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究極の美人

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第三章

 中々見えない気がした、それは一瞬だったかも知れないが随分と長い時間がかかった様に思えた。その前に。
 寿里がいた、ぼんやりとしていた彼女の顔が次第に見えてきた、その顔は。
 薄いピンク色のナース服とは似合わなかった、背は一七五位で身体つきはがっしりとしている。黒く太く硬い感じの毛は多く後ろで束ねられ。
 濃いゲジゲジ眉毛に一重の大きな目、大きく分厚い唇の口に低い鼻、エラが張った頬で色黒でいかつい感じだ。
 顔立ちはこうで人相はというと。
 とても優しい笑顔だった、にこりとしていて明るく慈愛に満ちていた、目の光はとても温かい。その顔を見てだった。
 寿里は心から笑って美幸に言った。
「お話以上です」
「私美人でしょ」
「こんな奇麗な人見たことないです」
 周りは寿里のその言葉に驚いた、だが。
 隣にいた彼女の母だけは笑顔で頷いた、そうして娘に言った。
「お母さんが言った意味わかってるわね」
「ええ、人相よね」
「それが問題よ」
「だから松本さんはね」
「奇麗な人でしょ」
「こんな奇麗な人いないわ」
 母にもこう言った。
「本当にね」
「そうでしょ」
「ええ、松本さんのお顔見られてよかったです」
 寿里は美幸に笑顔で述べた。
「こんな奇麗なお顔を目が治った最初に見られて」
「そう言ってくれるのね」
「はい、これまで有り難うございます」
「もう大丈夫よ」
 美幸は寿里に優しい声をかけた。
「だからね」
「これからはですね」
「普通に暮らしてね」
「ものを見られますね」
「そう出来るわ、そして何かあったら」
 美幸はその時のことも話した。
「またうちに来てね」
「そうしてですね」
「私に言ってね」
「そうさせてもらいます」
 寿里は美幸に笑顔で言った、そうしてだった。
 退院するまで美幸にこれまで通り助けてもらって退院する時に。
 彼女に深々と頭を下げて退院した、退院してからも美幸との交流は続き彼女がまるで仏の様に素晴らしい心の人と結婚したことを聞いて母に話した。
「とても奇麗な人とね」
「同じだけ奇麗な人が結婚したわね」
「そうね、それでこれからは」
「松本さんはその人と幸せになるわね」
「そうなるわ、あれだけ奇麗な人だから」
 それでというのだ。
「絶対にね」
「幸せになるわね」
「そうならない筈がないわ」
 こう言うのだった、そして式に呼ばれて美幸を祝福した。ウェディングドレスを着たこれ以上はない美人に対して。


究極の美人   完


                 2021・9・23 
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