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ジェルマ王国の末っ子は海軍大将

作者:蒼たん
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第二章 青年期
  第六十一話

 ロビンはゴジの腕に抱かれたまま、自分を庇いながら戦うゴジを見て一人呟く。


「雨でも降ってくれれば……。」


 ゴジはロビンの声を拾い、砂の巨神を見据えたまま話し掛ける。


「ん?ロビンちゃん、雨って言った?」

「砂は水に濡れるとサラサラにはなれないでしょう?砂人間であるクロコダイルは水に濡れると砂になれない。彼にとっては水は天敵なの。」


 ロビンの言葉にハッとなったゴジはちらりと先程クロコダイルが砂漠の向日葵(デザート・ジラソーレ)で作り出した流砂を見てほくそ笑む。


「スナスナの実にそんな弱点があったのか?ありがとうロビンちゃん、この戦い勝てるよ。生命帰還解除!!」


 巨神となったクロコダイルは黒髪に戻ったゴジを見て笑いながら、宣言通りに振り上げた両手を振り降ろした。


「クハハハハ!諦めたようだな“麒麟児”!?確かに俺は水が弱点だが、この砂漠の何処に水がある?雨が欲しいなら俺が砂の雨を降らせてやろう!“砂漠の雨(デザート・ジュビア)”!!」


 巨神は両腕を何度もゴジとロビンのいる地面に目掛けて砂の雨が降るが如く何度も振り下ろす。


「電光石火!!」


 ゴジは砂の拳が振り下ろされた直後、超高速で移動してロビンを抱きかかえたまま流砂に飛び込んだ。


「クハハハハ……そうか!砂の拳で潰されるて死ぬよりも女とともに砂の棺桶での心中が望みか?それはいいクハハハハ!」


 ゴジとロビンがそのまま流砂の中心に飲み込まれていく様を見て拳を振り下ろすのを止めたクロコダイルは高笑いをする。


「ロビンちゃんは俺を信じてくれるかい?」


 ゴジは心配そうに自分を見つめるロビンに優しく語りかけるとロビンはゴジの首に手を回してしっかりと抱き着く。

 ゴジが流砂に飛び込んで何をしようとしているのか検討がつかないが、彼の声音には絶対の自信が感じられてロビンの中にある不安は一気に吹き飛んだ。


「っ……!?えぇ。あなたを信じるわ。」


 クロコダイルが高笑いする中、ゴジとロビンはそのまま流砂に飲み込まれてしまった。



 《Side ゴジ》


 流砂とは地下水脈に引き釣りこむ蟻地獄のようなもので、一度飲み込まれたら這い上がってはこれないクロコダイルの砂漠の棺桶って表現は言い得て妙だな。

 俺はロビンちゃんの体を砂から守るように海軍コートを頭から被せてしっかりと抱き締めたまま砂の流れに乗って砂に引き釣りこまれていくと、とうとう地下水脈に辿り着き、俺たちは瞬く間に地下水脈の激流に飲まれていった。


「ん”、ん”ん……。」

「大丈夫。ロビンちゃんは絶対離さない。」


 水がある悪魔の実の能力者は水中では身体の自由が奪われるから、力の抜けた体で息が出来ずに苦しそうな顔をするロビンちゃんを離さないようにしっかりと左腕を彼女の腰に回す。


『いい?ゴジ君、私も魚人柔術は得意じゃないけど、魚人空手と同じで水の制圧っていう極意は変わらないのよ。魚人柔術を極めれば海流を自在に操ることだって出来るのよ。』


 分かってるよコアラ。


「魚人柔術 水心!」


 俺は右手一本でこの地下水脈の”水”を右手でがっしりと掴む。

 あとはこれを地上に引っ張りあげるだけだが、片手しか使えない今の俺にこれを地上までぶん投げる力があるのか?

