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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第七十一話

 バラティエでの食事を終え、サンジと別れたレイジュとソラは戦艦“女神(ヴィーナス)”に戻って来た。

 彼女達は東の海(イーストブルー)を浮かぶ船の甲板に並べたベンチに2人で座ってのんびりと話をしている。


「ねぇ……お母さんはどうやって私の所に来たの? いい加減教えてよ。」

「ん〜…どうしようかしらねぇ…♪ふふっ。」


 レイジュの問いに、ソラは自分の唇に人差し指を当てながら目線を雲一つない青空に向けて可愛く答えをはぐらかす。


「はぁ…。これが遺伝ってやつなのね。」


 レイジュはふと先程、ソラの来店を秘密にしてサンジを驚かせた事を思い出して母譲りなのだと唐突に悟り、そんなソラの姿を見て深く溜息を吐いて一昨日の事を思い出す。


 ◇


 実はレイジュがソラと再会したのは一昨日の夜であり、ソラは護衛もつけずにレイドスーツを纏ったままたった一人で戦艦“女神(ヴィーナス)”にフラリとやって来た。


「皆、お仕事ご苦労さま」

「「「ソラ様、いらっしゃいませ!」」」


 ジェルマのクローン兵士は優秀であり、宵闇の中にも関わらず一目で船に向かって迫る影に気付くもすぐに王族であるソラと見抜き、レイジュに報告した上で一同が甲板に並んで敬礼でソラの来訪を迎えていた。


「ちょっ……本当にお母さんがいるわ!?」

「あっレイジュ、久しぶりねぇ♪」

「えぇホントに久しぶ……いやいや、そうじゃなくて……なんで一人なの?しかもどうやってここまで来たのよ?」


 レイジュはここへ来た理由と手段について尋ねるもソラは自分の口の前で両手の人差し指で✕印を作りながら、可愛らしくウインクしながら答えをはぐらかす。


「ふふっ♪ 内緒よォ〜♪」


 ソラは未だに若々しい容姿でレイジュと並んでも姉妹にしか見えないからその姿も見苦しくはないのだが、レイジュは流石に年齢的に無理があるだろうと思っているのは本人には絶対内緒である。


「んん〜?レイジュ、私に何か言いたいことでもあるのかしら?」

「えっ……!?いや、何も無いわよ。ちょっと父さんと話してくるわ。あんた達は母さんを客室に案内しなさい!」

「「はっ!」」


 レイジュはソラの殺気を感じ、矢継ぎ早に兵士達にソラを預けた後、逃げるように船室に父ジャッジに電伝虫で連絡を入れる。

 ”戦女神”と呼ばれる彼女も母親にだけは一生勝てる気がしないと察する。


『もしもし、お父さん…なんでお母さんがこっちに来てるの?護衛も付けずに一人で来させるなんて、一体何を考えてるのよ!?』


 ソラは強化人間でもなければ、兵士ですらない。

 劇薬の効果が完治して既に8年経ち、もはやレイドスーツなしでも何不自由ない生活が送れている。

 さらにゴジの作ったレイドスーツを着たソラには並の兵士では相手にはならないが、病床のソラを知っている家族はどうしても彼女に対して過保護になっていた。


『はぁ…そうか…ソラはレイジュの所にいるのか……良かった。本当によかった。はぁぁーー。』

『何があったの?』


 レイジュは父の心底安心して、力が抜けて疲れきっている声を聞いて何事かと不安になる。


『今朝起きると、「ちょっとお散歩に行ってくるわ♡」というソラの書き置きがあったのだ。でも、暗くなっても帰って来ないから心配していた所だ。イチジは今もソラを探して北の海(ノースブルー)中を飛び回っているぞ。』

『いやいや、お散歩って…ここは東の海(イーストブルー)よ……? 一体どうやって??』


 ソラが住むジェルマ王国は北の海(ノースブルー)にあり、レイジュが暮らす東の海(イーストブルー)へ来るには赤い土の大陸(レッドライン)を越えなくてはならない。

 ジェルマ王国の船やレイドスーツであれば横断は可能であるも、自分達ならまだしも、レイドスーツの扱いがお世辞にも上手いとは言えないソラでは無理といえる。

 ソラは空を飛ぶ事に憧れを持ち、加速装置や浮遊装置の練習をしたが、元々運動が得意ではない彼女ではレイドスーツの身体能力補正のおかげでようやく蝶のようにふわふわと飛ぶことが出来るようになった程度である。


