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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第七十四話

 レイジュとソラを乗せた戦艦“女神(ヴィーナス)はコノミ諸島へ向けて順調に航海を続けていたが、翌朝この船にレイジュの悲鳴が響き渡る。


「きゃあああああああっ!!」

「「「レイジュ様!!」」」


 レイジュの悲鳴を聞いてジェルマの兵士達がソラの客室に集まってくると、レイジュは部屋にポツンと残されたメモ紙を手にしてピクピクと震えていた。

 
「何よ……これ……。」


 その紙にはこう書かれていた。


『レイジュへ、かーくんと朝のお散歩に行ってくるわね♪お昼には戻ります。母より』


 レイジュは朝起きて、母が居ないことに気付いて嫌な予感と共に客室を確認してこのメモ紙に気づいたのだ。


「あんた達!!母さんはいつ、どの方向に向かったの!?」


 レイジュは集まってきた兵士達にソラの行方を聞くと、一人の兵士が進み出て来てレイジュに報告する。
 

「はっ! ソラ様は一時間程前に南西の方角に機械の鳥の背に乗って飛んで行きました。」


 ジェルマの兵士は生来ヴィンスモーク家に絶対服従するように生み出されたクローン兵士であるので、仮に今すぐ死ねと命じられれば無言でその場で首を切って死ぬ連中であるため、レイジュは何も言わずに母の出発を見送った彼らを責めはしないが文句くらいは言いたくなる。


「あんた達、なんでそれを私に報告しなかったの!?」

「はっ!ソラ様は我々にも『昼には戻るから心配しないでね。』とおっしゃっていたからであります。」


 レイジュが彼らにソラを何処へも行かせないように命令したとしても、ソラが散歩に行くと言えば姿勢を正して見送るのが、ジェルマの兵士である。


「そう……心配するなと言われたからわざわざ私に報告しなかったのね。はぁ……私は母さんを迎えに行ってくるわ。貴方達にしばらく船を預けるわね!」


 ただの散歩とはいえ、レイジュは長年病床に伏せっていた母が一人で海賊蠢くこの海に出るなんていてもとっても居られるはずは無い。


「「「はっ!」」」
 

 レイジュは"0"と書かれたピンクの缶を腰に当て、レイドスーツを瞬時に纏うと直ちに浮遊装置で飛び上がる。


「お母さぁぁぁーん!!」


 彼女は加速装置で空を駆けて母の向かった方角へ全速力で飛んで行った。


 ◇


 その頃、ソラはというとレイジュの心配など他所に空の優雅な散歩を楽しんでいた。

 レイジュ宛のメモを残し、ジェルマの兵士に言伝を頼んでかーくんの背中に乗っているソラは何処までも続く蒼い海を見下ろしながら、海が映されたような深い青空を飛んでいく。


「空を飛ぶって本当に気持ちいいわぁ。子供の頃から鳥になって自由に空を飛ぶことが夢だったけど、まさかこの歳で叶うとは思わなかったわ♪」


 ソラはかーくんに乗る時は搭乗服としてレイドスーツを使用する。

 彼女のレイドスーツは胸の谷間や臍が見えるくらいまで真ん中が大きく開き、スカートの丈が超ミニのワンピースタイプの白のレオタードに青いマントを纏い、黄色と茶色の縦縞の飛行帽子とゴーグルを掛けており、海の戦士ソラを模したレイジュと色違いのデザインとなっている。


「この服はちょっと恥ずかしいけど、着てると全然寒くないし、かーくんがいれば迷子になる心配もないわ。それにお昼まではまだ時間もあるわね。かーくん飛ばしてぇ!!」


 ゴジの趣味か……些か露出が多いデザインであるが、仮に何千m上空から落下しても生還出来る程に耐久性にも優れる上、上空は気温も低く、本気を出せば音速に近い速度で飛ぶ事の出来るかーくんの背に乗って風を受け続けるソラの体感気温は真夏でも氷点下を下回るも、レイドスーツを着ていれば極寒の地にいても、砂漠のど真ん中に居ても寒さや暑さを感じずに体温を一定に保ち快適に過ごせるという最高の搭乗服である。


「ア"ア”ァァァァー!!」


 ソラはチラリと時計を見て時間を確認して優雅な空の散歩を再開し、かーくんは嘶きと共に速度を上げて飛ぶ。

 ゴジは何処か抜けているところのある母を心配してかーくんにジェルマ王国の船を引く巨大電伝虫が放つ電波を傍受する機能を搭載させてあるので、かーくんがいる限り船に確実に戻ることができる。


「鳥になったみたいで最高の気分よぉ!!それもこれもゴジとかーくんのおかげよ。ありがとう♪」

「ア"ア”ァー♪♪」


 海を見下ろしながら、顔を赤らめて興奮するソラ。

 ソラの生来の性格は明るく好奇心旺盛な女性で、子供の頃からよく外で遊ぶような女の子だった。
 

「あら?船二隻が見えるけど、片方は髑髏マークがあるから海賊船……もしかしてあの船が襲われてるの!?」


 ソラはゴーグルの望遠鏡の役割も示すレンズの縁を回してピントを調整して船を拡大すると客船と見られる船は特に損傷がないが、白いコートを着た朱色の長髪を持つ女の子が大勢の屈強な男達に海賊船の船首まで追い詰められているところだった。