 そういやガキの頃、柔術を教えてくれたカリファによく言われたな。


『いでっ!?なんで力は俺の方が上なのに柔術の訓練では全然カリファに勝てないんだ?』

『ゴジ君!柔術は力に頼りすぎてはダメ。力の流れ読んで相手の力をコントロールしてやれば、力の劣る私でもこんな風にゴジ君を釣り手一本で投げることも出来るのよ。』


 そうかこの右手は地下水脈の”水心”を掴む釣り手だ。

 簡単なことだよな。俺は地下水脈の力をコントロールしてただこの激流を上にズラすだけでいい。コイツをぶん投げるのに余計な力は要らなかったんだ。


「ロビンちゃん、すぐに地上に上がるからもう少しだけ頑張ってくれ。“魚人柔術 水流釣り手一本背負い”!」


 俺は”水”を掴んだ右手一本のみで地下水脈を落ちてきた穴に向けて思い切りぶん投げた。


「ははっ。出来たぞ。コアラ、カリファありがとう!!待ってろよ!クロコダイル!!」


 俺は魚人柔術の心得を教えてくれたコアラと柔術を教えてくれたカリファの二人に感謝しながら、地上へ続く地下水脈の水流に乗った。


 《Side ゴジend》



 クロコダイルはゴジとロビンが完全に流砂に飲み込まれたのを見て、巨神となったまま体を反転させてレインベースに向けて歩き出した。


「海軍の援軍が来る前にこの国を潰して“プルトン”だけでも手に入れてやる!!」


 “神”の名を持つ古代兵器プルトンとは一発放てば島一つを跡形もなく消し飛ばすことができる世界の勢力図を一気に塗り替えると思われる破壊力や軍事力を持つ海軍も海賊もこぞって追い求めている人類史上最悪の戦艦である。

 クロコダイルはそのプルトンへの手掛かりがアラバスタ王国にある事を突き止め、プルトンの在処を書き記した石碑を解読することの出来るニコ・ロビンと手を組んでこの国の乗っ取りを計画したのだ。


「なんだ!?この地鳴りは……まさかっ!!」


 クロコダイルはゴジとロビンが流砂に飲み込まれた直後に突如、揺れだした大地を見て嫌な予感が頭をよぎる。


「クロコダイル帰ってきたぞぉぉおおお!!」


 ゴジの声と共に流砂の中心から間欠泉のように水柱が巨神の身長よりもさらに天高く吹き出した。


「なっ……”麒麟児”!?それはまさか地下水脈!!」

「クロコダイル、お前が砂の巨神なら俺は……”魚人柔術 水流とぐろ固め”!」


 ゴジはロビンを左腕で抱えたまま水柱の突端に立ち、右手で捕まえた水流を操り、とぐろを巻く巨大な蛇のように固めていくと打ち上げられた水流は空に舞う龍のように天空を漂う。


「水の龍だと!?何故、能力者であるはずの”麒麟児”が水を操れる?」


 クロコダイルは能力者と信じているゴジが地下水脈を自在に操っている様を見て固まってしまうが、重力に逆らえないゴジは水柱と共に重力に従って落下していく。


「この水龍は灼熱の砂の大地を潤す水神様だ!”六・六式(ダブル・ロクシキ)魚人空手 水龍爆布(すいりゅうばくふ)”!!」


 ゴジは落下が始まった直後に右手に爆発の能力を宿した拳で足元の水龍を殴り付けた。


「くっ……!?止めろぉぉおおお!!」


 拳が水柱に触れた瞬間に巨大な水龍となった水柱は大爆発して砂の巨神がいる場所を中心として付近一体の砂漠を覆うほどの大雨をもたらした。


「へへっ。ロビンちゃん見えるか?砂の巨神が崩れていくぞ。」


 雨に打たれた巨神の体はボロボロと崩壊を始めていく。


「はぁ……はぁ……すごい!!この晴れ空に雨を降らせるなんて!」

「ロビンちゃんが信じてくれたんだからこれくらい訳ないさ。」


 地下水脈は水柱が消えた後もゴジが作り出した流れに乗ってなおも流砂の穴から溢れ出しており、クロコダイルの作り出したすり鉢状の穴にコンコンと溜まり続けている。

 ゴジはロビンを抱えたままその溜まりつつある水の上に”月歩”を応用した“水馬”で着地して二人で巨神の崩壊を眺めていた。


「”麒麟児”さん……。」

「さて、あとはクロコダイルを捕らえるだけだ。”神眼”!」


 ロビンは色々とゴジに聞きたいことがあるが、ゴジはクロコダイルを捕らえる為に油断なく”神眼”で崩れゆく巨神を観察していた。
 

「ちっ……!?」


 クロコダイルは水で濡れた巨神の体を維持出来ずに、自分の体が濡れる前に下半身を砂に変えることで巨神の体から飛び出して、滅びゆく巨神を悔しそうに眺めているが、ゴジがこれをただ見ているはずない。

