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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第六十五話

 五老星との話し合いの終わったその日の夜、ゴジはロビン達を連れて海軍船に戻り、甲板に部下を集めた。


「皆、人工降雨船の捜索と拿捕お疲れ様。本当に助かったよ。紹介しよう彼女の名前はニコ・ロビン、バロックワークス副社長をしている。司法取引に応じた彼女に協力してもらってバロックワークス全員を拿捕する。」


 ゴジの紹介を受けて隣で待っていたロビンが挨拶する。


「ニコ・ロビンよ。バロックワークスは社長、幹部の正体すら完全に秘密の組織だから、未だに社長や幹部が捕まった事を知らないの。そして仕事の司令は全て私が出していたから、私の司令で今バロックワークスにいる全てのエージェント及び社員を誘導可能よ。」


 第二部隊の海兵達はロビンの話を時折相槌を打ちながら真剣な顔で聞いている。

 ロビンは自分への警戒を緩めない第二部隊の海兵達を見渡しながら、当然と反応と思いながらも少し寂しく思う。
 

「なるほど……ニコ・ロビンが誘導してきたバロックワークスの社員を待ち伏せた私たちが各個撃破ってわけね。ヒナ納得。」

「キャハハハハ!腕が鳴るわ!」
 
「ふふっ…。流石は海軍きっての精鋭部隊。迫力が違うわ。」


 ロビンは司法取引による恩赦の条件として、ゴジ率いる第二部隊への配属が決定している。

 僅かな情報からアラバスタ王国へダンスパウダーが密輸されている事を突き詰め、たった一部隊による電撃作戦でクロコダイルを拿捕したこの海軍本部の精鋭部隊でやっていけるのかと不安になる。

 何よりも長年、人の顔色を伺って生きてきた彼女は明らかに自分が歓迎されていないのが伝わってくるが、どの組織に所属してもそうであったからこの空気には慣れていた。
 

「ところで……皆、準備は出来ているな?」


 ゴジの底冷えするような静かで透き通る声が響くと、船上の緊張感が高まる。


「「「はっ!」」」


 第二部隊の海兵達は居住まいを正して一糸乱れぬ敬礼をするので、ロビンはそんな部隊の雰囲気に一瞬で呑まれる。

 その所作のみで彼女はやはりこの部隊はゴジと共に多くの偉業を成し遂げてきた海軍本部でも本当に優秀な部隊なのだと思い知らされた。


「駆け足!!」

「「「応っ!」」」


 ゴジの合図で第二部隊の海兵達は甲板の裏手や船室へ駆け込んで行った。


「一体これから何が行われるの!?」
 

 ロビンは甲板の裏手や船室から出てきた海兵達が手に持つ色とりどりの料理が乗った皿の数々や、冷えたエールが並々と入ったジョッキグラス等が次々と運ばれてくる光景に唖然となる。


「えっ……!?」


 エールとは、この世界におけるビールのことである。


「決まっているだろう。皆、準備は出来たかああああ!?」

「「「おおおぉぉーーっ!!」」」


 ロビンはニヤリと笑うゴジの顔を見てから、第二番隊の海兵達を見渡すと海兵達も全員ゴジと同じように笑って手に持ったエールが並々入ったグラスをロビンに向かって掲げる。


「准将、エールです。」

「ありがとう♪」

「ロビンさんも…はい♪」

「あっ…。」
 

 ゴジはカリファに渡され、ロビンはコアラに半ば強引に押し付けられるようにそれぞれ冷えたエールが並々入ったグラスを渡されると、ゴジは横に並ぶ驚いた顔を浮かべているロビンの方を向いてグラスを天高く掲げる。

 ロビンはグラスを上げろとジェスチャーされている事に気付いて、おずおずと自分のグラスを掲げる。
 

「俺たちの“新しい仲間”にかんぱあぁぁい!!」


 ゴジが自分のグラスをロビンのそれにぶつけたことで、発生するカンッ!という景気の良い音と共に、第二部隊の全員がロビンに向けてグラスを掲げる。


「「「かんぱあぁぁい!!!」」」

「えっ…!?」
 
「「「ロビンさぁ〜ん。ようこそ!!」」」


 ロビンはゴジに「これから君を皆に紹介する。」とだけ言われて来たのだが、紹介してすぐに歓迎会。それに甲板に無造作に並べられた色とりどりの料理の数々はどう見ても事前に準備していたものと分かる。


