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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第六十四話

 つるとの通話を終えたゴジはその足で治療を終えて既に目が覚めているロビンに対して司法取引を持ち掛けた。


「司法取引。これが貴方の言ってた私を助けてくれる方法だったのね…?でも、私が懸賞金を掛けられた理由を知ってるでしょう?海軍はよくても世界政府や世界貴族が認めるとは思えないわ。」

「あぁ…。だから五老星の爺様達を説得する為に一つ協力してくれないか?」

「何をすればいいの?」


 ロビンはゴジの頼みを聞いて腰を抜かす程に驚愕することになる。

 
「実は俺に━━━。」

「えぇっ!?」

「ニッ……!!俺たちでいつもふんぞり返ってるあの爺様達をビックリさせてやろうぜ。」


 ロビンはイタズラ小僧のような年相応の顔をするゴジの顔を呆けたように見つめた後で、笑い出してしまった。


「うふふっ……あははははは!それは確かに見てみたいわね。」

「よし!じゃ、早速簡単なやつから頼むよ。」

「えぇ。任せて。」


 ゴジとロビンは五老星を説得?する為に2日を掛けて1通の手紙をしたためて海軍本部へ送った。


 ◇


 ゴジがロビンに司法取引を持ち掛けた2日後、センゴクとつるはゴジから渡された手紙を手にして五老星の元を訪れていた。

 案の定、司法取引の話をした瞬間に五老星の顔色が変わる。


「ニコ・ロビンに司法取引だと!?」

「そんなもの認められるはずなかろう!」

「司法取引等せんでもクロコダイルを有罪にする方法などいくらでもある。」

「何があってもニコ・ロビンへの恩赦だけは認めれん!」


センゴクとつるは一時間以上、必死で五老星の説得を行ったが、彼らは首を縦に振ることはなく、ニコ・ロビンへの恩赦は認められなかった。


「仕方ないねセンゴク。やはりゴジの手紙に賭けるしかないようだね。」

「あぁ。出来ればこれは出したくはなかったがな。」


 五老星達の強固な反応に対して、渋い顔をしながらセンゴクは懐からゴジからの手紙を取り出す。


「手紙じゃと?」

「五老星の方々、これは件のゴジ准将からの手紙です。どうかお読みください。」


 センゴクはゴジの手紙の内容は知らないが、あのゴジが普通の手紙を書いてくるとは思っていないので、出来ればこれを出すこと無く五老星を説得したかった。


「どうせ嘆願書か何かじゃろう……読んたところで結果は変わらんぞ。」


 五老星の一人、刀を持った丸坊主の眼鏡を掛けた老人は仕方なしにセンゴクの差し出す手紙を受け取り、封を開けて目を通す。


「なっ……これは!?」


 手紙を読んだ五老星の一人はあまりの衝撃に手に持った刀を落としてしまうので、ただ事ではないと他の五老星達も手紙を覗き込む。


「どうした?」

「わしにも見せい……何が書いてあるんじゃ?」


 一斉に手紙を覗いた五老星達の顔色が変わり、呆然となった。

 手紙にはこう書かれていた。


 “五老星の爺様達は元気かな?ニコ・ロビンへの司法取引を認めてもらいたい。俺はたとえこの世界が偽りの歴史で作られていたとしても今何も知らずにこの世界で平和に暮らしている人達を守りたい。真の歴史や彼らの“思想”、それに古代兵器がこの平和を揺るがすなら、俺の正義に賭けて誰であっても口外することは許さない。”


 ゴジの決意を記した直筆の手紙であるが、五老星達が驚いたのはその内容ではない。


「何故、“麒麟児”がこの文字を扱えるのだ!!」


 その手紙が歴史の本文(ポーネグリフ)に刻まれる古代文字で書かれていたからである。


『実は俺に古代文字を教えてくれないか?』


 ゴジがロビンに頼んだのは古代文字の習得であり、ゴジは僅か2日で文字が書けるまでに覚えてしまった。

 そして手紙の最後は古代文字でこう締められる。


 “古代文字を使えること自体が罪と言うなら俺を暗殺でもしてみますか?”


