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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第六十二話

 《Side ロビン》


 クロコダイルに手錠を嵌めた麒麟児さんは、にこやかに微笑みながら私の元へ歩み寄ってくる。


「ロビンちゃん、終わったよ。俺が油断したばかりに君に怪我をさせて、申し訳な……」


 彼は私の元へ来た途端、膝立ちになるのでまた謝罪するつもりだと気付き、彼が手を地面に着く前に正面から抱き締めた。


「えっ…? ロビン…ちゃん?」

「“麒麟児”さん…私を助けてくれてありがとう…。」

 
 私からクロコダイルを助けてくれた事、毒で死にそうだった自分を助けてくれた事、応急処置をしてくれた事全てに対して感謝の気持ちを伝えた。


「あぁ…そうだな……。ロビンちゃん、俺を庇ってくれてありがとう。助かったよ。」


 麒麟児さんも私が謝って欲しい訳では無いことに気付いて、私を抱き締め返してくれて礼を言われた。

 びっくりして心臓が飛び出そうなくらい驚いたけど、なんとか平静を装う。


「ふふっ。どういたしまして。」
 
「そろそろ事前に手配したアラバスタ王国軍が来るはずだから、ちゃんと治療しないと、女の子だから傷が残らなればいいが…。」
 

 そうか。彼はクロコダイルを初めから拿捕するつもりだったから事前に戦いが終わったタイミングで援軍を呼んだのね。

 戦闘中に来ても私のように足手まといだもの。


「うふふっ…別に気にしないわよ。」


 この傷は私の誇りだもの。

 サウロ…私ね、仲間には会えなかったけど、ヒーローには会えたわよ…。

 私の憧れた麒麟児さんは私の予想通りいえ、予想以上に素敵な人だったわ。


「それにこれ怒られないかな?」


 麒麟児さんはいたずらがバレた子供のように今なお地下水が溢れ出して溜まり続けている池を指差す。


「それは心配ないわよ。砂漠に湧く水は貴重だから感謝こそされるけれど怒られるはずないわ。それよりもねぇ、麒麟児さん」

「ん?」

「いえ……やっぱりなんでもないわ。」


 私は自分を捕らえるように彼に言おうとして言うのを止めた。だって答えは分かってるもの……

 オハラの罪に苦しむきっと貴方は私を殺すことも捕らえる事も出来ない。でも、私を見逃した事を世界政府や海軍の上層部が知れば、彼の経歴に傷がつく。

 なら、私は彼を救ったこの傷を誇りに海軍へ出頭するわ。

 
 《Side ロビンend》



 ゴジはそんなロビンの決意を知るはずもなく、ゴジに殺される決意を固めたあの時と同じように、また彼女の願いは届かないものとなる……。

 
「実は君を救う手立てが一つだけあるんだ。君の故郷や家族は蘇らせられないが、俺に君の17年間を取り戻す手伝いをさせてくれないか?」


 ゴジの話を聞いたロビンは目を見開く。

 ロビンはゴジが自分の懸賞金を無くしてやると言っていると理解しているが、自分に懸賞金を掛けたのは海軍ではなく、世界政府なのだからそんな事が可能である筈はないと分かっているからである。


「そんな事…出来るわけ…」

「俺を信じて欲しい。俺の正義に掛けて君を救ってみせるよ。ロビンちゃん。」


 ゴジは彼女の足に掛けている海軍コートの背中に書かれた”正義”の二文字が丁度彼女の太腿の上に見えているので、それを指差すとロビンも目線を落としてその”正義”の二文字を見つめる。


 “正義”


 そのたった二文字は世界の人々達にとっては希望の文字であり、同時に彼女にとっては8歳から今日までの17年間、自分が怯え続けていた二文字で自分には縁のないモノと思っていた。

 しかし、ロビンはゴジに言われて正義の二文字を見つめると、この二文字に対する恐怖が途端に薄れて何故か頼もしく思えてくる事に驚いている。


「貴方の正義?」

 
 ロビンはゴジの“体現する正義”は知っている。

 そしてゴジは身を粉にして多くの人を救い、救えなかった命にすら責任を感じてしまう優しい人が掲げるその正義は海賊達を決して殺さずに捕らえて罪を償わせるというこの世界においては茨の道である。