「どうしたロビンちゃん、君の歓迎会なのに主役がそんな顔してちゃダメだろ。ほら笑って笑って!」

「歓迎会…?私の……?」

「くくくっ!サプライズってやつだ。大成功だな……ほら、皆…君と話をしたがってる。俺が主役を独り占めしてちゃ、ドヤされるから行ってあげてよ。ほら!」


 ロビンは自分を守ると言ってくれたゴジに背中を押されると、彼女は手に持ったエールを零さないようにするのが精一杯で足をもたつかせながら、気付けば彼の・・仲間達の輪の中に放り込まれた。


「ほらほら〜ロビンさんもいっはい飲んで飲んで♪」

「えぇ。ありがとう。私、てっきり警戒されているのだと……。」


 ロビンは、真正面に立つコアラに顔を覗かれる。


「ふふっ。貴女の事は事前に皆知ってて気丈にふるまう貴女に同情してただのよ。ここには貴女の事は害そうとする人は一人(・・)を除いていないわよ ヒナ注意。」

「ヒナ、その一人っていうのは、CP-0(シーピーゼロ)出身の私のことかしら?」


 ヒナもロビンに近付いて笑いながら話し掛けると、ヒナの言葉を聞いていたステューシーが澄まし顔で話題に入ってくる。

 第二部隊の海兵達は、ロビンが賞金首になった経緯や司法取引で恩赦が与えられて第二部隊に入る予定である事を既に知っていた。

 そして五老星の説得を終えたゴジが帰ってくるタイミングに合わせてサプライズパーティが出来るように準備していたのだ。


「ふ〜んだ。誰も貴女とは言ってないわよ。」

「もうヒナったら…ニコ・ロビン、世界政府直轄サイファーポールの諜報員として貴女に言うべき事は一つだけよ。ゴジ君を裏切らないでね。それだけ守ってくれたら何もしないわ。」


 海軍本部に入隊して尚、サイファーポールとのパイプ役として世界政府と親しくしているステューシーと彼女を警戒するヒナとの関係はいつもこんな感じであるが、二人とも互いの実力は認め合っているので任務には支障がない。

 しかし、ステューシーのゴジ籠絡の任務が上手くいかないのは、いつもヒナやヒナの指示を受けた海兵達に妨害されているのも大きな原因である。

 ステューシーはロビンにサイファーポールとして世界政府の意向を改めて伝える。


「ええ……。私はゴジのファンだもの。彼だけは決して裏切らない。」


 ステューシーに言われなくとも、ゴジの優しさだけは裏切らないと心に決めていた。
 

「貴女の過去には私も同情しているわ…私も貴女を殺したくはないの……だから、私に貴女を殺させないでね?」

「分かったわ…。」
 

 ロビンは第二部隊に入ってからはステューシー付きの海兵見習いとなることが決定している。理由は言わずもがな監視を兼ねてである。


「ロビン、その女狐(ステューシー)に虐められたらすぐに言いなさいよ ヒナ注意。」

「ロビン、何もしないからその鉄面皮(ヒナ)の言う事なんて無視しなさい。」

「「何よっ!」」
 

 ヒナとステューシーは顔を付き合わせてガンを飛ばし合いながら、ロビンから離れて競うようにゴジの元へ向かって行く。
 

「皆、優しいのね…」

 
 ボソッと呟いたロビンの一人言をステューシーとヒナに変わって彼女に近付いて来たカリファが拾う。


「優しいですか……まぁ誰も…中将には敵いませんよ。貴女の過去を初めて聞いた時の中将の怒りは凄まじかったんですよ。」

「えっ…?」

 
 カリファは王宮でゴジがつると話していた内容をロビンに話聞かせると、ロビンはカリファの話を聞いて、リスのように頬を膨らませながら料理を食べているゴジを見つめる。


「もごもご……」

「ゴジ君、はいあぁ〜ん。」

「女狐に鼻の下伸ばしてないで、ゴジ君はこれでも食べてなさい!」

「もぐ……もごもご……。」


 ちなみにゴジは、ステューシーとヒナという海軍本部が誇る2大美女を侍らせて鼻の下を伸ばしながら、彼を誘惑しようとするステューシーとそれを阻止しようとするヒナが左右から差し出す料理を幸せそうに交互に食べていた。
 

「ニコ・ロビン、貴女に恩赦を与えたのは中将です。貴女が約束を破れば処分を受けるのは中将です。その事だけはゆめゆめお忘れなきよう。」


 カリファは“秘書”として仕える優しいゴジが言えない恩赦の裏話をあえてロビンに伝えた。五老星から自分に与えられたロビンの監視という任務をゴジをダシに使って実行した。

