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大久保の仕切り

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第一章

                大久保の仕切り
 大久保利通は好かれている人間ではなかった、山本権兵衛は周りにぼやいた。
「吉之助さあと一蔵さあは全く違う」
「それはそうですね」
「西郷さんは本当にいい人です」
「仕事をするといつも凄く褒めてくれます」
「それも満面の笑顔で」
「だから吉之助さあに仕事が終わったと言う時わしも足が弾む」
 山本にしてもというのだ。
「些細な間違いは言わないでな」
「西郷さんの方で何ともしてくれて」
「仕事をやったことを褒めてくれますからね」
「だから西郷さんに迷惑をかけない」
「そう思って仕事に励みますね」
「ところが一蔵さあは違う」
 次に大久保のことを話した。
「仕事を終えて持って行くとだ」
「にこりともされず」
「もうここが駄目そこが駄目で」
「もう駄目出しばかりで」
「仕事が増えますね」
「いつもそうなりますね」
「あの人は厳しい」
 優し過ぎるまでに優しい西郷と違ってというのだ。
「しかも言っていることに間違いがないからな」
「余計に怖いですね」
「大久保さんはそうですね」
「そうした人ですね」
「そう、わしも薩摩の人間だが」
 二人の同郷だがというのだ。
「あんな怖い人はいない」
「全くですね」
「あの人は怖いですね」
「喋らないし威厳があって」
「あんな怖い人はいないですね」
 周りも言うことだった、兎角大久保は恐れられていた。
 それは大久保が動かしている内務省でもだった、支族授産の話が出た。
 士族かつての武士達は俸禄がなくなり暮らしに困っていた、それで政府としても決めたのである。
「士族達に仕事を与える」
「そうしますか」
「では開拓等を行わせますか」
「蝦夷地即ち北海道の開拓も」
「そちらもしますか」
「士族達に色々な仕事を与えてだ」
 大久保は鋭い顔で言った。
「そして暮らさせてな」
「士族の生活を支え」
「そして不満をなくしますか」
「そうしますか」
「さもないと乱を多く起こす」
 生活に困り不満を抱えた士族達がというのだ。
「だからだ」
「ではすぐにですか」
「それを朝議でも言われますか」
「その様にされますか」
「そうする」
 大久保の返事は一言だった、そしてだった。
 この士族授産のことが決まった、だが。
 内務省にいた官の一人である速水堅曹はその話を聞いて言った。 
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