 しかしロビンはゴジならば茨の道も軽々と乗り越えていくだろうと信じている。
 

「無実の君が罪を背負うなんて間違っている。もう一度言うよ…俺の正義に掛けて必ず君を救ってみせる!!」


 ロビンは真剣な顔で自分の目を覗くゴジの燃えるように真剣な目を見て、出頭する決意や死を覚悟した自分の思いが一気に氷解していくのを感じる。


 ──あぁ……この人はなんて…狡いの…。


 (罪人)に土下座をして許しを乞い、罪人となった自分を救うと明言する目の前にいる変わった海兵に幼い自分と友達になって命懸けで救ってくれたサウロの姿を重ねて、彼が最後に自分に送ってくれた言葉を思い出す。
 

『いつか必ず…“仲間”に会えるでよ。海は広いんだで! いつか必ずお前を守ってくれる“仲間”が現れる!!』


 ロビンは海軍コートの“正義”の文字を見つめながら、その“正義”の二文字を指でゆっくりとなぞっていくと、だんだん涙で視界がボヤけてくる。


 ──そんな事言われたら…私は……私の本当の願いは…。


「私を守ってくれるの……? ぐずっ…ううぅ…わだじ…生ぎで…いいの……?」
 

 ロビンは顔を伏せて正義の二文字の上に大粒の涙をポタポタと零しながら、8年間誰にも言えなかった自分の本当の願いを初めて口に出した。

 8歳で懸賞金を掛けられたロビンにとって毎日が地獄で、命を狙われ、片時も自由なんてなかった。


 ──自由に生きたい!


 誰も生きる事さえ許してくれなかった。

 
 ──毎日死に脅え続けていた…安心してゆっくりと眠りたい!

 
 夜は小さな物音一つで飛び起きる毎日。ゆっくり寝れたた日は一度たりともない。


 ──私を守ってくれる仲間が欲しい。
 

 目の前に自分の過去を知っているにも関わらず、守ってくれると言ってくれる亡き友サウロと同じ心優しい海兵がいる。


「君は生きていい。この海に生きていちゃいけない人間なんていないんだ。何が来ても俺が守るよ。」


 ゴジは目の前で泣いている女の子の涙を止めるために優しく抱き締めた。


 ───俺が泣いてる時によく母さんがこうやって抱き締めてくれたな。

 ───そういや……サンジ兄さんに慰められた事もあったな。

「うわああああぁぁぁん!!」


 ロビンはこうやって誰かに抱き締められたのは、自分の母が死ぬ直前にたった一度母に抱き締められたのが最初で最後だった。

 そして、彼女が他人前でこうやって人目もはばからずに声を上げて涙を流すのも、あの悪夢の日以来である。


 ───狡い人……私の浅はかな考えなんて軽く踏みにじっていくのね。
 

 ロビンの偽りの願いである自身の殺害と出頭を二度も踏みにじってきたゴジは、彼女が持つ本当の願い自由に気付いていた。
 

「“絶対的正義”いや、この俺の“体現する正義”名の下に絶対に君を守ってみせる。」

「う”ん……う”ん……」


 ゴジはあえて海軍の掲げる絶対的正義ではなく、己の正義に掛けてロビンの自由を体現してみせるという想いを伝える。


「うわああああぁぁぁん!!」


 ゴジは17年分の涙を流すロビンを優しく抱き締め、彼女の頭を撫でながら想いを受け止めた。


 ◇


 しばらくしてアラバスタ王国軍がゴジの元に到着すると、軍を指揮する護衛軍副官チャカがゴジへ進み出てくる。


「はじめましてゴジ准将!私は護衛軍副官チャカと申します。アラバスタ王国軍1000名、只今到着しました。コブラ王より准将の指揮に入るように言われております。」
 

 ゴジはやる気満々のアラバスタ王国軍の面々を見ながら絶対勘違いしている事に気付く。

 
「あ〜チャカ殿、もしかして俺とクロコダイルとの戦いってここへ来る途中に見えてたのかな?」

「それはもう……巨大な砂の巨人と天空を舞う巨龍との戦いで特に一番直近の街であるレインベースでは大騒ぎです。それでクロコダイルは何処に?」


 ゴジは両腕に海楼石の手錠を嵌めれて延びているクロコダイルを指差す。


「クロコダイルはすでに捕えてあそこにいる。海楼石の手錠を付けてるから悪魔の実は使えないけど、護送は気をつけて欲しい。それと少し声のボリュームを落としてほしい。彼女が寝てるんだ静かにしてくれ。」
 