『すまない。それは俺が言うよりも、ソラが自分の口から言いたいはずだから、本人に聞いてくれ…。レイジュ、しばらくソラを頼むぞ。ではな!』

 
 レイジュは肝心の母が教えてくれないから父に聞いているのに、父にも答えをはぐらかされた。

 しかし、ジャッジはソラがレイジュの元へ行った方法も理由も予想が付くので、自分の口から言うべきではないと判断してレイジュとの通話を切った。


「ちょっと…もう……。通話が切れてるじゃないのよ! ……はぁ…一体何なのよおおおお!!」


 レイジュは母の事を聞いたのに、何も教えて貰えずに要件だけ告げられていきなり電話を切られたので、受話器を叩き付けながら天を仰いで叫ぶも、その叫び声は宵闇に消えていった。


 ◇

 
 その後、ソラはここへ来た手段や理由については前述の通り一切教えてくれなかったが、レイジュはソラの求めに応じて、サンジの店バラティエに予約を入れてさっきの通り家族水入らずの三人で食事を取って今に至る。


「はぁ…とりあえず私はこれからゴジに言われた魚人海賊団を倒しに行ってくるわ。お母さんはここで待つ? それともジェルマ王国に帰るなら、このまま船に送らせるわよ…。」
 

 ソラは何故か勿体ぶって隠しているが、彼女の様子はどう見ても言いたくて仕方ないのを我慢しているのがバレバレなので、きっかけさえあれば本人が話すだろうという大人な判断でソラへの追求を諦めて、コノミ諸島に向かって魚人海賊団を倒すことを伝えた。

 海軍からもたらされた情報に従ってコノミ諸島に近づけば船自体が魚人海賊団に襲撃されるため、船で近づけないので元々一人で魚人海賊団のアジトに乗り込むつもりであったことから、戦艦“女神(ヴィーナス)”とジェルマの兵士達に母の護衛をさせようと考える。
 

「ふふっ。その為に私はここへ来たのよ。私もレイジュと一緒に戦うわ♪」


 しかし、ソラは待ってましたと言わんばかりの顔でその場から立ち上がり、片手で自分の胸を軽くドンと叩いてやる気をアピールする。


「えっ…? いやいや、お母さんは戦えないでしょ?」


 ソラがレイドスーツを着た所で、生来人の数倍の力を持つとされる魚人相手には足でまといにしかならず、何よりもレイジュはそんな危険な戦場に母を連れて行きたくはない。

 レイジュに限らずヴィンスモーク家の誰もが口を揃えて同じことを言うに違いない。
 

「フッフッフッ…もう貴女の知る私じゃないのよ……おいでぇ!か〜〜く〜〜ん!!」

 
 ソラは不敵な笑みを浮かべて、空に向かって大きな声で叫ぶ。

 ソラはレイジュが魚人海賊団を討伐する事を知っており、レイジュを手伝う為にここへ来たのだが、過保護過ぎる家族に絶対止められると思い、夫には散歩だと告げてここへ来た。

 だから、このタイミングこそ彼女がここへ来た理由と手段を話すタイミングだったのだ。


「「…?」」
 

 ──しかし、何も起こらなかった…。


「あれ?か〜〜〜く〜〜ん!!おーーい!!!」


 ソラは慌てながら、先程よりもっと大きな声で空に向かって叫んで自分の新しい“子供”の名前を呼ぶ。
 

「ちょ…お母さん! どうしたの? かーくんって誰よ?」
 

 レイジュは突然空に向かって叫ぶ母の気でも狂ったのかと、心配になるが、遠くからカモメの鳴き声が聞こえてくる。


「ア"ァーーー!!」

「あっ! 来た来た!! レイジュ見てよ。あれがかーくんよぉ♪ お〜い…か〜〜く〜ん…こっちよぉ〜!」

 
 ソラが指差した先にいたのは地平線の向こうからこちらに飛んでくる一羽のカモメだった。


「ん?あぁ。ペットでも飼い始めたの?カモメがペットって、本当に海の戦士ソラみたいね!」


 レイジュは母がカモメをペットにして、カモメだから名前が“かーくん”なのかと呑気に構えていると、そのカモメが船に近づくにつれてその巨大さと異質さが顕となる。
 

「かーくん…お待たせ。いい子にしてたぁ?」

「ちょ…ちょっと待って……お母さん!!何よこれ!?」

「ア"ア”ァーっ♪」


 その巨大なカモメが船の甲板の手すりに降り立って頭をソラに押し付けていると、ソラはカモメの頭を優しく撫でるが、そのカモメが降り立ったことで戦艦が少し傾き、レイジュが慌てる。