「大変……あの子を助けないと…!? かーくん!! 船に突っ込んで!!」

「ア"ァーーー!!」


 かーくんはソラの緊迫した声に反応し、今日一の声をあげて翼を窄める事で空気抵抗を無くして、高速で斜めに落下しながら音速に迫る速度で一直線に海賊船を目指した。


 ◇


 東の海(イーストブルー)に浮かぶ1隻の海賊船が客船に目を付けて襲おうとしたその瞬間、海賊船に突然乗り込んで来た1人の女性を海賊団総出で船首に追い込んだ。

 
「ヒッヒッヒッ…海兵だが何だか知らねぇが、若い姉ちゃん一人で海賊船に乗り込んでくるなんてなぁ。うちの船長は海軍将校を殺した事もあるだぜ」

「でも、姉ちゃんは美人でよかったなあ?すぐには殺さずに天国を見せてやるぜ!」

「ヒヒヒ…もう逃げれねぇぞ……ペロッ…。」
 

 船首に立つ海軍将校の証である白いコートと真っ赤に燃えるような髪の毛を靡かせて、切れ目の勝気な美しい顔と半袖シャツに腿まで丸出しの短パンを着た抜群のスタイルを持つ若い女性海兵の姿に興奮している。


「ボス!客船が逃げていきます!」

「ちっ……この女、自分を囮にして客船を逃がしたか?」


 彼等は船内を逃げ惑う美人海兵を追い掛けてようやく船首まで追い詰めたのだが、ボスと呼ばれた身長2m超える上半身裸の筋骨隆々の男苦虫を噛み潰したような顔をする。


「ねぇ…船にいる海賊はこれで全部なの?それに貴方が船長ね、名前は?」


 その女海兵は船首の上に立ち、背水の陣で数十人の海賊に囲まれているにも関わらず、余裕そうな顔をしている。


東の海(イーストブルー)の海兵のくせにこの俺を知らねぇのか!?“剛腕”のリロブ様だ。一生忘れられねぇ様にしてやるよ!」


 その女海兵はコートの内ポケットから手配書の束を出して、捲っていく。


「えっ〜と……懸賞金600万ベリーの“剛腕”のリロブね…。分かったわ。」


 その女海兵は一つの手配書で手を止めながら、リロブと名乗った男の顔と手配書の写真を見比べて間違いないことを確かめてから手配書を海軍コートの内ポケットに仕舞ってゆっくりと腰に指したサーベルを抜き放つ。

 彼女の持つサーベルの刀身は普通の物に比べ細く鋭い突きを主体とする刺突剣と呼ばれる剣だった。
 

「くくっ…どうした?そんなひょろひょろのサーベル1本でこの状況がどうにかなると……!?」


 東の海(イーストブルー)は世界で一番治安が安定しており「平和の象徴」と言われている。平均賞金額は300万ベリーでこの海で600万ベリーという懸賞金を持つリロブは東の海(イーストブルー)の海兵では手がつけられない大物海賊である。


「大人しく投降する気はないようね。少し痛めを見るけど、覚悟しなさい。」


 そう言い放った彼女は切先を海賊に達に向けて刺突の構えを取った。


「おい!やっちまえぇ!!」

「「「おぉぉぉ!!」」」


 綺麗な薔薇には棘があるというが、自分達が追い詰めたと思った彼女には鋭く尖った釘があることをこの海賊達は知る由もなかった。


「釘打ち!」

「「「ギャアアアアア!!」」」


 その海兵が船首を蹴って突進を繰り出すと同時に放たれた超高速の連続刺突技を食らったリロブを始めとしたリロブ海賊団員は全員がまるで釘を刺されたように穴だらけになって傷口から血を吹き出しながら倒れた。

 海兵は突きを放ちながら船首から船尾までを真っ直ぐに駆け抜けて赤い閃光を残した。


「ぐはっ…朱色の髪に…まるで釘で滅多刺しにされたような傷…それにさっきの技名……はぁ、はぁ…ま…まさか──“釘打ち”のイスカ!!」


 イスカが言い放った技名と彼女の真っ赤に燃える髪を見て正体に気付たが、リロブ自身も肩や足の腱を突き斬られており、自分達が追い詰めたのではなくただ一網打尽にする為にイスカに誘われていただけだということを悟った。


「「「う”う”ぅぅ…。」」」

「名乗りは要らないようね。それとごめんなさい。私は東の海(イーストブルー)の海兵じゃないから貴方のこと知らなかったの。」


 一瞬で船首から船尾に走り抜けて海賊団を壊滅させたイスカは刺突剣の刃を肩に置いて、振り返って痛みに喘ぐリロブ達を見下ろした。 
 

 
後書き
話が東の海に戻ってきました。 
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