 ゴジは頭の後ろと膝裏に両腕を入れて抱く…いわゆるお姫様抱っこをしているロビンに目線を移す。

 ロビンはアラバスタ王国軍が到着する前に泣き疲れてそのまま寝ってしまった


「すぅ…すぅ…」

「えっ…もう戦いは終わったのですか!?「しぃ〜…」す…すみません。我々はゴジ准将がクロコダイルを討伐する時の援軍と聞いてきたのですが…。」


 ゴジが静かに話すように人差し指を口元に立てるジェスチャーを受けて、チャカは小声で話す。

 コブラはゴジと協力してクロコダイルを討伐する為にアラバスタ王国軍でも精鋭部隊をチャカに預けたのだ。

 ゴジはやはりと思いながら、ロビンを起こさない程度の声量でチャカに本当の任務を伝える。
 

「やはり…勘違いしているな。俺がコブラ王に頼んだのはクロコダイルの"討伐の手助け”ではなく、"移送の手助け”だ。」

「なっ…!?」

「俺はこの通り両手が塞がってるんだ。そんな事より彼女を治療をしたい。衛生兵は何処だ?」
 

 ゴジは母の治療を経て、医学にも精通している為、傷口の縫合等は朝飯前だ。

 チャカは既に王下七武海クロコダイルを倒し、それを誇る事もなく当然のように話す“麒麟児”と呼ばれる男と自分との格の違いを思い知らされると同時に犯罪者の拿捕よりも、美女の治療を優先する姿にもう一つの異名の意味もよく理解出来た。


「っ…!?は…はいっ!おい、衛生兵は准将の元へ。他は私と共に来い。海賊サー・クロコダイルの護送の準備に移れ!!」

「「「はっ!」」」


 チャカは呆気に取られながらもテキパキと部下に指示を出した後、ゴジの背後に広がる広大なオアシスに気付く。


「こんな所にオアシスがあったとは……。」

「あぁ……それ俺とクロコダイルとの戦いの余波で出来ちゃったんだ。いらなきゃ埋めといてくれると助かる。」

「「「はぁ?」」」


 なんでもない事のように言うゴジを見て、チャカだけではなくアラバスタ王国軍も全員唖然となる。

 雨が少なく、砂漠の大地が広がるアラバスタ王国においてオアシスは生命線であり、全ての街はオアシスがある場所に作られているのだ。

 それを戦いの余波で作り出したクロコダイルとゴジの規格外さに理解が追いつかない。


「衛生兵ようやく来たか。では、チャカ殿後は頼むよ。」

「りょ……了解です。」


 ゴジはチャカから指示を受けた衛生兵二人が担架を持って駆け寄って来るのが見えて肩を撫で下ろして彼らに近づいていく。


「准将、怪我人をお預かりします。」

「いや…すまない。このお姫様はこのまま俺が運ぶよ。絶対に守ると約束してるんだ。救護テントまで案内してくれるかい?」

「はっ!ではこちらに。」


 ゴジは笑顔で担架を持って来た衛生兵の申し出をやんわりと断った後、ロビンを抱きかかえたまま衛生兵の後について行き、特設で組み立てられていたテントに案内される。


「俺が彼女の手当をする。医療道具を貸してくれないか?」

「准将自らですか?」

「あぁ。心得はある。補助を頼みたい。」

「「はっ!」」


 チャカ達は無事にクロコダイルを引き上げて王都へ向けての移送準備を始めて、ゴジはロビンが目覚めないように自らの毒の能力で麻酔を作って彼女に投与してから、王国軍に借りた治療器具で彼女の傷口を縫合した。


「ふぅ……縫合終了。二人とも補助ご苦労さま。」

「すごい。」

「こんなに速く正確な縫合見たことが無い。」
 

 ゴジは呆気に取られる衛生兵に軽く礼を告げ、治療を終えたロビンを簡易医療テントのベットに寝かせた後でつるに連絡を取るための電伝虫を取り出す。 
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