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用意は出来ていた

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第二章

「今から行って」
「あの連中になんだ」
「引導を渡してくるよ」
「あの連中にも言ってたんだよ」
 父がまた言った。
「もう一度来るってな」
「そういえば親父言ってたな」
 洋介も言われて思い出した。
「親父は」
「そうだろ、それはな」
「今なんだな」
「言っただろ、絶対にこの時が来るってな」
「親父は思っていたんだな」
「確信していたんだ」
 思うどころかというのだ。
「だからな」
「それでか」
「俺も用意していたしな」
「叔父さんもか」
「赤ちゃんの命もかかっている」
 叔父の言葉は真剣なものになっていた。
「だったら今すぐに行った方がいい」
「そうね、ワンちゃんなら無視しても鳴くだけれど」
 母も言った。
「けれど人間の赤ちゃんはね」
「そうはいかないな」
「もうちょっと目を離したら」 
 母として夫に答えた、洋介を共に育てた立場から。
「もうね」
「それでな」
「大変なことになるわ」
「だからだ」
 夫は妻にも言った。
「今からだ」
「二人のところに行って」
「引導を渡してな」
「赤ちゃん達を助けるのね」
「もう外堀どころか内堀も埋めているよ」
 叔父も言った。
「そして本丸の壁も石垣も櫓も」
「全部なのね」
「壊したんだ」
「それじゃあ後は」
「攻めるだけだよ」
「天守閣だけになってるんですね」
「そんな風にしておいたから」
 そこまで整えたからだというのだ。
「それでだよ」
「動けるんですね」
「僕もこの日が絶対に来ると思っていたからね」
「用意しておいたので」
「引導を渡してくるよ」
「二人で行って警察も呼ぶ」
 父がまた言った。
「警察の手筈もな」
「しておいたの」
「ああ、そうした連中だとな」
「それでその写真見せたら」
「絶対に来る、じゃあな」
「今からよね」
「あいつ等の家に行ってくる、飯はその後だ」
 こう言ってだった。
 文太は彼の兄と共にふわりの前の飼い主達の家に向かった、その時に警察にも話をしていた。そして。
 二人を見送ってから母は息子に言った。
「まさかね」
「もう何でもだよな」
 息子もこう返した。 
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