 五老星達はゴジの手紙を見て頭を抱えるしかない。物理的にもサイファーポール最強のロブ・ルッチでもゴジには適わないので現実的ではなく、さらに暗殺出来ない理由は他にもある。


「まさかこの短期間にニコ・ロビンに習ったのか?」

「しかし、この文字は数日で覚えられるようなものではないはずじゃ。」

「いや、“麒麟児”は“世界最大の頭脳を持つ男”Dr.ベガパンクが唯一天才と呼ぶ頭脳の持ち主だ。可能であろう。」

「あの子は四皇に対する最大の備えとして育ててきたのだ。今更失う訳にはいかん!」

「やられたのぉ。”麒麟児”は自分の利用価値を分かった上で古代文字を覚えたか!?」


 ゴジを暗殺出来ない最大の理由は彼は今や世界の希望であり、未だ成長期真っ只中の子供にも関わらず、とうとう王下七武海クロコダイルを追い詰めて無傷で拿捕できるまでになった男を失うリスクは犯せない。

 五老星達はゴジならば新世界に我が物顔で君臨する四皇をも拿捕出来ると信じてステューシー、カリファを傍においてこれまで成長を見守り、手助けしてきたのだ。


「それにあの国は間違いなく“麒麟児”に付くぞ。」

「ジェルマ王国か……あの強大な軍事力が世界政府と敵対すれば間違いなく均衡が崩壊する。」


 四大勢力の一つで偉大なる航路(グランドライン)以外の四海を守護するゴジの実父ヴィンスモーク・ジャッジの治めるジェルマ王国が世界政府の敵となるのは脅威でしかない。


「五老星の方々、くだらない理由で私の大切な部下に手を下すというなら、私はこの場でこの海軍コートを脱ぎ捨てる覚悟くらいあるぞ。」


 センゴクは覇王色の覇気を発しながら五老星達を睨み付ける。


「あたしもそん時はセンゴクに協力するさね。おそらくあたしらだけじゃない。海軍からも多くの離反者が出るだろうね。」


 五老星達はセンゴクとつるの決意に溜息を吐く。

 若い海兵の中にはゴジに憧れて海兵になったものは多く、さらに古参の海兵も幼い頃から”体現する正義”の実現の為に努力し続けた彼の姿を見て多かれ少なかれ親心のような感情を抱いている。


「二人とも早まるな……そんな事は分かっとる。“麒麟児”本人と話がしたい。」

「これはゴジの電伝虫です。いつでも出れるように待機しています。」


 五老星がゴジとの直接通話を要求すると、センゴクはゴジの電伝虫を差し出す。


「やれやれ“麒麟児”はこうなる事も予想済みか。」


 全てゴジの掌で躍らされている事に気分を害しながらも五老星の一人が受け取った電伝虫の受話器と取ってを鳴かすと、ワンコールでゴジが受話器を取る。


『もしもし。』

『“麒麟児”だな?』

『えぇ俺ですよ。五老星、手紙は読んでくれましたか?』


 仮に世界政府が古代兵器の復活を考えていた場合、世界政府側にも古代文字を読める人物が必要となる。

 だからゴジは五老星ならば古代文字を読めるはずだと確信した上で古代文字で書いた手紙を送ったのだ。


『やってくれたな?』

『なんの事だか。俺はただ習いたての文字で手紙を書いてみたかっただけですよ。それで、ニコ・ロビンへの司法取引を進めても問題ないでしょうか?』


 ゴジからすれば、五老星から通話が来た時点でロビンへの恩赦を勝ち取ったようなもので、声に余裕が見て取れる。


『手紙の内容を読む限り、ニコ・ロビンから聞いたのは文字だけでないな?』


 世界政府が恐れているのはかつて存在した古代文明が掲げる“思想”、そして世界の均衡を崩壊しうる古代兵器の存在である。

 ゴジの手紙からはそれを示唆するような“思想”、古代兵器という言葉も並んでいた。


『さぁ……ご想像におまかせします。でも、俺の決意は変わらない。誰が相手でもこの海の平和は俺が守るから、背負わなくていい罪を背負わされたロビンちゃんをさっさと解放しろよ!』


 五老星は電伝虫を通してでも伝わるのではないかと誤認する程の覇王色の覇気を感じて息を飲む。


『たった一人の女の為にワシら五老星を脅すとは大した胆力だ。一つだけ条件がある。』

『条件ですか?』


 五老星達は一度言葉を区切り、視線を交わして全員が首を縦に振る。

 彼らはゴジが成人した暁に、彼に指示しようと思っていた極秘任務をニコ・ロビンの恩赦を認める条件にする事を決意した。


『わしらは近々王下七武海制度の撤廃を考えとる。“麒麟児”、貴様はアラバスタ王国での残党狩りが終わり次第、残る王国七武海6人を視察して政府と敵対する恐れのある者から権限を剥奪し、これを拿捕しろ!」

