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吸血鬼になったエミヤ

作者:炎の剣製
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043話 学園祭編 シホとアルの試合

 
前書き
お久しぶりでございます……。

ここ数か月、書き手としてのメンタルが完全に死んでいました。
どうにか一作書けましたが、マジで書き方を忘れていてやばい!?と感じましたね。

今後も亀亀更新ですが是非お付き合いください。

ああ、ちゃんと書けているか心配で心配で……。 

 
朝倉の試合開始の合図とともにシホは足に履いているあるもの(・・・・)に力を込める。
それは学祭準備期間中に学園長に呼び出されて集まった集会時に春日美空によって譲られた脚力を強化する靴タイプのアーティファクト……美空本人曰く、『加速装置』。
それを履いていたシホは、瞬動術も駆使してただの一般人には知覚できないほどの一瞬でアルに肉薄して虎竹刀を瞬間的な加速も込めた威力を以てして胴に叩きこんだ。

「ッ!?」

それにはさすがのアルも対応し切れなかったのか、はたまた久方ぶりの本体にまで届く攻撃を喰らったためか、さながらダンプカーに撥ねられたかの如く吹き飛び池に着水してそれはもうでかい水しぶきを上げて沈んでいた。



『おおーっと!?シュバインオーグ選手のとっても速い動きとともに放たれた胴薙ぎが炸裂してクウネル・サンダース選手が池に沈んだーーーーッ!!』



朝倉の実況とともにシホは一瞬の技後硬直もものともせずにすぐさまに態勢を整えて油断せずに構えていた。

そんなシホの勝負を見ていたエヴァはニヤッと笑みを浮かべながら、

「(ククク……あのアルの一瞬の驚愕の表情を見れただけでも私としては満足なのだがな…さて、すり抜ける筈の体に攻撃が貫通されると分かった奴はシホに対してどういったなにかを仕掛けてくるかな…?)」

まだ池から顔を出さないアルに対してなにかしらのことをしてくるだろうと睨んでいるエヴァ。
しかし、一方でアルの事を知らない他の面子はシホの容赦なき攻撃に汗を垂らしながら状況を見守っている。

「シホさん……その、すごいんですけど相手の方はただの武闘家さんなのではないでしょうか…?」
「いや、兄貴。シホの姉さんがあそこまで容赦しないんすからやっぱり関係者で知り合いの線が高くないっスか?」
「そうなのかな?カモ君…」

ネギは相手のアルの事を心配していて、

「アカン……武者震いがしてきたで。シホの姉貴と次戦うんは俺やから覚悟せんとな!」

ネギの隣では小太郎がもうすでに武者震いをしてシホと戦えることの楽しみで体を大いにわなわなと震わせていた。

そんな中で池に沈んでいようと朝倉はカウントを開始する。

『えっと……池から上がってきませんがルールですのでカウントさせていただきます』

1…!2…!とカウントしていく朝倉。
だが、次の瞬間には舞台の上に一瞬でアルがダメージを見せない余裕そうな笑みを浮かべながら瞬間移動のごとく戻ってきた。
それにはさすがの会場もどよめきとともにアルに視線が向けられる。
アルはそんな視線など感じていないのか、いや…はなからシホしか見ていないのか気にしていないのだろう。シホに話しかける。

「いや……さすがですね。まさかダメージを貰うとは思っていませんでした」
「それにしては楽しそうね、ア「クウネルです」……クウネル」
「はい。それはもう昔を思い出す気持ちですね」
「そう……」

『両者、先ほどの事がなにごともなかったかのように平然と会話をしています。これは一体…?それよりクウネル選手が舞台に戻ってきましたので試合再開!』

朝倉の再開の合図とともに、アルが先に動いた。
先ほどのシホのやり返しなのか一瞬でシホの背後を取る、が…シホも虎竹刀を背後に持っていきアルの掌底打ちをガードする。

「さて……それでは少しばかりギアを上げていきましょうか」
「ええ!」

それから二人は瞬動術の枠に収まっていないほどの瞬間的な移動を繰り返してあちこちで打撃音が響く。
その戦闘風景を魅せられて会場の観戦者達のボルテージは否応なしに上がっていく。
一回戦での小太郎達の戦いは一瞬で終わったためにそんなに楽しめずに、二回戦目では最初はただの中学生少女と怪しい長身のフードの男というだけで色物か?と思われたがその評価はいい意味で覆されている。
観客席で見ていた士郎とイリヤは目を輝かせながら、

「シホの姉ちゃんすげー!」
「すごいねシホお姉ちゃん!ね、お母様」
「え、ええ……」

純粋に楽しんで観戦している士郎とイリヤだったが、アイリはその戦闘能力の高いシホの光景を見て悩んでいた。

「(あれほどの力を手にするまでにあの子はどんな苦悩を味わったのかしら……異世界での話も聞かされたから純粋に楽しめていないわね…)」
「アイリ。君の気持ちは分かるよ」
「あなた……」
「シホはね。たぶん過去に色々あってああなってしまったんだけど、でももう過去は変えられない。だから今のあの子の現実を受け止めて、そして応援してやろうじゃないか」
「そうね、キリツグ……」