 たった一言で表向きの秘書としての仕事とサイファーポールとしての本当の仕事を両立させたカリファはどこまでも優秀な“秘書”であると同時にCP-9(シーピーナイン)の諜報員である。


「ええ……。分かっているわ…“秘書”さんは大変ね……」


 ロビンは当然カリファが”秘書”としてゴジの代わりに汚れ役を引き受けているということにのみ、気付いて軽く頭を下げるとカリファは笑顔で手を差し出す。


「好きでやってることです。私も貴女を歓迎していますよ。ニコ・ロビン。」

「よろしくね…」

 
 ロビンはカリファの手を握り返して手を離した直後、彼女に目掛けて無数の手が伸びてくる。

 言うまでもなく第二部隊の海兵達であるが、彼女達はこの船における海軍将校であるゴジ、ステューシー、ヒナ、カリファ、コアラ達のロビンとの顔合わせが終わったので、次は自分達の番だと我先に詰め掛けているのだ。

 
「あらあら…皆さん、もう待ちきれないようですから私も退散しましょう。こら中将、ちゃんと口の中の物を飲み込んでから、次の物を食べなさい!ステューシーとヒナも中将を甘やかさない!!」

もご(うん)。」

「「それは…この女狐(鉄面皮)が!」」

「ゴジ君は口に物を入れて話さない!貴女達も言い訳しない!!」


 カリファがロビンから離れて、ゴジ、ステューシー、ヒナの三人に注意しながら、ロビンの傍を離れていくと、彼女はあっという間に第二部隊の女海兵達に囲まれてもみくちゃにされていく。


「えへへ〜…ロビン、これからよろしくね〜!」

「ええ。よろしくね。」

 ︙

「ロビンって綺麗な黒髪ね…今度手入れの仕方教えてね♪」

「貴方も綺麗な髪で羨ましいわ…。」

 ︙

「ゴジ君は、あー見えて訓練はとっても厳しいから大変だよ〜♪ 頑張ろうね〜ロビン♪」

「ええ。頑張るわ♪」

 ︙
 

 ロビンは次から次に自分の名前を呼びながら、群がり手を差し出してくれる自分の“仲間”一人一人の手を取って、握手を交しながら言葉を交わす。

 それだけでは終わらず、抱き着かれたり、体のあちこちを触られたりともみくちゃにされているが、不思議と悪い気はしない。


「うふふっ!皆、よろしくね。」


 ロビンはこれまで経験から人の視線や殺気、負の感情を向けられる事に対して非常に敏感である。

 この船にいる人達からは自分に向けて一切負の視線や負の感情が含まれていないことにも気付き、このような経験が皆無の為に対処の方法が分からずマグロ状態でされるがままであるも、その顔には不器用な笑みが零れていた。


 ──サウロ…見てる?私…こんなにも沢山の“仲間”が出来たわよ。しかも…皆、貴方と同じ海兵なのよ……可笑しいわよね………デレシシシ♪


 自分の初めての友達が教えてくれた“仲間”という存在。

 ロビンは歓迎する“仲間”にもみくちゃにされて、楽しそうに笑っている彼女の様子を嬉しそうにゴジは眺めていた。

 
「彼女を救えてよかったな。」
 
「そうね。でもゴジ君、さすがに五老星に喧嘩を売るのはやりすぎよ。」

「あれは流石に肝が冷えましたよ。それに少将を飛び越えて中将に昇進とは……」


 ステューシーとカリファが五老星とゴジとの通話の話題を始めるとその詳細を知らないヒナが目を見開く。

 
「えっ……!?ゴジ君、五老星に喧嘩吹っかけたの?それに中将って何!?さっさと説明しなさいよ。ヒナ驚愕!」

「「「えっ!?中将!!?」」」

「だっはっはっはっ!!」


 ヒナの驚声を聞いた第二部隊の海兵達もゴジを見るが、彼は大きく口を開けて楽しそうに笑うだけで中々答えようとせずに皆ヤキモキする。


「もう……笑ってないで早く説明しなさいよ。」

「「「ゴジ君!」」」

「うふふっ。ここはほんとに楽しい所ね♪」


 こうして楽しい宴の夜は更けていく。この日、生まれて初めて"仲間"を得たニコ・ロビン。 

 ハナハナの実の能力者である彼女がこれまで唯一咲かすことの出来なかった『満天の笑顔の花』が咲き誇っていた。 
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