆われている程だが、故郷のココヤシ村を救う為にアーロンと契約した彼女にとって、全てやり遂げなければならない仕事である。



 ◇


 ナミは一億ベリーを稼ぐ為に定期的に一人で航海に出ては海賊専門の泥棒として金品を盗んでおり、今回の航海についてあっけらかんと答えていたが、実は盗みに失敗して海賊に捕まって命の危機に瀕していた。


『この小娘が!俺達の財宝に手を出してただで済むと思うなよ。』

『ごめんなさい。止めて!』

『おい!?待て、コイツの肩の刺青を見ろ!!』

『ひぃぃ……これは魚人海賊団の……!?逃げろぉぉぉ!!』


 しかし、彼女を殺そうとした海賊達は彼女の肩に刻まれた魚人海賊団のシンボルの刺青を見た瞬間に、アーロンの報復を恐れて彼女を解放したのだ。


『ぐうぅぅ……アーロン……!!?』


 ナミは自分が最も憎むべき相手に守られたことに虫唾が走ったが、一億ベリー稼ぐ為には耐えなければならなかった。


 ◇



 ナミとアーロンの契約を知らないコノミ諸島に住む人達は母を殺した魚人海賊団に取り入った彼女を裏切り者の“魔女”と呼ばれて蔑まれている。


「まぁ…魔女と呼ばれるお前はこの島でゆっくりは出来ねぇよな。オウ!!同志達よ仲間が帰った祝いの宴の準備だ!!」

「「「(うお)おおおぉぉぉ!!」」」


 アーロンの掛け声でアーロンとナミだけだった広場に海やアーロンタワーの中から多数の魚人が雄叫びを上げながら飛び出てきた。


「えっ!?宴なんて……」


 ナミは宴の開催をやんわりと断ろうとするが、アーロンがナミをギョロリと睨みつける。


「あ”ぁ……!この俺が仲間であるお前の帰還を祝おうってんのに何か文句でもあるのか?」


 アーロンは仲間と認める相手には寛容であり、村に帰ってきても歓迎されないナミを多少なりとも不憫に思って宴を開こうとしているのだ。


「そ……そんな事ないわよ。ただ私のために開いてくれることに驚いただけ……あはは……」

「シャーハッハッハ!!そうだよな。仲間の帰還を祝う宴を開くのに文句なんかあるはずもねぇ!!お前を疑った俺を許してくれ!!」

「も……もちろんよ。」


 こうしてアーロンパークでは本人の意志を無視したナミが無事に帰還した事を祝って盛大な宴が繰り広げられた。


「にゅ〜、ナミ。飲んでるか!?」


 魚人海賊団の中でも一際明るい性格の蛸の魚人がナミに超えをかけると、彼女は笑顔で並々とエールの注がれているグラスを掲げる。

 
「うんっ!飲んでるわよ。」


 宴が始まると自分の母を殺して自分の愛する姉や村を我が物顔で支配するアーロン達を見てもナミは笑顔を崩さずに宴に参加して魚人達と酒を酌み交わす。

 これはアーロンと契約を結んだ日にナミが己に課した『絶対に泣かない。アーロンの顔を見ても笑っててやる』というココヤシ村を買い戻すまで戦い続ける事を誓った少女の意地。


 ──早く…終わって──。


 この宴の金も当然ながら、コノミ諸島を支配するアーロンが“奉貢(ほうぐ)”と呼ぶコノミ諸島の人々からの貢ぎ金で賄われていると思うと、大好きな酒も料理も酷く不味く感じる。

 “奉貢(ほうぐ)”とはこの島の人々の命の対価のことで大人一人10万ベリー、子供一人5万ベリーで毎月自分の命をアーロンから買っており、一人でも納める事の出来ない時は村人は連帯責任で全員殺され、さらに村ごと消されることすらあり、これを払えなかったベルメールは殺されてしまったのだ。 

 こうして夜遅くまで開かれた宴が終わり、アーロンパークの測量室に入ったナミはうず高く机の上に積まれた資料を見て、覚悟を決めて席に着くと外から部屋の鍵が掛けれる音が聞こえる。

 この部屋は中から鍵を掛けることも開けることも出来ない特殊な扉でこの鍵が開くのは魚人海賊団が飯の差し入れとともに海図の成果を監視しに来る時のみである。


「逃げないわよ。ココヤシ村を買い戻すまで逃げるわけないじゃない!」

 ───早く自由になりたいよ。ベルメールさん……


 こうして覚悟を決めて海図を書き始めた彼女は5年間ずっと魚人海賊団の中で笑った分…いや……それ以上に心の中で泣き続けているのだ。


 ◇


 レイジュ率いる戦艦“女神(ヴィーナス)”はとうとうコノミ諸島の領海のギリギリ外12海里の位置まで接近した。


「あんた達はここで待機して船を守りなさい。私とお母さん、イスカ少尉、かーくんだけで攻め込むわ!」

「「「はっ!」」」


 ジェルマ王国の兵士達は一糸乱れぬ敬礼で作戦を承諾する。

 ソラはカモメのマークが描かれた白い缶、レイジュは“0”と書かれたピンクの缶を取り出してほぼ同時に腰に当てると白と桃色の光が晴れた後、彼女達はそれぞれ白とピンクのレイドスーツに身を包んでいた。


「おぉぉぉ…ポイズンピンク様と海の戦士ソラ様……今日も神々しい……」

「「「おおぉぉぉ……!!」」」
 

 2人の姿を見て、ジェルマの兵士達は感涙の涙を流す。

 彼らクローン兵はジェルマ王国が作り出した試験管ベイビー。僅か5年で成人して一人前の兵士として働いており、彼らにとってレイジュとソラは女神そのものである。

 しかし、侮ることなかれ。彼らの元になった人物はかつてジェルマ王国が北の海(ノースブルー)を支配した時の戦士長のクローンであり、一人一人が魚人数人を一度に相手取れる実力の持ち主である。


「すごい。ゴジ君に話は聞いてたけど、本当に一瞬で着れるのね。でも、元の服は何処に行くのかしら?」

 
 イスカはゴジがパーフェクトゴールドに変身する所も見た事はないので、レイドスーツによる変身を見るのは初めてで、変身前の2人と変身後の2人を見てふと疑問を口にした。


「「知らないわ。」」

 
 イスカの疑問にそんな事考えたことなかったと頭を捻るレイジュとソラ。

 ソラとレイジュの服装は変身前よりも明らかに布面積が減っているのだが、変身ヒーローにそれを追求するのは野暮である。


「ア"ァーーー!!」


 かーくんは既に甲板に降り立ち、ソラ達に背を向けて『そんなこといいからさっさと乗れ』と急かしているようである。


「かーくん、よろしくね♪」

「まさか、またかーくんの背中に乗る日がくるとは思わなかったわ…。」


 かーくんに急かされて背中のコックピットに乗り込むソラとイスカ。

 ゴジはかーくんに対する調教の一環としてイスカを始めとする仲間達をかーくんの背に乗せており、イスカも何度か乗ったことがある。


「ア"ア”ァァァーーー!!」
 

 かーくんはソラとイスカが乗ったことを確認し、力強く嘶くと共に翼を広げて、天高く舞い上がっていく。


「あらあら、かーくんも張り切ってるわね♪」


 張り切るかーくんを追ってレイジュも浮遊装置と加速装置付きの靴で天高く舞い上がってコノミ諸島を目指した。 
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