想いに耽る二人をよそに戦闘は激化していく。
本気を出せば舞台を軽々と破壊できるシホとアルではあるが、いまは一般人も見ている純粋な表舞台での試合。
ゆえに両者は実力も高いだけに決め手に欠けていた。

実際、ダメージが通ると判断したアルはシホの攻撃を避ける戦法を取っており、大っぴらに魔法を使えないために決め手は少なく、対するシホも投影魔術やその他兵装を使えないために(使おうと思えば無詠唱で錬鉄魔法は行使できる)やはり決め手を欠いていた。
残り時間も五分を切った頃合いだろうか?二人は一回肉薄した後に互いに距離を取って息を整えながら、

「フフフ……楽しいですね。ですが決め手が少ないのもいただけません」
「そうね。それで…?どうするの?」
「ですから…………―――――『彼ら』の力を借りる事にします」

その『彼ら』という単語がアルの口から出た途端、シホは最大限の警戒をする。

そしてアルは懐から一枚のカード……見る人が見れば分かるであろうパクティオーカードを取り出して、次の瞬間にはアルの周りを何冊もの本が出現して浮遊している。
見学していたネギはアーティファクト!?と驚いた顔をしていて、アスナや刹那など関係者一同も同様に驚いていた。
そんな中でそのカードの能力を知っていたタカミチは、

「(ああ……貴方だったんですね。アル……)」

驚愕と同時にシホとの親しそうなやり取りにも納得の実感を得た。
そして、あとでじっくりと話し合わないとな……と今後の予定を作る算段を脳内で考えていた。

「来たわね……ッ!でも、いいの?これは一般人も見ているのよ?」
「こういった舞台では目立つ方が逆に気づかれにくいものなんですよ……?では、いきます」

アルは一冊の本を手に取り、一つの栞をその手に取った本を開いて差し込み、次にはスライドさせるように思い切り栞を引き抜く。
瞬間、噴き出す大量の白い煙は舞台上を外から見えない様に覆い隠す。

『わぷっ!? 突然の大量の煙は一体何なのでしょう!? 両者の姿が覆い隠されて見えません! これもなにかの演出か!?』

朝倉もさすがに魔法関係を大っぴらにできない事は分かっているために言葉を選んで『演出』という単語を使い、一般人に納得してもらえるように努めている。







…………………


煙の中では、シホと相対しているのは2メートルはあるであろう身長、褐色肌で白髪の巨漢の男であった。

「……んだ? 俺様を使うとはな……相手は……?……ッ!?」

巨漢の男は鋭い眼光をシホに向けた。
途端、くわっと目を見開いて同時に男はいくつもの感情を呼び起こされていき、自身が幻でなければ盛大にシホの事を抱きしめに行っていただろう、だが……幻故に葛藤し、そしてすぐにその感情はあまりに自分らしくないととどまってぐっとその思いを飲み込み目を瞑る、一瞬のあとに目を開きいつも通りの余裕そうな笑みを浮かべながら、

「……よお、シホ。久しぶりじゃねーか。生きていたんだな……」
「……ええ。ラカン」

そう、その男こそ赤き翼で活躍した英雄の一人。
その名は『ジャック・ラカン』。
そして『千の刃のラカン』の異名を持つシホのかつての戦友だ。

シホもシホで懐かしい気持ちになっていたが、それはさておき、

「分かっていると思うけど……」
「ああ。俺は幻だ。だがな、幻でもてめぇに一泡吹かせてぇ。幻だからアーティファクトを使えねぇのが残念だが……いくぜ?」
「わかったわ」

シホも無詠唱で錬鉄魔法を身に纏って構える。

「「…………」」

二人は無言で構えをして睨み合いを続けて、同時に地面が爆ぜた。
シホとラカンの顔は第三者が見れば実に楽しそうだろうと感想を漏らすほどであった。
一瞬の攻防……その一瞬で何十もの応酬が繰り返され、拳が衝突するだけで衝撃波がその場を蹂躙していく。

「ハハハハハハハハッ!!!!楽しいなぁシホ!お前が消えた後は寂しかったんだぜ!?ナギの野郎も本気で笑わなくなっちまったしな!!」
「それは悪かったわね!勝手にいなくなっちゃって!!」

一見、ラカンが優勢に見えるが、それ以上にシホの拳での攻撃は一撃一撃が宝具を纏っているゆえに着実にラカンにダメージを与えている。

「いずれ、またあなたに会いに行くわね…」
「いいねぇ……本体の俺はてめぇと会った途端に多分だが感情を爆発させると思うから今のうちに覚悟しておきな。いまの俺でさえ結構ギリギリだからな?」
「え、えぇ……覚悟しておくわ……」

