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イベリス

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第二十二話 ゴールデンウィークに入りその十

「完全に」
「そうよ」
 母も否定しなかった。
「どう見てもでしょ」
「そうよね」
「確かに食べるけれど」
「それまでの課程が問題ね」
「食べること自体にも何かとあるわ」
 母はこのことは否定しなかった。
「やっぱりね」
「世の中そうよね」
「奇麗ごとばかりじゃないしね」
「家畜を食べるっていうことには」
「何かとあるわよ」
 このこと自体は否定出来ないというのだ。
「先も知ってるのね」
「中学校の時フランドル農学校の豚読んだから」
「宮沢賢治ね」
「何となくだけれど」
「知ってるのね」
「ええ、だからね」 
 それでというのだ。
「私もね」
「知ってるわね」
「ええ」
 母に暗くかつ沈んだ顔で答えた。
「家畜がどんなものか」
「ああしたことは事実でもね」
「銀の何とかって漫画でも読んだし」
「漫画でもなのね」
「農業高校を舞台にしたね」
「そうしたこともあるわよ、けれどね」
 それでもと言うのだった。
「ファアグラはね」
「酷過ぎるのね」
「幾ら何でもね」
「だから言うのね」
「そうよ、動けなくして無理矢理食べさせて太らせてね」
「そうした鵞鳥の肝臓ね」
「作るまでも酷くて」
 そうしてというのだ。
「それにそんな太らせ方したら病気でしょ」
「鵞鳥も」
「フォアグラは病気になった鵞鳥の肝臓よ」
「脂肪肝?」
「そう、それがフォアグラよ」
 まさにそれになるというのだ。
「病気になった生きものの内臓が健康かしら」
「そう言われたら」
 咲もわかった、それで今度はまた食材を切りつつ応えた。
「やっぱりね」
「食べてもね」
「健康的じゃないわね」
「コレステロールとか多いから」
 現実としてそうだというのだ。
「カロリーもかなり高いし」
「健康的な食べものじゃないのね」
「昔の欧州のお金持ちで痛風が多いのも」
 メディチ家では代々の持病であった、それが常の美食のせいであることは言うまでもないことである。
「そういうものを食べてきたからよ」
「やっぱりそれね」
「だからね」
「内臓はよくても」
「ファアグラはね」
 どうしてもというのだ。
「よくないわ、まあ滅多に食べられないわね」
「高いから」
「そう、私達にはね」 
 娘に笑ってこうも言った。 
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