 ゴジは右手で足元に溜まり続ける水を掬う。


「今のクロコダイルを倒すにはたったこれだけの水があれば十分。六・六式(ダブル・ロクシキ)魚人空手 槍波・雷!」


 ゴジは見聞色の覇気により予めその場所にクロコダイルが来ることを未来視していたので、手で掬った水に電気を帯びさせて槍投げの槍のように真っ直ぐに飛ばした。


「そんなチンケな槍で俺を倒せると思うな!?砂漠の金剛宝刀(デザート・ラスパーダ)!」


 ゴジのか細い水の雷槍の投擲に気づいたクロコダイルは右手を砂の刃に変えて迎え撃つ。

 その砂の刃はゴジの水の雷槍とは比べ物にならぬほど巨大な刃だった。


「無駄だ!」


 しかし、相性で勝るゴジの水の雷槍はクロコダイルの生み出した砂の刃を諸共せずに突き破るとそのままクロコダイルの体を刺し貫いた。


「ぐはっ…ぐお”お”おおおおおっ!?ご……ごれはで……でんぎの……水のや…り…」


 クロコダイルはゴジの放った水の雷槍により下腹部を貫かれて大量に吐血しながら感電して、砂になる事も出来ずにそのまま砂漠に叩きつけられた。

 無敵と呼ばれる自然(ロギア)系能力者でも、自分の能力と相性の悪い攻撃を受けると死に至ることもある。


「正解だ。水に濡れると砂でも電気が効くんだな?いや、むしろ水で砂になれねぇから電気が効くのかな?」

「くっそ……こ……こもの……が……。」


 クロコダイルは砂の能力を維持出来ずに地面に横たわる自分の目の前に現れたゴジを睨み付けながらその意識を手放した。

 ゴジは水面から音もなく飛び上がると、ロビンをその場に降ろす。


「ロビンちゃん、そのコート返してくれるかい?確か海楼石の手錠が入ってたはずなんだ。」

「えぇ。どうぞ」

「あったあった。また目が覚めても厄介だからな。」


 ゴジは海軍コートの内ポケットから取り出した海楼石の手錠をすでに白目を向いて意識のないクロコダイルに向けて掲げる。


「安心しろよ。急所は外してあるし、槍波に電気を帯びさせたから出血もしていないから死ぬことはしない。海賊サー・クロコダイル確保する。」


 ゴジは槍波で貫いた傷口を電気で焼くことで、クロコダイルにただ刺し貫くよりも圧倒的な激痛を与えたものの、傷口を焼いたことでクロコダイルの腹部からほとんど出血はなかった。


 ◇


 クロコダイルとの死闘で元々ボロボロだったゴジの服は地下水脈の激流に攫われたことで、膝下から無惨に破れたズボンを残すのみで、上半身は裸の状態で無駄なく引き締められた肌が惜しげも無く晒されていた。

 水に濡れた浅黒い肌と漆黒の髪が日の光に照らされてキラキラと輝くゴジの姿をみたロビンはしみじみと思う。


「漆黒の…麒麟?」
 

 麒麟とは鹿の胴体、牛の尾、馬の足、獅子の頭部を持ち、さらに背中の毛は神々しく輝き、龍の鱗を持つ。

 さらに五行思想に基づいて、赤、青、白、黄、黒の毛を持つものが存在するとされ、中でも全身が黒い体毛で覆われた麒麟は他の麒麟を凌駕する神通力を持ち、ロビンはゴジの姿をこの麒麟に重ねた。

 麒麟は仁徳の高い生き物で、生きた草を食まず枯れ草だけを口にし、歩く時は生きた虫を踏まないため雲に乗り、移動した軌跡は正確な円になり、道を曲がる時は正確な直角を為す。鳴き声は音楽の音階に一致し、凶を払い吉を招き、平和を愛する一方で必要に迫られれば戦う事も厭わず、その際は鳴き声が焔となり、蹄とツノで果敢に攻撃を仕掛けると言われる。

 
「Mr.0いえクロコダイル、貴方がこの国を乗っ取ろうと考えたその瞬間からバロックワークスの崩壊と貴方自身の破滅は決まっていたのよ。」


 麒麟と並び称される神獣に竜がおり、世界貴族は天竜人と呼ばれ、彼等は天翔る竜の化身であるとされて人々に畏怖と畏敬の念を込めてこの世界では”神”と呼ばれる。

 そんな畏れ多い竜とは違って、穏やかで仁徳溢れる神獣の麒麟は市井に浸透していき、家の守り神として麒麟の象を飾る家も少なくない。善政を敷く執政者の誕生と共に降臨する麒麟の在り方から、幼くして天才的な才能を発揮し、将来を嘱望される子供を”麒麟児”と呼ぶようになった。

 この海で"麒麟児”と呼ばれる少年はその名に相応しく16歳という若さで史上最年少の海軍本部准将となり、さらに彼の海兵としての生き方、在り方は人々に安寧と平和をもたらす麒麟そのもの。


「だってこの海には平和と安寧をもたらす神獣の名を持つ正義のヒーローがいるのだから……」


 ガシャンというクロコダイルに手錠を掛ける音が砂漠に響き、戦いが終わった事を告げる。


「出来ることなら、あなたがこの海に真の平和をもたらすその日まで、あなたの活躍を見続けていたいわ。」


 ロビンは罪人である自分には叶わぬ願いと知りながら、晴れ渡る空を見上げてそう願わずにはいられなかった。 
 

 
後書き
長かったアラバスタ編の戦いがようやく終わりました。これからエピローグの回です。

今更ですが、ゴジくんの強さに自重する気はありません(断言)!! 
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