若干引き気味の表情になるシホであったが、次には笑顔を浮かべて、

「それじゃ決めさせてもらうわ!」
「受けて立つぜ!」

両者の最大限の攻撃が同時に放たれて、少しばかり拮抗したあとに次第にラカンは追い詰められてシホの攻撃が炸裂したのを地面に叩きつけられながら実感するラカンは消える意識の中で、

「(チッ……やられちまったか。だが、楽しめたぜシホ。また、会おうぜ……!)」

そして同時に舞台を包んでいた白い煙はシホの攻撃の余波で吹き飛んだのか、事前に効果が切れて元の姿に戻って地面に仰向けに倒れているアルと、それを見ているシホという図がその場で展開されていた。

『おっと……? 煙が吹き飛びましたが立っているのはシュバインオーグ選手だ!まるで台風でもあったかのような惨状になっていますが一体何が起こっていたのでしょうか……?カウントはいりますか?』
「いえ……私の敗北で結構です」

仰向けに倒れていてもなお余裕の笑みを浮かべながらそう話すアルに朝倉も納得したのか、

『クウネル・サンダース選手の敗北宣言!よって勝者はシュバインオーグ選手だ!!一回戦突破です!』

瞬間、会場は場の空気もさることで流された感じはあるがシホに対して喝采の言葉が投げられることになった。
なお、舞台が先ほどの朝倉の言葉通りにまるでハリケーンにでもあったかのように破壊されているのでしばらくの会場修理が行われるのでしばしの間、試合進行はストップになった。

シホとアルは控室に戻る中で、

「フフフ……負けてしまいましたね。これで私の計画も台無しになってしまいました」
「それってやっぱりネギ先生とナギを戦わせようとか考えてたの……?」
「さて、どうでしょうね……?ですが、機会を貰えるのであれば後程にネギ君とじっくりと話し合う時間を頂ければ嬉しいですね」

そう言葉を零すアルに最初から聞いていたかのように、

「よかろう! 私の判断で時間を作ってやる。当然私もその場に参加させてもらうがな!」
「ケケケ!上機嫌ダナ御主人!」

エヴァが姿を現してそう宣言していた。

「おや……。いたのですね、キティ」
「ッ、その名で呼ぶな!!」

先ほどまでの上機嫌から一転して怒り出すエヴァにさすがのシホも噴き出す笑みを浮かべていたのであった。








それからしばらくして会場修理は完了して一回戦第三試合の長瀬楓vs中村達也の試合で少なからず遠当てが披露されたがなんなく楓が勝利し、第四試合の古菲と真名との試合も危ないところだったがなんとかネギ達の応援もあり古菲が勝利、しかし腕が折れていたために棄権と相成っていた。
第五試合の田中と高音・D・グッドマンの試合は……可愛そうなので明記しない事にしよう。ただ、多少の犠牲とともに高音が勝ったとだけ……。



第五試合が行われている間、違う場所では小太郎、アスナ、刹那、カモがタカミチと話していて、小太郎が小手先の先制でタカミチの技を探る行動をしていたが、なんとなくつかめたのか満足そうである。

「ふふ……いいね。僕も、シホ姉さんの試合を見てから年甲斐もなくワクワクさせられていてね。ネギ君との勝負は……楽しみだ」
「そ、そうだ!高畑先生!さっきのシホに倒されたフードの人って…知り合いですか!?」
「ん?あ、そうだね……うん。多分まだ会場にいると思うから機会があれば話してみるといい。特にアスナ君は彼の方から多分絡んでくるだろうしね」
「え?それって……」

タカミチの意味深な発言に悩みだすアスナであったが、理由を聞く前に、

「ははは。それじゃ僕も次の試合があるんでそろそろ行かせてもらう。アスナ君も僕の事は気にせずにネギ君の事を応援してあげなさい」
「は、はい……」

そう言ってタカミチは行ってしまった。

「どういうことなのかな……?」
「さぁ…。ですが、次はネギ先生達の試合です。悩むより素直に観戦していましょう」
「そうだね刹那さん。そういえばシホはどこにいったのかな?」
「そういえば……」

話題のシホはシホでキリツグ達のもとへいっていて、玉藻を中心に士郎、イリヤが盛大にシホの事を褒めちぎっていたのであった。


 
 

 
後書き
はやくアーティファクト蒐集が増えていって、いくつも同時展開とかバグ技披露したい…。

『千の顔を持つ英雄』が全アーティファクト中最強と称されるなら、『贋作の王』はさしずめジョーカー的な?


少なからず赤き翼メンバーに大小あれど深い傷を負わせた女、シホ。なお玉藻() 
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