『なっ……!?』

「「なっ……!?」」


 流石のゴジもこれは予想外で息を飲み、センゴクとつるも同様に驚いていたが五老星は説明を続ける。


『この任務を受けるならば、貴様を信用して監視のためにニコ・ロビンを海軍に入隊させて貴様の指揮する部隊に所属させることを条件に恩赦を認めていもいい。』

『元々、王下七武海制度に不満を持つ者が多い。ジェルマ王国が力を付けた今、もはや王下七武海は必要ない。』

『だが、王下七武海の中でも我らに従う者にはこれまでの働きに免じて恩赦を与えてもよいが、奴らは所詮海賊、信用ならん。』

『ならばお前の信じる正義で奴らを見極め、お前の正義に反するならばクロコダイルのような証拠もいらん。海賊(王下七武海)を速やかに拿捕せよ。』

『お前は誰が相手でもこの海を守ると言ったな。王下七武海ならば相手にとって不足はなかろう?』


 彼等は四皇という海賊達を滅ぼす為の布石として幼いゴジの為にステューシーを派遣し、ゴジを鍛え、彼は見事に五老星の期待に応えて歴代最高の六式使いとなり、王下七武海クロコダイルを仕留めるまでに至った。

 ならばもう必要のなくなりつつある王下七武海との戦いを積ませることで、彼等を拿捕すると共にゴジを四皇と戦えるまでに成長させようと五老星は考えている。
 

『はっ!その任、謹んで拝命します!!』


 ゴジもロビンの恩赦以上に五老星に与えられた任務の重さを十分に理解し、受話器越しに姿勢を正して任務を拝命する。


『最後にゴジ、貴様自身に対する報酬だ。“砂漠の王”サー・クロコダイルの拿捕の功績より、世界政府最高機関“五老星”の名において貴様を海軍本部中将への昇進を認める!!」

『”麒麟児”……最初に聞いた時は12際の子供には大層な二つ名だと思ったが、麒麟の落とし子はとうとう我ら()に噛み付くに至った。』

『確か海軍には色と動物を合わせた二つ名を付ける風習があったな。』

『この子に戦い方を教え、海軍に入れたはかつての海軍大将”黒腕”のゼファー。』

『ならばゴジ、貴様は今後”黒麒麟”を名乗れ!』


 五老星はその知略で自分達を負かしたゴジを竜に比肩しうる麒麟と認め、育ての親と呼んで相違ない“黒腕”のゼファーから“黒”の字と合わせた二つ名を送った。

 天竜人と呼ばれる世界貴族の多くは世界貴族では無い者を下々民(しもじみん)と呼んで見下しているが、世界貴族の中でも常識人である五老星はそれに当てはまらず、クロコダイルを拿捕した武力と一人の女を守る為に知力で自分達を唸らせたゴジを正当に評価した結果である。


「なっ!?少将ではなく、二階級特進の中将だと!?それに五老星自らが二つ名を与えるとは……。」

「あぁ。どちらも歴史上初だよ。それに王下七武海制度の撤退とはね。ゴジに与えられた任務の重要性は想像を絶する。」


 五老星自らから二つ名を与えられ、少将を飛び越えて中将に昇進した海兵は海軍史上ゴジが初めてである。


『海軍本部中将”黒麒麟”。ありがたき幸せ。どちらも若輩の身に余る光栄ですが、その名に恥じぬ活躍ご期待ください。』


 先程とは打って変わったゴジの丁寧かつ凛とした声に対し、最後に五老星達は期待を込めて声を揃えて彼に激励を送る。


『『『『『”黒麒麟”、これは世界存亡を賭けた任務である。必ずやり遂げてみせよ!』』』』』

『はっ!絶対的正義の名のもとに!!』


 受話器越しにやる気に満ちた正義を誓う声が五老星のいる部屋に響き渡った。


 ◇


 ゴジが敬礼と共に受話器を置くと、アラバスタ王国の宮殿に与えられた執務室にいる呆気にとられているステューシー、カリファ、ロビンの三人の顔を見てにこやかに笑う。


「よし。ロビンちゃん、うちの部隊には入ってもらう事になるけど、これで無事に懸賞金は撤廃されるよ。」


 ゴジがロビンを監視することを公言するにあたり、事前に海軍への入隊もしくは世界政府直下の組織への加入が条件になるだろうことを伝えていた。


「え……えぇ。麒麟じ……いえ、“黒麒麟”さん、ありがとう。」


 ゴジは笑顔でロビンに語りかけるが、ステューシーとカリファが詰め寄る。


「いやゴジ君もニコ・ロビンも問題はそこじゃないわよ。」

「そうですよ!准しょ……いや中将。今、五老星達に何を言われたのかご存知なのですか?」

「はははっ。二人ともまずは無実のロビンちゃんが無事に罪から解放された事を喜んで、バロックワークスを壊滅させるのが先決だよ。そうだろう?」


 自分のやるべき事を見失わないゴジを見て、この後に五老星から小言を言われる未来が確定しているサイファーポールの二人は深い溜息を吐いた。


「「そりゃそうだけど……はぁ……。」」


 なお、ステューシー及びカリファに五老星から秘密裏にロビンの行動監視と条件違反時の誅殺が新たな任務として言い渡されたのは言うまでもない。 
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