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先輩の為にやっていく

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第五章

「あんたが付き合っている人は凄くいい人ね」
「先輩はそうよ」
「何かしたら笑顔になってくれる」
「そうした人よ」
「そうした人とお付き合い出来るだけでも」 
 それだけでもというのだ。
「いいことなのよ」
「そうなの」
「世の中色々な人がいてね」
 それでというのだ。
「その人に何かしても笑顔どころか感謝もね」
「しない人もいるの」
「お母さんのお友達が付き合った人なんてね」
 母は娘に微妙な顔になって話した。
「そうして作ったものがどんな味でもね」
「笑顔にならないの」
「もう甘いとか辛いとか文句ばかりで」
 娘に嫌そうな顔で話した。
「何かしても感謝しないでね」
「文句ばかりなの」
「そうした人で付き合ったけれど」
 それでもというのだ。
「すぐにね」
「別れたのね」
「ちなみにその人は後々働かないで図々しくて尊大で大飯喰らいで恩知らずでっていう人になったわ」
「何か最低の人っぽいわね」
「最低過ぎて誰からも見放されて」
 その人のことをさらに話すのだった。
「今じゃ行方不明よ」
「そうなの」
「だって何かをしても文句ばかりなのよ」
 感謝なぞ一切せずにというのだ。
「それじゃあね」
「誰も愛想尽かすってことね」
「そう、そんな人と出会うよりも」
「いい人と出会った方がいいわね」
「それだけでもひかりはいい思い出を作って」
「財産もなのね」
「作ったわよ」
 そうなったというのだ。
「よかったわね」
「そうなのね」
「ええ、笑顔を観られる」
「そのことは大きいのね」
「それだけでね、じゃあこれからもね」
「先輩とお付き合いして」
 そしてとだ、ひかりも言った。
「先輩の為になのね」
「何かをしてね」
 そうしてというのだ。
「いいわね」
「ええ、それは一生懸命で」
「それでね」
「そのうえでよね」
「笑顔になってもらって」
「その笑顔をいい思い出、心の財産にするのね」
「そうしていくのよ、折角いい人に出会えたから」 
 それだけにというのだ。
「いいわね」
「わかったわ」
 ひかりも笑顔で応えた、そうして翌朝海斗の為にまたお弁当を作った。そしてお昼に彼の笑顔を観て再び心の財産を得たのだった。


先輩の為にやっていく   完


                 2021・3・14 
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