 
「ふふ〜ん♪この子はゴジが私の誕生日プレゼントで贈ってくれたペットの“かーくん”よ!!」

「ア"ァーーー!!」


 船を震わす程大きな鳴き声をあげて船の上空を旋回するカモメの翼を広げた体高は少なく見積もっても20mは超えており、翼を閉じても10mは超えているだろう …。


「いやいや…ペットって……デカすぎだし、それにその鳥どう見ても機械でしょ!」


 そして何よりもカモメの体は白銀の輝きを放つ鋼鉄で覆われ、さらにその背中には小型飛行機のコックピットのように人が前後に二人ほど入れるスペースが空いており、ソラはここに乗ってレイジュの元へやって来たのだ。

 
「違うわ…いや、違わないんだけど……でも、違うのよ。かーくんは機械だけど、ただの機械じゃないのよ。ゴジが何か言ってたけど難しいことはお母さんよく分からないの。でもゴジが言うにはかーくんは生きてるのよ!!」

「ア"アァー。」
 

 ソラも何でかーくんが機械なのにカモメのような声で鳴くのか、そもそも何故機械なのかはゴジに電話で説明を受けたが全く理解出来なかった。

 かーくんは非常におっとりした性格でゴジの調教の甲斐あってソラを母親のように慕っている。先程ソラが呼んでもすぐに来なかったのは、ただゆっくりと準備してから飛んで来ていたからである。


「いや…意味わかんないわよ。」

「ア"ァッ!」
 

 かつて海の戦士ソラは1羽のカモメと巨大合体ロボを従えてジェルマ66(ダブルシックス)と戦ったと言われるが、この世界に誕生した海の戦士ソラはカモメ型巨大ロボを従えた自由な女性だった。



 ~2ヶ月前、マリンフォード海軍本部基地にて~


 ゴジは、海軍本部で開発中の最新鋭のある人型兵器を応用してカモメ型兵器を作った。


「おい!見ろよベガパンク!!平和主義者(パシフィスタ)の技術を盛り込んだカモメ型の平和主義者(パシフィスタ)だぞ。どうだすげぇだろ!」


 平和主義者(パシフィスタ)とは海軍本部がDr.ベガパンクに作らせていた人型兵器であり、銃や刃物のような並みの攻撃では通用しない頑丈な身体を持ち、鉄を溶かす程の高熱のレーザー光線を両掌と口から照射する事ができる。


「おぉ!?これは凄い。やはり君は天才だよ。もしかしてこれは飛ぶのかい?」


 ベガパンクは全長20mはある翼を雄々しく広げ鎮座する白銀のカモメに目を輝かす。


「いや、まだだ。構造上は飛べるはずだが、これに平和主義者(パシフィスタ)のような動力を載せると重くなりすぎて飛べなくなる。だからこの動物(ゾオン)系悪魔の実 トリトリの実 モデル カモメと悪魔の実の情報伝達メカニズムを解明して物に悪魔の実を食べさせる方法を発見した天才博士の力が必要なんだよ。」


 海賊を拿捕した際に敵船が所有していた悪魔の実は拿捕した海兵に所有権が与えられ、ゴジの手に持つ悪魔の実はたまたま手に入れた物だった。


「なるほど……!?面白い!!完成したこれをどうする気だい?君の相棒にでもするのかね?そうなると君は海の英雄から一躍()の英雄になるね!!」


 ゴジはベガパンクから「そら」という言葉を聞いてほくそ笑む。


「違うよ。これは俺の一番大切な人に送るんだ。名は体を表すというが、彼女は本当に青い空が本当に大好きな人なんだ。」

「名は体をね……空……そら。そうか!?君の母君、ヴィンスモーク・ソラか!?」


 ゴジの頭に入院中に空を飛ぶ鳥を羨ましそうに見上げていた母の顔とレイドスーツの浮遊装置と加速装置を上手く扱えず思った通りに空を飛べずに、鳥のように空を飛ぶレイジュ達を羨ましそうに見上ていた母の顔が同時によぎる。


「そう……。コイツは母さんの自由な翼なるんだ!」

「わっはっはっは!忘れていたよ。そうか君も人の子だったんだな!!そういうことなら早速その悪魔の実を貸してくれ!!」


 こうして生まれたのがこの"かーくん"である。

 8歳で血統因子の全てを網羅し、10歳でレイドスーツを作り出した天才児ゴジと、彼の科学力は人類が500年かけて到達する域と言われる頭脳を持つ天才科学者ベガパンクとの出会いはさらに約1年前に遡る。 
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