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おっちょこちょいのかよちゃん

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162 放課後に現れた女性

 
前書き
《前回》
 アブー・アブドゥッラーを倒したさり達は共闘した槍の使い手・清正と同行する事になる。そして尾藤の母が清水出身で空襲で両親を亡くした戦災孤児だった事、そして彼女らを救う為に尽力したという異世界の人間・十次という人物はベニートという男と交戦し、戦死したという情報をさりは知ることになる。さりはその十次の敵を取りたいと渇望する。そしてかよ子は自身の羽根を一人の僧・玄奘によって結界を張る事ができるように強化して貰い、藤木の捜索に再び動き出すのだった!! 

 
 本部の一室。かよ子の母は娘が敵をまた撃破した事に安堵した。
「よかったわ、また突破したのね・・・」
「そうだね、それに玄奘が来てくれて良かったよ」
「ゲンジョーってのはどんな人なんですか?」
「昔、中国が唐の時代だった頃に法を破ってインドへ向かい、仏教を学んだ僧の事だよ。本当の仏教とは何かを学んだ事で有名で、『西遊記』の三蔵法師のモデルにもなったんだ」
「奈美子ちゃん、さりちゃん達も別の敵を追い払えましたね」
「ああ、ホットしたよ」
 イマヌエルはもう一つ、ある事を気にする。
(フローレンス・・・。もしかして藤木茂君を呼び戻す為の布石としてまさか・・・)

 さり達は領土攻撃班の新たな連絡が来るまでアブー・アブドゥッラーを倒した場所でそのまま待機を続けていた。
「それにしてもこの世界はこの世界も結構広いわね」
「ああ、お主らがいて、我々も死ぬ前に生きていた頃の世界程広大ではないにせよ、全ての領土を我々の世界にするには多少の時間を費やすことになるであろう」
 清正がその場にいた。
「そうやな、だけんど、俺達の守備範囲が広くなったら、守る場所も増えて大変になるんじゃないんか?」
「ああ、だが、我々の世界の者も協力を惜しまん。その為に我もこうして助太刀に来たのだ」
「確かに、その方がありがたいね」
「そうだ、お主、長山治と言う者であるな?」
 清正は長山の方に目を向けた。
「は、はい・・・」
「お主は以前、赤軍の人間にその頭脳を狙われたと聞く。奴等はお主を狙う事を諦めていないわけではない事を頭に入れておくが良い」
「う、うん・・・」
「本来ならばフローレンスとイマヌエルはお主もまた杖の所有者と共に『向こうの世界』に囚われている小童の救出班に同行させてやろうという予定であったが、その一件を踏まえて敢えてこの本部守備班にしたのが真意だ。下手に動かぬよう、気を付けよ」
 長山は以前、日本赤軍の丸岡修という男と彼に連れられてきたオリガという女に自身を狙われかけた事がある。その時はかよ子達や隣町の学校の生徒達の活躍によって連行は免れているのだが。
「解った」
 長山は自身も狙われいる身である事を改めて認識した。

 3年4組の皆は体育の授業が終わった後は非常にヘトヘトの状態であった。
「はあ、疲れた・・・」
 たまえはそう言ってとし子と共に教室に入った。
「私も息が切れて大変だよ・・・」
 とし子も走ってばかりでかなりしんどく感じていた。
「私今日ピアノだから集中できるかな?」
「やるしかないよ。私も今日エレクトーンのお稽古だし・・・」
 二人は着替えると、帰りの支度を始めた。この日は体育の授業が最後だったため、他のクラスメイトも同じように着替えた後にランドセルを出して教材を片付けていた。そして戸川先生が入り、終礼が始まる。
「皆さん、マラソン大会の練習、お疲れ様でした。寒くなってきていますので風邪を引かないように気を付けてくださいね。では、さようなら」
 皆は下校した。

 フローレンスは高台から清水の街と清水港を見下ろし続けていた。
「そろそろ学校が終わります頃ですわね。これ以上グズグズします訳には行きませんか・・・」
 フローレンスは姿を消して飛び立った。
(しかし、笹山かず子ちゃんと言いますのはどんな子でありましょうか・・・)
 フローレンスは異能の能力(ちから)を持たぬ者の事に関しては政府の人間などを除き情報を殆ど知らない。フローレンスは笹山かず子という女子の名前を教えてくれた徳林奏子の事を思い出した。
(あの方は確か、このあたりのお住まい・・・)
 フローレンスはとある住宅街に降下する。フローレンスは見渡すと「徳林」という表札が目に入った。
(もしかしてあそこは徳林奏子ちゃんの家?となると笹山かず子ちゃんの家は・・・?)
 フローレンスはこの近所で目的の女の子に会えると確信した。そして周囲を見回すと、「笹山」と表札が書かれた家を発見した。
(おそらく・・・!!)

 笹山はいつもの如く下校していた。
「笹山さん、じゃあねえ」
「うん、またね」
 友達と別れて笹山は一人そのまま帰る。
(今日は宿題やったら休もう・・・)
 笹山も体育でのマラソン大会の練習で疲労が溜まっていた。そしていつもの如く帰宅する。普段なら近所の女子高生と会う事が多いのだが、その女子高生は今、クラスメイトの山田かよ子達と共に異世界の戦いに身を投じている為、暫く会う事はない。だが・・・。
「ん?」
 笹山は一人の女性が急に姿を現した。栗色の神に全身白いワンピースのような服を着ている。
「貴女が笹山かず子ちゃんですか?」
「は、はい・・・」
 笹山からしたら見知らぬ女性ではあるが、どこか優しそうな感じのする女性だった。
「私はフローレンスと申します。平和を正義とします世界から来ました者です。貴女の事はご近所に住まわれていますといいます徳林奏子ちゃんから聞いております」
(あのお姉さんの知り合い・・・?)
 笹山は疑わなかった。いや、寧ろ疑う必要がなかったのだ。
「貴女は今、この世界から消えました藤木茂君が心配になっていますのですね?」
「は、はい・・・」
「藤木茂君は今、私がいます世界と敵対します世界におります。今解っています事はそれだけですが、藤木茂君は今、政府の取引に使用されています。難しい話をしますが、藤木茂君を返してほしければ日本を再び戦争への道に進ませますように日本赤軍は要求をしました。その要求は私達によって対処しましたが、それでも藤木茂君を返しますつもりはありませんのではと私は赤軍を疑っています。笹山かず子ちゃん、貴女は確か藤木茂君が恋していました女の子でありますと徳林奏子ちゃんからお聞きしておりますが?」
「はい、そうです。藤木君は私の事が好きになっていたんです・・・」
「そうでしたか。まあ、立ち話もなんですし、貴女もかなり疲れていますようですから、家にお入りになって下さい。準備ができましたら窓から私を呼んでください。疲れにつきましては私が取り除いて差し上げましょう。少しよろしいでしょうか?」
 フローレンスは笹山の額に指を突けた。その時、笹山の体の疲れが一気に消えた。
「す、凄い・・・」
 笹山はフローレンスの能力に驚いた。
「それではやりたい事を済ませてください。いつまでもお待ちしております」
「はい」
 笹山は家に入った。そしてクリスマスの日に届いたあの手紙を思い出すのだった。 
 

 
後書き
次回は・・・
「失踪の呵責」
 笹山の前に現れたフローレンスは彼女の部屋にて持て成しを受けながら藤木との関係を聴取する。そして笹山はクリスマス・イブの日に届いた「ある手紙」をフローレンスに見せる。そしてフローレンスは笹山に二つの提案をする・・・・!! 
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