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僕は 彼女の彼氏だったはずなんだ

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4-⑾

 クリスマスは、予約のオードブルのセットは12しか出なかったが、店の方は満席が続いたと言っていた。おせちは70セットで予約を打ち切ったと言うことで、僕達は31日、朝の6時から来てくれと言われていた。

 自転車で向かって、寒い日だったけど、初めての経験なので、少しわくわくしていた。着くと、もうみんな来ていた。昇二は、車で光瑠と明璃ちゃんを乗せてきたみたいだった。カウンターには、もう、食材が並べてあって、端のテーブルでは、舞依ちゃんが和え物なんかをカップに入れ始めていた。テーブルを寄せて、12ケのおせち用の箱が並べてある。重箱は注文が間に合わなかったので、急遽、美鈴が考えて、紙箱に化粧紙を張り付けたものだ。

「この12ケを1時間で盛り付ければ良いんだから、6回ね、みんな慌てないで、入れ忘れのないようにしてちょうだいね 寒いけど、暖房は付けれないからね」と、美鈴の掛け声で始めた。カウンターの中では、晋さんと美鈴のお父さんが、まだ調理を続けていたが、光瑠はそっちを手伝いに入っていた。

「君達、もう少し上手に詰めてよね ぜんぜん、おいしそうじゃぁない」と、明璃ちゃんが僕達を叱ってきた。昇二と僕と、明璃ちゃんが詰め役だったが、明璃ちゃんは、確かに、手際も良かった。

「あのね そうやって、押さえつけるんじゃぁなくて、ふんわりと ねぇ 美鈴さん?」

「そうねぇ 明璃ちゃんみたいに、もっと、やさしく入れてちょうだい」

「ほらっ やさしくね 女の子にだって、優しく扱わなければ、嫌われちゃうよ」と、明璃ちゃんは僕等に、上から目線だ。

「余計なお世話だよ 明璃ちゃんの方が、デリカシーないような気がするが・・」と、昇二は言い返していた。といいながらも、その後は明璃ちゃんのまねをして、詰めていった。

 9時頃になって、美鈴が「休憩しましょうよ」と、言ってきた、そして、ピザ風のトーストとスープを奥の洗い場に用意していた。もう、半分が詰め終わったところだった。

「予定どおりだわ この調子なら、1時頃には、終わるから みんな、助かるわ ありがとう」と、美鈴がみんなに頭を下げていた。

「調理のほうは、少し、追われぎみだよ 少し、ペース落としてくれ」と、晋さんが言っていたが

「すまん わしが ゆっくりなもんで 遅れているんだ」と、お父さんが謝るように言うと

「とんでもない そんなつもりじゃぁ 大将 いゃ 予定より早いもんで・・」と、晋さんは焦っていた。

「ごめんなさい 私が、段取り悪いから、遅れちゃって」と、光瑠も謝っていた。

「いゃ そんなことないですよ 助かってますよ 僕は、もっと、慌てないで慎重にやりましょうというつもりで・・」

「明璃先生 その後 盛り付け具合はいかがでしょうか」と、昇二がふざけ気味に聞いていた。

「うん 合格あげる」

「明璃ちゃん ありがとうね」と、美鈴は礼を言っていた。

 お昼頃になって、あと、最後の列で終わると言う頃、工務店の堤さんという人が来て

「店長 もう一つ、追加できないかな 親方の所にも、持っていこうと思ってな 無理しなくてもいいんだけど うちのを廻すから」

「大丈夫ですよ 余分につくっていますから」と、美鈴は応えていた。合計4セットを抱えて

「ありがとうな じゃぁ 来年もよろしくな」と、言って帰って行った。

「美鈴 数 大丈夫なんか?」と、僕が聞くと

「うん 大丈夫 余分あるから なんとかなるよ さあ、あと、少しね」と、言っていた。

 最後は、16並んでいたが、最後の3つ分が食材が足らなくなるものが出てきて、晋さんが、それを見ながら、ありあわせのものを詰めていった。

「店長 僕の分は、要らないですから」と、1つを取り除いた。

 そうか、美鈴は、みんなの分も用意するつもりだったんだと、思った。全て、終わった時、晋さんは、ピラフをみんなに用意していてくれた。

「お疲れさん なんとか、終わったよ 特製ピラフだから、食べてよ」と、晋さんは、みんなに勧めていた。その間にも、次々と受け取りにくる人が続いて、最後は3時になるらしかったが

「みんな、ありがとうね 1つずつ、用意したから、持って帰って 最後、私、待っているから、みんなは、もう、帰って頂戴 お疲れさまでした 助かりました」と、美鈴が頭を下げていた。

「店長 私 本当に3日まで、お休みでいいんですか 3日も出ますけど」と、舞依ちゃんが、美鈴に聞いていたが

「いいの 休んでちょうだい 晋さんと私だけで、大丈夫よ 予約のお弁当だけだし お父さんもいるし 4日からお願いね」と、美鈴が言っていた。

 昇二も帰るので、乗せて行こうと、光瑠に声を掛けていたが、光瑠は、晋さんと洗い場に居た。

「待って もう 少し 洗い物済ますから」と、しきりに晋さんに話しかけていたようだ。

 明璃ちゃんは、昇二に「遊びにいこうよー」と、誘っていたが、僕は、美鈴を迎えに行くので明日の待ち合わせ場所を決めながら

「なぁ 光瑠 晋さんのこと興味あるんかなぁー 今日も、べったりたぜ」と、美鈴に聞いてみた

「かもね 私も あれーって思っているんだ この前から」

 と、話しているうちに、光瑠も出てきて、昇二も帰って行った。僕も、美鈴に別れを告げて、帰る時、待合所の貼りだしスペースを見たら、隙間なく、作品が貼りだされていた。その中の1枚の絵に眼を留めた。小学校1年の子が書いたもの。テーブルの上のステーキかハンバーグかわからないが、お皿を書いて、お父さん、お母さんと2人の子供が笑顔で座っている。そして、端っこには、制服の女の人が描かれ、「おいしい ありがとう」と書かれていた。

 僕は、それを見て、眼が熱くなった。美鈴はこれを見て、何を感じたのだろうか
  
 
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